<家電激戦区を歩く>東京・秋葉原(2) 個性豊かな総合店や専門店 強みを生かした売り方に活路
秋葉原には、電気街を中心に100店舗以上の家電量販店、パソコン専門店、組み立てパソコンパーツ店が存在する。店舗の規模や扱う商品は多種多様だが、どの店舗にも共通しているのは、強烈な個性をもっているということだ。ほかの店にはない強みをもつことで独自の売り方に活路を見出し、激戦地・秋葉原で生き残ってきたのである。(取材・文/佐相彰彦)
<店舗>
→東京・秋葉原(1)から読む
全国にチェーンを展開する家電量販店やパソコン専門店のなかには、秋葉原の店舗を旗艦店と位置づけているケースがある。情報発信拠点として知られる秋葉原の旗艦店でマーケットのトレンドを把握し、ここから全国の店舗にデジタル機器・家電の最新情報を発信する役目を果たしている。
JR秋葉原駅前のヤマダ電機LABI秋葉原パソコン館は、売り場面積が800m2弱と同社の店舗のなかでは小規模。しかし、パソコンを中心とするデジタル機器の売り上げは、全国の店舗のなかでもトップクラスだという。中村忠孝店長は、「秋葉原には、パソコンマニアや会社員、学生、ファミリー、高齢者など、さまざまなお客様が訪れる。当店の役割は、この秋葉原で当社のブランド力を向上させること」と言い切る。
自宅の近所に郊外型店舗の「テックランド」があるお客様の場合、購入は近所のテックランドでするかもしれない。でも、ヤマダ電機の品揃えとブランドをここで再確認してもらえばいい。さらに、ヤマダ電機に来たことのないお客様もいる。とくにLABI秋葉原パソコン館では、そんなお客様が多いようだ。ヤマダ電機が力を入れているポイントカード会員の獲得にも、大きく貢献しているという。駅前という立地もあって立ち寄るお客様は多く、単に販売するだけでなく、ヤマダ電機のブランド戦略にも寄与しているわけだ。
ヨドバシカメラも、直営部分の売り場面積が2万m2超を誇るマルチメディアAkibaを旗艦店の一つに位置づけている。地下6階から地上9階(地下2階から地下6階は駐車場)までのデジタル機器・家電のフロアでは、大規模な売り場面積を最大限に生かして、ジャンル別やメーカー別、さらには実演コーナーなど、バラエティに富んだ売り場形態でお客様を飽きさせない。7階に書店やCDショップなどの専門店街、8階に飲食店街があることで、平日・休日を問わず、多くのお客様を吸引している。
【売り場】
ヨドバシカメラマルチメディアAkibaから、JR京浜東北線・山手線を越えた西側には、多くの店舗が建ち並ぶ秋葉原電気街が広がる。とくに、中央通りから少し外れた路地裏には、パソコン専門店や組み立てパソコンパーツ店が軒を連ね、激しい競争を繰り広げている。これらの店舗は、価格だけでなく、自店の主力商品を明確に打ち出すことで他店との差異化を図っている。
パソコン専門店のドスパラ秋葉原本店では、ゲーム向けBTOパソコン「Galleria(ガレリア)」など、自社ブランド製品の販売に力を注いでいる。地上2階建ての1階がパソコンコーナーで、さまざまなスペックのパソコンを展示することで、お客様が自分に合ったパソコンを必ず見つけられるようにしている。さらに今は、Windows 7とWindows 8から好きなOSを選択できるようにしている。斉藤芳昌店長は、「当店のお客様は、メーカー製品で自分に合ったモデルがない、または満足していないという方が多い。これらの方々に、必ず満足できるパソコンを提供できる」と自信をみせる。単にパソコンを陳列するだけではなく、さまざまなデモンストレーションでベンチマークを確認できるようにするなど、お客様に製品の性能を体感してもらって購入に結びつけている。
かつて石丸電気の旗艦店だったishimaru本店は、エディオンのストアブランド統一によって、今年秋に店名をエディオン秋葉原本店に変更した。エディオンと石丸電気のよいところを採り入れて、各フロアで商品の特性をわかりやすく伝えるための工夫を施している。例えば、POPはメーカーが作成したものではなく、店舗のスタッフが制作して、お客様に機能や用途などをわかりやすく伝えている。また、オーディオは耳の肥えたお客様向けに専用の試聴室を設置。炊飯器のコーナーでは、お客様が自分に合った炊き具合のモデルを選べるように、各メーカーの商品を並べて試すことができるようにしている。
駅前のヤマダ電機LABI秋葉原パソコン館も負けてはいない。「他店との差異化を図るには、ファミリーや高齢者層をメインターゲットに据えた店づくりがポイント」(中村店長)と、各フロアとも通路を広く、ゆったりと商品を選択できる環境を整えている。小規模ではあるものの、壁一面を使ってスマートフォンアクセサリを展示するなど、インパクトのある商品陳列だ。
【品揃え】
秋葉原には、パソコン上級者や最先端のデジタル機器に関心をもつ感度の高い層が多く訪れる。多くの店舗は、新製品をいち早く店頭に並べている。そんななか、品揃えで他店とは一線を画した取り組みで売り上げを伸ばしているのが、ヤマダ電機LABI秋葉原パソコン館だ。
同店では、新製品の発売に伴って、全国にあるヤマダ電機の店舗から一世代前の旧製品を集めている。新製品との違いを明確にするために、旧製品をリーズナブルな価格で販売しているのだ。中村店長は、「すべてのお客様が最先端の製品だけを求めているというわけではない。また、新製品だからといっても、旧製品から大きく変わっていない製品もある。お客様が、新旧製品の好きなほうを購入できる品揃えをしている」という。店内では、新旧製品を並べて展示。旧製品の品揃えは、ヤマダ電機の他店舗と比較して3~4倍になるという。
この戦略が奏功して、売り上げ・利益とも、順調な伸びで推移している。中村店長は、「秋葉原というと、最新モデルばかりが並んでいるというイメージがあって、デジタル製品に詳しくなければ買い物ができないと感じているお客様もいる。とくに、高齢者のお客様にみられる傾向だ。展示と接客で新旧製品の違いを伝えることで、安心して購入していただいている」と自信をみせている。
ドスパラ秋葉原本店では、11月、7インチのタブレット端末「ドスパラタブレット」の予約販売を実施した。「予想以上の反響だった」と斉藤店長は手応えを感じている。20~30歳代のゲームユーザーなど、自社ブランドパソコンで獲得してきた既存顧客が予約したほか、「40歳代以上の会社員など新たなお客様層を開拓することに成功した」という。「ドスパラタブレット」は、今年12月末に発売する予定だ。
→東京・秋葉原(3)に続く(2013年1月7日掲載)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年12月17日付 vol.1461より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは
<店舗>
→東京・秋葉原(1)から読む
最先端の地域に旗艦店を配置 全国の店舗に情報を発信
全国にチェーンを展開する家電量販店やパソコン専門店のなかには、秋葉原の店舗を旗艦店と位置づけているケースがある。情報発信拠点として知られる秋葉原の旗艦店でマーケットのトレンドを把握し、ここから全国の店舗にデジタル機器・家電の最新情報を発信する役目を果たしている。
JR秋葉原駅前のヤマダ電機LABI秋葉原パソコン館は、売り場面積が800m2弱と同社の店舗のなかでは小規模。しかし、パソコンを中心とするデジタル機器の売り上げは、全国の店舗のなかでもトップクラスだという。中村忠孝店長は、「秋葉原には、パソコンマニアや会社員、学生、ファミリー、高齢者など、さまざまなお客様が訪れる。当店の役割は、この秋葉原で当社のブランド力を向上させること」と言い切る。
ヤマダ電機LABI秋葉原パソコン館のフロア構成
自宅の近所に郊外型店舗の「テックランド」があるお客様の場合、購入は近所のテックランドでするかもしれない。でも、ヤマダ電機の品揃えとブランドをここで再確認してもらえばいい。さらに、ヤマダ電機に来たことのないお客様もいる。とくにLABI秋葉原パソコン館では、そんなお客様が多いようだ。ヤマダ電機が力を入れているポイントカード会員の獲得にも、大きく貢献しているという。駅前という立地もあって立ち寄るお客様は多く、単に販売するだけでなく、ヤマダ電機のブランド戦略にも寄与しているわけだ。
ヨドバシカメラも、直営部分の売り場面積が2万m2超を誇るマルチメディアAkibaを旗艦店の一つに位置づけている。地下6階から地上9階(地下2階から地下6階は駐車場)までのデジタル機器・家電のフロアでは、大規模な売り場面積を最大限に生かして、ジャンル別やメーカー別、さらには実演コーナーなど、バラエティに富んだ売り場形態でお客様を飽きさせない。7階に書店やCDショップなどの専門店街、8階に飲食店街があることで、平日・休日を問わず、多くのお客様を吸引している。
【売り場】
自社ブランドで他店と差異化 商品比較のデモを実施
ヨドバシカメラマルチメディアAkibaから、JR京浜東北線・山手線を越えた西側には、多くの店舗が建ち並ぶ秋葉原電気街が広がる。とくに、中央通りから少し外れた路地裏には、パソコン専門店や組み立てパソコンパーツ店が軒を連ね、激しい競争を繰り広げている。これらの店舗は、価格だけでなく、自店の主力商品を明確に打ち出すことで他店との差異化を図っている。
パソコン専門店のドスパラ秋葉原本店では、ゲーム向けBTOパソコン「Galleria(ガレリア)」など、自社ブランド製品の販売に力を注いでいる。地上2階建ての1階がパソコンコーナーで、さまざまなスペックのパソコンを展示することで、お客様が自分に合ったパソコンを必ず見つけられるようにしている。さらに今は、Windows 7とWindows 8から好きなOSを選択できるようにしている。斉藤芳昌店長は、「当店のお客様は、メーカー製品で自分に合ったモデルがない、または満足していないという方が多い。これらの方々に、必ず満足できるパソコンを提供できる」と自信をみせる。単にパソコンを陳列するだけではなく、さまざまなデモンストレーションでベンチマークを確認できるようにするなど、お客様に製品の性能を体感してもらって購入に結びつけている。
1階全体を自社ブランドのパソコンコーナーにしたドスパラ秋葉原本店(左)。展示商品のベンチマークを確認することができる
かつて石丸電気の旗艦店だったishimaru本店は、エディオンのストアブランド統一によって、今年秋に店名をエディオン秋葉原本店に変更した。エディオンと石丸電気のよいところを採り入れて、各フロアで商品の特性をわかりやすく伝えるための工夫を施している。例えば、POPはメーカーが作成したものではなく、店舗のスタッフが制作して、お客様に機能や用途などをわかりやすく伝えている。また、オーディオは耳の肥えたお客様向けに専用の試聴室を設置。炊飯器のコーナーでは、お客様が自分に合った炊き具合のモデルを選べるように、各メーカーの商品を並べて試すことができるようにしている。
エディオン秋葉原本店はオーディオコーナーに試聴室を設置(左)。また、炊飯器の炊き比べなど、デモンストレーションも行っている
駅前のヤマダ電機LABI秋葉原パソコン館も負けてはいない。「他店との差異化を図るには、ファミリーや高齢者層をメインターゲットに据えた店づくりがポイント」(中村店長)と、各フロアとも通路を広く、ゆったりと商品を選択できる環境を整えている。小規模ではあるものの、壁一面を使ってスマートフォンアクセサリを展示するなど、インパクトのある商品陳列だ。
【品揃え】
旧製品をリーズナブルに提供 タブレット端末で新規顧客を獲得
秋葉原には、パソコン上級者や最先端のデジタル機器に関心をもつ感度の高い層が多く訪れる。多くの店舗は、新製品をいち早く店頭に並べている。そんななか、品揃えで他店とは一線を画した取り組みで売り上げを伸ばしているのが、ヤマダ電機LABI秋葉原パソコン館だ。
同店では、新製品の発売に伴って、全国にあるヤマダ電機の店舗から一世代前の旧製品を集めている。新製品との違いを明確にするために、旧製品をリーズナブルな価格で販売しているのだ。中村店長は、「すべてのお客様が最先端の製品だけを求めているというわけではない。また、新製品だからといっても、旧製品から大きく変わっていない製品もある。お客様が、新旧製品の好きなほうを購入できる品揃えをしている」という。店内では、新旧製品を並べて展示。旧製品の品揃えは、ヤマダ電機の他店舗と比較して3~4倍になるという。
この戦略が奏功して、売り上げ・利益とも、順調な伸びで推移している。中村店長は、「秋葉原というと、最新モデルばかりが並んでいるというイメージがあって、デジタル製品に詳しくなければ買い物ができないと感じているお客様もいる。とくに、高齢者のお客様にみられる傾向だ。展示と接客で新旧製品の違いを伝えることで、安心して購入していただいている」と自信をみせている。
ヤマダ電機LABI秋葉原パソコン館では新機種と旧機種を並べて展示
ドスパラ秋葉原本店では、11月、7インチのタブレット端末「ドスパラタブレット」の予約販売を実施した。「予想以上の反響だった」と斉藤店長は手応えを感じている。20~30歳代のゲームユーザーなど、自社ブランドパソコンで獲得してきた既存顧客が予約したほか、「40歳代以上の会社員など新たなお客様層を開拓することに成功した」という。「ドスパラタブレット」は、今年12月末に発売する予定だ。
ドスパラが12月末に発売する「ドスパラタブレット」
→東京・秋葉原(3)に続く(2013年1月7日掲載)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年12月17日付 vol.1461より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは