<電子書籍リーダー>コンテンツ充実で本格普及へ 専用端末に新規参入が相次ぐ
スマートフォンやタブレット端末、そして専用の電子書籍リーダーなど、電子書籍端末が、コンテンツの充実で本格的に普及する機運が高まっている。この夏以降、専用端末に新しいプレーヤーが参入することで、市場が活性化すると同時に競争が激化する可能性が出てきた。
インプレスR&Dのシンクタンク部門であるインターネットメディア総合研究所の推計によれば、2011年の電子書籍配信サービス市場は全体で629億円と、10年の650億円から3.2%のマイナスだった。これは、市場の76%を占める携帯電話向けが16%減となったことが要因。一方で、スマートフォンやタブレット端末、電子書籍リーダーなど、新しいプラットフォーム向けのサービスは、前年比4.7倍の112億円へと急成長。12年には、294億円まで拡大する見込みだ。その後も新プラットフォーム向けのサービスは拡大し、16年にはサービス全体で2000億円の規模にまで達すると予測している。
電子書籍サービスが伸びているのは、1台の端末に大量の書籍コンテンツを入れて持ち運べる利便性、ハイパーリンクや動画、音声、バイブレーションなどを使って楽しめるインタラクティブ性など、紙の書籍にはない特性をもっているからだ。とくに読書だけを目的とする電子書籍リーダーは、軽量で長時間のバッテリ駆動に対応するなど、電子書籍の特性を生かす機能を搭載している。
また、電子書籍リーダーが採用する電子ペーパーは、液晶ディスプレイと比べると、紙の書籍で読む場合と同様に目にやさしい。さらには、価格が2万円前後と手頃なことも魅力だ。家電量販店では、「小説を読むのが目的ならモノクロ電子ペーパーの端末、1台でインターネットもアプリも利用して、さらには雑誌などを読みたいならタブレット端末と、お客様の使い方によってお勧めする端末を変えている」(ビックカメラ担当者)という。実際、ユーザーのなかには、タブレット端末と電子書籍リーダーの違いを理解して、「それなら2台とも」と、両方を購入して使い分けている人もいるそうだ。
こうしたニーズに応えて、今年2月、東芝は7インチカラー液晶とLinuxベースのモバイルOSを搭載した専用端末「BookPlace DB50」を発売。330gと軽さを追求したほか、電子書籍の購入に利用できる5000円分のポイントがついて2万円台前半の価格設定で、専用端末の普及に新たな可能性を示した。
専用機である電子書籍リーダーの店頭販売では、現在、ソニーが圧倒的な強さを発揮している。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によれば、今年6月のソニーの販売台数メーカーシェアは98.0%。さまざまな読書スタイルに合わせた多彩なラインアップで、店頭市場を制している。ただし、他社を含めた市場全体でみると、販売台数は昨年から半減。スマートフォンやタブレット端末などの汎用機に押され、専用機の存在感は薄れる傾向があった。
一方で、電子書籍普及の前提となる電子書籍ストアサービスは、出版・印刷・書店など、コンテンツを保有する企業の参入で、充実の一途をたどっている。これを受けて、この夏以降、専用機の期待の新星が続々と登場する。
まず、楽天がカナダの子会社、コボの電子書籍リーダー「kobo Touch(コボ・タッチ)」を7月19日に発売する。さらにネット書籍ビジネスの雄、アマゾンは日本語サービスに対応した「Kindle(キンドル)」を近日中に発売することをサイトで告知。さらに、トッパングループの電子書籍ストア「BookLive!」も、電子ペーパーを採用した6インチの専用端末を今秋に発売する。これらはすべて8000円から1万5000円前後の価格設定で、専用機として購入する際の心理的負担が比較的小さいので、普及が期待できる。
家電量販店では、「端末が増えれば増えるほど選択肢が広がるので、それまで意識していなかったお客様が購入する可能性がある」(ビックカメラ担当者)と期待する。汎用機と専用機のパイの取り合いから、専用機同士の戦いへ──。電子書籍リーダー市場では、激しい競争が繰り広げられるだろう。(佐相彰彦)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年7月16日付 vol.1440より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは
サービスは拡大傾向 2016年には2000億円規模へ
インプレスR&Dのシンクタンク部門であるインターネットメディア総合研究所の推計によれば、2011年の電子書籍配信サービス市場は全体で629億円と、10年の650億円から3.2%のマイナスだった。これは、市場の76%を占める携帯電話向けが16%減となったことが要因。一方で、スマートフォンやタブレット端末、電子書籍リーダーなど、新しいプラットフォーム向けのサービスは、前年比4.7倍の112億円へと急成長。12年には、294億円まで拡大する見込みだ。その後も新プラットフォーム向けのサービスは拡大し、16年にはサービス全体で2000億円の規模にまで達すると予測している。
電子書籍サービスが伸びているのは、1台の端末に大量の書籍コンテンツを入れて持ち運べる利便性、ハイパーリンクや動画、音声、バイブレーションなどを使って楽しめるインタラクティブ性など、紙の書籍にはない特性をもっているからだ。とくに読書だけを目的とする電子書籍リーダーは、軽量で長時間のバッテリ駆動に対応するなど、電子書籍の特性を生かす機能を搭載している。
また、電子書籍リーダーが採用する電子ペーパーは、液晶ディスプレイと比べると、紙の書籍で読む場合と同様に目にやさしい。さらには、価格が2万円前後と手頃なことも魅力だ。家電量販店では、「小説を読むのが目的ならモノクロ電子ペーパーの端末、1台でインターネットもアプリも利用して、さらには雑誌などを読みたいならタブレット端末と、お客様の使い方によってお勧めする端末を変えている」(ビックカメラ担当者)という。実際、ユーザーのなかには、タブレット端末と電子書籍リーダーの違いを理解して、「それなら2台とも」と、両方を購入して使い分けている人もいるそうだ。
こうしたニーズに応えて、今年2月、東芝は7インチカラー液晶とLinuxベースのモバイルOSを搭載した専用端末「BookPlace DB50」を発売。330gと軽さを追求したほか、電子書籍の購入に利用できる5000円分のポイントがついて2万円台前半の価格設定で、専用端末の普及に新たな可能性を示した。
新端末の登場で競争激化へ ユーザーの選択肢が広がる
専用機である電子書籍リーダーの店頭販売では、現在、ソニーが圧倒的な強さを発揮している。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によれば、今年6月のソニーの販売台数メーカーシェアは98.0%。さまざまな読書スタイルに合わせた多彩なラインアップで、店頭市場を制している。ただし、他社を含めた市場全体でみると、販売台数は昨年から半減。スマートフォンやタブレット端末などの汎用機に押され、専用機の存在感は薄れる傾向があった。
一方で、電子書籍普及の前提となる電子書籍ストアサービスは、出版・印刷・書店など、コンテンツを保有する企業の参入で、充実の一途をたどっている。これを受けて、この夏以降、専用機の期待の新星が続々と登場する。
まず、楽天がカナダの子会社、コボの電子書籍リーダー「kobo Touch(コボ・タッチ)」を7月19日に発売する。さらにネット書籍ビジネスの雄、アマゾンは日本語サービスに対応した「Kindle(キンドル)」を近日中に発売することをサイトで告知。さらに、トッパングループの電子書籍ストア「BookLive!」も、電子ペーパーを採用した6インチの専用端末を今秋に発売する。これらはすべて8000円から1万5000円前後の価格設定で、専用機として購入する際の心理的負担が比較的小さいので、普及が期待できる。
店頭では来店者から専用端末に関する問い合わせが多いという(ビックカメラ有楽町店)
家電量販店では、「端末が増えれば増えるほど選択肢が広がるので、それまで意識していなかったお客様が購入する可能性がある」(ビックカメラ担当者)と期待する。汎用機と専用機のパイの取り合いから、専用機同士の戦いへ──。電子書籍リーダー市場では、激しい競争が繰り広げられるだろう。(佐相彰彦)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年7月16日付 vol.1440より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは