BCN発表、デフレを脱却したデジタル家電、価格勝負ではない需要の喚起が課題に
BCNは、7月10日、記者発表会を開催し、全国の家電量販店・ネット販売店の実売データを集計した「BCNランキング」データをもとに、「デフレ脱却したデジタル家電――その裏側とは?」のテーマで、PC・デジタル家電市場の最新動向と今後の展望について解説した。
PC・デジタル家電の価格が上昇している。薄型テレビは、2012年3月以降、価格が上昇に転じ、平均価格は5万~6万円で推移。大型化の進行や型落ち製品の大量販売の減少がこの要因となった。ノートPCとデスクトップPCを合算したPC全体も、Windows 8の発売やタッチパネルモデルの増加、ウルトラブックの販売構成比率の高まりなどで価格が回復。部材コストの上昇も影響している。デジタルカメラ(全体)は、コンパクトの価格下落が落ち着いたことと、レンズ交換型が伸びたことで、6月の平均単価は過去3年で最高の3万1000円になった。
しかし、PC・デジタル家電の販売は伸び悩んでいる。最悪期を脱したとはいえ、ほとんどの製品がいまだ苦境にあり、とくにPCの販売台数・金額は大幅な落ち込みから立ち直っていない。道越一郎エグゼクティブアナリストは、「出口が見えない。需要によって価格が上昇しているわけではない。市場はまだまだ脆弱で、不況下の物価上昇、いわゆるスタグフレーションの恐れも出てきた。いかに需要を喚起しながら価格を上げていくかが当面の課題だ」と指摘した。
急激な価格下落が続いていた薄型テレビは、12年3月を底値に価格が上昇した。4万3100円だった平均単価は、今年6月には5万7500円と33.4%伸びた。この背景にあるのが大型化だ。40型以上が初めて3割を超え、平均インチは過去最大の32.8に達した。6月時点のメーカー別販売台数シェアは、シャープが43.7%でトップ。これに17.2%の東芝、14.6%のパナソニック、7.3%のソニーが続く。レコーダーも、テレビほどではないものの、価格は徐々に回復している。
PCは、今年に入ってから価格が急上昇。新OSのWindows 8が発売された12年10月を基点にすると、6月の平均単価は23.0%上昇して8万3400円になった。12年10月には1.4%しかなかったタッチパネルモデルの販売台数構成比が2割強にまで高まったことが、平均単価を押し上げた一因だ。森英二アナリストは、「Windows 8発売当初、タッチパネルを搭載しているのはハイエンドモデルだけだったが、徐々にローエンドモデルにも採用されるようになった」として、タッチ対応モデルと非対応モデルとの価格差が縮まっていることも、タッチパネルモデルの普及を支えていると説明した。
ウルトラブックの販売が伸びたことも、平均単価上昇の要因の一つだ。ウルトラブックは、今年に入って販売構成比率がPC全体の約1割を占めるまでに拡大。平均単価は国内勢が約10万円で、海外勢は約6万~8万円。販売台数シェアは、国内勢のほうが高い。なかでもソニーが32.5%のシェアを握り、独走態勢に入っている。
HDDは、タイ洪水の影響を受けた一時の値上げを経て、再び価格の上昇局面に入っている。今年1月から6月で、平均単価は12.9%上昇した。森アナリストは、「大容量化が上昇の大きな要因。12年夏頃から、3TBモデルの販売が増加している」と説明した。
デジタルカメラは、12年1月を基点に平均単価が60.9%上昇。今年6月の平均単価は3万1700円だった。「高級指向がかなり明確になっている。画素数やセンサのサイズなどで高級化が進んでいる」(道越エグゼクティブアナリスト)。画素数帯別の販売台数構成比をみると、1800万画素以上が2割を突破。販売台数は前年割れのままだが、金額では回復が進んだ。とくに高価格の一眼レフカメラが好調で、12年12月以降、毎月2ケタ成長が続いている。
価格上昇に需要が伴わない――。メーカーは難しい舵取りを迫られている。こうした状況に対して、道越エグゼクティブアナリストは、「これまでは価格で需要を喚起してきたが、それだけでは売上げを伸ばせなくなりつつある。本質的な価値の再定義がポイントになってくる」と指摘。デジタル製品が生み出す夢や新たなライフスタイルなど、「価値による需要創造」の重要性を説いた。
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。なお、記事中の平均単価はすべて税抜きの金額です。
PC・デジタル家電の価格が上昇している。薄型テレビは、2012年3月以降、価格が上昇に転じ、平均価格は5万~6万円で推移。大型化の進行や型落ち製品の大量販売の減少がこの要因となった。ノートPCとデスクトップPCを合算したPC全体も、Windows 8の発売やタッチパネルモデルの増加、ウルトラブックの販売構成比率の高まりなどで価格が回復。部材コストの上昇も影響している。デジタルカメラ(全体)は、コンパクトの価格下落が落ち着いたことと、レンズ交換型が伸びたことで、6月の平均単価は過去3年で最高の3万1000円になった。
しかし、PC・デジタル家電の販売は伸び悩んでいる。最悪期を脱したとはいえ、ほとんどの製品がいまだ苦境にあり、とくにPCの販売台数・金額は大幅な落ち込みから立ち直っていない。道越一郎エグゼクティブアナリストは、「出口が見えない。需要によって価格が上昇しているわけではない。市場はまだまだ脆弱で、不況下の物価上昇、いわゆるスタグフレーションの恐れも出てきた。いかに需要を喚起しながら価格を上げていくかが当面の課題だ」と指摘した。
各ジャンル(薄型テレビ・PC・デジタルカメラ)のトピックス
急激な価格下落が続いていた薄型テレビは、12年3月を底値に価格が上昇した。4万3100円だった平均単価は、今年6月には5万7500円と33.4%伸びた。この背景にあるのが大型化だ。40型以上が初めて3割を超え、平均インチは過去最大の32.8に達した。6月時点のメーカー別販売台数シェアは、シャープが43.7%でトップ。これに17.2%の東芝、14.6%のパナソニック、7.3%のソニーが続く。レコーダーも、テレビほどではないものの、価格は徐々に回復している。
PCは、今年に入ってから価格が急上昇。新OSのWindows 8が発売された12年10月を基点にすると、6月の平均単価は23.0%上昇して8万3400円になった。12年10月には1.4%しかなかったタッチパネルモデルの販売台数構成比が2割強にまで高まったことが、平均単価を押し上げた一因だ。森英二アナリストは、「Windows 8発売当初、タッチパネルを搭載しているのはハイエンドモデルだけだったが、徐々にローエンドモデルにも採用されるようになった」として、タッチ対応モデルと非対応モデルとの価格差が縮まっていることも、タッチパネルモデルの普及を支えていると説明した。
ウルトラブックの販売が伸びたことも、平均単価上昇の要因の一つだ。ウルトラブックは、今年に入って販売構成比率がPC全体の約1割を占めるまでに拡大。平均単価は国内勢が約10万円で、海外勢は約6万~8万円。販売台数シェアは、国内勢のほうが高い。なかでもソニーが32.5%のシェアを握り、独走態勢に入っている。
HDDは、タイ洪水の影響を受けた一時の値上げを経て、再び価格の上昇局面に入っている。今年1月から6月で、平均単価は12.9%上昇した。森アナリストは、「大容量化が上昇の大きな要因。12年夏頃から、3TBモデルの販売が増加している」と説明した。
デジタルカメラは、12年1月を基点に平均単価が60.9%上昇。今年6月の平均単価は3万1700円だった。「高級指向がかなり明確になっている。画素数やセンサのサイズなどで高級化が進んでいる」(道越エグゼクティブアナリスト)。画素数帯別の販売台数構成比をみると、1800万画素以上が2割を突破。販売台数は前年割れのままだが、金額では回復が進んだ。とくに高価格の一眼レフカメラが好調で、12年12月以降、毎月2ケタ成長が続いている。
価格上昇に需要が伴わない――。メーカーは難しい舵取りを迫られている。こうした状況に対して、道越エグゼクティブアナリストは、「これまでは価格で需要を喚起してきたが、それだけでは売上げを伸ばせなくなりつつある。本質的な価値の再定義がポイントになってくる」と指摘。デジタル製品が生み出す夢や新たなライフスタイルなど、「価値による需要創造」の重要性を説いた。
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。なお、記事中の平均単価はすべて税抜きの金額です。