<家電激戦区を歩く>宮城・仙台市(3) 仙台ならではの人材や接客 東北人の気質に合わせて対応
東北地方の人々は、関東人や関西人に比べるとがまん強く、寡黙というイメージがある。仙台の取材でも、多くの家電量販店から「スタッフに話しかけるお客様が少ない」という声が聞かれた。そんなことから、市内の量販店やパソコン専門店では、幹部に地元に精通した人材を配置し、店内でお客様との距離を縮める活動に力を入れている。サポートサービスに関しては、他店との差異化を図るための取り組みを積極的に行っている。(取材・文/佐相彰彦)
→宮城・仙台市(1)から読む
<接客・サービス>
家電量販店は、旗艦店や主要店舗には、さまざまな店舗を経験した人材を店長に据えることが多い。仙台市の店舗でも、ベテランで、しかも東北地方を知り尽くした人材が店長として手腕を振るう。
ヨドバシカメラマルチメディア仙台の下戸正己店長は、北海道や東京・町田の店舗など、20年のキャリアをもつ。さまざまな地域を経験した下戸店長からみた仙台市民の気質は、「ほかの地域と比べると、おとなしい」。お客様とのコミュニケーションのきっかけをつくるために、各フロアでデモコーナーを充実させた。その結果、お客様の商品理解を促進するだけでなく、スタッフとのやり取りが活発になった。「実際に体験してもらって、スタッフの話も聞いてもらうことで、お客様に納得していただく」というのが下戸店長のモットーだ。
ヤマダ電機LABI仙台の小林義人店長は、北海道・東北地区の多くの店舗で立ち上げに携わった。東北全体の売上拡大を見据える小林店長が描くのは、「LABI仙台を中心として、東北全体の当社の店舗が連携することによるシェア拡大」だ。
ケーズデンキ仙台西店の西田中耕治店長は、26年のキャリアのうち、これまで福島市や郡山市、南相馬市、会津若松市など、福島県の店舗での経験が長い。仙台市では、仙台北店や仙台南店を経験し、昨年10月に仙台西店の店長に就任した。自身が青森県八戸市出身で、東北での勤務経験が長い西田中店長からみた仙台市民は、「お客様が納得のいく最適な商品が見つかるまで妥協しない」ということ。妥協を許さず、しかも価格にもシビアなお客様を固定客として確保するために、常に試行錯誤している状況だという。
コジマNEW泉中央店の横山晃央店長は、約5年前に店長に就任。これまで北海道や青森県、岩手県、福島県の店舗を経験している。「さまざまな店舗のノウハウを生かしながら、高級住宅地である泉中央の地域性に適した店づくりに力を入れている」という。
ユニットコムの佐藤隆志氏は、仙台市出身でTWOTOP仙台店の立ち上げに関わった人物だ。今は仙台エリアマネージャーとして、TWOTOPと郊外のパソコン工房とを連携させた地域戦略による売上拡大を目指して、「仙台駅前のTWOTOPをアンテナショップに位置づけて、市内全体で売り上げを拡大していく」方針だ。
ドスパラ仙台店の新見克也店長は、広島県や山口県など西日本での経験が長く、他店舗の店長と比べると異色の存在だ。2008年に仙台店の店長に就任して、「接客の強化など、これまで仙台店にはなかった要素を取り込むことに力を入れてきた」という。また、仙台駅東口の再開発によって街が変わっていくことから、「仙台は、さらに集客力が高まる街になる。誰もが気軽に来店できる環境づくりなどで対応する」と意気込む。
【接客】
スタッフに話しかけてくるお客様が少ないからといって、むやみに店員から話しかけてお客様から敬遠されてしまうのは、販売機会の損失につながる。仙台市の店舗では、話しかけることの少ないお客様が違和感をもたずに店員の話を聞いてくれる接客に力を注いでいる。
ヨドバシカメラマルチメディア仙台では、商品の機能や用途など知識を高めていく教育はもちろんだが、「お客様に恥をかかせない接客を常に意識している」(下戸店長)という。「インターネットで情報を収集するのがあたりまえの時代になって、商品に関しては詳しいお客様が多い。そんなお客様にスタッフが『自分のほうが詳しいから』と知識をひけらかすのはよくない」と考えているのだ。お客様の話を聞くことに専念し、質問されれば的確に応える。駅前店ということで、「これは、さまざまな層に対応する接客手法」とアピールする。
ヤマダ電機LABI仙台では、「お客様が身構えずにコミュニケーションできるよう、接客にあまり時間をかけないようにしている」(小林店長)と表現する。店員は、お客様が必要な情報を提供することに徹して、頼られる存在になることを目指している。
一方、郊外では常連客の増加に向けて、「駅前店に比べると、接客には時間をかけている」(ケーズデンキ仙台西店の西田中店長)という。ケーズデンキ仙台西店がある南吉成は古くからの住民が多く、親子2代にわたるお客様が多い。西田中店長は、「店のファンになってもらうことが重要」と話す。
コジマNEW泉中央店では、店内の入口近くに案内係を配置して、わからないことを何でも相談できる環境を整えている。「案内係がしっかりと来店の目的を聞いて店員に引き継ぐかたちを徹底している」(横山店長)という。
【サポート・サービス】
サポートサービスに力を注いでいるのは、どの店舗でも同じ。しかし、家電量販店と比べると売り場面積が小さく、取り扱う商品も限られるパソコン専門店は、専門店ならではのサポートサービスを家電量販店との差異化策と位置づけている。
TWOTOPでは、相性保証サービスを提供。商品価格の10%の料金で、パソコンを組み立てるとき、パーツの相性による障害が発生した場合に商品を交換するサービスだ。必ずしも障害が発生しやすいから始めたサービスではなく、店員が相性のいいパーツを勧めるとき、お客様に理解してもらいやすくするためだという。ユニットコムの佐藤マネージャーは、「障害が発生しやすい事例をデータ化していれば、お客様が安心してパソコンを組み立てることができる。お客様が店側にパソコンの組み立てを依頼する際も、安心して任せてくれる」という。仙台店では、相性のいいパーツ選定が家電量販店との差異化になっている。またTWOTOPでは、東日本大震災の発生後に、お客様から「壊れたパソコンのデータを復旧してほしい」という要望が殺到したという。これに臨機応変に対応したことも、固定客の確保につながった。
ドスパラ仙台店では、ドスパラ全店で提供している500円の「ワンコインパソコン簡易診断」によって、「新規のお客様を獲得している」(新見店長)。この簡易診断がきっかけになって、パソコンを買い替えるお客様も多い。また、パーツ増設・交換無償サポートなどがついた「セーフティサービス」をパソコン購入時に申し込むお客様が増えているという。
→宮城・仙台市(4)に続く(2013年6月10日掲載)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年5月27日付 vol.1482より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは
→宮城・仙台市(1)から読む
<接客・サービス>
幹部は東北を知る人材 さまざまな店舗を経験
家電量販店は、旗艦店や主要店舗には、さまざまな店舗を経験した人材を店長に据えることが多い。仙台市の店舗でも、ベテランで、しかも東北地方を知り尽くした人材が店長として手腕を振るう。
ヨドバシカメラマルチメディア仙台の下戸正己店長は、北海道や東京・町田の店舗など、20年のキャリアをもつ。さまざまな地域を経験した下戸店長からみた仙台市民の気質は、「ほかの地域と比べると、おとなしい」。お客様とのコミュニケーションのきっかけをつくるために、各フロアでデモコーナーを充実させた。その結果、お客様の商品理解を促進するだけでなく、スタッフとのやり取りが活発になった。「実際に体験してもらって、スタッフの話も聞いてもらうことで、お客様に納得していただく」というのが下戸店長のモットーだ。
ヤマダ電機LABI仙台の小林義人店長は、北海道・東北地区の多くの店舗で立ち上げに携わった。東北全体の売上拡大を見据える小林店長が描くのは、「LABI仙台を中心として、東北全体の当社の店舗が連携することによるシェア拡大」だ。
ケーズデンキ仙台西店の西田中耕治店長は、26年のキャリアのうち、これまで福島市や郡山市、南相馬市、会津若松市など、福島県の店舗での経験が長い。仙台市では、仙台北店や仙台南店を経験し、昨年10月に仙台西店の店長に就任した。自身が青森県八戸市出身で、東北での勤務経験が長い西田中店長からみた仙台市民は、「お客様が納得のいく最適な商品が見つかるまで妥協しない」ということ。妥協を許さず、しかも価格にもシビアなお客様を固定客として確保するために、常に試行錯誤している状況だという。
コジマNEW泉中央店の横山晃央店長は、約5年前に店長に就任。これまで北海道や青森県、岩手県、福島県の店舗を経験している。「さまざまな店舗のノウハウを生かしながら、高級住宅地である泉中央の地域性に適した店づくりに力を入れている」という。
ユニットコムの佐藤隆志氏は、仙台市出身でTWOTOP仙台店の立ち上げに関わった人物だ。今は仙台エリアマネージャーとして、TWOTOPと郊外のパソコン工房とを連携させた地域戦略による売上拡大を目指して、「仙台駅前のTWOTOPをアンテナショップに位置づけて、市内全体で売り上げを拡大していく」方針だ。
ドスパラ仙台店の新見克也店長は、広島県や山口県など西日本での経験が長く、他店舗の店長と比べると異色の存在だ。2008年に仙台店の店長に就任して、「接客の強化など、これまで仙台店にはなかった要素を取り込むことに力を入れてきた」という。また、仙台駅東口の再開発によって街が変わっていくことから、「仙台は、さらに集客力が高まる街になる。誰もが気軽に来店できる環境づくりなどで対応する」と意気込む。
【接客】
情報提供で頼りになる存在に ていねいな対応でファンづくり
スタッフに話しかけてくるお客様が少ないからといって、むやみに店員から話しかけてお客様から敬遠されてしまうのは、販売機会の損失につながる。仙台市の店舗では、話しかけることの少ないお客様が違和感をもたずに店員の話を聞いてくれる接客に力を注いでいる。
ヨドバシカメラマルチメディア仙台では、商品の機能や用途など知識を高めていく教育はもちろんだが、「お客様に恥をかかせない接客を常に意識している」(下戸店長)という。「インターネットで情報を収集するのがあたりまえの時代になって、商品に関しては詳しいお客様が多い。そんなお客様にスタッフが『自分のほうが詳しいから』と知識をひけらかすのはよくない」と考えているのだ。お客様の話を聞くことに専念し、質問されれば的確に応える。駅前店ということで、「これは、さまざまな層に対応する接客手法」とアピールする。
ヤマダ電機LABI仙台では、「お客様が身構えずにコミュニケーションできるよう、接客にあまり時間をかけないようにしている」(小林店長)と表現する。店員は、お客様が必要な情報を提供することに徹して、頼られる存在になることを目指している。
駅前店はさまざまな層に対応できる接客力が重要(左から、ヨドバシカメラマルチメディア仙台、ヤマダ電機LABI仙台)
一方、郊外では常連客の増加に向けて、「駅前店に比べると、接客には時間をかけている」(ケーズデンキ仙台西店の西田中店長)という。ケーズデンキ仙台西店がある南吉成は古くからの住民が多く、親子2代にわたるお客様が多い。西田中店長は、「店のファンになってもらうことが重要」と話す。
郊外店はていねいな接客がポイント(左から、ケーズデンキ仙台西店、コジマNEW泉中央店)
コジマNEW泉中央店では、店内の入口近くに案内係を配置して、わからないことを何でも相談できる環境を整えている。「案内係がしっかりと来店の目的を聞いて店員に引き継ぐかたちを徹底している」(横山店長)という。
【サポート・サービス】
差異化につながるサポート 修理サービスで固定客を確保
サポートサービスに力を注いでいるのは、どの店舗でも同じ。しかし、家電量販店と比べると売り場面積が小さく、取り扱う商品も限られるパソコン専門店は、専門店ならではのサポートサービスを家電量販店との差異化策と位置づけている。
TWOTOPでは、相性保証サービスを提供。商品価格の10%の料金で、パソコンを組み立てるとき、パーツの相性による障害が発生した場合に商品を交換するサービスだ。必ずしも障害が発生しやすいから始めたサービスではなく、店員が相性のいいパーツを勧めるとき、お客様に理解してもらいやすくするためだという。ユニットコムの佐藤マネージャーは、「障害が発生しやすい事例をデータ化していれば、お客様が安心してパソコンを組み立てることができる。お客様が店側にパソコンの組み立てを依頼する際も、安心して任せてくれる」という。仙台店では、相性のいいパーツ選定が家電量販店との差異化になっている。またTWOTOPでは、東日本大震災の発生後に、お客様から「壊れたパソコンのデータを復旧してほしい」という要望が殺到したという。これに臨機応変に対応したことも、固定客の確保につながった。
パソコン専門店は修理・サポートで家電量販店と差異化
ドスパラ仙台店では、ドスパラ全店で提供している500円の「ワンコインパソコン簡易診断」によって、「新規のお客様を獲得している」(新見店長)。この簡易診断がきっかけになって、パソコンを買い替えるお客様も多い。また、パーツ増設・交換無償サポートなどがついた「セーフティサービス」をパソコン購入時に申し込むお客様が増えているという。
→宮城・仙台市(4)に続く(2013年6月10日掲載)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年5月27日付 vol.1482より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは