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<家電激戦区を歩く>北海道・札幌市(4) ベテランが提供する「わかりやすさ」 「安心感」もポイントに

特集

2013/07/08 11:34

 デジタル家電の売れ行きには、カテゴリごとに好不調の波がある。絶好調だった2011年の薄型テレビのように、黙っていても売れていくときはいいのだが、逆に需要が縮小したときにその商品をどうやって販売していくのかは、販売店の真価が問われるところだ。札幌市では、あえて現在需要が伸び悩んでいるパソコン、レコーダー、インクジェットプリンタについて聞いた。他地域同様、市内の販売店も苦戦を強いられているが、それでもさまざまな工夫で状況を打破しようとしている。(取材・文/佐相彰彦)

→北海道・札幌市(1)から読む

<売れ筋商品>

【パソコン】
高性能をアピールポイントに 自作パソコンの魅力を伝える



 パソコンの販売は、商品自体のコモディティ(日用品)化やタブレット端末などライバルの登場によって、厳しい状況に置かれている。しかし、パソコンが主力商材の専門店は、需要の不振を嘆いている暇はない。札幌市の主要パソコン専門店は、巻き返しに向けてあの手この手で購入を促している。

 パソコン工房イオンタウン平岡店は、500円の料金で手軽にパソコンを診断する「ワンコイン診断」が好調。サービスを利用したお客様がパソコンを買い替える際に同店で購入するというサイクルを構築しつつある。石川雅洋店長は、「パソコンのトラブルで訪れたお客様が、オリジナルパソコンの価格と性能に魅力を感じてくださっている」と自負する。販売しているパソコンはBTO(受注生産)で、カスタマイズに対応していることもお客様の購入意欲をかき立てている。また、グループ会社のマウスコンピューターが販売しているiiyama製の液晶モニタは「画面の鮮やかさで評価が高く、セットで購入するお客様が多い」という。

パソコン工房イオンタウン平岡店はグループ会社のマウスコンピュータが販売するiiyamaブランドの液晶ディスプレイを揃えて差異化

パソコン工房イオンタウン平岡店はグループ会社のマウスコンピュータが販売するiiyamaブランドの液晶ディスプレイを揃えて差異化

 DEPOツクモ札幌駅前店では、親子で参加する組立てパソコン教室を不定期で開催している。「これで自作パソコンユーザーの獲得に成功した」と、河野盛男店長は満足げだ。1990年台後半から2000年代前半のパソコン全盛期にマニアだった20歳前後の男性は、現在は父親世代。ここをターゲットにしたことが功を奏したようだ。また、「予算に応じて、完成品よりも高性能の一台が手に入るという組立てパソコンの魅力を理解していただけている」という。

組立てセットなどの自作パソコンをアピールするDEPOツクモ札幌駅前店

組立てセットなどの自作パソコンをアピールするDEPOツクモ札幌駅前店

 ゲームユーザーの来店が多いドスパラ札幌店では、3枚のディスプレイを使ってゲームを実演。「マルチディスプレイ環境で常に最新のゲームを動かしているので、お客様が立ち止まってくださる」と、鈴木基希店長は自信をみせる。これがオリジナルパソコン「GALLERIA(ガレリア)」のアピールにつながり、「高性能なのに低価格ということで、販売は好調」という。

ドスパラ札幌店ではマルチディスプレイで楽しむゲームをアピール

ドスパラ札幌店ではマルチディスプレイで楽しむゲームをアピール

【レコーダー】
テレビ需要が販売のカギ 全番組録画の提案も



 地上デジタル放送移行から2年。爆発的に普及した薄型テレビには、まだ買い替え期のピークは訪れていない。薄型テレビの販売縮小は、周辺機器のレコーダーにも大きな影響を与えている。この状況を打破するため家電量販店は、この2年ほどで大きく進化したレコーダー自体の魅力を伝えるとともに、大型テレビを訴求してセットで購入してもらうなどの戦略で臨んでいる。

 ヨドバシカメラマルチメディア札幌では、レコーダーの販売実績トップ3を広いスペースを使って展示。売れている理由や使いやすい機能などを紹介している。また、札幌市の住宅が首都圏より広く、「60インチ以上の大画面テレビが売れ始めている」(千田卓副店長)ことから、お客様にレコーダーの機種や購入時期などを聞いて、買い替えを提案。「新しいレコーダーのほうが使い勝手がいいと説明している」そうだ。

広いスペースで売れ筋上位3製品の購入をアピールするヨドバシカメラマルチメディア札幌

広いスペースで売れ筋上位3製品の購入をアピールするヨドバシカメラマルチメディア札幌

 ヤマダ電機テックランド札幌本店は、民放など全番組の録画に対応した大容量レコーダーの販売に力を入れている。共働き世帯が多い札幌市の地域性を生かして、「忙しくても全番組を録画しておけば、いつでも好きな番組を視聴できると提案している」(谷正彦副店長)という。

ヤマダ電機テックランド札幌本店では全番組を録画できる大容量モデルが売れ始めている

ヤマダ電機テックランド札幌本店では全番組を録画できる大容量モデルが売れ始めている

 コジマNEWイオン西岡店では、「本来、薄型テレビの買い替えを促すことがレコーダーの販売につながるのだが、現段階で有効な策があるというわけではない」(相澤雅巳店長)と打ち明ける。しかしそれでも、今話題の4Kテレビを「大画面のテレビは画質のアラが目立つ。4Kテレビなら、現行の放送でもきれいに見えると提案している。『4K Ready』を訴えながら、レコーダーの買い替えも促している」とのことだ。

コジマNEWイオン西岡店のレコーダー販売は薄型テレビの売れ行きと比例

コジマNEWイオン西岡店のレコーダー販売は薄型テレビの売れ行きと比例

【インクジェットプリンタ】
デジカメとのセット提案 プリントサービスが充実



 スマートフォンの普及で、デジタル写真人口は確実に増えている。しかし、スマートフォンでの撮影はFacebookなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)にアップロードして共有することが多い。コミュニケーションの手段が多様化したことで、年賀状を出す人も減っている状況だ。インクジェットプリンタが活躍する場面は、どんどん少なくなっている。

 しかし、「デジタルカメラで撮影した写真をきれいにプリントで残したい」という人はまだ多い。ヨドバシカメラマルチメディア札幌では、カメラへのこだわりをもつ上級者が多く来店。「こうした方は印刷にもこだわって、高機能のインクジェットプリンタを購入される」(千田副店長)という。

プリントにこだわるデジカメユーザーを確保するヨドバシカメラマルチメディア札幌

プリントにこだわるデジカメユーザーを確保するヨドバシカメラマルチメディア札幌

 主婦の来店が多いコジマNEWイオン西岡店では、フォトプリンタを勧めている。母親が、運動会などのイベントで子どもや子どもの友人を撮影して、そのお母さんに写真を渡すなど、ちょっとしたコミュニケーションにフォトプリンタが活躍する。「省スペースで手軽に印刷できることを訴えて購入につなげている」(相澤店長)という。

コジマNEWイオン西岡店では主婦層が手軽に使えるフォトプリンタが人気

コジマNEWイオン西岡店では主婦層が手軽に使えるフォトプリンタが人気

 ビックカメラ札幌店でも、ヨドバシカメラと同様、「デジタル一眼レフやミラーレス一眼を使っていらっしゃるお客様が、美しいプリントを求めてインクジェットプリンタを購入される」(五十嵐英樹副店長)。また、同店の主要客層である学生は、店内に設置したセルフプリントサービスをよく利用しているという。商品だけでなく、店内のサービスを充実することによって、お客様の来店を促している代表例だ。

学生は家電量販店のセルフプリントサービスを使う傾向が高い

学生は家電量販店のセルフプリントサービスを使う傾向が高い(写真はビックカメラ札幌店)

アナリストに聞く「売れる理由」



道越一郎エグゼクティブアナリスト

道越一郎エグゼクティブアナリスト
 パソコンは、今年5月に販売台数で前年同月比104.6%、販売金額で99.1%だった。金額がそれほど落ちていないのは、タブレット端末の増加が支えているから。デスクトップとノートは依然として厳しい。5月はデスクトップが台数で67.8%、金額で76.2%、ノートが台数で81.0%、金額で93.4%だった。インターネット閲覧とメールだけというライトユーザーは、タブレット端末に移行している。

 4Kテレビの登場によってレコーダーも売れるのでは、という期待はあるが、まだ4Kコンテンツが配信されていないこと、家電量販店が4Kではない高画質の部分を訴えていること、次世代ハイビジョン規格がまだ定まっていないことなどを踏まえると、まだしばらく厳しい状況が続きそうだ。ただ、インターネットとの接続によって、テレビ番組を録画するだけではない、これまでとは異なった使い方が出てくれば、買い替えが促進される可能性はある。

 インクジェットプリンタは、印刷技術が進化し、オフィスでも使えるようになっている。4色でもきれいに印刷できることから、インクの数が少ないモデルが売れ始めているのが今の流れだ。ただし、スマートフォンとの連携など、ユーザーが新機能を利用しているかといえば、無線LANによる印刷以外はまだまだの状況だ。

家電激戦区「札幌市」を歩いて



 札幌市は、札幌駅前の都市再開発によって、家電量販店が新たな賑わいを創出している。全国の政令指定都市で第4位の人口を抱えるだけに、まだまだポテンシャルはある。他地域と同様、郊外では近隣の住民をリピーターとして確保している。市外からの人口流入があることから、郊外の家電量販店も新たなお客様を獲得しやすい状況だ。市内に10店舗を構えるヤマダ電機と郊外を中心に出店を進めるケーズデンキの競争は、ますます激しくなる。


※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年7月1日付 vol.1487より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは