<家電激戦区を歩く>群馬県・高崎市(1) 郊外でのショッピングが盛ん 駐車場の充実で駅前も活性
群馬県高崎市は、古くは中山道(国道17・18号)の宿場町で、上越・長野新幹線が停車するなど、関東と信越をつなぐ交通の要衝だ。県内最大の人口を抱える商業の街として知られ、国道17号を中心にロードサイドには大型店舗が建ち並ぶ。再開発によって駅前も活性化し、ともにクルマでショッピングに訪れる人で賑わっている。家電量販店は、国内No.1のヤマダ電機が本社を置いて都市型店舗と郊外型店舗を構えるほか、駅前にビックカメラ、郊外にコジマが出店。価格競争が激化している。(取材・文/佐相彰彦)
<街の全体像>
高崎市は、平成の大合併で倉渕村や箕郷町、群馬町、新町、榛名町、吉井町などを編入し、人口が37万5188人、面積が459.41km2と、県内一の人口と広大な市域をもつに至った。県のなかでは、県庁所在地の前橋市が行政の街、高崎市が商業の街として位置づけられる。
住民は、クルマで買い物に出かけることが多い。国道17号をはじめとする基幹路線沿いには、スーパーや飲食店、洋品店、ショッピングモールなど、駐車場を完備した大型のロードサイド店舗が建ち並んでいる。
また、JR高崎駅前は再開発が進み、2010年12月にはJR東日本グループが運営するターミナルビルのイーサイト高崎がオープン。高崎駅東口広場のロータリーのリニューアルや、高崎駅東口を起点とする東口線(東毛広域幹線道路)の拡幅、高崎渋川線バイパスと国道17号線の直結などによって、駅へのアクセスが便利になった。駅周辺は駐車場が充実していることから、ショッピングを目的に多くの地元住民が訪れる。地元住民にとっては、ロードサイドに加えて駅前がショッピングエリアとして位置づけられるようになってきた。
家電量販店では、高崎市に本社を置くヤマダ電機の存在感が最も大きい。ロードサイドに高崎本店の家電館とPC館を出店していたが、2008年7月、JR高崎駅前に大型の都市型店舗、LABI1高崎をオープン。地下2階、地上12階建てのビルで、このうち地下1階から地上4階までが売り場、5階にレストラン街の「LABI takasaki dining」が入る。6階から9階は1000台収容の駐車場で、10~12階はヤマダ電機の本社だ。2階がペデストリアンデッキでJR高崎駅東口と直結している。
売り場面積は、約2万m2と郊外型店舗のテックランドの5~6倍の広さをもち、さらに全国のLABIのなかでも最大規模を誇る。クルマや電車、バスなど、さまざまな手段で訪れることができる利便性によって、平日には、午前中に高齢者、夕方に学生、夜に会社員、休日にはファミリーなどと多くのお客様が来店している。新幹線を使って遠方から訪れるケースもある。
このLABI1高崎の出店は、その集客力で高崎駅前の活性化に大きく貢献している。ヤマダ電機は、LABI1高崎の出店によってテックランド高崎本店の家電館とPC館を閉店したが、高崎市内で、ほかにもテックランド高崎北菅谷店を2012年12月にオープンしており、市内だけでなく前橋市の住民もお客様として獲得している。
ビックカメラもまた、高崎が創業の地。駅前には、その第1号店にあたる高崎東口店を構えている。1978年のオープンと歴史は古く、市内だけでなく、群馬県全域、さらには長野県や栃木県からのお客様も呼び寄せているという。なかには、30年以上の常連客もいるそうだ。
ビックカメラグループのコジマは、国道17号線沿いにNEW高崎店を出店している。この店舗は、規模の拡大を目的として2008年に移転したもので、2011年に、NEW前橋大友店と統合。近隣の住民を固定客として確保している。
高崎市の家電量販店は、ヤマダ電機が2店舗と、ビックカメラとコジマがそれぞれ1店舗。決して多いとはいえないが、隣の前橋市にヤマダ電機が4店舗、ケーズデンキがモール型ショッピングセンターのけやきウォークに出店し、県南部でのシェア争いはほかの地域と比べても激しい状況にある。とくに、価格競争に関しては、他の地域を圧倒している。
高崎市の商圏について、クロスの得平司代表取締役は「新幹線の停車駅なので、遠方からの来訪者が比較的多い。軽井沢などリゾート地も商圏で、高所得者が立ち寄る」と分析。ハイエンドモデルがよく売れることから、「各店とも、市の人口の割には高い収益を上げている。県庁所在地以外の地域では珍しい」とみる。
一方、プライスリーダーのヤマダ電機が大きなシェアをもち、価格に対してシビアなお客様が多いという側面もある。「ハイエンドモデルを充実させながらボリュームゾーンの在庫を切らさないようにするなど、ほかの地域よりも取り扱う商品に気を配る必要がある」としている。
東京へのアクセスがいいことから、新幹線での通勤などで都心に勤務する市民もいる。「例えばビックカメラであれば、勤務先でも、地元でも購入時にポイントカードを利用している人は多いだろう」として、都心に勤務するお客様の獲得が収益を確保する手段の一つであることを示唆する。
ヤマダ電機LABI1高崎の出店前、市民はロードサイドの郊外店で家電を購入していた。これらの店は価格競争を繰り広げながらも地域密着型で、「お客様が毎日来店して日常会話を交わすなど、店舗のスタッフとお客様との距離が近い。お客様の声をメーカーにフィードバックして、お客様に適した商品が生まれる地域でもある」という。
さらに、駅前の再開発や道路の整備が進んでいることから、「今後、遠方からの来訪者がさらに増える可能性がある。都心に行かなくても、欲しい商品が手に入る地域として、定着していくのではないか」と捉えている。
→群馬県・高崎市(2)に続く(2013年8月28日掲載)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年8月5日付 vol.1492より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは
<街の全体像>
商業の街として位置づけられる高崎市
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県内一の人口に広大な市域
高崎市は、平成の大合併で倉渕村や箕郷町、群馬町、新町、榛名町、吉井町などを編入し、人口が37万5188人、面積が459.41km2と、県内一の人口と広大な市域をもつに至った。県のなかでは、県庁所在地の前橋市が行政の街、高崎市が商業の街として位置づけられる。
住民は、クルマで買い物に出かけることが多い。国道17号をはじめとする基幹路線沿いには、スーパーや飲食店、洋品店、ショッピングモールなど、駐車場を完備した大型のロードサイド店舗が建ち並んでいる。
また、JR高崎駅前は再開発が進み、2010年12月にはJR東日本グループが運営するターミナルビルのイーサイト高崎がオープン。高崎駅東口広場のロータリーのリニューアルや、高崎駅東口を起点とする東口線(東毛広域幹線道路)の拡幅、高崎渋川線バイパスと国道17号線の直結などによって、駅へのアクセスが便利になった。駅周辺は駐車場が充実していることから、ショッピングを目的に多くの地元住民が訪れる。地元住民にとっては、ロードサイドに加えて駅前がショッピングエリアとして位置づけられるようになってきた。
圧倒的な存在感のヤマダ電機
家電量販店では、高崎市に本社を置くヤマダ電機の存在感が最も大きい。ロードサイドに高崎本店の家電館とPC館を出店していたが、2008年7月、JR高崎駅前に大型の都市型店舗、LABI1高崎をオープン。地下2階、地上12階建てのビルで、このうち地下1階から地上4階までが売り場、5階にレストラン街の「LABI takasaki dining」が入る。6階から9階は1000台収容の駐車場で、10~12階はヤマダ電機の本社だ。2階がペデストリアンデッキでJR高崎駅東口と直結している。
売り場面積は、約2万m2と郊外型店舗のテックランドの5~6倍の広さをもち、さらに全国のLABIのなかでも最大規模を誇る。クルマや電車、バスなど、さまざまな手段で訪れることができる利便性によって、平日には、午前中に高齢者、夕方に学生、夜に会社員、休日にはファミリーなどと多くのお客様が来店している。新幹線を使って遠方から訪れるケースもある。
このLABI1高崎の出店は、その集客力で高崎駅前の活性化に大きく貢献している。ヤマダ電機は、LABI1高崎の出店によってテックランド高崎本店の家電館とPC館を閉店したが、高崎市内で、ほかにもテックランド高崎北菅谷店を2012年12月にオープンしており、市内だけでなく前橋市の住民もお客様として獲得している。
ビックカメラもまた、高崎が創業の地。駅前には、その第1号店にあたる高崎東口店を構えている。1978年のオープンと歴史は古く、市内だけでなく、群馬県全域、さらには長野県や栃木県からのお客様も呼び寄せているという。なかには、30年以上の常連客もいるそうだ。
ビックカメラグループのコジマは、国道17号線沿いにNEW高崎店を出店している。この店舗は、規模の拡大を目的として2008年に移転したもので、2011年に、NEW前橋大友店と統合。近隣の住民を固定客として確保している。
高崎市の家電量販店は、ヤマダ電機が2店舗と、ビックカメラとコジマがそれぞれ1店舗。決して多いとはいえないが、隣の前橋市にヤマダ電機が4店舗、ケーズデンキがモール型ショッピングセンターのけやきウォークに出店し、県南部でのシェア争いはほかの地域と比べても激しい状況にある。とくに、価格競争に関しては、他の地域を圧倒している。
ハイエンドモデルが売れる街 特異な地域密着型――クロス 得平 司代表取締役
高崎市の商圏について、クロスの得平司代表取締役は「新幹線の停車駅なので、遠方からの来訪者が比較的多い。軽井沢などリゾート地も商圏で、高所得者が立ち寄る」と分析。ハイエンドモデルがよく売れることから、「各店とも、市の人口の割には高い収益を上げている。県庁所在地以外の地域では珍しい」とみる。
一方、プライスリーダーのヤマダ電機が大きなシェアをもち、価格に対してシビアなお客様が多いという側面もある。「ハイエンドモデルを充実させながらボリュームゾーンの在庫を切らさないようにするなど、ほかの地域よりも取り扱う商品に気を配る必要がある」としている。
東京へのアクセスがいいことから、新幹線での通勤などで都心に勤務する市民もいる。「例えばビックカメラであれば、勤務先でも、地元でも購入時にポイントカードを利用している人は多いだろう」として、都心に勤務するお客様の獲得が収益を確保する手段の一つであることを示唆する。
ヤマダ電機LABI1高崎の出店前、市民はロードサイドの郊外店で家電を購入していた。これらの店は価格競争を繰り広げながらも地域密着型で、「お客様が毎日来店して日常会話を交わすなど、店舗のスタッフとお客様との距離が近い。お客様の声をメーカーにフィードバックして、お客様に適した商品が生まれる地域でもある」という。
さらに、駅前の再開発や道路の整備が進んでいることから、「今後、遠方からの来訪者がさらに増える可能性がある。都心に行かなくても、欲しい商品が手に入る地域として、定着していくのではないか」と捉えている。
→群馬県・高崎市(2)に続く(2013年8月28日掲載)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年8月5日付 vol.1492より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは