<家電激戦区を歩く>広島・広島市(1) 好条件が揃った地方中核都市 世帯数の増加で郊外が活性化
広島市は、中国地方の中核都市として県内外から訪れるビジネス客・観光客が増えており、市内中心部は活気を帯びている。郊外もマンションの新築で人口が増え、大型ショッピングセンターの出店と相まって活況を呈している。家電量販店やパソコン専門店にとって好条件が揃った地域で、大手家電量販店やパソコン専門店の出店が進んでいる。広島市はエディオングループの一翼を担ってきたデオデオの本拠地。エディオンの知名度・シェアが圧倒的に高い地域で、その牙城を崩そうとするライバル店との間で競争が激化している状況だ。(取材・文/佐相彰彦)
<街の全体像>
広島市によれば、市の人口は2012年12月の時点で118万4517人/53万5017世帯。前年から人口で2.0%、世帯数で3.2%増えている。新築マンションの建設が相次いで、市外からの流入が進んだためだ。また、中国・四国地区を統括する支社・支店を置く企業が多く、単身赴任者が多いことも特徴となっている。
観光や出張では、JR山陽新幹線の広島駅や、リムジンバスで約1時間の広島空港が入口となる。市内には、原爆ドームや平和記念公園、広島城などの観光地があるほか、路面電車など公共交通機関が充実しているので、廿日市市宮島にある世界遺産の厳島神社など、周辺観光地に訪れるための拠点にもなっている。2011年の観光客数は前年比1.0%増の1067万3000人。2005年から7年連続で1000万人を超えた。観光消費額は前年比1.1%増の1493億円、一人あたりの消費額は1万3990円で増加傾向にある。
市内の商圏は、中心部は広島駅前・紙屋町・八丁堀の3エリア。住民がショッピングを目的に訪れるのが紙屋町と八丁堀だ。紙屋町にはそごう広島店があって、多くの買い物客が訪れるだけでなく、交通の便がいいオフィス街でもある。空港からのリムジンバスや地方からの高速バスなどの発着場となる広島バスセンターがあり、観光客で賑わっている。八丁堀には広島三越と広島パルコがあり、JR広島駅前は、新幹線で訪れた出張の会社員や観光客などで賑わっている。
一方で、地方都市の常としてクルマ社会でもある広島市は、郊外でショッピングを済ませる住民も多い。イオンなどの大型ショッピングセンターの出店が相次ぎ、休日は多くの来訪者で混雑している。
家電量販店では、かつてデオデオの名で親しまれていたエディオンの知名度が最も高い。1947年5月、第一産業の社名で設立して紙屋町に1号店を出店。現在はエディオン広島本店として、昨年6月に新館をオープンした。10月には本館をリニューアルして、本館・新館合わせて売り場面積約1万5510m2という市内最大の店舗としてグランドオープンしている。また、同社は市内に直営店が10店舗程度、フランチャイズ(FC)を含めて約50店舗を展開し、名実ともに地域トップの座を築いている。
その実力者に挑むのが全国トップシェアを誇るヤマダ電機だ。新天地にあったテックランド広島本店を昨年3月に閉店し、6月にすぐ近くの天満屋広島八丁堀店跡地という好立地に、1万2230m2と旧店舗の1.5倍以上の売り場面積をもつLABI広島をオープンし、シェアの拡大を狙っている。
エディオンとヤマダ電機は、ほかの地区でも競争を繰り広げている。南区には徒歩5分以内の距離にエディオンがアルパーク南店、ヤマダ電機がテックランドアルパーク前店を構える。佐伯区にはエディオン五日市店とテックランド佐伯店があり、安佐南区のエディオン八木店とテックランド八木店は目と鼻の先。エディオンは、さらに沼田店と祇園店というドミナント出店(地域集中型多店舗展開)でシェア拡大を図っている。
市内の家電量販店は、エディオンがFCを含めて約50店舗、ヤマダ電機が4店舗のほか、ヤマダ電機グループのベスト電器が1店舗、ビックカメラグループのコジマが2店舗とソフマップが1店舗。またパソコン専門店では、ドスパラが1店舗、ユニットコムがパソコン工房1店舗などを展開している。各店舗とも、広島市の特性に対応しながら、自社の強みを生かして売上増に力を注いでいる。
固定客確保がシェア拡大に貢献 駅前にはビックカメラが出店予定
クロスの得平司代表取締役は、広島市の特性について、「中心部では、複数店舗を見て回って安いほうで購入する『買い回り』が少ない」という。エディオン広島本店で家電を購入するお客様は、他店より価格が高くても、エディオンのサポート・サービスを評価して購入しているということだ。「エディオンに限らず、ほかの家電量販店もサービスの充実を図って、いかにファン(固定客)を確保するかがシェア拡大のカギを握る」と説明する。
一方、郊外では「休日には住民が近くのショッピングセンターで買い物する構図が明確になっている」という。このため、例えば大型ショッピングセンターの近くなどに家電量販店が出店する可能性がある。「工場の跡地を含めて郊外にはまだ土地がある。広島市にまだ出店していない家電量販店の新規出店があるのではないか」と分析。新規参入する家電量販店が増えれば、郊外での競争が激しくなる可能性がある。
このような現象でダメージを被るのは市内中心部だ。「中心部は地盤沈下が進みつつある。駅前、紙屋町、八丁堀の3エリアは、街全体で活性化を図ることがポイント」と得平氏は指摘する。街の集客を高めるための取り組みの一つとして、「家電量販店をはじめ、百貨店や飲食店、アパレルなど異業種間による連携の強化」を挙げる。
駅前は都市開発が進んでおり、2016年には広島駅南口Bブロック市街地再開発事業に伴って、ビックカメラが出店を予定している。これによって、中心部ではエディオンとヤマダ電機、ビックカメラの3強が競争を繰り広げることになる。
→広島・広島市(2)に続く(2013年2月25日掲載)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年2月11日付 vol.1468より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは
<街の全体像>
人口・世帯数ともに増加している広島市
商圏は中心部で3エリアと郊外
広島市によれば、市の人口は2012年12月の時点で118万4517人/53万5017世帯。前年から人口で2.0%、世帯数で3.2%増えている。新築マンションの建設が相次いで、市外からの流入が進んだためだ。また、中国・四国地区を統括する支社・支店を置く企業が多く、単身赴任者が多いことも特徴となっている。
観光や出張では、JR山陽新幹線の広島駅や、リムジンバスで約1時間の広島空港が入口となる。市内には、原爆ドームや平和記念公園、広島城などの観光地があるほか、路面電車など公共交通機関が充実しているので、廿日市市宮島にある世界遺産の厳島神社など、周辺観光地に訪れるための拠点にもなっている。2011年の観光客数は前年比1.0%増の1067万3000人。2005年から7年連続で1000万人を超えた。観光消費額は前年比1.1%増の1493億円、一人あたりの消費額は1万3990円で増加傾向にある。
市内の商圏は、中心部は広島駅前・紙屋町・八丁堀の3エリア。住民がショッピングを目的に訪れるのが紙屋町と八丁堀だ。紙屋町にはそごう広島店があって、多くの買い物客が訪れるだけでなく、交通の便がいいオフィス街でもある。空港からのリムジンバスや地方からの高速バスなどの発着場となる広島バスセンターがあり、観光客で賑わっている。八丁堀には広島三越と広島パルコがあり、JR広島駅前は、新幹線で訪れた出張の会社員や観光客などで賑わっている。
一方で、地方都市の常としてクルマ社会でもある広島市は、郊外でショッピングを済ませる住民も多い。イオンなどの大型ショッピングセンターの出店が相次ぎ、休日は多くの来訪者で混雑している。
エディオンにヤマダ電機が挑む
家電量販店では、かつてデオデオの名で親しまれていたエディオンの知名度が最も高い。1947年5月、第一産業の社名で設立して紙屋町に1号店を出店。現在はエディオン広島本店として、昨年6月に新館をオープンした。10月には本館をリニューアルして、本館・新館合わせて売り場面積約1万5510m2という市内最大の店舗としてグランドオープンしている。また、同社は市内に直営店が10店舗程度、フランチャイズ(FC)を含めて約50店舗を展開し、名実ともに地域トップの座を築いている。
その実力者に挑むのが全国トップシェアを誇るヤマダ電機だ。新天地にあったテックランド広島本店を昨年3月に閉店し、6月にすぐ近くの天満屋広島八丁堀店跡地という好立地に、1万2230m2と旧店舗の1.5倍以上の売り場面積をもつLABI広島をオープンし、シェアの拡大を狙っている。
エディオンとヤマダ電機は、ほかの地区でも競争を繰り広げている。南区には徒歩5分以内の距離にエディオンがアルパーク南店、ヤマダ電機がテックランドアルパーク前店を構える。佐伯区にはエディオン五日市店とテックランド佐伯店があり、安佐南区のエディオン八木店とテックランド八木店は目と鼻の先。エディオンは、さらに沼田店と祇園店というドミナント出店(地域集中型多店舗展開)でシェア拡大を図っている。
市内の家電量販店は、エディオンがFCを含めて約50店舗、ヤマダ電機が4店舗のほか、ヤマダ電機グループのベスト電器が1店舗、ビックカメラグループのコジマが2店舗とソフマップが1店舗。またパソコン専門店では、ドスパラが1店舗、ユニットコムがパソコン工房1店舗などを展開している。各店舗とも、広島市の特性に対応しながら、自社の強みを生かして売上増に力を注いでいる。
固定客確保がシェア拡大に貢献 駅前にはビックカメラが出店予定
――クロス 得平司代表取締役
クロスの得平司代表取締役は、広島市の特性について、「中心部では、複数店舗を見て回って安いほうで購入する『買い回り』が少ない」という。エディオン広島本店で家電を購入するお客様は、他店より価格が高くても、エディオンのサポート・サービスを評価して購入しているということだ。「エディオンに限らず、ほかの家電量販店もサービスの充実を図って、いかにファン(固定客)を確保するかがシェア拡大のカギを握る」と説明する。
一方、郊外では「休日には住民が近くのショッピングセンターで買い物する構図が明確になっている」という。このため、例えば大型ショッピングセンターの近くなどに家電量販店が出店する可能性がある。「工場の跡地を含めて郊外にはまだ土地がある。広島市にまだ出店していない家電量販店の新規出店があるのではないか」と分析。新規参入する家電量販店が増えれば、郊外での競争が激しくなる可能性がある。
このような現象でダメージを被るのは市内中心部だ。「中心部は地盤沈下が進みつつある。駅前、紙屋町、八丁堀の3エリアは、街全体で活性化を図ることがポイント」と得平氏は指摘する。街の集客を高めるための取り組みの一つとして、「家電量販店をはじめ、百貨店や飲食店、アパレルなど異業種間による連携の強化」を挙げる。
駅前は都市開発が進んでおり、2016年には広島駅南口Bブロック市街地再開発事業に伴って、ビックカメラが出店を予定している。これによって、中心部ではエディオンとヤマダ電機、ビックカメラの3強が競争を繰り広げることになる。
→広島・広島市(2)に続く(2013年2月25日掲載)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年2月11日付 vol.1468より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは