プレミアム&スマートがキーワード、IFA 2013 グローバル・プレス・カンファレンス
【イタリア・サルディーニャ発】4月18~21日、イタリア・サルディーニャで世界最大規模の家電見本市「IFA 2013」の事前説明会「グローバル・プレス・カンファレンス」が開かれた。2013年9月6~11日、ドイツ・ベルリンでの「IFA 2013」開催に先立ち、世界50か国を超える国々から報道関係者を集め、ポイントなどを紹介するために開催したもの。300名を超える報道関係者がサルディーニャのリゾートホテル「Forte Village」に集まった。
カンファレンスの目玉は、出展する各社の最新動向や調査会社の市場概況の発表などが20分単位で次から次へと繰り出された2日目の「パワー・ブリーフィング」だ。先陣を切ったのはイタリアのデロンギ。経済情勢が芳しくないなかで、力を入れるプレミアム製品について紹介した。登壇したDiamantis Economou マーケティングディレクターは「情報収集力を高めた消費者は、価格の安さではなく、商品の魅力そのものでしか満足しなくなる」と、デロンギがプレミアム路線を堅持する理由を語った。デロンギブランドのエスプレッソマシンはもとより、ケンウッドブランドのフードプロセッサ、ブラウンブランドのアイロンなど、いずれのブランドもプレミアム路線を強化していく。
続いて登場したのは、ドイツの老舗家電メーカー、レーベ。「スマート・ホーム・エンタテインメントの未来」と題して、Matthias Harsch CEOがプレゼンテーションを行った。「さまざまな製品が相互に接続する環境になっている」ことを前提に、映像コンテンツでだけでなく、音楽もネットの動画も「自在に操ることができる製品を目指す」とした。さらに、NASとの連携を図りながら、テレビを中心として、家のどの部屋からでも、外からでも、どんなデバイスでも、自在にコンテンツを楽しめる環境づくりに取り組む方針を語った。
ボッシュやシーメンスなどのブランドをもつBSHからは、Claudia Happ ホームコネクト・プロジェクトリーダーが登場。生活家電をネットなどに接続する「ホームコネクト」について、6割の人々が「自分向きだ」と感じている調査結果を紹介しながら、この分野に力を入れていく方針を示した。一例として、衣類の洗濯タグをタブレット端末のカメラで読み取り、表示に合わせて洗濯機の設定を行うシステムや、冷蔵庫の中身の写真を撮ってオーブンレンジと連携し、手持ちの食材でより効率的な調理をサポートするシステムなどを紹介した。
フィリップスと台湾TPVの合弁でテレビ事業を展開するTP Visionは、フィリップスブランドのテレビ事業についてMaarten de Vries CEOが解説。西欧テレビ市場では2015年までに50%がスマートテレビになるという予測データを紹介し、スマートテレビ事業をさらに強化していく方針を語った。また、動画をワイヤレス伝送する規格、Wi-Fi Miracastでスマートディバイスなどと連携し、どの部屋でもスマートコンテンツが視聴できる環境もアピール。ジャーナリストラウンジでは、6月発売予定のガラス板のようなテレビ「DesignLine」を展示した。また、フィリップスライフスタイルエンターテインメントのWiebo Vaartjes CEOも登壇し、「DesignLine」に合わせたスピーカーシステムを、プレミアムオーディオブランド「Fidelioシリーズ」として秋に発売すると発表した。
楽天の子会社になった電子ブックのKoboからは、Sameer Hasan プロダクトマネジメントディレクターが登場。発表したばかりの新製品「Kobo aura HD」を紹介した。6.8インチの大ぶりの画面で1440×1080ピクセル。解像度が265dpiと高いので、より紙の書籍に近い使用感だという。容量は4GBと倍増し、2か月のバッテリ持続時間を実現、動作スピードを25%高速化したチップを採用した。カナダとイギリスで4月25日に発売し、その他のエリアでは5月から順次販売を開始する。
スウェーデンの家電メーカー、エレクトロラックスからは、Klaus Wuhrl ドイツ・オーストリアゼネラルマネージャーが登場。プロフェッショナル向けの調理器具や洗濯機などのテクノロジを、家庭用製品にも生かして展開していく方針を明らかにした。真空調理器の「Sous-Vide」は、真空状態で調理することで、より食材の風味を引き立たせるのが特徴。このほか、汚れの度合いに応じた洗い方ができる食洗機なども紹介した。
サムスンは、Michael Zoeller TV/AVマーケティングシニアディレクターが、これまでのテレビとスマートテレビを融合させるスマートテレビOS「Samsung Smart Hub 2013」を発表した。放送中の画面を表示しながら、右側におすすめのコンテンツを表示するなど、よりユーザーとコンテンツのマッチング機能を強化したほか、リモートタッチパネルや声、動作で離れたところからコントロールできる機能も搭載。注目の4Kテレビについては、「現時点では問題が多い」としながらも、9月のIFAでより幅広いサイズでの展開を発表するという。
カンファレンスでは、このほかジャーナリストによるパネルディスカッションや調査会社から世界家電市場販売データの紹介などが行われた。ディスプレイサーチのPaul Gray TV Electronics & Europe TV Researchディレクターは、2012年に出荷台数前年比でマイナス6%と落ち込んだ世界のテレビ市場は、2014年以降、4~5%程度の成長で推移しながらも、利益ベースでは微減の傾向になりそうだと予測。また、4Kテレビの世界市場は、2013年はおよそ100万台にとどまるものの、14年には400万台に伸び、1000万台に到達するのは2016年頃との予測を発表した。
世界家電市場の流れは、新興国向けの低価格戦略もさることながら、プレミアム化とスマート化に収れんされつつあるようにみえる。これが鮮明になったブリーフィングだった。価格競争に埋没するのではなく、ユーザーの心に響く新しい価値をどう創造するかが、勝ち残りのカギになりそうだ。(道越一郎)
会場のリゾートホテル、Forte Village。そこかしこにIFAのロゴをあしらい、グローバル・プレス・カンファレンスムード一色
カンファレンスの目玉は、出展する各社の最新動向や調査会社の市場概況の発表などが20分単位で次から次へと繰り出された2日目の「パワー・ブリーフィング」だ。先陣を切ったのはイタリアのデロンギ。経済情勢が芳しくないなかで、力を入れるプレミアム製品について紹介した。登壇したDiamantis Economou マーケティングディレクターは「情報収集力を高めた消費者は、価格の安さではなく、商品の魅力そのものでしか満足しなくなる」と、デロンギがプレミアム路線を堅持する理由を語った。デロンギブランドのエスプレッソマシンはもとより、ケンウッドブランドのフードプロセッサ、ブラウンブランドのアイロンなど、いずれのブランドもプレミアム路線を強化していく。
続いて登場したのは、ドイツの老舗家電メーカー、レーベ。「スマート・ホーム・エンタテインメントの未来」と題して、Matthias Harsch CEOがプレゼンテーションを行った。「さまざまな製品が相互に接続する環境になっている」ことを前提に、映像コンテンツでだけでなく、音楽もネットの動画も「自在に操ることができる製品を目指す」とした。さらに、NASとの連携を図りながら、テレビを中心として、家のどの部屋からでも、外からでも、どんなデバイスでも、自在にコンテンツを楽しめる環境づくりに取り組む方針を語った。
レーベのMatthias Harsch CEO
ボッシュやシーメンスなどのブランドをもつBSHからは、Claudia Happ ホームコネクト・プロジェクトリーダーが登場。生活家電をネットなどに接続する「ホームコネクト」について、6割の人々が「自分向きだ」と感じている調査結果を紹介しながら、この分野に力を入れていく方針を示した。一例として、衣類の洗濯タグをタブレット端末のカメラで読み取り、表示に合わせて洗濯機の設定を行うシステムや、冷蔵庫の中身の写真を撮ってオーブンレンジと連携し、手持ちの食材でより効率的な調理をサポートするシステムなどを紹介した。
フィリップスと台湾TPVの合弁でテレビ事業を展開するTP Visionは、フィリップスブランドのテレビ事業についてMaarten de Vries CEOが解説。西欧テレビ市場では2015年までに50%がスマートテレビになるという予測データを紹介し、スマートテレビ事業をさらに強化していく方針を語った。また、動画をワイヤレス伝送する規格、Wi-Fi Miracastでスマートディバイスなどと連携し、どの部屋でもスマートコンテンツが視聴できる環境もアピール。ジャーナリストラウンジでは、6月発売予定のガラス板のようなテレビ「DesignLine」を展示した。また、フィリップスライフスタイルエンターテインメントのWiebo Vaartjes CEOも登壇し、「DesignLine」に合わせたスピーカーシステムを、プレミアムオーディオブランド「Fidelioシリーズ」として秋に発売すると発表した。
フィリップスの新コンセプトテレビ「DesignLine」。床に近い部分では向こう側の壁が見える。左右に並んでいるのが新スピーカーシステム
楽天の子会社になった電子ブックのKoboからは、Sameer Hasan プロダクトマネジメントディレクターが登場。発表したばかりの新製品「Kobo aura HD」を紹介した。6.8インチの大ぶりの画面で1440×1080ピクセル。解像度が265dpiと高いので、より紙の書籍に近い使用感だという。容量は4GBと倍増し、2か月のバッテリ持続時間を実現、動作スピードを25%高速化したチップを採用した。カナダとイギリスで4月25日に発売し、その他のエリアでは5月から順次販売を開始する。
スウェーデンの家電メーカー、エレクトロラックスからは、Klaus Wuhrl ドイツ・オーストリアゼネラルマネージャーが登場。プロフェッショナル向けの調理器具や洗濯機などのテクノロジを、家庭用製品にも生かして展開していく方針を明らかにした。真空調理器の「Sous-Vide」は、真空状態で調理することで、より食材の風味を引き立たせるのが特徴。このほか、汚れの度合いに応じた洗い方ができる食洗機なども紹介した。
サムスンのMichael Zoeller TV/AVマーケティングシニアディレクター。メディア各社からも注目の的
サムスンは、Michael Zoeller TV/AVマーケティングシニアディレクターが、これまでのテレビとスマートテレビを融合させるスマートテレビOS「Samsung Smart Hub 2013」を発表した。放送中の画面を表示しながら、右側におすすめのコンテンツを表示するなど、よりユーザーとコンテンツのマッチング機能を強化したほか、リモートタッチパネルや声、動作で離れたところからコントロールできる機能も搭載。注目の4Kテレビについては、「現時点では問題が多い」としながらも、9月のIFAでより幅広いサイズでの展開を発表するという。
カンファレンスでは、このほかジャーナリストによるパネルディスカッションや調査会社から世界家電市場販売データの紹介などが行われた。ディスプレイサーチのPaul Gray TV Electronics & Europe TV Researchディレクターは、2012年に出荷台数前年比でマイナス6%と落ち込んだ世界のテレビ市場は、2014年以降、4~5%程度の成長で推移しながらも、利益ベースでは微減の傾向になりそうだと予測。また、4Kテレビの世界市場は、2013年はおよそ100万台にとどまるものの、14年には400万台に伸び、1000万台に到達するのは2016年頃との予測を発表した。
ディスプレイサーチによるテレビ世界市場の出荷実績と予測。2014年以降は緩やかに成長する
世界家電市場の流れは、新興国向けの低価格戦略もさることながら、プレミアム化とスマート化に収れんされつつあるようにみえる。これが鮮明になったブリーフィングだった。価格競争に埋没するのではなく、ユーザーの心に響く新しい価値をどう創造するかが、勝ち残りのカギになりそうだ。(道越一郎)