日立、60周年を迎える電気洗濯機、独自の機能を次々と生み出して躍進中

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2012/12/05 19:45

 一家に一台、必ずある洗濯機。市場をリードしてきた日立製作所が、電気洗濯機発売から60周年を迎えた。次々と独自機能を生み出し、市場をリードし続けている日立のこれまでの取り組みを振り返る。

日立初の電気洗濯機「SM-A1」

日立初の電気洗濯機「SM-A1」、給料7か月分の超高級家電



 国内初の電気洗濯機が生まれたのは、いまから80年以上前。東芝の前身である芝浦製作所が1930年に発売した「撹拌式電気洗濯機ソーラー(Solar)」だ。日立も電気洗濯機の開発に取りかかり、47年、手づくりの試作1号機を完成させたが、試運転中に回転翼の下部が布を噛んで失敗。その後、モーターや回転翼を改良した試作2号機は52年に完成した。

 この年は、日立に洗濯機にとっての転機となった。米軍からの100台の発注を、日立が落札したのだ。こうして日立初の電気洗濯機「SM-A1」が誕生した

 この「SM-A1」は“超”がつくほどの高級家電だった。日立アプライアンス 家電事業部家電事業企画本部事業企画部の津坂明宏部長代理によれば、「当時の高卒初任給は平均8000円ほど。しかし『SM-A1』の価格は5万3900円。一生手に入らないほどの高嶺の花だった」という。それでも、徐々に価格は下がり、1959年発売の「SH-JT30」で2万6500円と、「SM-A1」の半分まで下がった。これと歩調を合わせるように普及率は上昇し、57年は10%、59年には26.1%まで伸びた。

洗濯機の歴史を振り返る津坂明宏部長代理

洗濯と脱水が全自動になった画期的な一台が登場



 この頃の電気洗濯機は、洗濯槽の横に脱水用のローラーがついたタイプがほとんどだった。当時の技術では、同じ槽で洗濯機と脱水をすることが難しかったのだ。そんななか、東芝が1956年に一つの槽で洗濯・すすぎ・脱水までできる渦巻方式の全自動洗濯機「DA-6」を発売。1961年には日立が本格的な撹拌式全自動洗濯機「SC-AT1」を発売した。「全自動なら、スイッチを入れた後、放っておいても洗濯・すすぎ・脱水が自動でできる。主婦の家事の時間を大幅に減らす画期的な製品だった」と津坂部長代理は話す。

本格的な撹拌式全自動洗濯機「SC-AT1」

 1990年、日立は新しいブームを生みだす。それまでプラスチックだった洗濯槽をステンレスにすることで大容量化を実現。業界最大容量の7kgの「KW-70R1」が生まれた。そして、ステンレス槽が普及し始める。

当時業界最大容量の「KW-70R1」

 バブル崩壊後の1994年には、風呂水ポンプを内蔵した業界初の洗濯機「NW-60RS1」を発売。タライの時代から「汚れが落ちやすい」と温かい風呂の残り湯を洗濯に利用してきた日本人の習慣は、電気洗濯機の時代になっても変わらず、約半数の主婦が浴槽からバケツで残り湯を汲み、洗濯に利用していたことに目をつけた製品だ。「バケツに比べて労力のいらない内蔵ポンプは、主婦層に大変評判がよかった」と津坂部長代理は振り返る。

風呂水ポンプを内蔵した業界初の洗濯機「NW-60RS1」

 その後も、2006年に自社生産のドラム式洗濯乾燥機「ビッグドラム」を発売。さらに、衣類のシワを少なくする「風アイロン」や運転時に発生する熱を乾燥時の温風に再利用する「ヒートリサイクル乾燥」などの独自機能でユーザーのニーズに応えてきた。

 60周年を迎えた今年は、「エコに“自動おそうじ”をたし算」というスローガンを掲げ、洗濯槽を自動で水洗いし、黒カビの発生を抑える「自動おそうじ」機能を搭載。排水ホースも汚れにくくした。洗濯槽と排水ホースをきれいに保つことで、黒カビの発生とニオイを抑えるのだ。日立の洗濯機は、独自機能の開発によってこれからも成長していく。(BCN・山下彰子)