<家電激戦区を歩く>愛知・名古屋市(3) 生活に合った最適な商品を提案 優秀なスタッフで固定客を確保
名古屋駅前、大須商店街の電気街、郊外ともに大型店舗が多い名古屋市。各店舗は、お客様のライフスタイルに合った商品を的確に提案できるスタッフの育成に力を入れている。商品知識が豊富なスタッフによって、店舗やスタッフへの信頼を勝ち取り、お客様にスタッフが提案する商品を買っていただくこと──ほかの地域と比べると高額の商品が売れていく名古屋では、これが収益を大きく左右するのだ。各店舗ともこうした人材を生かして、固定客の確保に取り組んでいる。(取材・文/佐相彰彦)
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<接客・サービス>
名古屋市の家電量販店やパソコン専門店は、売り場が広い。各店舗とも、スタッフの動線の効率化を図るために、売り場に常駐するスタッフを商品知識が豊富で、お客様の問い合わせに何でも対応できる人材に育てている。基本的には、フロア長やコーナー長などがスタッフの教育にあたるが、ときには店長や副店長などが現場に立ってスタッフを教育することもある。そして、お客様と接点をもつスタッフの情報を売り場づくりに取り入れて、「スタッフとともに現場をつくる」というコンセプトを掲げる店舗が多いのが、名古屋の量販店の特徴だ。
ヤマダ電機LABI名古屋には、正社員が約120人、アルバイトを含めると240人を超えるスタッフがいる。これらを育成するキーマンが、古久根譲副店長だ。中部地方を中心に、さまざまな店舗で店長・スタッフとして業務に従事。本社で営業に携わった経験をもつ。その古久根副店長が必ず実行していることが、半年に1回ほど、各フロアで3割程度のスタッフを入れ替えること。これは、「一つの商品を集中してご説明して販売するのは、お客様にとって必ずしも有益ではない。関連する商品をお勧めすることで、お客様の生活をさらに豊かにすることができる。そんな提案がしたい」(古久根副店長)からというのが理由だ。さまざまな売り場を経験させることで、「スペシャリスト×ゼネラリスト」のスタッフをつくろうとしている。
ドスパラ大須店の鈴木修司副店長は、この店のアルバイトから正社員になった。関西の店舗での経験もあるが、大須店での勤務が多く、店長を務めたこともある。現在は、副店長とフロアマネージャーを兼務している。「スタッフには、商品知識を高めるために、仕事中でも手が空いたらさまざまなパソコンに触るように指導している。自分が体験することで、お客様にリアルな情報を伝えることができる」という。
ケーズデンキ吹上店の河瀬正樹店長は、10年以上、本社で人事・教育を担当していたという店長としては異色の経歴をもつ。家電量販業界が伸び悩むなかで、「机上の理論だけではよくない。人材を育成するためには、しっかりと現場を把握しなければならない」と考えて志願し、昨年5月に吹上店の店長に就いた。中部で旗艦店である吹上店から、「成功モデルを全国に広げたい」(河瀬店長)という。
グッドウィルEDM(エンターテイメントデジタルモール)は、親会社のユニットコムが子会社の特性を生かした人材を配置。EDMのスタッフは、全員が同店に古くから勤務する人材ばかりで、大須商店街をよく知る溝口英親氏が営業統括部リーダーに、後藤靖生氏がEDM店長に就任した。
【接客】
インターネットで、知りたい情報をすぐに収集できる時代。お客様の多くは、あらかじめ購入しようと考えている商品をいくつか調べてから店舗を訪れ、スタッフに質問する。「その製品を購入すると何ができるのか」ということを、実際に商品を見ながら改めて理解するためだ。スタッフには、単に商品の機能を説明するだけでなく、お客様の話をよく聞いて、最適な商品を提案することが求められる。名古屋市では、スタッフが「聞き上手になる」ことが必要なのだ。
ヤマダ電機LABI名古屋では、「お客様は目的をもって店舗まで足を運んでくださっている。お客様が目的を達成することが重要」(古久根副店長)と、お客様のライフスタイルを聞き出して、それに適した商品をいくつか提案。お客様が選ぶことができる環境をつくる接客を行っている。
パソコン上級者のお客様が多いドスパラ大須店では、「スタッフに背中を押してもらいたいと考えるお客様が多いので、お客様の意見を尊重しながら接客している」(鈴木副店長)という。グッドウィルEDMでは、「スタッフのパソコンやパソコンパーツに関する知識には絶対の自信をもっている。その高いスキルを生かして、お客様の『困った』に対応する」(後藤店長)としている。
ケーズデンキ吹上店では、「店舗の運営にお客様からのアンケートを反映している。お客様は、スタッフの意見を参考にしたいと思って来店される。商品をお勧めするときは、日常生活で使うことをイメージできる最適な商品を、お客様と一緒に考えるような接客を行っている」(河瀬店長)とのことだ。
【サポート・サービス】
量販店の接客で重要なのが、お客様を待たせないこと。ヤマダ電機LABI名古屋では、白物家電のフロアに配送やサポートを受け付ける大規模なカウンターを設けて、お客様が多いときでも対応できる環境を整えている。また、修理コーナーを店とは別の場所に設け、しっかり時間をかけて対応する体制を敷いた。古久根副店長は、「お客様をお待たせしない対応で評価されている」と胸を張る。
ドスパラ大須店では、パソコンやスマートフォンなど中古の買取り窓口が盛況で、「手持ちのパソコンを売って、新製品を買うお客様が多い」(鈴木副店長)という。スマートフォンでは、「買い取ったらすぐに売れて、結果として100台程度を右から左に販売した日もある」と、中古の買取りと販売が好調であることをアピールする。
グッドウィルEDMでは、500円でパソコンを診断するユニットコムグループの「ワンコインサポート」が好調だ。溝口リーダーは「他店で購入したパソコンでも受け付けるので、気軽に来店してくださる」と、お客様との接点強化に貢献していると話す。
地域密着をコンセプトに掲げるケーズデンキ吹上店は、「近隣には古い住宅が多く、エアコンの取りつけが複雑な構造になっている家もある。購入に関して柔軟に対応できるスタッフが多いので、お客様からは『安心して購入できる』との声をいただいている」(河瀬店長)と自信をのぞかせる。
→愛知・名古屋市(4)に続く
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年4月22日付 vol.1478より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは
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<接客・サービス>
スタッフと一緒に現場をつくる スペシャリスト×ゼネラリストを育成
名古屋市の家電量販店やパソコン専門店は、売り場が広い。各店舗とも、スタッフの動線の効率化を図るために、売り場に常駐するスタッフを商品知識が豊富で、お客様の問い合わせに何でも対応できる人材に育てている。基本的には、フロア長やコーナー長などがスタッフの教育にあたるが、ときには店長や副店長などが現場に立ってスタッフを教育することもある。そして、お客様と接点をもつスタッフの情報を売り場づくりに取り入れて、「スタッフとともに現場をつくる」というコンセプトを掲げる店舗が多いのが、名古屋の量販店の特徴だ。
ヤマダ電機LABI名古屋には、正社員が約120人、アルバイトを含めると240人を超えるスタッフがいる。これらを育成するキーマンが、古久根譲副店長だ。中部地方を中心に、さまざまな店舗で店長・スタッフとして業務に従事。本社で営業に携わった経験をもつ。その古久根副店長が必ず実行していることが、半年に1回ほど、各フロアで3割程度のスタッフを入れ替えること。これは、「一つの商品を集中してご説明して販売するのは、お客様にとって必ずしも有益ではない。関連する商品をお勧めすることで、お客様の生活をさらに豊かにすることができる。そんな提案がしたい」(古久根副店長)からというのが理由だ。さまざまな売り場を経験させることで、「スペシャリスト×ゼネラリスト」のスタッフをつくろうとしている。
ドスパラ大須店の鈴木修司副店長は、この店のアルバイトから正社員になった。関西の店舗での経験もあるが、大須店での勤務が多く、店長を務めたこともある。現在は、副店長とフロアマネージャーを兼務している。「スタッフには、商品知識を高めるために、仕事中でも手が空いたらさまざまなパソコンに触るように指導している。自分が体験することで、お客様にリアルな情報を伝えることができる」という。
ケーズデンキ吹上店の河瀬正樹店長は、10年以上、本社で人事・教育を担当していたという店長としては異色の経歴をもつ。家電量販業界が伸び悩むなかで、「机上の理論だけではよくない。人材を育成するためには、しっかりと現場を把握しなければならない」と考えて志願し、昨年5月に吹上店の店長に就いた。中部で旗艦店である吹上店から、「成功モデルを全国に広げたい」(河瀬店長)という。
ていねいな接客がケーズデンキ吹上店の強み
グッドウィルEDM(エンターテイメントデジタルモール)は、親会社のユニットコムが子会社の特性を生かした人材を配置。EDMのスタッフは、全員が同店に古くから勤務する人材ばかりで、大須商店街をよく知る溝口英親氏が営業統括部リーダーに、後藤靖生氏がEDM店長に就任した。
パソコン関連の専門知識でお客様の「困った」に対応するグッドウィルEDM
【接客】
「聞き上手になる」ことが重要 お客様の「背中」を押すことも
インターネットで、知りたい情報をすぐに収集できる時代。お客様の多くは、あらかじめ購入しようと考えている商品をいくつか調べてから店舗を訪れ、スタッフに質問する。「その製品を購入すると何ができるのか」ということを、実際に商品を見ながら改めて理解するためだ。スタッフには、単に商品の機能を説明するだけでなく、お客様の話をよく聞いて、最適な商品を提案することが求められる。名古屋市では、スタッフが「聞き上手になる」ことが必要なのだ。
ヤマダ電機LABI名古屋では、「お客様は目的をもって店舗まで足を運んでくださっている。お客様が目的を達成することが重要」(古久根副店長)と、お客様のライフスタイルを聞き出して、それに適した商品をいくつか提案。お客様が選ぶことができる環境をつくる接客を行っている。
パソコン上級者のお客様が多いドスパラ大須店では、「スタッフに背中を押してもらいたいと考えるお客様が多いので、お客様の意見を尊重しながら接客している」(鈴木副店長)という。グッドウィルEDMでは、「スタッフのパソコンやパソコンパーツに関する知識には絶対の自信をもっている。その高いスキルを生かして、お客様の『困った』に対応する」(後藤店長)としている。
ケーズデンキ吹上店では、「店舗の運営にお客様からのアンケートを反映している。お客様は、スタッフの意見を参考にしたいと思って来店される。商品をお勧めするときは、日常生活で使うことをイメージできる最適な商品を、お客様と一緒に考えるような接客を行っている」(河瀬店長)とのことだ。
【サポート・サービス】
「お客様を待たせない」 大規模カウンターで混雑に対応
量販店の接客で重要なのが、お客様を待たせないこと。ヤマダ電機LABI名古屋では、白物家電のフロアに配送やサポートを受け付ける大規模なカウンターを設けて、お客様が多いときでも対応できる環境を整えている。また、修理コーナーを店とは別の場所に設け、しっかり時間をかけて対応する体制を敷いた。古久根副店長は、「お客様をお待たせしない対応で評価されている」と胸を張る。
ヤマダ電機LABI名古屋2階は中央に大規模なカウンターを設け、お客様が待たずに配送手続きやサポート受付ができるようにしている
ドスパラ大須店では、パソコンやスマートフォンなど中古の買取り窓口が盛況で、「手持ちのパソコンを売って、新製品を買うお客様が多い」(鈴木副店長)という。スマートフォンでは、「買い取ったらすぐに売れて、結果として100台程度を右から左に販売した日もある」と、中古の買取りと販売が好調であることをアピールする。
中古品を買取りで訪れるお客様も多いドスパラ大須店
グッドウィルEDMでは、500円でパソコンを診断するユニットコムグループの「ワンコインサポート」が好調だ。溝口リーダーは「他店で購入したパソコンでも受け付けるので、気軽に来店してくださる」と、お客様との接点強化に貢献していると話す。
地域密着をコンセプトに掲げるケーズデンキ吹上店は、「近隣には古い住宅が多く、エアコンの取りつけが複雑な構造になっている家もある。購入に関して柔軟に対応できるスタッフが多いので、お客様からは『安心して購入できる』との声をいただいている」(河瀬店長)と自信をのぞかせる。
→愛知・名古屋市(4)に続く
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年4月22日付 vol.1478より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは