<家電激戦区を歩く>茨城県・水戸市(3) 市民性に合った接客とサービス 価格以外の価値の提供
水戸市の家電量販店の多くは、地元のお客様を「内向的」「芯が強い」「気品がある」と表現し、この気質を考えた接客・サービスを心がけている。また、年齢層に合わせて気軽に来店できる環境づくりにも余念がない。ロードサイド店同士の価格競争は激しいが、価格以外の価値=信頼を獲得する競争もすでに始まっている。(取材・文/佐相彰彦)
→茨城県・水戸市(1)から読む
<接客・サービス>
ケーズデンキ水戸内原店の今橋真司店長は、ケーズデンキに入社して10年以上のキャリアをもち、水戸本店をはじめとして茨城の複数店舗で業務に従事した後、約1年半前に水戸内原店を任された。茨城県日立市生まれということもあって、地元を知り尽くしている。「お客様とはウマが合う」と話す今橋店長は、人なつっこい性格を生かして地元住民と信頼関係を深めている。
今橋店長がスタッフを指導する際、必ず口にしているのは、「お客様にファンになってもらおう」ということ。水戸内原店のスタッフは、業務に慣れている40代の中堅が多い。「だからこそ初心を忘れずにお客様に接して、自分のファンになってもらうよう、口をすっぱくして言っている。これが、新たな固定客づくりにつながる」という。
コジマNEW水戸店の成瀬弘憲店長代理は、昨年11月の大規模な店舗改装のときに次長として赴任。ビックカメラと統合したことで、カメラと玩具を充実させる戦略的な改装の指揮を執った。リニューアルオープン後、他店にはない品揃えが注目を集め、来店者が増えた。「今後、駅前のビックカメラ水戸駅店と連携して、グループとして他社のお客様を振り向かせる取り組みを進める」という。
もともと中部地区の店舗でスタッフとして携わっていた成瀬店長代理がみた茨城の県民性は、「内向的だが芯が強い」ということ。スタッフへの指導では、「内側にあるお客様の本当の気持ちを引き出すように、と話している」そうだ。
ビックカメラ水戸駅店の野澤正剛店長代理は、コジマNEW水戸店で業務に従事した経験があり、郊外と駅前の両方を知り尽くした人物だ。野澤店長代理も、「コジマNEW水戸店との連携が、グループとしてのシェア向上につながる」と考えている。ビックカメラ水戸駅店のカメラを熟知したスタッフが、コジマNEW水戸店のスタッフに製品知識や売り方を指導するなど、「パートナーシップを深めている段階」だ。
ヤマダ電機LABI水戸の山上優店長は、テックランド水戸本店に2年ほど勤務し、こちらも駅前と郊外をよく知る人物だ。LABI水戸のオープン時は競合対策室長として戦略を策定し、その経験が買われて昨年2月に店長に就任した。1999年に入社した十年選手で、神奈川の店舗で店長を務めるなど、さまざまなノウハウをもっている。「これまでの経験を生かして、水戸市で都市型店舗を根づかせる」と意気込む。スタッフの指導では、「都市型店舗として、接客時に必ず新しい商品を紹介するよう言っている」という。
【接客】お客様の気持ちを引き出す
水戸市で圧倒的な知名度を誇るケーズデンキは、接客にも定評がある。歴史が古い水戸本店が築いた信頼は揺るぎないものがあるが、田園地帯だったJR内原駅周辺に出店したケーズデンキ水戸内原店も、水戸市民が絶大の信頼を寄せる店舗の一つ。「どのお客様に対しても、まずはわかりやすい説明を重視している」(今橋店長)ことが固定客の確保につながっている。最近では、ウェブで情報を収集してから来店するお客様が多くなっているが、「それでも、搭載している機能で何ができるのか、具体的に生活シーンをイメージできる説明をして、製品のもつ本当の価値を伝えている」という。それには、「お客様が何をしたいのかを、きちんと聞き出すコミュニケーションが重要だ」としている。
コジマNEW水戸店では、入り口近くにお客様案内係を配置。このスタッフは、店内のすべての商品に通じている。お客様案内係は、まずお客様に話しかけて目的の売り場まで誘導。歩きながら、どのような商品を探しているのかを聞き出し、ある程度の用途提案まで行う。コーナーまでご案内したら、担当スタッフにバトンタッチ。担当スタッフは、コーナーで販売している商品の知識に関して深く理解している。「このリレー方式を構築したことによって、実際の販売につながるケースが多くなった」と、成瀬店長代理は自信をみせる。
こうした郊外店の取り組みに対して、駅前店では、郊外に家電を買いに行く市民の購買文化を変えようと動いている。ビックカメラ水戸駅店は、「購入していただいたお客様に必ず名刺を2枚配っている」(野澤店長代理)という。お客様がもう一人のお客様を紹介してくれるというこの作戦は大当たりで、「水戸市は情に厚い方が多く、名刺を持って来店して、そのスタッフを指名してくださるお客様が多い」と、野澤店長代理は成果に満足げな表情をみせる。
もう一つの駅前店、ヤマダ電機LABI水戸では、最近になって近所の会社に勤める社員が多く来店するようになった。「スタッフとお客様のコミュニケーションが活発になっている」(山上店長)という。県内に多い製造工場に海外研修でやってくる外国人もお客様として確保。英会話に堪能なスタッフを多く抱え、「複数言語で接客できるスタッフも揃えている」と強みをアピールする。
【サポート・サービス】配送・設置のサービスがカギに
水戸市の国道6・50号(水戸バイパス)沿いには、ケーズデンキ水戸本店、コジマNEW水戸店、ヤマダ電機テックランド水戸本店が建ち並び、ここで買い回りをするお客様が多い。「お客様が価格にシビアになっている」(コジマNEW水戸店の成瀬店長代理)のが現状。他店よりも安い価格を提示することがあたりまえになっている。しかし、価格競争を繰り広げるだけでは、収益を確保するのは難しい。そこで駅前店・郊外店とも、サポート・サービスの充実によって、価格ではない価値の提供に力を注いでいる。
コジマNEW水戸店では、冷蔵庫であれば400L以上、薄型テレビで50インチ以上など、大型商品が売れる傾向がある。軽トラックで来店して持ち帰るお客様が多いが、高齢者を中心に配送から設置までを依頼してくるケースもある。そこで、「総合サービスカウンターでお客様の要望をしっかりと聞き、対応している」(成瀬店長代理)というきめ細かなサービスで固定客を確保している。
ビックカメラ水戸駅店では、今の時期はエアコンが売れているが、電車を利用して来店するお客様のほとんどが配送から設置までを依頼する。そこで、「お客様がエアコンの工事日を把握できるように、店内で予約状況をモニタで表示している」(野澤店長代理)。お客様は、工事の予約状況によって、購入するタイミングを選択できる。これが「予約販売につながっている」という効果をもたらしている。
→茨城県・水戸市(4)に続く(2013年8月5日掲載)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年7月22日付 vol.1490より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは
→茨城県・水戸市(1)から読む
<接客・サービス>
地元を知る人物が腕を発揮 経験豊富な幹部が揃う
ケーズデンキ水戸内原店の今橋真司店長は、ケーズデンキに入社して10年以上のキャリアをもち、水戸本店をはじめとして茨城の複数店舗で業務に従事した後、約1年半前に水戸内原店を任された。茨城県日立市生まれということもあって、地元を知り尽くしている。「お客様とはウマが合う」と話す今橋店長は、人なつっこい性格を生かして地元住民と信頼関係を深めている。
今橋店長がスタッフを指導する際、必ず口にしているのは、「お客様にファンになってもらおう」ということ。水戸内原店のスタッフは、業務に慣れている40代の中堅が多い。「だからこそ初心を忘れずにお客様に接して、自分のファンになってもらうよう、口をすっぱくして言っている。これが、新たな固定客づくりにつながる」という。
コジマNEW水戸店の成瀬弘憲店長代理は、昨年11月の大規模な店舗改装のときに次長として赴任。ビックカメラと統合したことで、カメラと玩具を充実させる戦略的な改装の指揮を執った。リニューアルオープン後、他店にはない品揃えが注目を集め、来店者が増えた。「今後、駅前のビックカメラ水戸駅店と連携して、グループとして他社のお客様を振り向かせる取り組みを進める」という。
もともと中部地区の店舗でスタッフとして携わっていた成瀬店長代理がみた茨城の県民性は、「内向的だが芯が強い」ということ。スタッフへの指導では、「内側にあるお客様の本当の気持ちを引き出すように、と話している」そうだ。
ビックカメラ水戸駅店の野澤正剛店長代理は、コジマNEW水戸店で業務に従事した経験があり、郊外と駅前の両方を知り尽くした人物だ。野澤店長代理も、「コジマNEW水戸店との連携が、グループとしてのシェア向上につながる」と考えている。ビックカメラ水戸駅店のカメラを熟知したスタッフが、コジマNEW水戸店のスタッフに製品知識や売り方を指導するなど、「パートナーシップを深めている段階」だ。
ヤマダ電機LABI水戸の山上優店長は、テックランド水戸本店に2年ほど勤務し、こちらも駅前と郊外をよく知る人物だ。LABI水戸のオープン時は競合対策室長として戦略を策定し、その経験が買われて昨年2月に店長に就任した。1999年に入社した十年選手で、神奈川の店舗で店長を務めるなど、さまざまなノウハウをもっている。「これまでの経験を生かして、水戸市で都市型店舗を根づかせる」と意気込む。スタッフの指導では、「都市型店舗として、接客時に必ず新しい商品を紹介するよう言っている」という。
【接客】お客様の気持ちを引き出す
お客様がお客様を紹介
水戸市で圧倒的な知名度を誇るケーズデンキは、接客にも定評がある。歴史が古い水戸本店が築いた信頼は揺るぎないものがあるが、田園地帯だったJR内原駅周辺に出店したケーズデンキ水戸内原店も、水戸市民が絶大の信頼を寄せる店舗の一つ。「どのお客様に対しても、まずはわかりやすい説明を重視している」(今橋店長)ことが固定客の確保につながっている。最近では、ウェブで情報を収集してから来店するお客様が多くなっているが、「それでも、搭載している機能で何ができるのか、具体的に生活シーンをイメージできる説明をして、製品のもつ本当の価値を伝えている」という。それには、「お客様が何をしたいのかを、きちんと聞き出すコミュニケーションが重要だ」としている。
安定感のあるケーズデンキ水戸内原店の接客
コジマNEW水戸店では、入り口近くにお客様案内係を配置。このスタッフは、店内のすべての商品に通じている。お客様案内係は、まずお客様に話しかけて目的の売り場まで誘導。歩きながら、どのような商品を探しているのかを聞き出し、ある程度の用途提案まで行う。コーナーまでご案内したら、担当スタッフにバトンタッチ。担当スタッフは、コーナーで販売している商品の知識に関して深く理解している。「このリレー方式を構築したことによって、実際の販売につながるケースが多くなった」と、成瀬店長代理は自信をみせる。
こうした郊外店の取り組みに対して、駅前店では、郊外に家電を買いに行く市民の購買文化を変えようと動いている。ビックカメラ水戸駅店は、「購入していただいたお客様に必ず名刺を2枚配っている」(野澤店長代理)という。お客様がもう一人のお客様を紹介してくれるというこの作戦は大当たりで、「水戸市は情に厚い方が多く、名刺を持って来店して、そのスタッフを指名してくださるお客様が多い」と、野澤店長代理は成果に満足げな表情をみせる。
もう一つの駅前店、ヤマダ電機LABI水戸では、最近になって近所の会社に勤める社員が多く来店するようになった。「スタッフとお客様のコミュニケーションが活発になっている」(山上店長)という。県内に多い製造工場に海外研修でやってくる外国人もお客様として確保。英会話に堪能なスタッフを多く抱え、「複数言語で接客できるスタッフも揃えている」と強みをアピールする。
ヤマダ電機LABI水戸では駅前周辺に勤める会社員が気軽に来店してスタッフに質問している
【サポート・サービス】配送・設置のサービスがカギに
設置工事の予約表示で販売増
水戸市の国道6・50号(水戸バイパス)沿いには、ケーズデンキ水戸本店、コジマNEW水戸店、ヤマダ電機テックランド水戸本店が建ち並び、ここで買い回りをするお客様が多い。「お客様が価格にシビアになっている」(コジマNEW水戸店の成瀬店長代理)のが現状。他店よりも安い価格を提示することがあたりまえになっている。しかし、価格競争を繰り広げるだけでは、収益を確保するのは難しい。そこで駅前店・郊外店とも、サポート・サービスの充実によって、価格ではない価値の提供に力を注いでいる。
コジマNEW水戸店では、冷蔵庫であれば400L以上、薄型テレビで50インチ以上など、大型商品が売れる傾向がある。軽トラックで来店して持ち帰るお客様が多いが、高齢者を中心に配送から設置までを依頼してくるケースもある。そこで、「総合サービスカウンターでお客様の要望をしっかりと聞き、対応している」(成瀬店長代理)というきめ細かなサービスで固定客を確保している。
コジマNEW水戸店では総合サービスカウンターで問い合わせに対応
ビックカメラ水戸駅店では、今の時期はエアコンが売れているが、電車を利用して来店するお客様のほとんどが配送から設置までを依頼する。そこで、「お客様がエアコンの工事日を把握できるように、店内で予約状況をモニタで表示している」(野澤店長代理)。お客様は、工事の予約状況によって、購入するタイミングを選択できる。これが「予約販売につながっている」という効果をもたらしている。
ビックカメラ水戸駅店ではエアコンの工事日が購入前にわかる
→茨城県・水戸市(4)に続く(2013年8月5日掲載)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年7月22日付 vol.1490より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは