<家電激戦区を歩く>広島・広島市(2) お客様の「体験」がポイント 固定客の確保にあの手この手
広島市はほかの地域に比べ、家電製品の購入に際して複数の店舗を回って価格を比較する「買い回り」が少ないという。つまり、店舗につく「固定客」が多く、この多寡が収益を左右する。こうした環境下で、家電量販店は品揃えを競うだけでなく、製品を実際に体験できるコーナーの充実に力を注ぎ、一方、パソコン専門店は主力のパソコンで家電量販店との差異化を図っている。(取材・文/佐相彰彦)
→広島・広島市(1)から読む
<店舗>
エディオンは、2012年6月22日、紙屋町のデオデオ本店(現エディオン広島本店)の隣に、売り場面積約7260m2の新館をオープンした。さらに、10月26日には本店の本館を全面改装。本館が地下2階から地上8階まで、新館が地下1階から地上10階で、売り場面積は本館と新館合わせて約1万5510m2という大型店舗に生まれ変わった。山田誠店長は、「各フロアで生活シーンを演出し、デモコーナーの充実などでお客様に楽しさを伝えている」と自信をみせる。
ヤマダ電機も同じ6月22日、八丁堀にLABI広島をオープン。新天地のテックランド広島中央本店を3月に閉店し、都市型店舗の「LABI」に変えて再スタートを切った。売り場面積は約1万2230m2と、こちらも広い。約7500m2だったテックランド広島中央本店の1.6倍強だ。1階から5階までがLABI広島で、6~11階にはユニクロや書店、飲食店などが入っている。ヤマダ電機にとっては、中国地方で「LABI」を出店するのは広島が初めて。高橋圭一副店長は、「楽しい売り場づくりという『LABI』のコンセプトにもとづきながら、『テックランド』で培ってきた地域密着にも力を入れている」という。
ビックカメラグループのコジマは、昨年10月22日にNEW広島インター緑井店をリニューアル。ビックカメラが得意とするデジタルカメラや交換レンズ、三脚、ケース、アクセサリなど周辺機器の拡充を図った。さらには玩具の販売も開始。加藤竜治店長は、「商品数が倍になって、他の郊外店に負けない品揃えになった」とアピールする。
パソコン工房は、中区大手町の広島店を13年1月14日に閉めて、西区の広島商工センター店の1店舗体制に整備。田邊綱一店長は、「閉店した広島店のお客様が当店に来店してくれている」という。その大手町に店を構えるドスパラ広島店は、「競合がいなくなった分、新規のお客様を確実に確保できる」(原輝幸店長代理)と満足げだ。
【売り場】
広島市内の家電量販店の多くは、製品デモの充実に力を入れている。お客様に製品の機能や使い勝手を実際に体験してもらって、納得して製品を購入していただくことが最大の目的だが、もう一つ理由がある。「お客様がさまざまなデモを楽しく見て歩いて、また来店したいと思うことが重要」(エディオン広島本店の山田店長)。お客様に長時間滞在してもらうことが、固定客への第一歩と判断しているのだ。
山田店長は、「デモで製品を比較することがポイント」という。例えばパソコンコーナーには、Windows XPを搭載した旧モデルとWindows 8搭載の最新モデルを設置。「OSの異なるモデルで動画を配信すると、圧倒的に新モデルのほうが速く、きれいだということがわかる。Windows XP搭載機をお持ちのお客様はまだまだ多いので、パソコンが進化していることを理解していただき、購入に結びつけている」という。また、炊飯器のコーナーでは、メーカーによって炊き上がりが異なることをアピールするために、実際に炊いたご飯をお客様に試食してもらっている。「お客様によって、好きなご飯の炊き具合は異なる。試食は、製品を購入してから後悔させないようにするため」と、山田店長は説明する。
ヤマダ電機LABI広島では、他店よりも早い最新製品の展示・デモに力を入れている。その一つが、4Kに対応した液晶テレビだ。高橋副店長は、「2014年7月に4K放送が始まるということで、高画質を体験したいというお客様が多く訪れる。高精細画像に驚かれるお客様が多い」という。またデジタルカメラコーナーでは、フィギュアなどを設置して、実際に撮影してもらっている。
リニューアルによってビックカメラとのコラボレーションコーナーを設置しているのは、コジマNEW広島インター緑井店。デジタル一眼のレンズが充実しているほか、さまざまなデジタルカメラの撮影を体験できる。加藤店長は、「全体の売り上げのなかで、デジタルカメラ関連の構成比が高まっている。リニューアル前の2~3倍になった」と効果に自信をみせている。
【品揃え】
広島市は市街地・郊外とも比較的大型の家電量販店が多く、どの店舗も品揃えは充実している。広島市で最も売り上げがあるといわれているエディオン広島本店は、売り場面積が市内最大ということもあって、商品数もトップレベル。とくに、現在の売れ筋であるスマートフォンは、本館と新館の2館でそれぞれ1階の1フロアを使い切るほどの充実の品揃えを誇る。
このエディオン広島本店に対抗しているのがヤマダ電機LABI広島で、「何でも揃っている」(高橋副店長)ことを掲げて品揃えの充実を図っている。
郊外店のコジマNEW広島インター緑井店でも、「他店との競争に勝つために、商品数にはこだわっている」(加藤店長)としており、出入口から店内の奥まで見渡せるぎりぎりの範囲まで商品を積み上げるレイアウトで、展示商品を増やしている。
一方、家電量販店よりも売り場面積が狭いパソコン専門店では、主力のパソコンに絞って家電量販店と対抗。ドスパラ広島店では、自社ブランドパソコン「ガレリア」で、メーカー製品に負けない性能と価格をアピール。原店長代理は、「『ガレリア』の性能を理解していただくための展示に力を入れている」という。例えばオンラインゲームの体験コーナーでスムーズにゲームが楽しめることを訴えたり、複数の画面で画像編集ソフト「Photoshop」で作業を効率化したりするデモを行っている。
パソコン工房広島商工センター店では、中古品の販売が好調。品揃えの充実に向けて、「当店での買取りだけでなく、近隣県のパソコン工房からも商品を調達している」(田邊綱一店長)という。この取り組みによって、全国のパソコン工房のなかでも中古品の売上高はトップだという。
→広島・広島市(3)に続く(2013年3月4日掲載)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年2月18日付 vol.1469より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは
→広島・広島市(1)から読む
<店舗>
エディオンとヤマダが旗艦店を強化 コジマは郊外店をリニューアル
エディオンは、2012年6月22日、紙屋町のデオデオ本店(現エディオン広島本店)の隣に、売り場面積約7260m2の新館をオープンした。さらに、10月26日には本店の本館を全面改装。本館が地下2階から地上8階まで、新館が地下1階から地上10階で、売り場面積は本館と新館合わせて約1万5510m2という大型店舗に生まれ変わった。山田誠店長は、「各フロアで生活シーンを演出し、デモコーナーの充実などでお客様に楽しさを伝えている」と自信をみせる。
エディオン広島本店のフロア構成
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ヤマダ電機も同じ6月22日、八丁堀にLABI広島をオープン。新天地のテックランド広島中央本店を3月に閉店し、都市型店舗の「LABI」に変えて再スタートを切った。売り場面積は約1万2230m2と、こちらも広い。約7500m2だったテックランド広島中央本店の1.6倍強だ。1階から5階までがLABI広島で、6~11階にはユニクロや書店、飲食店などが入っている。ヤマダ電機にとっては、中国地方で「LABI」を出店するのは広島が初めて。高橋圭一副店長は、「楽しい売り場づくりという『LABI』のコンセプトにもとづきながら、『テックランド』で培ってきた地域密着にも力を入れている」という。
ビックカメラグループのコジマは、昨年10月22日にNEW広島インター緑井店をリニューアル。ビックカメラが得意とするデジタルカメラや交換レンズ、三脚、ケース、アクセサリなど周辺機器の拡充を図った。さらには玩具の販売も開始。加藤竜治店長は、「商品数が倍になって、他の郊外店に負けない品揃えになった」とアピールする。
パソコン工房は、中区大手町の広島店を13年1月14日に閉めて、西区の広島商工センター店の1店舗体制に整備。田邊綱一店長は、「閉店した広島店のお客様が当店に来店してくれている」という。その大手町に店を構えるドスパラ広島店は、「競合がいなくなった分、新規のお客様を確実に確保できる」(原輝幸店長代理)と満足げだ。
【売り場】
魅力あるデモで店内回遊を促進 新旧製品の比較で販売につなげる
広島市内の家電量販店の多くは、製品デモの充実に力を入れている。お客様に製品の機能や使い勝手を実際に体験してもらって、納得して製品を購入していただくことが最大の目的だが、もう一つ理由がある。「お客様がさまざまなデモを楽しく見て歩いて、また来店したいと思うことが重要」(エディオン広島本店の山田店長)。お客様に長時間滞在してもらうことが、固定客への第一歩と判断しているのだ。
山田店長は、「デモで製品を比較することがポイント」という。例えばパソコンコーナーには、Windows XPを搭載した旧モデルとWindows 8搭載の最新モデルを設置。「OSの異なるモデルで動画を配信すると、圧倒的に新モデルのほうが速く、きれいだということがわかる。Windows XP搭載機をお持ちのお客様はまだまだ多いので、パソコンが進化していることを理解していただき、購入に結びつけている」という。また、炊飯器のコーナーでは、メーカーによって炊き上がりが異なることをアピールするために、実際に炊いたご飯をお客様に試食してもらっている。「お客様によって、好きなご飯の炊き具合は異なる。試食は、製品を購入してから後悔させないようにするため」と、山田店長は説明する。
エディオン広島本店ではパソコンコーナーで新旧モデルの差がわかるデモを、炊飯器コーナーでは試食を実施
ヤマダ電機LABI広島では、他店よりも早い最新製品の展示・デモに力を入れている。その一つが、4Kに対応した液晶テレビだ。高橋副店長は、「2014年7月に4K放送が始まるということで、高画質を体験したいというお客様が多く訪れる。高精細画像に驚かれるお客様が多い」という。またデジタルカメラコーナーでは、フィギュアなどを設置して、実際に撮影してもらっている。
リニューアルによってビックカメラとのコラボレーションコーナーを設置しているのは、コジマNEW広島インター緑井店。デジタル一眼のレンズが充実しているほか、さまざまなデジタルカメラの撮影を体験できる。加藤店長は、「全体の売り上げのなかで、デジタルカメラ関連の構成比が高まっている。リニューアル前の2~3倍になった」と効果に自信をみせている。
コジマNEW広島インター緑井店は、リニューアルでビックカメラとコラボレーションしたデジタルカメラのコーナーを設置
【品揃え】
パソコンの販売では負けない スマートフォンの品揃えで集客
広島市は市街地・郊外とも比較的大型の家電量販店が多く、どの店舗も品揃えは充実している。広島市で最も売り上げがあるといわれているエディオン広島本店は、売り場面積が市内最大ということもあって、商品数もトップレベル。とくに、現在の売れ筋であるスマートフォンは、本館と新館の2館でそれぞれ1階の1フロアを使い切るほどの充実の品揃えを誇る。
このエディオン広島本店に対抗しているのがヤマダ電機LABI広島で、「何でも揃っている」(高橋副店長)ことを掲げて品揃えの充実を図っている。
ヤマダ電機LABI広島に設置してある4K対応液晶テレビ。その高精細映像に多くの来店者が関心を示すという
郊外店のコジマNEW広島インター緑井店でも、「他店との競争に勝つために、商品数にはこだわっている」(加藤店長)としており、出入口から店内の奥まで見渡せるぎりぎりの範囲まで商品を積み上げるレイアウトで、展示商品を増やしている。
一方、家電量販店よりも売り場面積が狭いパソコン専門店では、主力のパソコンに絞って家電量販店と対抗。ドスパラ広島店では、自社ブランドパソコン「ガレリア」で、メーカー製品に負けない性能と価格をアピール。原店長代理は、「『ガレリア』の性能を理解していただくための展示に力を入れている」という。例えばオンラインゲームの体験コーナーでスムーズにゲームが楽しめることを訴えたり、複数の画面で画像編集ソフト「Photoshop」で作業を効率化したりするデモを行っている。
ドスパラ広島店ではパソコンの性能をアピールする展示が多い
パソコン工房広島商工センター店では、中古品の販売が好調。品揃えの充実に向けて、「当店での買取りだけでなく、近隣県のパソコン工房からも商品を調達している」(田邊綱一店長)という。この取り組みによって、全国のパソコン工房のなかでも中古品の売上高はトップだという。
パソコン工房広島商工センター店では中古品の販売が好調
→広島・広島市(3)に続く(2013年3月4日掲載)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年2月18日付 vol.1469より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは