ベアキットPC市場に新風! インテルの「DC3217IYE」が2か月連続で1位に
停滞が続いていたベアキットPC市場が、いま活気づいている。起爆剤は、新規参入したインテルが2012年11月下旬に発売した「DC3217IYE」だ。ベアキットPCの月間機種別ランキングで昨年12月、今年1月と2か月連続で1位を獲得。新興勢力によって、市場は活性化しつつある。
ベアキットPCは、CPUとメモリ、HDDの三つのパーツを省いた未完成のPCキット。これに好みのパーツを組み込むことで、手軽にPCを自作することができる。つまり、すべてのパーツを一から集めて組み立てる本格的な自作PCに対し、ベアキットは入門者向けの「自作PCキット」といえる。しかし、ここ数年、自作PCユーザーは減少傾向をたどり、ベアキットPC市場は勢いを欠いていた。
現在、ベアキットPC市場に参入しているメーカーは10社ほど。だが、市場シェアの8割近くをシャトル1社で占める寡占状態だった。そこへ、昨年10月、テークムが参入し、さらに、自作PC市場が活気づく年末に照準を合わせてインテルが「DC3217IYE」「DC3217BY」を引っ提げて参入した。このインテルが投下した「DC3217IYE」が、ベアキットPC市場活性の起爆剤となった。
「DC3217IYE」は、発売直後の2012年11月第4週(11月26日~12月2日)の機種別ランキングで1位に食い込み、その後も販売台数を伸ばした。12月と1月の月間機種別ランキングでは2か月連続で首位に立ち、2月に入っても首位をキープしている。
沈静化している市場に登場した新製品が売れ、ほかの製品のシェアを食うのはよくみられる現象だ。ところが今回の場合、インテルの「DC3217IYE」発売後、他社はシェアこそ落としたものの、販売台数はあまり変わっていない。つまり、これまでの市場規模にインテルの販売台数が上乗せになった状態だ。6月まで販売台数で前年割れだった市場は、12月には199.5%と2倍近くに躍進した。
近年のベアキットは小型・省スペース化が進み、さらにデザインも、スタイリッシュなキューブ型や縦置きの省スペース型、果てはコンポと見紛うようなオーディオライクなものまで、豊富なバリエーションが揃うようになった。個性的でスタイリッシュなデザインとすぐれた省スペース性は完成品のPCにはない魅力で、「自分だけの一台」を求めるユーザーなどに特に人気が高い。
そんなベアキットPCならではの魅力を凝縮したのが、インテルの「DC3217IYE」と「DC3217BY」だ。特徴は、手のひらに乗るほどのコンパクトなこと。幅116.6×奥行き112.0×高さ39.0mmという大きさで、3.5インチのハードディスクよりも小さい。
小さいながらもCPUには第3世代インテル Core i3-3217Uをオンボードで搭載し、グラフィックス機能はCPU内蔵のIntel HDグラフィックス 4000と、一般的な用途ならまず困ることはない実力をもっている。メモリはSO-DIMMソケットを2基搭載し、最大で16GBまでの拡張に対応する。
インテルでは、「DC3217IYE」や「DC3217BY」のような超小型のPC用フォームファクターを「Next Unit of Computing(NUC)」と呼び、新世代の小型コンピューティングデバイスとして位置づけている。マザーボードのサイズは約10cm×10cm×5cmと極めて小さく、この極小基板の上にmSATA対応のSSDを直接組み込むことができる。
これだけコンパクトだと、従来のPCでは考えられなかったさまざまな使用シーンが生まれてくる。例えば、省電力なので、ファイルサーバーやプリントサーバーなどとして使うには最適だ。通年で起動しっ放しのようなサーバー運用にも威力を発揮するだろう。
また、静音性も高く、HDMIコネクタを搭載しているので、USB接続式のハイビジョン対応のキャプチャユニットと組み合わせて、テレビの横に置いてハイビジョン録画・再生用のAVマシンにしたり、映像・音楽コンテンツを配信するホームサーバーとして使ったりしてもおもしろい。もちろん、究極の小ささを生かして、オフィスやビジネス用途で使うというのもありだ。一般的なオフィスユースであれば、まず性能面で物足りなさを感じることはない。
PC自作の入門用として、この「DC3217IYE」「DC3217BY」をチョイスしてもいい。メモリとSSDを組み込めば動く半完成状態のPCなので、「好みのパーツを組み込み、自分だけの一台を手に入れる」というPC自作の妙味を手軽に味わうことができる。すべてのパーツをチョイスする自作だと、パーツ同士の相性問題で悩まされることも少なくないが、こちらはそんなリスクも低い。PC自作の基礎を学ぶにあたって、実はこれほどわかりやすい教材はない。
ワイヤレス系のインターフェースも充実している。Wi-FiとBluetoothを標準で搭載するほか、インテルが提唱するPCと映像機器間のインターフェース「WiDi」も搭載。PC内の映像をテレビに転送することで、手軽にホームサーバーが実現する。また、WiDi対応プロジェクタなら、PC内の資料をワイヤレス転送してプレゼンテーションすることもできる。
超コンパクトなきょう体と必要十分な性能、そして充実のインターフェースで、PCの可能性を大きく広げてくれる「DC3217IYE」「DC3217IBY」。このすぐれたアレンジ性を生かして、より便利で快適なPCライフを実現してもらいたい。(ITジャーナリスト・市川昭彦)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコンやデジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
ベアキットPC市場の起爆剤、インテル「DC3217IYE」
ベアキットPCは、CPUとメモリ、HDDの三つのパーツを省いた未完成のPCキット。これに好みのパーツを組み込むことで、手軽にPCを自作することができる。つまり、すべてのパーツを一から集めて組み立てる本格的な自作PCに対し、ベアキットは入門者向けの「自作PCキット」といえる。しかし、ここ数年、自作PCユーザーは減少傾向をたどり、ベアキットPC市場は勢いを欠いていた。
現在、ベアキットPC市場に参入しているメーカーは10社ほど。だが、市場シェアの8割近くをシャトル1社で占める寡占状態だった。そこへ、昨年10月、テークムが参入し、さらに、自作PC市場が活気づく年末に照準を合わせてインテルが「DC3217IYE」「DC3217BY」を引っ提げて参入した。このインテルが投下した「DC3217IYE」が、ベアキットPC市場活性の起爆剤となった。
「DC3217IYE」は、発売直後の2012年11月第4週(11月26日~12月2日)の機種別ランキングで1位に食い込み、その後も販売台数を伸ばした。12月と1月の月間機種別ランキングでは2か月連続で首位に立ち、2月に入っても首位をキープしている。
沈静化している市場に登場した新製品が売れ、ほかの製品のシェアを食うのはよくみられる現象だ。ところが今回の場合、インテルの「DC3217IYE」発売後、他社はシェアこそ落としたものの、販売台数はあまり変わっていない。つまり、これまでの市場規模にインテルの販売台数が上乗せになった状態だ。6月まで販売台数で前年割れだった市場は、12月には199.5%と2倍近くに躍進した。
PCが手のひらに乗る! 新たな使い方を提案する「DC3217IYE」
近年のベアキットは小型・省スペース化が進み、さらにデザインも、スタイリッシュなキューブ型や縦置きの省スペース型、果てはコンポと見紛うようなオーディオライクなものまで、豊富なバリエーションが揃うようになった。個性的でスタイリッシュなデザインとすぐれた省スペース性は完成品のPCにはない魅力で、「自分だけの一台」を求めるユーザーなどに特に人気が高い。
そんなベアキットPCならではの魅力を凝縮したのが、インテルの「DC3217IYE」と「DC3217BY」だ。特徴は、手のひらに乗るほどのコンパクトなこと。幅116.6×奥行き112.0×高さ39.0mmという大きさで、3.5インチのハードディスクよりも小さい。
手のひらサイズの「DC3217IYE」
小さいながらもCPUには第3世代インテル Core i3-3217Uをオンボードで搭載し、グラフィックス機能はCPU内蔵のIntel HDグラフィックス 4000と、一般的な用途ならまず困ることはない実力をもっている。メモリはSO-DIMMソケットを2基搭載し、最大で16GBまでの拡張に対応する。
左が「DC3217IYE」、右が「DC3217BY」
インテルでは、「DC3217IYE」や「DC3217BY」のような超小型のPC用フォームファクターを「Next Unit of Computing(NUC)」と呼び、新世代の小型コンピューティングデバイスとして位置づけている。マザーボードのサイズは約10cm×10cm×5cmと極めて小さく、この極小基板の上にmSATA対応のSSDを直接組み込むことができる。
10cm四方の小さなマザーボード
これだけコンパクトだと、従来のPCでは考えられなかったさまざまな使用シーンが生まれてくる。例えば、省電力なので、ファイルサーバーやプリントサーバーなどとして使うには最適だ。通年で起動しっ放しのようなサーバー運用にも威力を発揮するだろう。
また、静音性も高く、HDMIコネクタを搭載しているので、USB接続式のハイビジョン対応のキャプチャユニットと組み合わせて、テレビの横に置いてハイビジョン録画・再生用のAVマシンにしたり、映像・音楽コンテンツを配信するホームサーバーとして使ったりしてもおもしろい。もちろん、究極の小ささを生かして、オフィスやビジネス用途で使うというのもありだ。一般的なオフィスユースであれば、まず性能面で物足りなさを感じることはない。
PC自作の入門用として、この「DC3217IYE」「DC3217BY」をチョイスしてもいい。メモリとSSDを組み込めば動く半完成状態のPCなので、「好みのパーツを組み込み、自分だけの一台を手に入れる」というPC自作の妙味を手軽に味わうことができる。すべてのパーツをチョイスする自作だと、パーツ同士の相性問題で悩まされることも少なくないが、こちらはそんなリスクも低い。PC自作の基礎を学ぶにあたって、実はこれほどわかりやすい教材はない。
ワイヤレス系のインターフェースも充実している。Wi-FiとBluetoothを標準で搭載するほか、インテルが提唱するPCと映像機器間のインターフェース「WiDi」も搭載。PC内の映像をテレビに転送することで、手軽にホームサーバーが実現する。また、WiDi対応プロジェクタなら、PC内の資料をワイヤレス転送してプレゼンテーションすることもできる。
超コンパクトなきょう体と必要十分な性能、そして充実のインターフェースで、PCの可能性を大きく広げてくれる「DC3217IYE」「DC3217IBY」。このすぐれたアレンジ性を生かして、より便利で快適なPCライフを実現してもらいたい。(ITジャーナリスト・市川昭彦)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコンやデジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。