BCN発表、薄型テレビの単価下落止まる、「デジタル家電デフレ」脱却の兆し?
BCNは、6月13日、記者会見を開催し、量販店の実売データ「BCNランキング」をもとに、薄型テレビやパソコンなどのデジタル家電について、2012年5月までの最新の販売動向を説明した。テーマは、「デジタル家電デフレ脱却への道筋――変わる夏のボーナス商戦、安さの構造」。各ジャンルの税別平均単価をみると、パソコンは過去最安を更新したものの、レンズ一体型デジタルカメラ(コンパクトデジタルカメラ)、薄型テレビは、それぞれ今年1月、3月を底に上昇に転じた。新しい用途・価値の提案、機能アップ、大画面モデルなど高価格帯製品へのシフト、ユーザー層の拡大など、単価アップの要因は個々に異なるものの、価格がどんどん安くなる「デジタル家電デフレ」の状況に変化の兆しがあると分析した。
デジタルカメラ全体の販売台数の8~9割弱を占めるレンズ一体型デジタルカメラ(コンパクトデジタルカメラ)は、モデルチェンジに伴って全般的に画素数・ズーム倍率、フルHD動画撮影機能の搭載率などが上昇。平均単価は2012年1月を底にわずかながら上昇に転じ、5月は1年前と同水準の1万7000円台に回復した。
小型・軽量のミラーレスタイプを含むレンズ交換型デジタルカメラ(デジタル一眼カメラ)も、1月を底に平均単価は上昇傾向にあったが、5月はやや下がった。売れ行きは引き続き好調で、5月は台数で前月同月比142.8%、金額で135.2%と、前年に比べ、大きく伸びた。販売台数は過去最大を記録した2012年3月以下だが、伸び率は3月と同程度で、春先から高水準を維持している。
カメラ本体の好調は、初心者には購入のハードルが高いといわれている交換レンズにも波及し、2010年5月以降、交換レンズの販売台数は常に前年を超えている。また、参入メーカーが増え、2011年12月以降、レンズ交換型デジタルカメラの販売台数の5割前後を占めるミラーレス一眼カメラ用交換レンズの構成比が徐々に拡大し、5月は3割近い28.4%を占めた。カメラ本体だけではなく、交換用レンズでも「ミラーレス」の存在感が高まっている。
薄型テレビ(液晶+プラズマ+有機ELテレビ)は、2011年8月以降、販売台数が落ち込んでいる。月間販売台数が前年を上回ったのは2011年1月だけで、今年5月に至っては、前年同月比31.8%、実に前年の7割減という非常に厳しい状況だった。販売台数は、家電エコポイント制度がスタートした3年前の2009年5月を下回り、もとの平常時の水準に戻ったともいえる。ただ、下がり続けていた薄型テレビ全体の平均単価は、2012年3月を底にわずかながら上昇に転じ、約5万円まで回復した。最も販売台数が多い「30型台」や「40型台」の単価がリバウンドしたことと、単価の高い「50型以上」が前年以上の売れ行きを記録したためだ。
20型から50型まで10インチごとに区切り、2011年5月から2012年5月までのサイズ帯別販売台数構成比の推移を集計すると、リビングから個室まで、設置場所を問わない32V型がほとんどを占める「30型台」の構成比が最も大きく、売れ筋であることは変わらない。しかし、「30型台」は42.4%を占めた2010年9月をピークに徐々に減少し、月によって若干変動はあるものの、「20型台」と「20型未満」を合わせた中・小型テレビと、「40型台」と「50型以上」を合わせた大画面テレビが増加傾向にある。特に、1年前の2010年5月にはわずか1.7%に過ぎなかった「50型以上」は、今年5月には6.1%まで拡大し、販売台数も2011年12月以降は常に前年を上回っている。ここ数年の間に値下がりが進み、値頃感が増したからだろう。
売れ筋の32V型の液晶テレビは価格競争が激しく、大手メーカーのテレビ事業が採算悪化に陥った要因の一つとみられる。設置スペースの関係から、32V型から50V型以上の大画面テレビへの完全な置き換えは難しいと思われるが、政府が後押しした「地デジ化推進策」の結果、地デジ対応テレビの普及が進み、買い替え・買い増し需要が中心となった薄型テレビの今後の主戦場は、画面サイズや価格帯の分散化が示すように、価格が手頃で買いやすい「小型テレビ」と、プレミア感のある「大画面テレビ」になりそうだ。
パソコン(デスクトップPC・ノートPC・タブレット端末)は、5月は振るわなかった。販売台数・金額ともに前年を下回ったのは2011年3月以来で、新CPUを搭載した夏モデルの発売を前に、旧機種となった秋冬モデルが安く売られたために、平均単価は7万円を切って6万円台後半に突入した。タイプ別にみると、台数ベースで前年同月比74.1%にとどまったデスクトップPCの落ち込みが大きく、パソコン全体の販売台数の7割弱を占めるノートPCは94.5%と微減にとどまった。一方、タブレット端末は前年を大きく上回った。パソコン全体の販売台数に占める構成比は、3月13.1%、4月12.6%、5月15.4%と3か月連続で1割を超え、デスクトップPCに迫りつつある。
ノートPC、デスクトップPCは、再び単価下落の傾向がみられるが、最安値を更新した今回の急な値下がりは、例年なら5月にはひと通り出揃う夏モデルの立ち上がりの遅れによる一時的な現象だろう。夏モデルに切り替われば、単価は必然的にアップし、元の水準に戻る可能性が高い。ただ、夏モデルとして各PCメーカーから薄さや軽さをウリにしたノートPCの新カテゴリ「ウルトラブック」が相次いで発売され、さらに、今後リリース予定のWindowsの新バージョン「Windows 8」の影響が現時点ではみえないことから、パソコン市場は構造激変の前夜にある。
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
*本記事の価格はすべて「税抜き」の価格です。
コンパクトデジタルカメラの平均単価は1万7000台に回復、デジタル一眼も好調
デジタルカメラ全体の販売台数の8~9割弱を占めるレンズ一体型デジタルカメラ(コンパクトデジタルカメラ)は、モデルチェンジに伴って全般的に画素数・ズーム倍率、フルHD動画撮影機能の搭載率などが上昇。平均単価は2012年1月を底にわずかながら上昇に転じ、5月は1年前と同水準の1万7000円台に回復した。
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小型・軽量のミラーレスタイプを含むレンズ交換型デジタルカメラ(デジタル一眼カメラ)も、1月を底に平均単価は上昇傾向にあったが、5月はやや下がった。売れ行きは引き続き好調で、5月は台数で前月同月比142.8%、金額で135.2%と、前年に比べ、大きく伸びた。販売台数は過去最大を記録した2012年3月以下だが、伸び率は3月と同程度で、春先から高水準を維持している。
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カメラ本体の好調は、初心者には購入のハードルが高いといわれている交換レンズにも波及し、2010年5月以降、交換レンズの販売台数は常に前年を超えている。また、参入メーカーが増え、2011年12月以降、レンズ交換型デジタルカメラの販売台数の5割前後を占めるミラーレス一眼カメラ用交換レンズの構成比が徐々に拡大し、5月は3割近い28.4%を占めた。カメラ本体だけではなく、交換用レンズでも「ミラーレス」の存在感が高まっている。
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薄型テレビの売れ筋サイズにやや変化、50V型以上の大画面モデルが伸びる
薄型テレビ(液晶+プラズマ+有機ELテレビ)は、2011年8月以降、販売台数が落ち込んでいる。月間販売台数が前年を上回ったのは2011年1月だけで、今年5月に至っては、前年同月比31.8%、実に前年の7割減という非常に厳しい状況だった。販売台数は、家電エコポイント制度がスタートした3年前の2009年5月を下回り、もとの平常時の水準に戻ったともいえる。ただ、下がり続けていた薄型テレビ全体の平均単価は、2012年3月を底にわずかながら上昇に転じ、約5万円まで回復した。最も販売台数が多い「30型台」や「40型台」の単価がリバウンドしたことと、単価の高い「50型以上」が前年以上の売れ行きを記録したためだ。
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20型から50型まで10インチごとに区切り、2011年5月から2012年5月までのサイズ帯別販売台数構成比の推移を集計すると、リビングから個室まで、設置場所を問わない32V型がほとんどを占める「30型台」の構成比が最も大きく、売れ筋であることは変わらない。しかし、「30型台」は42.4%を占めた2010年9月をピークに徐々に減少し、月によって若干変動はあるものの、「20型台」と「20型未満」を合わせた中・小型テレビと、「40型台」と「50型以上」を合わせた大画面テレビが増加傾向にある。特に、1年前の2010年5月にはわずか1.7%に過ぎなかった「50型以上」は、今年5月には6.1%まで拡大し、販売台数も2011年12月以降は常に前年を上回っている。ここ数年の間に値下がりが進み、値頃感が増したからだろう。
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売れ筋の32V型の液晶テレビは価格競争が激しく、大手メーカーのテレビ事業が採算悪化に陥った要因の一つとみられる。設置スペースの関係から、32V型から50V型以上の大画面テレビへの完全な置き換えは難しいと思われるが、政府が後押しした「地デジ化推進策」の結果、地デジ対応テレビの普及が進み、買い替え・買い増し需要が中心となった薄型テレビの今後の主戦場は、画面サイズや価格帯の分散化が示すように、価格が手頃で買いやすい「小型テレビ」と、プレミア感のある「大画面テレビ」になりそうだ。
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パソコンの平均単価は6万円台に突入、過去最安を更新
パソコン(デスクトップPC・ノートPC・タブレット端末)は、5月は振るわなかった。販売台数・金額ともに前年を下回ったのは2011年3月以来で、新CPUを搭載した夏モデルの発売を前に、旧機種となった秋冬モデルが安く売られたために、平均単価は7万円を切って6万円台後半に突入した。タイプ別にみると、台数ベースで前年同月比74.1%にとどまったデスクトップPCの落ち込みが大きく、パソコン全体の販売台数の7割弱を占めるノートPCは94.5%と微減にとどまった。一方、タブレット端末は前年を大きく上回った。パソコン全体の販売台数に占める構成比は、3月13.1%、4月12.6%、5月15.4%と3か月連続で1割を超え、デスクトップPCに迫りつつある。
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ノートPC、デスクトップPCは、再び単価下落の傾向がみられるが、最安値を更新した今回の急な値下がりは、例年なら5月にはひと通り出揃う夏モデルの立ち上がりの遅れによる一時的な現象だろう。夏モデルに切り替われば、単価は必然的にアップし、元の水準に戻る可能性が高い。ただ、夏モデルとして各PCメーカーから薄さや軽さをウリにしたノートPCの新カテゴリ「ウルトラブック」が相次いで発売され、さらに、今後リリース予定のWindowsの新バージョン「Windows 8」の影響が現時点ではみえないことから、パソコン市場は構造激変の前夜にある。
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
*本記事の価格はすべて「税抜き」の価格です。