OS別シェアでAndroid端末に押されつつあるiPhone、次期モデルで挽回なるか?

特集

2012/09/11 12:32

 国内初代モデル「iPhone 3G」から、モデルチェンジごとに前機種を上回る売れ行きを記録してきたアップルのiPhone。2011年10月に発売した現行の「iPhone 4S」は、キャリア・容量を区別せずに1機種として集計すると、発売以来11か月連続で月間販売台数1位を獲得し続けている。しかし、OS別ではiOSよりAndroidが優勢だ。「iPhone 5」と呼ばれている次期モデルは、iPhoneのさらなる人気拡大の起爆剤になり得るだろうか? 国内2社目として、KDDIが新たにiPhoneの取り扱いを開始してからまもなく1年。ソフトバンクモバイルによる独占販売の終了とKDDIの新規参入が与えた影響を考えた。

累計で「およそ6対4」の比率をどうみるか?



 アップルのスマートフォン「iPhone 4S」は、国内ではソフトバンクモバイルとKDDI(au)の2社が販売している。このほか、数としてはごく少数だが、海外から輸入したSIMフリー版も流通している。量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、SIMフリーの海外モデルを除く「iPhone 4S」のキャリア別シェアは、2012年8月31日までの累計で、ソフトバンクモバイルが59.4%、auが40.6%。先日掲載した<「iPhone 4S」の販売データを徹底比較! 売れてるキャリア、容量は?>でお伝えした7月末時点(ソフトバンクモバイル60.1%、au39.9%)より差はやや縮まり、auは40%台に乗った。

 累計で「およそ6対4」というキャリア別のシェアの比率をどう受け取るかは、人によって異なるだろう。総販売台数は、圧倒的にソフトバンクモバイルのほうが多い。既存のiPhoneユーザーに機種変更を促し、auへの流出を防ぎつつ、16GBモデルなら実質無料で購入できる廉価な価格、他機種・他キャリアより安い月額費用など、巧みな販売戦略で新規ユーザーを多く獲得した。一方のauも、発売から約半年をかけて、キャリアメール(@ezweb.ne.jp)のリアルタイム受信など、当初対応していなかった機能に順次対応し、「iPhone 4S」を多彩なラインアップを取り揃える「選べるau」の看板機種に育ててきた。ノウハウのないゼロの状態からスタートした参入1年目の実績としては、むしろ上々といえる。

左から、auの「iPhone 4S」、ソフトバンクモバイルの「iPhone 4S」。
発売当初は、利用できる機能に差があり、盛んに比較された

8月はauが優勢、ソフトバンクモバイルと同水準まで追い上げる



 直近の2012年8月はauが躍進し、週次集計では、8月第1週(8月6~12日)から第3週(8月20~26日)まで、3週連続でソフトバンクモバイルを上回り、月次集計でも、auがソフトバンクモバイルを初めて抜いた。8月に限ると、16GBモデルはソフトバンクモバイル版、32GB・64GBモデルはau版のほうが多く売れ、トータルでのキャリア別シェアは、au50.1%、ソフトバンクモバイル49.9%と、ほぼ半々になった。とはいえ差はごくわずかで、ほとんど同水準といっていい。

 auとソフトバンクモバイルは、この夏の商戦に向けて、iPhoneを通常より安く購入できるキャンペーンを展開し、テコ入れを図った。さらにauの場合、店頭ポップなどで、対象の固定通信サービスと組み合わせると、最大2年間、毎月1480円を割り引く「au スマートバリュー」を大々的にアピールした。こうした販売施策が功を奏し、「iPhone 4S」全体の7月の月間販売台数は、発売以来最も低かった6月から大幅に増え、次期iPhoneに関する噂が増えた8月でも、6月を若干上回った。キャリア・容量を区別せずに1機種として集計すると、「iPhone 4S」は、2011年10月から2012年8月まで、11か月連続で月間トップに立ち、製品単体でみると、この1年弱、人気はまったく揺らいでいない。

 しかし、スマートフォンのOS別販売台数構成比をみると、取り扱いキャリアの増加はそれほどプラスに働かず、多くの機種が採用するAndroidに押されている。iOSの構成比は、8月には2011年7~9月以来、久しぶりに2割を切り、逆にAndroidは8割を超えた。


 また、スマートフォンに限ったキャリア別シェアでは、2010年12月以降、契約数No.1のドコモがシェアを伸ばし、2012年8月には過去最高の60.8%に達した。かつてはスマートフォンの総販売台数の6割以上を占めていたソフトバンクモバイルのシェアは14.2%まで下がり、2番手のauも24.4%にとどまる。


 同一機種を異なるキャリアが販売する複数キャリア展開は、今までキャリアがネックとなって購入をためらっていた層を取り込み、ユーザー層の拡大につながった。しかし、希少性が薄れ、数あるスマートフォンのバリエーションの一つになってしまうという負の側面があるのは否めない。「対Android」という観点では、「iPhone 4S」は、発売直後の2か月間を除き、ずっと負けが続いている。ドコモがiPhoneを取り扱うか、Android以外の別のOSが台頭しない限り、新モデル発売に伴って一時的にiOSが盛り返すことはあっても、Android優勢の状況は続くだろう。

キャリアが違っても同じiPhone、ユーザーはともに盛り立てよう



 auのiPhone参入をきっかけに、ドコモを含めたキャリア間の比較が盛んになって、今まで以上に電波状況や障害発生時への対応、サポート体制といった基本的なサービス内容、公衆無線LANサービス、海外向けパケット定額サービス、動画配信サービスなど、キャリア独自のプラスアルファの要素が重視されるようになってきた。

 9月12日(日本時間9月13日)に発表されるとみられる次期iPhoneでも、取り扱いキャリアは現状と同じと仮定すると、約1年の実績とノウハウを積んだauと、4年以上の長い実績をもつソフトバンクモバイルによる「iPhone取り扱いキャリアNo.1」をめぐる争いは、さらに激化するだろう。ただ、あまりにも過剰な競争は、iPhoneのブランドイメージの低下につながりかねない。営利を追求する企業・店舗はともかく、ユーザーレベルでは同じiPhone同士、ライバル視せずに、ともに盛り立てていってほしい。どちらにしても、大きく進化しそうな新しいiPhoneが楽しみだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

※2012年8月の携帯電話全体・キャリア別のランキングは、近日中に、別途掲載する記事にて紹介する予定です。 


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。