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<家電激戦区を歩く>広島・広島市(4) デモでお客様の理解を促進 周辺機器を主力商品の拡販につなげる

特集

2013/03/11 11:40

 この連載では、売れ筋商品に的を絞って取材することが多いが、広島市の家電量販店に対しては少し趣向を変えて、販売減が続く携帯オーディオプレーヤー、個人ユーザーがなかなか増えないプロジェクター、そしてパソコンとテレビが苦戦を強いられるなかにあって比較的健闘している外付けHDDを中心としたHDDの3製品について販売状況を聞いた。各店舗とも、デモンストレーションでお客様の理解を得ることに力を入れており、また周辺機器を切り口として主力商材の販売も増やしている。(取材・文/佐相彰彦)

→広島・広島市(1)から読む

<売れ筋商品>

【携帯オーディオプレーヤー】
良質な音を聞いてもらう 関連商品で需要の底上げも



 携帯電話やスマートフォンで手軽に音楽を楽しめるようになって、専用機である携帯オーディオプレーヤーが苦戦している。ヤマダ電機LABI広島では、「携帯オーディオは音楽を聴くための専用端末なので、スマートフォンと比べれば音がいい。体感してもらうことが大切」(高橋圭一副店長)と判断して、デモコーナーを設置。さらに、ソニー製品の展示ではスピーカーの「SRS-BTV5」も組み合わせて「つなげる楽しさ」を演出している。デモによって、携帯オーディオの音質のよさ、スマートフォンとの違いに気づくお客様が増え、購入に結びついているという。

携帯オーディオの「いい音」を訴求するヤマダ電機LABI広島店

 コジマNew広島インター緑井店では、「携帯オーディオの販売は減少しているが、周辺機器の品揃えを充実させている」(加藤竜治店長)という。販売減には、iPhoneユーザーの増加が影響しているとみて、店内では「iPod」を前面に打ち出しながらスピーカーを展示した。iPhoneで使える製品でも、「スマートフォンをもっていないお客様にiPodをアピールしている」という。また、アクセサリの品揃えも充実させており、「すでに携帯オーディオをもっているお客様に好評」だそうである。

コジマNEW広島インター緑井店では携帯オーディオのアクセサリやスピーカーが充実

 エディオン広島本店も周辺機器が充実し、なかでもイヤホンの品揃えは群を抜いている。山田誠店長は、「音楽を快適に聴くためには、それぞれのお客様に適したイヤホンが決め手となる。そこで、体験コーナーで試すことができるようにして、さらにスタッフがイヤホン選びのポイントを説明している」という。

【プロジェクター】
手頃な価格と省スペースを訴求 デモで迫力を体感



 プロジェクターは、かつて大画面の映画館のような環境で自分の好きな映画を楽しむホームシアターのニーズに支えられた商品だった。しかし、最近では手頃な価格の製品も多くなり、テレビ代わりに使うユーザーが増えている。

 ヤマダ電機LABI広島では、圧倒的な品揃えでプロジェクターをアピール。高橋副店長は、「プロジェクターにはさまざま種類があるということをお客様に知っていただくことがいちばん」だとしている。最近は、小型で持ち運びに便利なモデルが売れており、「個人・法人を問わず、人気は高まりつつある」という。

ヤマダ電機LABI広島は豊富な品揃えが自慢

 エディオン広島本店では、「プロジェクターの販売は、とにかくまずデモで体感していただくことが欠かせない」(山田店長)と判断。コーナーごとにさまざまな工夫を凝らしているのが特徴の広島本店がプロジェクタコーナーで行っているのは、3D映画の放映だ。「一度は視聴してみたいと、立ち寄るお客様が多い」と、当初のもくろみ通りの役割を果たしつつある。

デモで映画の迫力満点の画面をアピール(エディオン広島本店)

 コジマNew広島インター緑井店では、「店舗周辺の郊外は、マンションの建設が進んで住民が増えている地区」(加藤店長)ということで、新しい住居で新しいコンテンツの視聴環境を求めて、プロジェクターに興味を示すお客様が増えているという。

【HDD】
テレビの接続用途が定着 円安で駆け込み需要も



 HDDは、外付けHDDが依然として好調だ。デジタルカメラやデジタルビデオカメラで撮影した静止画や動画を保存するストレージとして、大容量の外付けHDDが売れている。また、薄型テレビと接続するレコーダーの用途も定着している。パソコンとテレビの両方で使えることから、家電量販店にとっては稼ぎ頭の一つになっている。

 「何でも揃っている」がモットーのヤマダ電機LABI広島は、外付けHDDに関しても圧巻の品揃えを誇る。パソコン・周辺機器フロアで壁一面に商品を展示するだけでなく、テレビ関連のフロアにホームネットワーク体験コーナーを設け、NAS(ネットワーク・アタッチド・ストレージ)も提案している。最もポピュラーなのがテレビ番組の録画用途で、「2TBクラスの大容量モデルが売れ筋」(高橋副店長)という。

ヤマダ電機LABI広島ではテレビに接続してレコーダーとして活用するお客様が多い

 一方、パソコン専門店では、HDDベアも売れている。パソコン工房広島商工センター店では、「円安の関係で値上がりするかもしれないということで、年末から年始にかけて駆け込み需要があった」(田邊綱一店長)という。また、中古商品の買取り・販売も好調。低価格を武器に大手家電量販店との差異化を図っている。

ドスパラ広島店ではHDDがパーツの稼ぎ頭だという

 ドスパラ広島店でも、中古のHDDが堅調な売れ行きをみせている。「新品と比べて安いことが売れている一番の要因。デジタル機器に詳しいお客様が、よく品定めをしている」(原輝幸店長代理)そうだ。

パソコン工房広島商工センター店では中古HDDも好調

 家電量販店やパソコン専門店では、現在、パソコンや薄型テレビなど、これまで主要商材に位置づけられてきた製品の販売は厳しい状況だが、周辺機器の用途を明確に提案して購入を促進し、主力商材の販売増にもつなげているのだ。

■アナリストに聞く「売れる理由」

道越一郎エグゼクティブアナリスト
 スマートフォン需要の増大によって、携帯オーディオプレーヤーの販売は縮小している。音楽関係以外のさまざまな機能を搭載し、スマートフォン対抗端末として進むとしたら、ますます厳しくなる。スマートフォンよりも音楽に関する機能が多彩になるなど、音楽を聴く専用端末として、いかに進化するかがカギを握る。また、サービスの充実としてクラウドサービスとの連携も必要だ。

 プロジェクターは、台数と金額ともに2ケタ増で推移し、好調だ。一時期、省スペース化や持ち運びを意識した低価格の小型モデルが売れていたが、最近ではスマートフォンやタブレット端末とつながる無線LAN搭載モデルなど、機能強化を意識したモデルが売れ始めている。SOHOをはじめとする法人需要が増えている一方で、一般家庭での新規購入は少ない。需要を増やすためには、製品の価値を訴えていかなければならない。

 HDDは、11年に発生したタイの大洪水による価格の高騰で市場が縮小したが、現在は価格が落ち着き、洪水前の水準にまで戻っている。2TBのシェアが半分近くを占めるなど、大容量化が進んでいるのが最近の流れだ。円安によって再び価格が高騰する可能性はあるが、洪水の時のように品薄になるというわけではないので、大きなマイナス要因にはならない。

家電激戦区「広島市」を歩いて



 広島市の家電量販店は、手厚い接客・サービスで定評のあるエディオンの知名度が高い。ヤマダ電機やコジマなど、競合店舗は自社の持ち味を生かしながら、価格ではない取り組みで勝負しようとしているようだ。パソコン専門店は、専門性を生かしたサービスの充実に力を注いでいる。「人」を中心に、サービスの充実をはじめ、店内のレイアウトや売り場づくりなどにも力を入れている。「実店舗のよさ」を改めて実感したのが、広島である。


※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年3月4日付 vol.1471より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは