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<家電激戦区を歩く>東京・新宿(2) 競合店との違いを明確にアピール リピーターの確保がカギを握る

特集

2012/11/01 12:28

 国内最大の家電の街、東京・新宿には、周辺に勤める会社員、学生、ファミリー、高齢者、観光客など、年齢・地域ともに幅広い層が訪れる。家電量販店やパソコン専門店は、自店舗の強みを生かしながら競合店との違いを明確に打ち出し、新規客とリピーターの確保にしのぎを削っている。今回は、各店舗の「店内レイアウト」「売り場/コーナー」「品揃え」での工夫点を取り上げよう。「新宿らしさ」とは何だろうか。(取材・文/佐相彰彦)

→東京・新宿(1)から読む

<店舗>

東口と西口で異なる客層 ヤマダ西口館は「広い通路」で差異化



 新宿には、老若男女の幅広い層が訪れる。商業地区としての最大の特徴は、JR新宿駅の東口と西口で、とくに平日の客層が明確に異なることだ。東口は10代後半から20代前半の若年層が中心で、西口は周辺に勤める会社員が多い。そして休日には、新宿全体にファミリーや中高年齢層、観光客が訪れる。こうした客層の流れのなかで、家電量販店やパソコン専門店は、独自色を出した店舗づくりを進めている。

 客層を明確に意識した典型的な店舗が、ビックカメラとユニクロがコラボレーションした「ビックロ」だ。JR新宿駅東口近くの立地で、若者をメインターゲットに想定。「すばらしいゴチャゴチャ感を訴えていく」(ビックカメラの宮嶋宏幸社長)をコンセプトに、1万5000m2という広大な売り場面積にもかかわらず、1階ではビックカメラが扱うデジタル家電やユニクロの衣料品などを“ゴチャゴチャ”と陳列している。 

ビックロではビックカメラとユニクロのコラボレーション「ビックロマネキン」を各フロアに設置

 一方の西口では、新宿西口本店を1975年に開設したヨドバシカメラがユニーク。付近の土地が空いた段階で増設を繰り返したことによって、複数店が集まったような構えだ。このつくりを生かして、デジタル家電を総合的に扱う「マルチメディア館」を2館、「カメラ館」や「携帯アクセサリー館」などの専門館を8館構え、客が購入したい商品の「館」に行けば、迷わず商品を購入できる。とくに専門館はオフィス街に隣接する西側に集中し、昼休みや帰宅途中の会社員の吸引を狙っている。ちなみに、開店当時の新宿西口本店は、現在はマルチメディア東館になっている。

 同じ西口で、ヨドバシカメラのすぐ目と鼻の先にあるヤマダ電機LABI西口館は、競合店とはひと味違うつくり。新宿に店を構える家電量販店やパソコン専門店が、品揃えを重視して、ワンフロアに多くの商品を詰め込んでいるのに対して、LABI新宿西口館は店内の通路を広く確保して、ゆったりとしている。ヤマダ電機上席執行役員の村元公彦店長は、「平日の会社員を狙うのはもちろんだが、当店は、とくに休日に街を訪れるファミリーや高齢者をリピーターとして確保することを重視している」という。広い通路を、ベビーカーの乳児を連れたファミリーが回ったり、高齢者がゆったりと商品を選ぶことができたりする空間を用意したわけだ。その狙い通り、休日の来店者数は平日の1.2~1.3倍だという。

【売り場/コーナー】
全フロアでコラボするビックロ ドスパラはパソコン中級者を確保



 家電量販店やパソコン専門店は、自社の強みを生かした売り場やコーナーづくりにいそしんでいる。例えばビックロは、ビックカメラの扱う商品を手に持ち、ユニクロの商品を身にまとったマネキン「ビックロマネキン」を全フロアに設置。店内にある500体のマネキンのうち、80体がビックロマネキンだ。また、モニタに映った自分のからだにビックロのロゴがまとわりつく「ビックロモニター」で、来店者を楽しませている。「すばらしいゴチャゴチャ感」で、若者が多いJR新宿駅東口での存在感を確立し、「このモデルが成功すれば、ニューヨークやパリなど海外でも展開していきたい」(ユニクロの柳井正会長兼社長)として、新しいかたちの店舗づくりに取り組んでいる。

 大型家電量販店がひしめき合うなかで、パソコンやパソコンパーツの専門店として、パソコン上級者や中級者、それも40歳以上の客層を確実にリピーターとして確保しているのが、ドスパラ新宿店だ。「周辺に大手家電量販店があるからこそ、当店が引き立つ」と、田中伸武副店長は自信をみせる。家電量販店は、白物家電やパソコン、デジタル機器など、品揃えは充実しているが、ことパソコン販売については専門店に一日の長がある。パソコン上級・中級者や、パソコンについての情報を求める客は、専門店に流れる。ドスパラ新宿店では、愛用しているソフトが最適に稼働するパソコンの選び方など、上級者が欲しい情報を店内のパソコンコーナーで提供。田中副店長によれば、「40歳以上のパソコン上級者は、小さな専門店がゴチャゴチャと並んでいる秋葉原電気街を避ける傾向がある。秋葉原の店に比べれば、ゆっくりと商品を選べるということで来店してくれている」と来店理由を分析する。 

ドスパラ新宿店ではユーザーがバンドルソフト数や愛用ソフトに合わせてパソコンを購入できる

 ヤマダ電機LABI新宿西口館では、液晶テレビ売り場で、パソコンや無線LAN、外付けHDDなども設置して「スマートテレビ」「ホームネットワーク」などを切り口とした体験コーナーを設けている。村元店長は、「ファミリーや高齢者のお客様に対しては、液晶テレビやパソコンの連携による広がりを訴えることが大切」と接客のポイントを披露する。プリンタやデジタルカメラのコーナーでは、パソコンレスによるワイヤレス印刷の体験コーナーを設けるなど、提案型のコーナーが販売につながり、デジタル機器の販売額は全体の約7割を占めるという。 

※画像をクリックすると、拡大して表示します

【品揃え】
他社にない質と量がポイント 最新機種の充実は最重要項目



 先ほども触れたが、新宿地区の各店舗が重要視しているのは品揃えだ。欲しい商品がなければ来店者は購入してくれない。さらに、新宿は客層が多岐にわたるために、質と量の両方が求められ、各店舗とも試行錯誤を繰り返している。

 ドスパラ新宿店は、昨年12月26日のオープン当初は、パソコンパーツよりもスマートフォンやスマートフォン関連の商品の充実に力を入れていた。新宿では、パソコンユーザーよりもスマートフォンユーザーのほうが来店率が高いと踏んでいたからだ。もちろん、10か月が経過した現在でもスマートフォン関連商品は取り扱っているが、その数は多くない。田中副店長は、「他社との差異化を図るには、パソコンパーツを充実しなければならないと気がついた」と打ち明ける。今は、パソコンとパソコンパーツを中心とした品揃えで、秋葉原で売れ筋の500~600商品を陳列。これが、新宿に勤める会社員のパソコン上級者・中級者の吸引につながった。 

専門店だけにパソコンパーツの品揃えは群を抜くドスパラ新宿店

 ヤマダ電機LABI新宿西口館では、平日に来店する会社員のリピーター確保に向け、スマートフォンアクセサリを充実させている。それも1階の一部分で天井まで陳列するほどの量を揃えた。村元店長は、「他社にはない圧倒的なボリュームの品揃えで、男女を問わず昼休みや会社帰りに立ち寄るという流れをつくることができた」としている。また、会社員の来店は、プリンタ用紙など、ビジネス消耗品の販売増にもつながっているという。 

ヤマダ電機LABI西口館のスマートフォンアクセサリの品揃えは圧巻

 国内有数の繁華街・新宿には、最先端のデジタル家電を目的に訪れる人も多い。そこでヤマダ電機LABI新宿西口館では、「必ず最新機種はストックしておく」(村元店長)ことを徹底。ドスパラ新宿店では、「最近は、高性能のSSDを買う方が多くなっている。SSDの拡充を図っている」(田中副店長)という。

→東京・新宿(3)に続く(2012年11月5日掲載) 


※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年10月22日付 vol.1453より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは