コンパクトデジカメは生き残るか──スマートフォンとの連携に活路
スマートフォンで撮影した画像をSNS(ソーシャルネットワークサービス)で気軽に共有──そんな写真の楽しみ方が広がってきて、「手軽に撮影」という機能しかもたないコンパクトデジタルカメラの旗色がよくない。デジカメメーカーのなかには、スマートフォンへの対抗意識を燃やしながらも、まずはスマートフォンと共存する動きをみせるところが出てきた。前年割れが続くコンパクトデジタルカメラに、果たして活路はあるのか。
家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」で、この6か月のコンパクトデジカメの販売台数前年同月比をみると、新製品の発売が多い10月以外は前年を下回っている状況だ。年末商戦の12月でさえ91.9%と2ケタ近い減少を記録した。いかに消費者に対して新たな提案ができていないか、あるいはその提案が受け入れられていないかがわかる。
コンパクトデジカメは、「需要が一巡した」といわれる商品だ。欲しい人はすでにもっていて、現在の購入者は多くが買い替え需要。家電量販店の関係者によれば、「買うモデルが決まっているお客様が買っていく」という。接客応対なしで売れていくので、売る側にとっては楽な商材だが、裏を返せば接客しても多くは売れない商材でもある。
また、家電量販店のコンパクトデジカメコーナーは、一つの棚に並ぶ商品数が多い。これは各社のラインアップが充実していることの現れでもあるが、来店者には「似たようなモデルばかり……」と受け取られてしまいかねない。家電量販店が口を揃えて言うように、「コンパクトデジカメはコモディティ化した」ということだ。
売れ行き不振の大きな要因は、よくいわれるように、携帯電話やスマートフォンのカメラ機能が充実したことにあるだろう。とくにスマートフォンについては、カメラとインターネットがつながるという点が大きい。従来型の携帯電話からスマートフォンに買い替える人は、アプリやSNSを活用したいと考えている。撮った写真をその場でTwitterやFacebookで共有するのは、SNSではあたりまえだ。そんな楽しみがスマートフォン一台で完結するなら、デジカメはいらない──これがコンパクトデジカメの販売を減少させている。
では、コンパクトデジカメに未来はないのだろうか。カメラメーカーにとって、コンパクトデジカメは、老若男女、幅広い層のユーザーを囲い込むことができる魅力的な市場だ。各社はその価値を追い求めて、いわば“敵”であるスマートフォンの人気を利用した道を模索し始めた。
今年2月9~11日に開催されたカメラと写真映像の展示会「CP+2012」では、コンパクトデジタルカメラの新機能として、Wi-Fi機能をアピールするメーカーが多かった。キヤノンは、2月下旬に発売予定の「IXY 1」「IXY 420F」にWi-Fi機能を搭載。専用アプリ「CameraWindow(for iOS)」をダウンロードしたiPhoneやiPadに、カメラで撮影した画像や動画を送信することができる。ソニーは、「Cyber-shot」シリーズで3月9日発売予定の「DSC-TX300V」にWi-Fi機能を搭載する。専用アプリの「PlayMemories Mobile」をインストールしたスマートフォンやタブレット端末で、カメラ内の静止画を閲覧したりFacebookやTwitterなどにアップしたりできる。
富士フイルムも、2月18日、撮影した画像をスマートフォンや携帯電話に送信して友人とシェアできる「FinePix Z1000EXR」を発売。無線LANを利用した「スマートフォン送信機能」と、赤外線による「高速赤外線通信機能」を備える。スマートフォンの場合は、無料専用アプリ「FUJIFILM Photo Receiver」をインストールすれば、Android搭載スマートフォンやタブレット端末、iPhone、iPadにカメラで撮影した画像を転送することができる。mixiやFacebookなどへの画像アップロードも簡単だ。
各社がスマートフォンと共存する道を選択したのは、「ユーザーはSNSで共有する写真に対して、さらに高画質を求めるようになる」とみているからだ。スマートフォンのカメラ機能は進化しているが、画質を追求していけば、必ず限界がくる。SNSにきれいな写真をアップロードするために、Wi-Fi機能搭載のコンパクトデジカメが必要──こんな構図をつくろうとしている。コンパクトデジカメ本来の機能も高めていくのはもちろんだが、スマートフォンの成長軌道に乗ることで、カメラの買い替えを促すことが最終的な狙いなのだ。(佐相彰彦)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコンやデジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年3月5日付 vol.1422より転載したものです。 >> 週刊BCNとは
一巡した需要にスマートフォンが追い打ち
家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」で、この6か月のコンパクトデジカメの販売台数前年同月比をみると、新製品の発売が多い10月以外は前年を下回っている状況だ。年末商戦の12月でさえ91.9%と2ケタ近い減少を記録した。いかに消費者に対して新たな提案ができていないか、あるいはその提案が受け入れられていないかがわかる。
コンパクトデジカメは、「需要が一巡した」といわれる商品だ。欲しい人はすでにもっていて、現在の購入者は多くが買い替え需要。家電量販店の関係者によれば、「買うモデルが決まっているお客様が買っていく」という。接客応対なしで売れていくので、売る側にとっては楽な商材だが、裏を返せば接客しても多くは売れない商材でもある。
また、家電量販店のコンパクトデジカメコーナーは、一つの棚に並ぶ商品数が多い。これは各社のラインアップが充実していることの現れでもあるが、来店者には「似たようなモデルばかり……」と受け取られてしまいかねない。家電量販店が口を揃えて言うように、「コンパクトデジカメはコモディティ化した」ということだ。
売れ行き不振の大きな要因は、よくいわれるように、携帯電話やスマートフォンのカメラ機能が充実したことにあるだろう。とくにスマートフォンについては、カメラとインターネットがつながるという点が大きい。従来型の携帯電話からスマートフォンに買い替える人は、アプリやSNSを活用したいと考えている。撮った写真をその場でTwitterやFacebookで共有するのは、SNSではあたりまえだ。そんな楽しみがスマートフォン一台で完結するなら、デジカメはいらない──これがコンパクトデジカメの販売を減少させている。
撮った写真をSNSで即共有 Wi-Fi機能搭載モデルが登場
では、コンパクトデジカメに未来はないのだろうか。カメラメーカーにとって、コンパクトデジカメは、老若男女、幅広い層のユーザーを囲い込むことができる魅力的な市場だ。各社はその価値を追い求めて、いわば“敵”であるスマートフォンの人気を利用した道を模索し始めた。
今年2月9~11日に開催されたカメラと写真映像の展示会「CP+2012」では、コンパクトデジタルカメラの新機能として、Wi-Fi機能をアピールするメーカーが多かった。キヤノンは、2月下旬に発売予定の「IXY 1」「IXY 420F」にWi-Fi機能を搭載。専用アプリ「CameraWindow(for iOS)」をダウンロードしたiPhoneやiPadに、カメラで撮影した画像や動画を送信することができる。ソニーは、「Cyber-shot」シリーズで3月9日発売予定の「DSC-TX300V」にWi-Fi機能を搭載する。専用アプリの「PlayMemories Mobile」をインストールしたスマートフォンやタブレット端末で、カメラ内の静止画を閲覧したりFacebookやTwitterなどにアップしたりできる。
富士フイルムも、2月18日、撮影した画像をスマートフォンや携帯電話に送信して友人とシェアできる「FinePix Z1000EXR」を発売。無線LANを利用した「スマートフォン送信機能」と、赤外線による「高速赤外線通信機能」を備える。スマートフォンの場合は、無料専用アプリ「FUJIFILM Photo Receiver」をインストールすれば、Android搭載スマートフォンやタブレット端末、iPhone、iPadにカメラで撮影した画像を転送することができる。mixiやFacebookなどへの画像アップロードも簡単だ。
「CP+2012」では各社がWi-Fi機能を搭載したコンパクトデジカメをアピール
各社がスマートフォンと共存する道を選択したのは、「ユーザーはSNSで共有する写真に対して、さらに高画質を求めるようになる」とみているからだ。スマートフォンのカメラ機能は進化しているが、画質を追求していけば、必ず限界がくる。SNSにきれいな写真をアップロードするために、Wi-Fi機能搭載のコンパクトデジカメが必要──こんな構図をつくろうとしている。コンパクトデジカメ本来の機能も高めていくのはもちろんだが、スマートフォンの成長軌道に乗ることで、カメラの買い替えを促すことが最終的な狙いなのだ。(佐相彰彦)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコンやデジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年3月5日付 vol.1422より転載したものです。 >> 週刊BCNとは