ニコンがコンパクトカメラの月間メーカー別シェア1位に浮上、過去3年間で初

特集

2012/11/20 20:23

 コンパクトデジタルカメラの2012年10月の平均単価は、税抜きで1万5340円。税込みに換算すると1万6000円程度だった。平均単価は、ここ1年、1万3000~1万7000円台の間で上下し、あまり変わっていない。例年、春のモデルチェンジ直前の1月が最も安くなる傾向にあり、これから年末年始にかけて、もう少し価格は下がるかもしれない。高画素化・高機能化が進んだコンパクトカメラは、1万円以下の製品でも実用上は問題ないし、1万円台後半から2万円台の製品には、プラスアルファの便利な機能としてスマートフォンなどと簡単に連携できるWi-Fi(無線LAN)に対応するモデルもある。

 家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、レンズ一体型デジタルカメラ(コンパクトデジタルカメラ)の販売台数は、ここ1年、前年並みか前年を下回る水準で推移している。こうした縮小傾向のなか、2012年10月は、「COOLPIX」シリーズを展開するニコンがシェア19.2%でメーカー別販売台数1位に躍り出た。2位のキヤノンとはわずか2.2ポイント、3位のソニーとも3.0ポイントしか差はなく、上位3社は僅差だった。コンパクトデジタルカメラは月によって順位の変動が激しく、今回のニコンの1位獲得も、モデルチェンジに伴う旧製品の値下がりによるところが大きい。とはいえ、過去3年間では初の快挙。さらに「BCNランキング」のデータをさかのぼると、2005年1月以降で初めてだ。


 ニコンは、レンズ交換型デジタルカメラ(デジタル一眼カメラ)でもシェア27.7%で月間メーカー別販売台数1位を獲得し、一体型(コンパクト)と交換型(デジタル一眼)を合算したデジタルカメラ全体でも、シェア21.0%で1位に輝いた。いわゆる「ミラーレス一眼」と呼ばれ、従来のデジタル一眼レフカメラ、コンパクトカメラの間を埋める新ジャンルとして伸びているミラー構造のない小型・軽量のレンズ交換型デジタルカメラ(ミラーレス一眼カメラ)に限ると、シェア11.7%で5位にとどまったが、9月に発売した新製品「Nikon 1 J2」の価格がこなれてくれば、今年1~5月同様、再びトップ3入りするかもしれない。


カメラメーカー・ニコンが支えるスマートフォン



 ニコンというと、黒いボディの重厚なデジタル一眼レフカメラや、長い歴史をもつ銀塩一眼レフカメラのイメージが強い。実際、コンパクトデジタルカメラでは、過去3年間の月間メーカー別販売台数シェアは8~15%程度にとどまり、順位も2011年までは5~7位と低迷していた。しかし2012年に入ると、2位や3位に食い込む月も出てきた。一方、かつてキヤノンとともに「2強」といわれ、高いシェアを保っていたデジタル一眼レフカメラは、昨年秋に発生したタイの洪水被害の影響もあって、1位のキヤノンにだいぶ引き離されて、2011年8月以降はずっと2位に甘んじてきた。それだけに、10月の躍進ぶりは目を引く。11月も引き続き好調で、一時的な上昇に終わらず、しばらく続きそうだ。



 老舗カメラメーカーのニコンとキヤノンは、これまで培ったレンズなどの技術を転用して、半導体露光装置・液晶露光装置の開発・製造事業を展開している。スマートフォンなどに使われる半導体や液晶/有機ELディスプレイは、これらの装置なしには生産できない。特に液晶露光装置はニコンとキヤノンの2社の寡占市場で、ニコンがシェア77%を占めるという(2011年度液晶露光装置台数シェア、ニコン推定値)。アップルのiPhoneに使われている「Retinaディスプレイ」などの高精細ディスプレイの実用化に、日本の技術が大きく貢献しているのだ。携帯電話・スマートフォンがコンパクトデジタルカメラの需要を奪っているという見方もあるが、少なくともこの2社にとっては、スマートフォンは競合ではなく、共存共栄を図るべき存在だろう。

 コンパクトデジタルカメラの現在の標準的なスペックは、画素数は1600万画素以上、ズーム倍率は4~10倍程度。20倍以上の高倍率ズームモデルも多くなっている。ただし、タッチパネルを採用した機種は全体の2割程度にとどまり、主流にはなっていない。このほか、冒頭に触れた通り、撮影した写真をスマートフォンやPCなどのWi-Fi対応機器に、直接ワイヤレスで送信できるWi-Fiに対応する製品も登場している。なお、ひと言でWi-Fi対応といっても、メーカー・機種でできることには違いがある。この要素を条件に選ぶ場合は、カタログやウェブサイトなどでしっかり比較したい。

2012年10月
コンパクトデジタルカメラ 販売台数シェア トップ10
順位 メーカー シリーズ名 有効画素数
(万画素)
光学ズーム
(倍)
タッチ
パネル
Wi-Fi 販売台数
シェア(%)
1 ニコン COOLPIX S3300 1,600 6.0 - - 6.2
2 カシオ EXILIM EX-ZS150 1,610 12.5 - - 3.7
3 カシオ EXILIM EX-ZR300 1,610 12.5 - - 3.5
4 キヤノン PowerShot A2400 IS 1,600 5.0 - - 3.5
5 ニコン COOLPIX S9300 1,602 18.0 - - 3.5
6 ソニー Cyber-shot WX100 1,820 10.0 - - 3.3
7 キヤノン IXY 430F 1,610 5.0 対応 対応 2.9
8 ソニー Cyber-shot WX170 1,820 10.0 対応 - 2.7
9 ソニー Cyber-shot W610 1,410 4.0 - - 2.7
10 ソニー Cyber-shot HX30V 1,820 20.0 - 対応 2.4
「BCNランキング」2012年10月 月次<最大パネル>

 これら売れ筋のオーソドックスなタイプに比べると販売台数は少ないが、大型センサを搭載して画質にこだわった高級モデルやズーム撮影に強い30倍以上の超高倍率ズームモデル、防水・防塵・耐衝撃性能を備えたアウトドア向けモデル、名刺より小さい極小ボディのニコン「COOLPIX S01」など、個性的なカメラも存在感を増している。

左上から時計回りに、ニコンのCOOLPIX S3300(クリスタルシルバー)、カシオのEXILIM EX-ZR300(ゴールド)、キヤノンのIXY 430F(シルバー)、ソニーのCyber-shot HX30V(ブラック)。下段の2機種は、Wi-Fiに対応する

 コンパクトカメラは、価格競争の結果、性能に比べてかなり割安感が出てきた。メーカーも多く、予算をやや多めに設定すれば、選択肢もぐんと増える。スマートフォンのカメラや、数年前に購入した手持ちのカメラで十分と考えている方も、買替え・買増しを検討してはいかがだろう。(BCN・嵯峨野 芙美) 


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。