<家電激戦区を歩く>茨城県・水戸市(1) ロードサイドで激しい競争 駅前を家電の街にする動きも
茨城県水戸市は、家電量販店やパソコン専門店の出店が10店舗未満と、ほかの地方都市に比べて出店数が少ない。しかし、ロードサイドでは、地元を本拠地とするケーズデンキのほか、ヤマダ電機、コジマなどが激しい戦いを繰り広げている。また、JR水戸駅前も、ヤマダ電機やビックカメラの出店によって、徐々に変わりつつある。水戸市は、郊外店が圧倒的に強いのが現状だが、駅前店舗の発展によって勢力図が大きく変わる可能性がある。(取材・文/佐相彰彦)
<街の全体像>
水戸市は、人口約27万人のうち60歳以上が3割程度と、関東地方のなかでも高齢化が進んでいる地域の一つだ。水戸駅の北側には水戸城があって、江戸時代に城下町だった城東や三の丸、本町には古くからの住民が多い。南側は新興住宅地になっている。水戸市は鉄道やバスの交通網があまり発達していないため、生活はクルマに支えられている。国道6・50号(水戸バイパス)沿いには多くの店が建ち並び、ショッピングエリアになっている。
家電量販店も、この水戸バイパス沿いに多い。水戸を本拠地とするケーズデンキは、国道6号と国道50号が交差する酒門町の交差点に戦略店舗のケーズデンキ水戸本店を構える。ここは他社の店舗よりも歴史が古く、アフターサービスを重視するケーズデンキのコンセプトなども奏功して、水戸市民の絶対的な信頼を獲得している。平日・休日を問わず近くの住民が頻繁に来店し、休日には遠方からファミリーが訪れる。またケーズデンキは、常磐自動車道水戸ICから2kmほどの田園地帯にオープンしたイオンモール水戸内原の近くにケーズデンキ水戸内原店を構えている。大型ショッピングモールが近くにあることによって、こちらも市外からのファミリー層を多く獲得している。
ヤマダ電機は、2001年にケーズデンキ水戸本店から2kmほど離れた国道50号沿いにテックランド水戸本店をオープン。当初はケーズデンキの圧倒的な存在感に苦戦を強いられたが、10年以上が経過した今では、ポイント還元による割引や値引き戦略が浸透して、ファミリーを中心に固定客を確保している。その目と鼻の先には、コジマのNEW水戸店があり、テックランド水戸本店と品揃えや価格などで競争を繰り広げている。この戦いは、ケーズデンキ水戸本店を意識したものでもある。
国道50号と県道59号が交差する河和田町南の交差点近くには、ピーシーデポコーポレーションがPC DEPOT水戸店を構える。市内に数少ないパソコン専門店であることと、ケーズデンキ水戸本店内にショップ・イン・ショップを展開している知名度の高さなどから、とくに茨城県庁より西に住む市民の多くが、「パソコンならまずPC DEPOTに行く」という人気店になっている。
クルマ社会の水戸市は、JR水戸駅周辺に百貨店がなく、ショッピングで駅に訪れる市民は少なかった。ところが、駅前に家電量販店が進出したことで、徐々にではあるが、家電購入のために訪れる人が多くなりつつある。
最初に駅前に出店したのはヤマダ電機で、2008年11月にLABI水戸をオープン。次はビックカメラで、2011年6月に水戸駅店をオープンした。
ヤマダ電機LABI水戸が複合商業施設の水戸サウスタワー内の地上3~7階、ビックカメラ水戸駅店が駅ビルのエクセルみなみ内で地上4~5階と、多層階の展開による商品の見やすさで郊外店と差異化を図っている。また、近くに提携駐車場を確保したことで、家電量販店の出店が少ないJR水戸駅の北側に住む住民が、わざわざ南側の水戸バイパスまで行かずに駅前で買い物を済ませるケースが多くなっている。
さらに、電車で通学する高校生や大学生が、学校の帰りに立ち寄ることも多くなった。水戸駅周辺には高校が7校、大学が3校あり、最近は専門学校も増えている。10代後半から20代前半の彼らがお客様となっていることもあって、平日の夕方は店内が若者で賑わいをみせ、活気に溢れている。
水戸市について、クロスの得平司代表取締役は、「クルマ社会なので、郊外店舗が圧倒的に強い状況にある」という。しかも、地価が安く、郊外店舗のほうが利益を上げやすい。「駅前店舗は、いかに郊外店とは異なったビジネスモデルを構築できるかが重要になってくる」としている。
また、「高齢化が進んでいるので、行政、医療、教育、交通の機能を中心部に集積した『コンパクトシティ』が必要なのではないか」と分析。家電量販店もビジネスモデルを見直す必要があるという。例えば、ケーズデンキが家電に特化し、ヤマダ電機が住宅やリフォームなどの業態の拡大と、それぞれ異なったモデルになりつつある。そのなかで水戸市では、「高齢者のご用聞きのような存在になるべき」と指摘する。
具体的には、駅前やロードサイドに大規模な店舗を構えるスタイルもいいが、加えてこぢんまりとしたコンパクトな店舗で、あまり商品を置かずにお客様がくつろげる場を提供することや、お客様の家を訪問して電球や電池などの消耗品を定期的に届けるなど、地域に密着したサービスの提供、団塊世代による再雇用問題の解決に向けて、店舗スタッフとしてメーカーや家電量販店のOBを配置するなどを挙げている。
さらには「業態改革も必要になってきているのではないか」という。これまで家電量販店は、規模の拡大に力を入れてきた。業界再編の動きもあるが、「今後は規模の大きさを追求するだけでなく、質の高さを向上していくことが収益を増やすうえでカギを握ることになるだろう」としている。
→茨城県・水戸市(2)に続く(2013年7月22日掲載)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年7月8日付 vol.1488より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは
<街の全体像>
クルマ社会の水戸市
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水戸バイパスが買い物エリア
水戸市は、人口約27万人のうち60歳以上が3割程度と、関東地方のなかでも高齢化が進んでいる地域の一つだ。水戸駅の北側には水戸城があって、江戸時代に城下町だった城東や三の丸、本町には古くからの住民が多い。南側は新興住宅地になっている。水戸市は鉄道やバスの交通網があまり発達していないため、生活はクルマに支えられている。国道6・50号(水戸バイパス)沿いには多くの店が建ち並び、ショッピングエリアになっている。
家電量販店も、この水戸バイパス沿いに多い。水戸を本拠地とするケーズデンキは、国道6号と国道50号が交差する酒門町の交差点に戦略店舗のケーズデンキ水戸本店を構える。ここは他社の店舗よりも歴史が古く、アフターサービスを重視するケーズデンキのコンセプトなども奏功して、水戸市民の絶対的な信頼を獲得している。平日・休日を問わず近くの住民が頻繁に来店し、休日には遠方からファミリーが訪れる。またケーズデンキは、常磐自動車道水戸ICから2kmほどの田園地帯にオープンしたイオンモール水戸内原の近くにケーズデンキ水戸内原店を構えている。大型ショッピングモールが近くにあることによって、こちらも市外からのファミリー層を多く獲得している。
ヤマダ電機は、2001年にケーズデンキ水戸本店から2kmほど離れた国道50号沿いにテックランド水戸本店をオープン。当初はケーズデンキの圧倒的な存在感に苦戦を強いられたが、10年以上が経過した今では、ポイント還元による割引や値引き戦略が浸透して、ファミリーを中心に固定客を確保している。その目と鼻の先には、コジマのNEW水戸店があり、テックランド水戸本店と品揃えや価格などで競争を繰り広げている。この戦いは、ケーズデンキ水戸本店を意識したものでもある。
国道50号と県道59号が交差する河和田町南の交差点近くには、ピーシーデポコーポレーションがPC DEPOT水戸店を構える。市内に数少ないパソコン専門店であることと、ケーズデンキ水戸本店内にショップ・イン・ショップを展開している知名度の高さなどから、とくに茨城県庁より西に住む市民の多くが、「パソコンならまずPC DEPOTに行く」という人気店になっている。
駅前で北側の住民を食い止める
クルマ社会の水戸市は、JR水戸駅周辺に百貨店がなく、ショッピングで駅に訪れる市民は少なかった。ところが、駅前に家電量販店が進出したことで、徐々にではあるが、家電購入のために訪れる人が多くなりつつある。
最初に駅前に出店したのはヤマダ電機で、2008年11月にLABI水戸をオープン。次はビックカメラで、2011年6月に水戸駅店をオープンした。
ヤマダ電機LABI水戸が複合商業施設の水戸サウスタワー内の地上3~7階、ビックカメラ水戸駅店が駅ビルのエクセルみなみ内で地上4~5階と、多層階の展開による商品の見やすさで郊外店と差異化を図っている。また、近くに提携駐車場を確保したことで、家電量販店の出店が少ないJR水戸駅の北側に住む住民が、わざわざ南側の水戸バイパスまで行かずに駅前で買い物を済ませるケースが多くなっている。
さらに、電車で通学する高校生や大学生が、学校の帰りに立ち寄ることも多くなった。水戸駅周辺には高校が7校、大学が3校あり、最近は専門学校も増えている。10代後半から20代前半の彼らがお客様となっていることもあって、平日の夕方は店内が若者で賑わいをみせ、活気に溢れている。
量販店の業態変革が必要 高齢者のご用聞きになれ ――クロス 得平 司代表取締役
水戸市について、クロスの得平司代表取締役は、「クルマ社会なので、郊外店舗が圧倒的に強い状況にある」という。しかも、地価が安く、郊外店舗のほうが利益を上げやすい。「駅前店舗は、いかに郊外店とは異なったビジネスモデルを構築できるかが重要になってくる」としている。
また、「高齢化が進んでいるので、行政、医療、教育、交通の機能を中心部に集積した『コンパクトシティ』が必要なのではないか」と分析。家電量販店もビジネスモデルを見直す必要があるという。例えば、ケーズデンキが家電に特化し、ヤマダ電機が住宅やリフォームなどの業態の拡大と、それぞれ異なったモデルになりつつある。そのなかで水戸市では、「高齢者のご用聞きのような存在になるべき」と指摘する。
具体的には、駅前やロードサイドに大規模な店舗を構えるスタイルもいいが、加えてこぢんまりとしたコンパクトな店舗で、あまり商品を置かずにお客様がくつろげる場を提供することや、お客様の家を訪問して電球や電池などの消耗品を定期的に届けるなど、地域に密着したサービスの提供、団塊世代による再雇用問題の解決に向けて、店舗スタッフとしてメーカーや家電量販店のOBを配置するなどを挙げている。
さらには「業態改革も必要になってきているのではないか」という。これまで家電量販店は、規模の拡大に力を入れてきた。業界再編の動きもあるが、「今後は規模の大きさを追求するだけでなく、質の高さを向上していくことが収益を増やすうえでカギを握ることになるだろう」としている。
→茨城県・水戸市(2)に続く(2013年7月22日掲載)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年7月8日付 vol.1488より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは