SDXCカードの2012年NO.1 トランセンドの次世代SDXCカードの高い速度性能を試した

レビュー

2013/02/28 19:46

 デジタルカメラの高画素化と、フルHD動画の撮影機会が増えたことで、記録メディアであるSDメモリカードには、より大容量で速い転送速度が求められるようになった。特に転送速度は、撮影時のレスポンスだけでなく、PCに取り込む際の転送時間も左右するので、さまざまな場面で大切な指標になる。

UHS-I対応カードとClass10対応カードで書込み速度/転送速度を比較

SDメモリカードを選ぶポイントは転送速度と容量



 店頭では、各社のSDメモリカードが鈴なり状態だ。どれを選べばいいのかわからない人は、つい価格だけで選んでしまいがちだが、失敗したくないなら「転送速度」と「容量」をチェックしよう。転送速度は撮影したデータをメモリカードに記録したり、メモリカードからPCへデータを転送したりする時間を大きく左右するし、これによってストレスのたまり方も違ってくるので要注意だ。

 転送速度規格としてポピュラーなのは、「SDスピードクラス」だ。これは動画を撮影する際に必要な最低転送速度を表示したもので、「Class2」が最低2MB/秒以上、「Class4」が4MB/秒以上、「Class6」が6MB/秒以上、そして最上位の「Class10」が10MB/秒上の転送速度を保証している。転送速度が速ければ速いほど、ストレスなく撮影・PCへのデータ移行ができるといってもいい。


 しかし、データの大容量化によって、よりデータを高速転送するニーズが高まり、2010年に新たな転送速度規格が誕生した。それが「UHS-I(Ultra High Speed I)」だ。UHS-Iの最低転送速度はClass10と同じ10MB/秒以上だが、最大転送速度はSDスピードクラスの最大理論値である25MB/秒の約4倍、104MB/秒だ。つまり、転送時間をSDスピードクラスの4分の1に短縮する規格といっていい。

 転送速度の次は、容量をチェックしよう。容量規格には、最大容量2GBまでの「SD」、2GB~32GBの「SDHC」、32GB~2TB(2048GB)の「SDXC」の三つの規格がある。コンパクトデジカメでも1600万画素、デジタル一眼レフでは入門機でさえ2400万画素という高解像度があたりまえになりつつあるいま、SDメモリカードの売れ筋は容量の大きなSDXCへとシフトしている。ただし、現在商品化されているSDXCメモリカードの最大容量は、256GBだ。

 家電量販店の実売データを集計する「BCNランキング」で、容量規格別の伸び率を追った。2012年1月の販売実績を1とした販売数量指数推移では、SDXCの伸び率が最も大きく、2012年8月以降は2倍以上で推移している。できるだけ容量の大きいものを買っておけば、先々容量不足で買い足す必要がないから安心だ。

転送規格による最低転送速度
スピードクラス表示 最低転送速度
Class2 2MB/秒以上
Class4 4MB/秒以上
Class6 6MB/秒以上
Class10 10MB/秒以上
UHS-I 10MB/秒以上

 このSDXC規格のメモリカード市場で、2012年のメーカー別販売数量シェア46.5%という圧倒的な数字で1位を獲得したのがトランセンドだ。このNo.1メーカーのトランセンドが、高速BusスピードUHS-I規格に対応したSDXCメモリカード「TS64GSDXC10U1」を2月に発売した。今回は「TS64GSDXC10U1」の高い高速性能を、Class10のみ対応のSDXCカードと比較した。

撮影時の書込み速度を比較 UHS-Iはバッファからの立ち直りが速い



 まずは、撮影時の書込みのレスポンスの違いを試した。撮影に使用したカメラは、SDXCとUHS-I規格に正式対応しているニコンD800Eである。35mmフルサイズCMOSセンサ搭載したD800Eの有効記録画素数は、実に3630万画素。高速連続撮影時の撮影枚数は、カタログ数値で4コマ/秒だ。

トランセンドのSDXCカード(容量64GB)。
左がUHS-I対応、右がClass10だけに対応するカード

 撮影は、カメラを三脚に固定して、被写体(木立)、焦点距離、絞り値、シャッター速度、ISO感度はすべて同一の条件で行った。画質モードは、RAW+JPEGの同時記録で、RAWの記録方式は14bitロスレス圧縮、JPEGは画質優先でサイズはL(7360×4912ピクセル)である。この設定で、RAWは1ファイルが約50MB、JPEGは1ファイルが約28MBになる。同時記録なので、シャッターを切ると一度に2ファイルを記録し、データは合わせて80MB近くなる。3630万画素ともなると、さすがにデータもモンスター級の大きさだ。

 撮影画像のメモリカードへの書込みは、シャッターボタンを押しっぱなしで連続撮影できた枚数と、連続撮影後、書込みが終了するまでの時間、連続撮影がストップしてもシャッターを押し続け、次にシャッターが切れるようになるまでの時間の三つを測定した。

 連続撮影枚数は、Class10対応カードもUHS-I対応カードも、同じ15カットだった。これは、カメラ本体内のバッファメモリの容量に左右されるためと思われる。

 カードへの書込みが終了するまでの時間は、連続撮影がストップしたらシャッターボタンから指を離して、カードへのアクセスランプが消灯するまでの時間を計測した。計測は3回実施し、その平均値を算出した。その結果、Class10対応カードが約1分20秒かかったのに対して、UHS-I対応カードは約50秒と、2倍以上も速かった。

 連続撮影がストップしてもシャッターを押し続けて、次にシャッターが切れるようになるまでの時間も3回計測し、その平均値を算出した。その結果、Class10対応カードは約10秒だったのに対して、UHS-I対応カードは約5秒とやはり2倍速かった。

UHS-IとClass10の速度比較
  連続撮影枚数 書き込み終了までの時間 立ち直りまでの時間
Class10 15コマ 1分20秒 10秒
UHS-I 15コマ 50秒 5秒

 少しでも「シャッターチャンスを逃したくない」「SDメモリカードへの書込みを待たされてイライラしたくない」と思うなら、そしてUHS-I対応のデジタルカメラを使っているなら、迷うことなくUHS-Iに対応したメモリカードを選ぶべきだ。

カードリーダーを使ってPCへの転送速度を比較 UHS-Iは2倍の速さ



 続いて、SDメモリカードからPCへ、画像データを転送する際の速度をテストした。使用したPCは、レノボのウルトラブック「IdeaPad Yoga 13」、カードリーダーは、USB 3.0とUHS-Iに対応するトランセンド「RDF8」だ。

テストに使用したUSB 3.0対応カードリーダー「RDF8」とメモリカード

 PCのデスクトップにフォルダを作成して、そこにカードリーダー経由でSDメモリカードから画像をコピーした。RAW+JPEGの同時記録で200カット撮影していたので、転送したファイル数は倍の400点、容量はフォルダ合計で14.7GBになる。

転送したデータ容量は合計で14.7GB

 カードリーダー「RDF8」を、PCのUSB3.0ポートに接続して、転送開始から終了までにかかった時間をストップウォッチで計測した。結果は、Class10対応カードは約6分58秒だったのに対して、UHS-I対応カードでは約3分34秒で転送が完了した。なお、カードリーダーをUSB 2.0ポートに接続した場合、転送時間に差はなかった。

約15GBのデータ転送にかかった時間
Class10 約6分58秒
UHS-I 約3分34秒

 UHS-I対応カードは、Class10対応カードの約半分の時間で転送が終了している。UHS-I対応のSDXCカードを使って撮影画像を記録し、その画像をPCに取り込む際には、USB 3.0対応のカードリーダーをPCのUSB 3.0ポートに接続して転送しないと、貴重な時間をムダにすることになる。

結論 UHS-I対応SDXCカードとUSB 3.0対応カードリーダーを選ぶべし!



 トランセンドのUHS-I対応SDXCメモリカード「TS64GSDXC10U1」は、高速Busスピード規格に対応することでリアルタイムな高速処理を実現したカードで、Class10対応カードよりもスピード性能が向上している。

 ただし、この結果は最新のUSB 3.0送信時の結果であり、現在PC環境で主流となっているUSB 2.0ポートの環境下では残念ながらUHS-Iのスピード性能を十分引き出すことができない。UHS-Iの性能を得るにはUSB 3.0ポートを使用することが必須といえる。(フリーライター・榎木秋彦)