人気・最新の高級コンパクトを試した ぐっと広がる撮影表現
手軽に写真を撮影できるコンパクトデジタルカメラを使っている人のなかには、画質に不満を感じたり、もっと凝った写真を撮りたいと感じたりする人は多い。そんな人にピッタリなのが、「高級コンパクト」といわれるセンササイズが大きいコンパクトデジカメだ。サイズや見た目は普通のコンパクトカメラと変わらないものの、得られる画質は1レベルも2レベルも上のもの。さらに、マニュアルモードや絞り優先モード、シャッタースピード優先モードなど、一眼レフと同じ撮影モードを備える。小粒ながら、撮影者の本気に応えてくれるカメラといえる存在だ。
「BCNランキング」では、1/1.7型以上の大型センサを搭載したコンパクトデジタルカメラを「高級コンパクト」に分類している。センササイズが大きくなればなるほど、同じ焦点距離・F値のレンズを搭載したときにピントが合う範囲が狭くなり、結果としてピントを合わせた被写体以外をぼかして、被写体を際立たせることができる。また、一般的にサイズの大きなセンサは感度が高く、薄暗い室内での撮影などに真価を発揮する。
最近の高級コンパクトはセンササイズの大型化に拍車がかかり、デジタル一眼レフカメラに匹敵するAPSーCサイズ(23.4mm×16.7mm)やフルサイズ(24mm×36mm)のセンサを搭載するモデルも登場している。
また、高級コンパクトの多くはマニュアルや絞り優先、シャッター速度優先などの撮影モードを備え、デジタル一眼レフと同じように絞り、露出、シャッタースピードなどを設定して撮影できる。もちろん、普通のコンパクトデジタルカメラと同じようにシーンに応じて最適な撮影を行う「シーンモード」や、カメラが状況を見極めて自動で最適な設定で撮影する「おまかせモード」を備えたモデルも多い。いわば一眼レフの撮影者の意図を反映できる一眼レフと、手軽に撮影できるコンパクトデジタルカメラのいいとこ取りをしたのが高級コンパクトといえる。
基本性能が高いレンズを搭載しているのも特徴の一つだ。例えばパナソニックの「LUMIX LX7」のズームレンズ「F1.4 LEICA DC VARIO-SUMMILUX」は、広角端(35mmフィルム換算で24mm)でF1.4、望遠端(35mmフィルム換算で90mm)でF2.3という開放値をもつ。光学5倍以上のズームを搭載しているコンパクトデジタルカメラが多いなかで、光学3.8倍のズーム比は低いものの、広角端から望遠端を通してこれだけ明るいとは驚きだ。この明るいレンズなら、暗所の手持ち撮影など、これまでは撮影を諦めていた場面でもクオリティの高い写真を撮ることができる。
満足できる描写力をもちながら、軽量・コンパクトでどこにも持ち歩ける高級コンパクト。コンパクトで描写力の高いカメラとしては、ミラーレス一眼がライバルだが、高級コンパクトはレンズが一体で設計されているぶんレンズとボディのバランスがよく、「高画質を手軽に持ち歩く」という点では、高級コンパクトに分がある。レンズの特性をきちんと理解していれば、旅行などの頼もしい味方になってくれる。
実際に、人気の高級コンパクトの描写力をチェックした。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」の2013年3月の機種別ランキングをもとに、1位のキヤノン「PowerShot S110」、2位のソニー「Cyber-shot RX100」、4位の富士フイルム「FUJIFILM X20」、10位のパナソニック「LUMIX LX7」、それと新モデルとして3月21日に発売したニコンの「COOLPIX A」の5機種で撮り比べた。
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まずは画角をチェックするために、広角端と望遠端での撮影を行った。すべての機種でデジタルズームをOFFにしてある。高級コンパクトの購入を検討されている方は、想定される撮影シーンを思い浮かべて、どの画角が自分の用途に最も近いかをチェックしてほしい。
広角側では35mmフィルム換算で24mmのパナソニックの「LUMIX LX7」とキヤノンの「PowerShot S110」が強い。特に「PowerShot S110」は望遠端が120mmなので、広角から望遠までさまざまなシーンで活躍してくれるだろう。「LUMIX LX7」は24~90mmとズーム比こそ低いが、望遠端でもF2.8とい明るくシャッタースピードを稼ぎやすく、結果として他の機種より手ブレを起こしにくい。また、富士フイルム「FUJIFILM X20」も112mmの望遠端でF2.8と明るく、手持ちの望遠撮影などで活躍してくれるだろう。ニコン「COOLPIX A」は、28mmの広角単焦点レンズだ。
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高感度特性にすぐれるといわれる高級コンパクトで、ISO1600/3200/6400の高感度域で夜景撮影を行った。ノイズリダクション設定はすべて工場出荷状態にして撮影した。
センササイズが23.6×15.6mmと大きいニコンの「Coolpix A」と、センササイズが13.2×8.8mmのソニー「Cyber-shot RX100」の高感度特性のよさが際立っている。しかし1/1.7型の「LUMIX LX7」や「PowerShot S110」もかなり健闘している。特に「LUMIX LX7」のISO3200でのノイズの少なさは、特筆に値する。手持ちのカメラの高感度特性に不満がある人は、ぜひ高級コンパクトのすぐれた高感度特性に注目してもらいたい。
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料理や静物をよく撮影する人にとっては、マクロ撮影機能も重要なポイントだ。ぜひ、これらの撮影データを参考に、各機種のマクロ性能と描写性を判断してみてほしい。
マクロ撮影では、最短撮影距離1cmという強力なマクロ機能をもつ「LUMIX LX7」が突出している。センササイズの大きな機種は、レンズ設計にコンパクトゆえの制約があるためか、「LUMIX LX7」ほど寄れないが、料理や花を撮影するには十分だ。
ボケ味は、センササイズが大きくレンズのF値が小さい「Cyber-shot RX100」が特に豊かな表現をみせた。「COOLPIX A」は「LUMIX LX7」ほどは寄れないが、背景のボケが自然で、ピントの合っている部分がくっきりと際立つような美しい表現を楽しませてくれる。いずれも明るいレンズと大きめのセンサを搭載していることから、普通のコンパクトデジタルカメラよりもボケ味に富んだ表現ができた。
上級者のニーズにしっかりと応えるマニュアルや絞り優先AE、シャッタースピード優先AEなどの撮影モード、すぐれた高感度特性、明るいレンズ、大型センサならではのボケ味ある写真表現――。普通のコンパクトデジタルカメラにはない特徴をもつ高級コンパクト。さらに、ほとんどの機種が羽根絞りを搭載しているので、夜景撮影などで絞り込めば、きれいな光芒を発する独特の表現を楽しむこともできる。
それでいて持ち歩きやすい軽量・コンパクトボディなのだから、撮影技術をレベルアップしたい人や本気で写真を楽しみたい人にとって、「趣味としての写真の楽しさ」を教えてくれる頼もしい相棒になる。
基本性能の高いので撮影できるシーンがグッと広がることも、大きなポイントだ。ぜひ、「高級コンパクト」という魅力あるカテゴリも候補として検討してほしい。(ITジャーナリスト・市川昭彦)
高級コンパクトの撮り比べ
「BCNランキング」では、1/1.7型以上の大型センサを搭載したコンパクトデジタルカメラを「高級コンパクト」に分類している。センササイズが大きくなればなるほど、同じ焦点距離・F値のレンズを搭載したときにピントが合う範囲が狭くなり、結果としてピントを合わせた被写体以外をぼかして、被写体を際立たせることができる。また、一般的にサイズの大きなセンサは感度が高く、薄暗い室内での撮影などに真価を発揮する。
最近の高級コンパクトはセンササイズの大型化に拍車がかかり、デジタル一眼レフカメラに匹敵するAPSーCサイズ(23.4mm×16.7mm)やフルサイズ(24mm×36mm)のセンサを搭載するモデルも登場している。
また、高級コンパクトの多くはマニュアルや絞り優先、シャッター速度優先などの撮影モードを備え、デジタル一眼レフと同じように絞り、露出、シャッタースピードなどを設定して撮影できる。もちろん、普通のコンパクトデジタルカメラと同じようにシーンに応じて最適な撮影を行う「シーンモード」や、カメラが状況を見極めて自動で最適な設定で撮影する「おまかせモード」を備えたモデルも多い。いわば一眼レフの撮影者の意図を反映できる一眼レフと、手軽に撮影できるコンパクトデジタルカメラのいいとこ取りをしたのが高級コンパクトといえる。
基本性能が高いレンズを搭載しているのも特徴の一つだ。例えばパナソニックの「LUMIX LX7」のズームレンズ「F1.4 LEICA DC VARIO-SUMMILUX」は、広角端(35mmフィルム換算で24mm)でF1.4、望遠端(35mmフィルム換算で90mm)でF2.3という開放値をもつ。光学5倍以上のズームを搭載しているコンパクトデジタルカメラが多いなかで、光学3.8倍のズーム比は低いものの、広角端から望遠端を通してこれだけ明るいとは驚きだ。この明るいレンズなら、暗所の手持ち撮影など、これまでは撮影を諦めていた場面でもクオリティの高い写真を撮ることができる。
満足できる描写力をもちながら、軽量・コンパクトでどこにも持ち歩ける高級コンパクト。コンパクトで描写力の高いカメラとしては、ミラーレス一眼がライバルだが、高級コンパクトはレンズが一体で設計されているぶんレンズとボディのバランスがよく、「高画質を手軽に持ち歩く」という点では、高級コンパクトに分がある。レンズの特性をきちんと理解していれば、旅行などの頼もしい味方になってくれる。
売れ筋の高級コンパクトを試した 描写力の高さはさすが!
実際に、人気の高級コンパクトの描写力をチェックした。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」の2013年3月の機種別ランキングをもとに、1位のキヤノン「PowerShot S110」、2位のソニー「Cyber-shot RX100」、4位の富士フイルム「FUJIFILM X20」、10位のパナソニック「LUMIX LX7」、それと新モデルとして3月21日に発売したニコンの「COOLPIX A」の5機種で撮り比べた。
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まずは画角をチェックするために、広角端と望遠端での撮影を行った。すべての機種でデジタルズームをOFFにしてある。高級コンパクトの購入を検討されている方は、想定される撮影シーンを思い浮かべて、どの画角が自分の用途に最も近いかをチェックしてほしい。
キヤノン「PowerShot S110」の広角端(左)と望遠端
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ソニー「Cyber-shot RX100」の広角端(左)と望遠端
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富士フイルム「FUJIFILM X20」の広角端(左)と望遠端
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パナソニック「LUMIX LX7」の広角端(左)と望遠端
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広角単焦点レンズを搭載するニコン「COOLPIX A」
[画像をクリックすると原寸大で表示します]
広角側では35mmフィルム換算で24mmのパナソニックの「LUMIX LX7」とキヤノンの「PowerShot S110」が強い。特に「PowerShot S110」は望遠端が120mmなので、広角から望遠までさまざまなシーンで活躍してくれるだろう。「LUMIX LX7」は24~90mmとズーム比こそ低いが、望遠端でもF2.8とい明るくシャッタースピードを稼ぎやすく、結果として他の機種より手ブレを起こしにくい。また、富士フイルム「FUJIFILM X20」も112mmの望遠端でF2.8と明るく、手持ちの望遠撮影などで活躍してくれるだろう。ニコン「COOLPIX A」は、28mmの広角単焦点レンズだ。
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夜景撮影で感度の高さをチェック 大型センサが威力を発揮
高感度特性にすぐれるといわれる高級コンパクトで、ISO1600/3200/6400の高感度域で夜景撮影を行った。ノイズリダクション設定はすべて工場出荷状態にして撮影した。
キヤノン「PowerShot S110」のISO1600/3200/6400(左から)
[画像をクリックすると原寸大で表示します]
ソニー「Cyber-shot RX100」のISO1600/3200/6400(左から)
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富士フイルム「FUJIFILM X20」のISO1600/3200/6400(左から)
[画像をクリックすると原寸大で表示します]
パナソニック「LUMIX LX7」のISO1600/3200/6400(左から)
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ニコン「COOLPIX A」のISO1600/3200/6400(左から)
[画像をクリックすると原寸大で表示します]
センササイズが23.6×15.6mmと大きいニコンの「Coolpix A」と、センササイズが13.2×8.8mmのソニー「Cyber-shot RX100」の高感度特性のよさが際立っている。しかし1/1.7型の「LUMIX LX7」や「PowerShot S110」もかなり健闘している。特に「LUMIX LX7」のISO3200でのノイズの少なさは、特筆に値する。手持ちのカメラの高感度特性に不満がある人は、ぜひ高級コンパクトのすぐれた高感度特性に注目してもらいたい。
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センササイズが大きいと背景が自然にボケる
料理や静物をよく撮影する人にとっては、マクロ撮影機能も重要なポイントだ。ぜひ、これらの撮影データを参考に、各機種のマクロ性能と描写性を判断してみてほしい。
キヤノン「PowerShot S110」
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ソニー「Cyber-shot RX100」
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富士フイルム「FUJIFILM X20」
[画像をクリックすると原寸大で表示します]
パナソニック「LUMIX LX7」
[画像をクリックすると原寸大で表示します]
ニコン「COOLPIX A」
[画像をクリックすると原寸大で表示します]
マクロ撮影では、最短撮影距離1cmという強力なマクロ機能をもつ「LUMIX LX7」が突出している。センササイズの大きな機種は、レンズ設計にコンパクトゆえの制約があるためか、「LUMIX LX7」ほど寄れないが、料理や花を撮影するには十分だ。
ボケ味は、センササイズが大きくレンズのF値が小さい「Cyber-shot RX100」が特に豊かな表現をみせた。「COOLPIX A」は「LUMIX LX7」ほどは寄れないが、背景のボケが自然で、ピントの合っている部分がくっきりと際立つような美しい表現を楽しませてくれる。いずれも明るいレンズと大きめのセンサを搭載していることから、普通のコンパクトデジタルカメラよりもボケ味に富んだ表現ができた。
「趣味としての写真の楽しさ」を教えてくれる高級コンパクト
上級者のニーズにしっかりと応えるマニュアルや絞り優先AE、シャッタースピード優先AEなどの撮影モード、すぐれた高感度特性、明るいレンズ、大型センサならではのボケ味ある写真表現――。普通のコンパクトデジタルカメラにはない特徴をもつ高級コンパクト。さらに、ほとんどの機種が羽根絞りを搭載しているので、夜景撮影などで絞り込めば、きれいな光芒を発する独特の表現を楽しむこともできる。
それでいて持ち歩きやすい軽量・コンパクトボディなのだから、撮影技術をレベルアップしたい人や本気で写真を楽しみたい人にとって、「趣味としての写真の楽しさ」を教えてくれる頼もしい相棒になる。
基本性能の高いので撮影できるシーンがグッと広がることも、大きなポイントだ。ぜひ、「高級コンパクト」という魅力あるカテゴリも候補として検討してほしい。(ITジャーナリスト・市川昭彦)