PCの俊速起動を維持するレノボ「Enhanced Experience 3」、その実力を徹底検証
PCを使い続けていると、どうしても起動やシャットダウンに時間がかかるようになる。多くのソフトをインストールしていると、なおさらだ。急いでいるときにPCを使う必要に迫られ、電源を押したもののなかなか操作できる状態にならず、イライラした経験は、きっと筆者だけのものではないだろう。そんなPCのイライラを解消する画期的な技術「Lenovo Enhanced Experience」をレノボのPCが搭載している。その効果がどのようなものか、徹底的に検証した。
レノボは、ビジネスからプライベートまで幅広いラインアップを揃えて、ワールドワイドで高い支持を集めるPCメーカーだ。「Lenovo Enhanced Experience」は、そのレノボの技術陣が、マイクロソフトの技術陣と協力して開発したPCのパフォーマンスをより高速化する技術。開発には、レノボ・ジャパンの大和研究所も重要な役割を担っている。日本の技術力が大いに貢献しているわけだ。
その「Lenovo Enhanced Experience」が、第3世代インテルCore iプロセッサー(Ivy Bridge)に対応して、さらに機能を高めた「Lenovo Enhanced Experience 3 for Windows 7」に進化した。
「Enhanced Experience 3」の主な特徴は、(1)数々の占有最適化技術を使って、より速い起動時間/シャットダウンを可能にする「RapidBoot(ラピッドブート)」、(2)複数のソフトがインストールした後でも、工場出荷時の状態で起動した際と同等の起動時間を維持する「BootShield(ブート シールド)」、(3)17段階グレースケール、16:9ワイドスクリーンビュー、高解像度、高彩度などの調整を行い、より鮮やかでクリアな画質でビデオチャットなどが楽しめる「マルチメディアの最適化(「IdeaPad」シリーズ向け機能)」――の三点だ。
今回は、「RapidBoot」と「BootShield」について、実機を使ってその効果を検証した。検証に使用した「Enhanced Experience 3」搭載のノートPCは、「IdeaPad Y580」だ。「Y」シリーズは、エンタテインメントに注力したモデルで、そのなかでも「Y580」は、6月に発売されたばかりの最新のフラッグシップモデルだ。
比較のために、前バージョンの「Enhanced Experience 2」を搭載する「IdeaPad Y560p」でも「RapidBoot」を検証した。
なお、計測はいずれも、二つのプロセスで実際にストップウォッチを用いて計り、10回計測して最大値と最小値を除外した計8回分の平均値だ。
プロセス『A』は、電源オフの状態から電源ボタンを押し、Windowsが起動してログイン画面が表示され、パスワードの入力が可能になるまでの時間を計測。プロセス『B』は、パスワードを入力してEnterキーを押してから、デスクトップ画面に切り替わり、タスクトレイのアイコンがすべて表示され、カーソル横のリングマークがいったん消えて、操作可能になるまでの時間を計測した。
実際の使用に即して検証したかったので、A・Bいずれのプロセスも、入力や操作が可能になったと判断できる時点でストップウォッチを止めた。そのため、計測時間には筆者の判断が含まれていることをご了承いただきたい。単純にログイン画面が表示された時点、デスクトップが表示された時点、ということでいえば、AもBも、当然ながら計測結果よりもはるかに速かったことを付け加えておく。
電源をオンにしてPCを起動すると、まずBIOSの初期化が行われ、続いて内蔵ストレージから、OSの起動に必要なドライバや設定ファイルなどが読み込まれる。さらに、PC起動と同時に稼働するセキュリティソフトやメッセンジャー系のソフトなどの常駐型ソフトが起動して、ようやくPCの操作が可能になる。インストールしてあるソフトが増えると起動に時間がかかるのは、読み込むドライバや設定ファイル、常駐型ソフトが増えていくからだ。
「RapidBoot」は起動プロセスを監視して、起動に最低限必要なドライバや設定ファイルを優先して読み込み、それ以外のドライバなどの読み込みを後回しにする。短時間で起動してPCを操作可能な状態にまでもっていき、その後、バックグラウンドで段階的に後回しにしたドライバなどを読み込んでいくのだ。
前バージョンの「Enhanced Experience 2」で起動プロセスの監視が改善され、最初に読み込むべきドライバなどの見極めがより柔軟になった。それによって、ユーザーが後からソフトを追加していっても、起動時間が極端に遅くなるようなことはなくなったが、最新の「Enhanced Experience 3」はさらに改良が加えられて、よりインテリジェントに起動プロセスを管理して、起動時間の短縮を実現している。
レノボの発表によれば、「Enhanced Experience 2」を搭載したPCは、一般的なWindows 7搭載PCに比べ、平均で約20%速く起動するのに対して、「Enhanced Experience 3」を搭載したPCでは、平均で約40%速く起動するという。
前バージョンの「Enhanced Experience 2」を搭載する「IdeaPad Y560p」と、最新の「Enhanced Experience 3」を搭載する「IdeaPad Y580」とで、起動に要する時間を計測した。
計測結果は以下のとおり。
いずれも初期出荷状態で計測を行ったが、「Y560p」のほうは、プリインストールしているソフトが、「Adobe Flash Player 10」「Adobe Reader 9.0.1」「McAfee AntiVirus Plus」など41個で、内蔵ストレージを748MB使用している。対する「Y580」は、プリインストールしているソフトが、「Adobe Reader X(10.1.1)」「Google Chrome」「Kingsoft Office 2010(体験版)」「McAfee Internet Security」など50個で、内蔵ストレージを1.42GB使用している。ソフトの数では10個の差だが、内蔵ストレージの使用量は「Y580」のほうが倍近く多く、その違いがBの値に影響しているのではないかと推測される。
それにしても、Aの値は「Y580」のほうが約10秒速く、A+Bでみても、「Y560p」が約43秒なのに対して「Y580」は約37秒と、「Enhanced Experience 3」を搭載した「Y580」が速い結果となった。その差ははっきり体感できるレベルだ。
「BootShield」は、「Enhanced Experience 3」で新たに搭載した機能だ。前バージョンでもこれに近い効果を発揮していたが、インストールするソフトの数が多くなってくると、その効果が薄れる傾向がみられた。特に常駐型ソフトが増えていくと、起動プロセスを最適化しても、どうしても起動に時間がかかるようになってしまう。「Enhanced Experience 3」では、起動時にCPUを占有するプロセスを「BootShield」がより柔軟に組み合わせることで、工場出荷時と変わらない起動時間を保つように進化している。そこで、「IdeaPad Y580」にソフトをインストールして、起動時間が変化するかどうかを計測してみた。
実際の計測結果は以下のとおり。
36個のソフトを新たにインストールして、内蔵ストレージの使用量は5.03GBに増えているにもかかわらず、起動時間はわずかに速くなった。これはさすがに計測時の誤差の範囲内といえそうだが、それを考慮しても、起動にかかる時間はほとんど変化していないといえる。
内蔵ストレージの使用量が約3.5倍になるくらいにソフトを増やしても、起動時間に影響しないのは驚くべき結果だ。追加したソフトのなかには、ディスク修復ソフトや「Skype」「iTunes」など、PC起動時に同時に立ち上がるソフトが多く含まれるが、「BootShield」は、確かに工場出荷時と同等の起動時間を維持しているのである。
今回は、「Enhanced Experience 3」のうち二つの機能に絞って、その効果を簡単に検証した。それは、ユーザーにとっても恩恵が大きいのが、PCの起動とシャットダウンの高速化だと思われるからだ。ただ、「Enhanced Experience」すなわち「よりよい体験」と命名されているように、さまざまな面で最適化を行ってPCのあらゆる操作を快適にするのが、この技術の核心である。
レノボは、Ivy Bridge世代のレノボの最新ノートPCとウルトラブックのほとんどのモデルに、「Enhanced Experience 3」を搭載しており、ユーザーはとくに何の設定をする必要もなく、その効果を享受することができる。コンシューマ向けの「IdeaPad」シリーズでは、エンタテインメント・コンテンツを楽しんだり、ビジュアル・コミュニケーションを楽しんだりする際にも、その威力を発揮する。
スムーズで快適な操作感が得られる、使っていて待たされない、イライラしない、というのはPCを使い続けるうえでかなり重要なポイントだ。新しいPCの購入を検討する際には、レノボの、それも「Enhanced Experience 3」のシールが貼られたPCを、ぜひ候補の筆頭にしてほしい。(フリーライター・榎木秋彦)
「Lenovo Enhanced Experience 3」搭載の「IdeaPad Y580」
より速く、よりきれいに進化した「Enhanced Experience 3」
レノボは、ビジネスからプライベートまで幅広いラインアップを揃えて、ワールドワイドで高い支持を集めるPCメーカーだ。「Lenovo Enhanced Experience」は、そのレノボの技術陣が、マイクロソフトの技術陣と協力して開発したPCのパフォーマンスをより高速化する技術。開発には、レノボ・ジャパンの大和研究所も重要な役割を担っている。日本の技術力が大いに貢献しているわけだ。
その「Lenovo Enhanced Experience」が、第3世代インテルCore iプロセッサー(Ivy Bridge)に対応して、さらに機能を高めた「Lenovo Enhanced Experience 3 for Windows 7」に進化した。
「Enhanced Experience 3」の主な特徴は、(1)数々の占有最適化技術を使って、より速い起動時間/シャットダウンを可能にする「RapidBoot(ラピッドブート)」、(2)複数のソフトがインストールした後でも、工場出荷時の状態で起動した際と同等の起動時間を維持する「BootShield(ブート シールド)」、(3)17段階グレースケール、16:9ワイドスクリーンビュー、高解像度、高彩度などの調整を行い、より鮮やかでクリアな画質でビデオチャットなどが楽しめる「マルチメディアの最適化(「IdeaPad」シリーズ向け機能)」――の三点だ。
最新機種「IdeaPad Y580」で実際に効果を検証
今回は、「RapidBoot」と「BootShield」について、実機を使ってその効果を検証した。検証に使用した「Enhanced Experience 3」搭載のノートPCは、「IdeaPad Y580」だ。「Y」シリーズは、エンタテインメントに注力したモデルで、そのなかでも「Y580」は、6月に発売されたばかりの最新のフラッグシップモデルだ。
比較のために、前バージョンの「Enhanced Experience 2」を搭載する「IdeaPad Y560p」でも「RapidBoot」を検証した。
「IdeaPad Y560p」は、「Lenovo Enhanced Experience 2」を搭載する2011年1月発売の2世代前のフラッグシップモデル
なお、計測はいずれも、二つのプロセスで実際にストップウォッチを用いて計り、10回計測して最大値と最小値を除外した計8回分の平均値だ。
プロセス『A』は、電源オフの状態から電源ボタンを押し、Windowsが起動してログイン画面が表示され、パスワードの入力が可能になるまでの時間を計測。プロセス『B』は、パスワードを入力してEnterキーを押してから、デスクトップ画面に切り替わり、タスクトレイのアイコンがすべて表示され、カーソル横のリングマークがいったん消えて、操作可能になるまでの時間を計測した。
実際の使用に即して検証したかったので、A・Bいずれのプロセスも、入力や操作が可能になったと判断できる時点でストップウォッチを止めた。そのため、計測時間には筆者の判断が含まれていることをご了承いただきたい。単純にログイン画面が表示された時点、デスクトップが表示された時点、ということでいえば、AもBも、当然ながら計測結果よりもはるかに速かったことを付け加えておく。
「RapidBoot」は「バージョン3」でさらに高速に
電源をオンにしてPCを起動すると、まずBIOSの初期化が行われ、続いて内蔵ストレージから、OSの起動に必要なドライバや設定ファイルなどが読み込まれる。さらに、PC起動と同時に稼働するセキュリティソフトやメッセンジャー系のソフトなどの常駐型ソフトが起動して、ようやくPCの操作が可能になる。インストールしてあるソフトが増えると起動に時間がかかるのは、読み込むドライバや設定ファイル、常駐型ソフトが増えていくからだ。
「RapidBoot」は起動プロセスを監視して、起動に最低限必要なドライバや設定ファイルを優先して読み込み、それ以外のドライバなどの読み込みを後回しにする。短時間で起動してPCを操作可能な状態にまでもっていき、その後、バックグラウンドで段階的に後回しにしたドライバなどを読み込んでいくのだ。
前バージョンの「Enhanced Experience 2」で起動プロセスの監視が改善され、最初に読み込むべきドライバなどの見極めがより柔軟になった。それによって、ユーザーが後からソフトを追加していっても、起動時間が極端に遅くなるようなことはなくなったが、最新の「Enhanced Experience 3」はさらに改良が加えられて、よりインテリジェントに起動プロセスを管理して、起動時間の短縮を実現している。
レノボの発表によれば、「Enhanced Experience 2」を搭載したPCは、一般的なWindows 7搭載PCに比べ、平均で約20%速く起動するのに対して、「Enhanced Experience 3」を搭載したPCでは、平均で約40%速く起動するという。
前バージョンの「Enhanced Experience 2」を搭載する「IdeaPad Y560p」と、最新の「Enhanced Experience 3」を搭載する「IdeaPad Y580」とで、起動に要する時間を計測した。
計測結果は以下のとおり。
IdeaPad Y560p | IdeaPad Y580 | |
A:電源オンからパスワード入力まで | 33秒622 | 24秒274 |
B:パスワード入力から操作可能まで | 9秒303 | 12秒638 |
いずれも初期出荷状態で計測を行ったが、「Y560p」のほうは、プリインストールしているソフトが、「Adobe Flash Player 10」「Adobe Reader 9.0.1」「McAfee AntiVirus Plus」など41個で、内蔵ストレージを748MB使用している。対する「Y580」は、プリインストールしているソフトが、「Adobe Reader X(10.1.1)」「Google Chrome」「Kingsoft Office 2010(体験版)」「McAfee Internet Security」など50個で、内蔵ストレージを1.42GB使用している。ソフトの数では10個の差だが、内蔵ストレージの使用量は「Y580」のほうが倍近く多く、その違いがBの値に影響しているのではないかと推測される。
それにしても、Aの値は「Y580」のほうが約10秒速く、A+Bでみても、「Y560p」が約43秒なのに対して「Y580」は約37秒と、「Enhanced Experience 3」を搭載した「Y580」が速い結果となった。その差ははっきり体感できるレベルだ。
「BootShield」の効果 ソフトを増やしても起動時間はずっと速いまま
「BootShield」は、「Enhanced Experience 3」で新たに搭載した機能だ。前バージョンでもこれに近い効果を発揮していたが、インストールするソフトの数が多くなってくると、その効果が薄れる傾向がみられた。特に常駐型ソフトが増えていくと、起動プロセスを最適化しても、どうしても起動に時間がかかるようになってしまう。「Enhanced Experience 3」では、起動時にCPUを占有するプロセスを「BootShield」がより柔軟に組み合わせることで、工場出荷時と変わらない起動時間を保つように進化している。そこで、「IdeaPad Y580」にソフトをインストールして、起動時間が変化するかどうかを計測してみた。
初期出荷状態で起動したときの「IdeaPad Y580」のデスクトップ画面。50個のソフトがプリインストールされており、内蔵ストレージの使用量は1.42GBだった
実際の計測結果は以下のとおり。
初期出荷状態 | ソフトをインストール後 | |
A:電源オンからパスワード入力まで | 24秒274 | 23秒358 |
B:パスワード入力から操作可能まで | 12秒638 | 12秒270 |
36個のソフトを新たにインストールして、内蔵ストレージの使用量は5.03GBに増えているにもかかわらず、起動時間はわずかに速くなった。これはさすがに計測時の誤差の範囲内といえそうだが、それを考慮しても、起動にかかる時間はほとんど変化していないといえる。
ソフトを追加した後の「IdeaPad Y580」のデスクトップ画面。新たに37個のソフトをインストールして、ソフトの総数は87個になり、内蔵ストレージの使用量は5.03GBに増えた
内蔵ストレージの使用量が約3.5倍になるくらいにソフトを増やしても、起動時間に影響しないのは驚くべき結果だ。追加したソフトのなかには、ディスク修復ソフトや「Skype」「iTunes」など、PC起動時に同時に立ち上がるソフトが多く含まれるが、「BootShield」は、確かに工場出荷時と同等の起動時間を維持しているのである。
イライラ解消! 「Enhanced Experience 3」がPC選びの基準
今回は、「Enhanced Experience 3」のうち二つの機能に絞って、その効果を簡単に検証した。それは、ユーザーにとっても恩恵が大きいのが、PCの起動とシャットダウンの高速化だと思われるからだ。ただ、「Enhanced Experience」すなわち「よりよい体験」と命名されているように、さまざまな面で最適化を行ってPCのあらゆる操作を快適にするのが、この技術の核心である。
レノボは、Ivy Bridge世代のレノボの最新ノートPCとウルトラブックのほとんどのモデルに、「Enhanced Experience 3」を搭載しており、ユーザーはとくに何の設定をする必要もなく、その効果を享受することができる。コンシューマ向けの「IdeaPad」シリーズでは、エンタテインメント・コンテンツを楽しんだり、ビジュアル・コミュニケーションを楽しんだりする際にも、その威力を発揮する。
スムーズで快適な操作感が得られる、使っていて待たされない、イライラしない、というのはPCを使い続けるうえでかなり重要なポイントだ。新しいPCの購入を検討する際には、レノボの、それも「Enhanced Experience 3」のシールが貼られたPCを、ぜひ候補の筆頭にしてほしい。(フリーライター・榎木秋彦)
■「IdeaPad Y580(209973J)」のスペック
●CPU:第3世代インテル Core i7-3610QM プロセッサー(2.30GHz、ターボブースト時3.30GHz) ●OS:Windows 7 Home Premium(32bit)正規版 ●メモリ:8GB ●内蔵ストレージ:1TB HDD+32GB SSD ●グラフィック:NVIDIA Geforce GTX 660M(グラフィックメモリ最大2GB) ●ディスプレイ:15.6型液晶(1920×1080ドット) ●光学ドライブ:ブルーレイディスクドライブ ●サイズ:385(W)×255(D)×22-35.7(H)mm ●質量:約2.7kg(バッテリパックを含む)
●CPU:第3世代インテル Core i7-3610QM プロセッサー(2.30GHz、ターボブースト時3.30GHz) ●OS:Windows 7 Home Premium(32bit)正規版 ●メモリ:8GB ●内蔵ストレージ:1TB HDD+32GB SSD ●グラフィック:NVIDIA Geforce GTX 660M(グラフィックメモリ最大2GB) ●ディスプレイ:15.6型液晶(1920×1080ドット) ●光学ドライブ:ブルーレイディスクドライブ ●サイズ:385(W)×255(D)×22-35.7(H)mm ●質量:約2.7kg(バッテリパックを含む)