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<家電激戦区を歩く>東京・新宿(3) 多くの製品用途を知り尽くす 幅広い層に対応した接客・サービスへ

特集

2012/11/05 11:09

 東京・新宿には、周辺に勤める会社員や学生、子ども連れのファミリー、高齢者など、さまざまな年齢に加え、国内外を問わずに観光客が訪れる。家電量販店やパソコン専門店は、各層に応じた接客やサービスを提供していかなければならない。今回は、各店舗が人材を生かしながら、東京・新宿の特性に合わせて、いかに接客やサポート・サービスを工夫しているかを取り上げる。各店舗とも、製品の機能はもとより、その用途を把握することに力を入れて、幅広い層に対応した接客、サポート・サービスでお客を呼び込もうとしている。(取材・文/佐相彰彦)


→東京・新宿(1)から読む

<接客・サービス>

幅広い商品知識を習得 専門的な提案を追求



 地下2階、地上9階のヤマダ電機LABI新宿西口館では、1フロアあたり20~30人のスタッフを配置している。ヤマダ電機の郊外型店舗「テックランド」は、通常1フロア構成で、スタッフはさまざまな商品のコーナーを担当する。一方、都市型店舗の「LABI」は売り場が多層階にわたるので、スタッフは階ごとのコーナーを担当するかたちで、そのコーナーの商品知識に長けた専門性の高い人材を配置している。

LABI新宿西口館
村元公彦店長
 村元公彦店長は、「当店のスタッフは、ほかの店舗でさまざまな商品に関するトレーニングを受け、そのなかから、さらに深い知識を習得して、当店のコーナーを担当することになる」という。そのため、例えば、デジタルカメラのコーナーが混雑したとき、異なるコーナーから応援できる体制を整えているわけだ。

 また、さまざまな商品に関して、より一層深い知識をもったスタッフは、フロアをまたいで接客する「コンシェルジュ」というポジションに就く。現在、コンシェルジュは5人。村元店長は、「コーナーを担当する専門スタッフと総合的なコンシェルジュによって、お客様に対してきめ細かな応対ができている」と自信をみせる。

 村元店長は、店長やスタッフとして、全国の店舗を回ってきた。その村元店長は、新宿の特性を、「日本全国で、最も幅広い客層をもつ街」と捉えている。だからこそ、ヤマダ電機の他地域の店舗と比べて、「さまざまな層に対応した店舗を目指している」という。

ドスパラ新宿店
田中伸武副店長
 パソコンとパーツの専門店、ドスパラ新宿店は、従業員が14人と、ドスパラのなかではスタッフが多い店舗だ。専門店として、パソコン本体と周辺機器の知識を深く習得しているスタッフを配置し、「用途提案を徹底的に行っている」と、田中伸武副店長は説明する。「上級者だけでなく、中級者も来店するのが新宿。だからこそ、機能やスペックを説明するよりも、『何を実現できるのか』を説明することが重要」だからだ。さらに、「新宿はリピーターよりも新規客の来店が多い」。このことは、田中副店長が新宿店オープン時から感じていたことだという。田中副店長は、以前、ドスパラ大宮店に勤めていた。「大宮店は地元のパソコン上級者がリピーターとして来店するケースが多い。用途提案よりも、お客様より深い商品知識をもつスタッフが必要だった。その意味では、新宿店はドスパラのなかでひと味違う人材を揃えていることになる」とアピールする。

 ビックカメラとユニクロがコラボレーションしているビックロは、これまでにない形態の店舗ということから、両社ともスタッフの質にこだわっている。ビックカメラは、女性客が多いと想定し、スタッフの40%を女性で構成。ユニクロは、外国人観光客の来店を促すために、日本語以外に、英語や中国語、韓国語で会話できるスタッフを配置しているほか、楽しめる店舗を目指して劇団員やお笑い芸人、チアリーダーなどをスタッフとして採用している。

 ヨドバシカメラ新宿西口本店は、総合的に商品を扱う「マルチメディア館」で、さまざまなアイテムの知識をもつスタッフ、「カメラ館」など専門館で深い知識を習得したスタッフを配置。的確な商品を提案することで、来店者からの評価は高い。

【接客】
名刺を渡してリピーターを確保 わかりやすい説明がポイント



 幅広い商品を把握しながら、一方で専門的な商品知識をもつスタッフたちは、接客についてはどこに重きを置いているのだろうか。

 ヤマダ電機LABI新宿西口館は、「平日の午前中など、比較的余裕のある時間帯に来店したお客様のなかで、とくに液晶テレビや洗濯機など、大型商品をみるために訪れたお客様に対しては、製品の機能や用途をゆっくりとていねいに説明する」(村元店長)という。店内が空いている時間帯の来店者の多くは、品定めが目的だ。各製品が、「どんな機能をもっているのか」「購入すれば何が実現できるのか」などを調べるために来店している。

ドファミリーを接客するヤマダ電機LABI新宿西口館のスタッフ

 村元店長は「接客時に購入してもらうためではなく、次回来店した際に購入してもらえるような接客を心がけている」と説明する。そして、接客が終わった際に必ず実施しているのが、お客様に名刺を渡すこと。次回ご来店いただいた際に、そのスタッフが担当すれば、お互いのコミュニケーションがスムーズに進む。お客様は、要望を再び最初から説明する必要がなくなるからだ。周辺に勤務する会社員を接客し、休日にはリピーターとして、ファミリーで来店してもらう。このようなサイクルを構築しているのだ。

 ビックロでは、女性客や10~20歳代の来店が多いため、商品の機能を説明するのではなく、用途を説明する接客の仕方を重視している。ドスパラ新宿店でも、用途を重視した接客を徹底的に実施。田中副店長は、「当店に来店するお客様は、メーカー製パソコンよりも、ワンランク上の性能を求めている。こだわりのあるお客様に最適なモデルを提示することが重要」と考えている。

女性客や外国人観光客を接客するビックロのスタッフ

【サポート・サービス】
相談カウンターでまとめ買いを促進 法人ユーザーにも対応



 新規購入者をリピーターにつなげるには、接客に加えて、購入前後のサポート・サービスが重要になってくる。そこで、各店舗とも来店者や購入者が気軽に相談できるカウンターを設けている。

 ヤマダ電機LABI新宿西口館は、白物家電売り場である8階に「ご相談カウンター」を設置。カウンターでは、先述のコンシェルジュが活躍している。「結婚」「出産」「転勤」などをテーマに、休日にはファミリーや高齢者などがカウンターを訪れる。「商品をご購入いただくのではなく、お客様の要望に応える。それがコンシェルジュの役割」(村元店長)というのがヤマダ電機のコンセプトで、カウンターでは、「ただ相談したい」という来店者も歓迎している。もちろん、コンシェルジュも名刺を差し出すことは忘れない。

コンシェルジュが活躍するヤマダ電機西口館の「ご相談カウンター」

 ドスパラ新宿店は、「御商談窓口」というカウンターを設けている。パソコンの購入が目的の来店者には、まず、ここで要望を聞いている。その後、パソコンコーナーに誘導し、実際に見ていただく。もちろん、この窓口以外でもスタッフが来店者の問い合わせに応じているが、この商談窓口で、さまざまな要望をゆっくりと聞くことによって、購入後の適切なサポートも提案できるようになったという。

 御商談窓口は、個人だけでなく、法人の利用も多い。ドスパラは、「Galleria」など自社ブランドのカスタマイズパソコンが主流。だからこそ、御商談窓口で多くの要望を聞くことが、お客様の最適なパソコン購入につながるのだ。

「御商談窓口」には個人だけでなく法人ユーザーも訪れる

→東京・新宿(4)に続く(2012年11月12日掲載)


※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年10月29日付 vol.1454より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは