インクジェットプリンタ、Wi-Fi対応モデルが8割を超える、年賀状需要も健在
家庭用インクジェットプリンタは、1台でプリント・スキャン・コピーのすべてができる「複合機」が主流。A4対応モデルに限ると、「オールインワンプリンタ」とも呼ばれる複合機が9割以上を占め、プリント機能だけの単機能機は1割未満にとどまる。そのインクジェットプリンタが、1年で最も多く売れるのが12月だ。2012年も例外ではなく、12月半ばから年明けにかけて大量に売れた。
家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、単機能プリンタを含めたインクジェットプリンタの販売台数は、2012年11月第3週(11月19~25日)以降、大きく伸び、12月第4週(12月24~30日)をピークにそれ以前の水準に戻った。時期からみて、年賀状を印刷するために購入した人が多いと思われる。メールやメッセージアプリなど、ハガキ以外の連絡手段が一般化したことで、若年層を中心に年賀状を出さない人が増えているといわれているが、それでも年賀状が関連市場に与える影響は大きく、まだまだプリンタ購入の最大のきっかけになっているようだ。
現在主流のインクジェット複合機(オールインワンプリンタ)の販売台数は、東日本大震災が発生した2011年3月を除き、2010年12月から2012年10月まで、前年超えが続いていた。11月は前年同月比92.6%と落ち込んだが、12月は102.3%と持ち直した。
好調が続いた第一の要因は、数年前に購入した古いプリンタが買替えの時期に入ったからだろう。スマートフォンの普及を受けて、これまで上位モデルしか対応していなかった無線LAN(Wi-Fi)機能がスタンダードモデルや一部の廉価モデルにもつくようになって、選択の幅が広がった。本体はより小型になり、一部の機種はインテリアに合わせてカラーを選ぶことができるなど、買替えのメリットは大きい。
インクジェットプリンタを選ぶときは、インクの数や種類、解像度、印刷スピードなどの基本スペックに加えて、スマートフォンやノートPCなどからワイヤレスでプリントできる「無線LAN(Wi-Fi)」と、ネットワークプリンタとして使える「有線LAN」に対応しているかをチェックしよう。2012年12月のインクジェット複合機のWi-Fi対応率は81.0%、有線LAN対応率は56.5%。両方に対応する割合も5割を超え、Wi-Fiに関しては標準仕様になりつつある。価格重視で選ぶなら、プリンタ本体だけではなく、1枚あたりの印刷コストやメーカー純正の詰替えインクなどの価格を事前に調べ、トータルコストで判断したい。
2012年のインクジェット複合機の年間メーカー別販売台数1位はエプソン(42.3%)だった。2位はキヤノン(40.3%)、3位は、2012年秋発売モデルからブランド名を「PRIVIO(プリビオ)」に一新したブラザー(11.2%)だった。1位と2位は僅差だが、2位と3位はだいぶ離れている。
カラーバリエーションを合算した2012年12月のインクジェット複合機のシリーズ販売台数1位は、エプソンの「EP-805A」(22.8%)、2位はキヤノンの「PIXUS MG6330」(20.7%)で、この2機種だけで43.5%を占めた。どちらもWi-Fi、有線LAN、レーベルプリント、自動両面プリントなどに対応した6色インクのオールインワンモデルだ。スペックを比較すると、出力解像度とインク・用紙を合わせた印刷コスト(L判フチなし・標準インク使用時)は、1枚あたり約22円の「MG6330」(「EP-805A」は約26.7円)に、印刷スピードは最短約14秒の「EP-805A」(「MG6330」は約18秒)に軍配が上がる。
3位はキヤノンの「PIXUS MG3230」、4位はエプソンの「PX-405A」だった。どちらも4色インクの廉価モデルだが、「MG3230」はWi-Fiと自動両面プリントに対応している。
エプソン、キヤノン以外では、唯一7位にブラザーの「DCP-J940N」が入った。この機種から取扱説明書などを省いて価格を抑えたエコモデル「DCP-J940N-ECO」も一部店舗で販売されており、合算するとシェアは2.8%から3.8%にアップする。画質を左右するインク数は4色だが、「EP-805A」「MG6330」同様、Wi-Fiや有線LAN、レーベルプリントなどに対応し、FAX非対応の複合機では珍しくADF(自動原稿送り装置)を備える。インク数が少ないぶん、本体価格は安く、インク・用紙を合わせた1枚あたりの印刷コストも約18.8円と、主要3社の売れ筋モデルの中では最安だ。
ここまでは2012年12月のデータにもとづいた話をしてきたが、実は1月に入って、1位・2位だった「EP-805A」「MG6330」のシェアが若干下がり、売れ筋がややバラけてきている。年末の時点より、全体的に価格も下がった。
筆者は、この年末、年賀状印刷のために、あわててプリンタを買いに走った駆込み購入者の一人だ。1月になれば同じ製品が安く買えるとわかってはいたが、手持ちのプリンタが故障してしまったので、やむを得ず買い替えた。
Wi-Fiで接続するメリットは、プリンタ本体の電源を入れておけば、無線LANの電波が届く範囲ならどこでもプリントができること。実際に、手持ちの端末からプリントしてみて、あまりの簡単さ、手軽さに感激した。スマートフォン・タブレット端末からプリントしたい方や、家族と1台のプリンタを共同で使用する場合は、Wi-Fi対応モデルをオススメしたい。手持ちのプリンタに不満があるなら、買い替えを検討してはいかがだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、単機能プリンタを含めたインクジェットプリンタの販売台数は、2012年11月第3週(11月19~25日)以降、大きく伸び、12月第4週(12月24~30日)をピークにそれ以前の水準に戻った。時期からみて、年賀状を印刷するために購入した人が多いと思われる。メールやメッセージアプリなど、ハガキ以外の連絡手段が一般化したことで、若年層を中心に年賀状を出さない人が増えているといわれているが、それでも年賀状が関連市場に与える影響は大きく、まだまだプリンタ購入の最大のきっかけになっているようだ。
好調が続くプリンタ 要因は買替え需要の高まりとWi-Fi対応モデルの拡大
現在主流のインクジェット複合機(オールインワンプリンタ)の販売台数は、東日本大震災が発生した2011年3月を除き、2010年12月から2012年10月まで、前年超えが続いていた。11月は前年同月比92.6%と落ち込んだが、12月は102.3%と持ち直した。
好調が続いた第一の要因は、数年前に購入した古いプリンタが買替えの時期に入ったからだろう。スマートフォンの普及を受けて、これまで上位モデルしか対応していなかった無線LAN(Wi-Fi)機能がスタンダードモデルや一部の廉価モデルにもつくようになって、選択の幅が広がった。本体はより小型になり、一部の機種はインテリアに合わせてカラーを選ぶことができるなど、買替えのメリットは大きい。
インクジェットプリンタを選ぶときは、インクの数や種類、解像度、印刷スピードなどの基本スペックに加えて、スマートフォンやノートPCなどからワイヤレスでプリントできる「無線LAN(Wi-Fi)」と、ネットワークプリンタとして使える「有線LAN」に対応しているかをチェックしよう。2012年12月のインクジェット複合機のWi-Fi対応率は81.0%、有線LAN対応率は56.5%。両方に対応する割合も5割を超え、Wi-Fiに関しては標準仕様になりつつある。価格重視で選ぶなら、プリンタ本体だけではなく、1枚あたりの印刷コストやメーカー純正の詰替えインクなどの価格を事前に調べ、トータルコストで判断したい。
エプソン、キヤノンの2強を追うブラザー それぞれ主力機種に人気集中
2012年のインクジェット複合機の年間メーカー別販売台数1位はエプソン(42.3%)だった。2位はキヤノン(40.3%)、3位は、2012年秋発売モデルからブランド名を「PRIVIO(プリビオ)」に一新したブラザー(11.2%)だった。1位と2位は僅差だが、2位と3位はだいぶ離れている。
順位 | メーカー | 型番・シリーズ名 | インク数 | Wi-Fi | 有線LAN | 販売台数 シェア(%) |
1 | エプソン | EP-805A | 6 | ○ | ○ | 22.8 |
2 | キヤノン | PIXUS MG6330 | 6 | ○ | ○ | 20.7 |
3 | キヤノン | PIXUS MG3230 | 4 | ○ | - | 11.0 |
4 | エプソン | PX-405A | 4 | - | - | 9.2 |
5 | エプソン | EP-705A | 6 | - | - | 4.8 |
6 | キヤノン | PIXUS MG4230 | 4 | ○ | - | 3.9 |
7 | ブラザー | DCP-J940N | 4 | ○ | ○ | 2.8 |
8 | エプソン | PX-045A | 4 | - | - | 2.6 |
9 | キヤノン | PIXUS MG5430 | 5 | ○ | - | 2.2 |
10 | キヤノン | PIXUS MG6230 | 6 | ○ | ○ | 1.7 |
「BCNランキング」2012年12月 月次<最大パネル>
カラーバリエーションを合算した2012年12月のインクジェット複合機のシリーズ販売台数1位は、エプソンの「EP-805A」(22.8%)、2位はキヤノンの「PIXUS MG6330」(20.7%)で、この2機種だけで43.5%を占めた。どちらもWi-Fi、有線LAN、レーベルプリント、自動両面プリントなどに対応した6色インクのオールインワンモデルだ。スペックを比較すると、出力解像度とインク・用紙を合わせた印刷コスト(L判フチなし・標準インク使用時)は、1枚あたり約22円の「MG6330」(「EP-805A」は約26.7円)に、印刷スピードは最短約14秒の「EP-805A」(「MG6330」は約18秒)に軍配が上がる。
エプソンの「EP-805A」。3色のカラーバリエーションのうち、2012年12月はホワイト、ブラック、レッドの順に売れた
3位はキヤノンの「PIXUS MG3230」、4位はエプソンの「PX-405A」だった。どちらも4色インクの廉価モデルだが、「MG3230」はWi-Fiと自動両面プリントに対応している。
5色のカラーバリエーションをもつキヤノンの「PIXUS MG6330」(写真はブラック)と「MG3230」。「MG6330」は、2012年12月は、5色のうち、ホワイト、ブラック、パープル、ブルー、グリーンの順に売れた
エプソン、キヤノン以外では、唯一7位にブラザーの「DCP-J940N」が入った。この機種から取扱説明書などを省いて価格を抑えたエコモデル「DCP-J940N-ECO」も一部店舗で販売されており、合算するとシェアは2.8%から3.8%にアップする。画質を左右するインク数は4色だが、「EP-805A」「MG6330」同様、Wi-Fiや有線LAN、レーベルプリントなどに対応し、FAX非対応の複合機では珍しくADF(自動原稿送り装置)を備える。インク数が少ないぶん、本体価格は安く、インク・用紙を合わせた1枚あたりの印刷コストも約18.8円と、主要3社の売れ筋モデルの中では最安だ。
ブラザーの「DCP-J940N」。カラーはブラックとホワイトの2色
価格が下がったいまが買いどき! 簡単・便利なWi-Fi対応モデルがオススメ
ここまでは2012年12月のデータにもとづいた話をしてきたが、実は1月に入って、1位・2位だった「EP-805A」「MG6330」のシェアが若干下がり、売れ筋がややバラけてきている。年末の時点より、全体的に価格も下がった。
筆者は、この年末、年賀状印刷のために、あわててプリンタを買いに走った駆込み購入者の一人だ。1月になれば同じ製品が安く買えるとわかってはいたが、手持ちのプリンタが故障してしまったので、やむを得ず買い替えた。
Wi-Fiで接続するメリットは、プリンタ本体の電源を入れておけば、無線LANの電波が届く範囲ならどこでもプリントができること。実際に、手持ちの端末からプリントしてみて、あまりの簡単さ、手軽さに感激した。スマートフォン・タブレット端末からプリントしたい方や、家族と1台のプリンタを共同で使用する場合は、Wi-Fi対応モデルをオススメしたい。手持ちのプリンタに不満があるなら、買い替えを検討してはいかがだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。