伸びるPC市場に新星登場 「ウルトラブック」で活性化へ
ノートPCの販売台数が、前年を上回る水準で推移している。スマートフォンやタブレット端末の人気に押され、「できること」が重複するノートPCは苦しいのでは、という見方を覆し、逆にスマートフォンやタブレット端末のデータやアプリのバックアップ用としてPCの必要性が出てきたことから、購入者が増えた。また、秋からは「ウルトラブック」という新しい規格に則った超薄型・軽量のノートPCも登場し、市場は活性化している。
BCNランキングによれば、今年に入ってから、ほとんどの月でノートPCの販売台数が前年同月を上回っている。1月と2月が1ケタ成長で、3月は東日本大震災の影響で下回ったが、4月・5月には再び2ケタ成長に戻った。以後、6~9月は1ケタと2ケタの間を行き来し、10月は今年最高の成長率となる15.5%増を記録した。1月と2月に関しては、インテルの第二世代Core iプロセッサーの不具合で出荷停止になるというハプニングがあったが、そのマイナス要因よりも買い替え需要のほうが勝ったことになる。4月以降は、東日本大震災の影響でいったん落ち込んだ東北地方を中心とする購入者の復活が大きな要因の一つになった。
また、スマートフォンやタブレット端末の購入者が増えていることも、好調に寄与している。スマートフォンやタブレット端末の多くは、内蔵メモリの容量がそれほど大きくない。外部メモリは、最大容量でも64GBのmicroSDXCで、しかも容量が大きくなれば価格も高くなる。そこで、データやアプリのバックアップに、PCを使う人が多くなっているようだ。
データのバックアップ用途なら、ノートPCに限らず、デスクトップPCでもかまわないはず。実際、デスクトップの販売台数も伸びている。ノートPC同様、今年に入ってから、3月を除いた月は前年を上回っている。
いわばPC全体が好調期に入っているのだが、そのなかでもノートPCの伸びが大きいのは、やはり「省スペース」「場所を選ばない」という特徴が再認識されていることが理由だろう。さらにノートPCはここにきて価格が下がっており、高スペックでも10万円以下で購入できるモデルが多くなった。手軽に購入できるようになったことも、成長を後押ししている。
好調のノートPCだが、それでもなお、スマートフォンやタブレット端末との競合は否定できない。とくに、持ち運んで使うモバイルノートに関しては、その利用シーンや目的がスマートフォンやタブレット端末と重なるために、影響を直接受けることになる。そこでPC陣営が新たに打ち出したのが、インテルが提唱する超薄型・軽量のノートPC規格「ウルトラブック」だ。
「ウルトラブック」の販売に積極的なメーカーは、ASUSTeK Computer(ASUS)やエイサーなどの台湾勢。ASUSのジョニー・シー会長は、「これからのPCは、スマートフォンと同じように使えなければならない」と訴えている。同社は、日本で「ASUS ZENBOOK」シリーズを11月3日に発売。薄くて軽く、しかも高速復帰でいつでもネットワークにつながることを、スマートフォンよりもすぐれている点としてアピールしている。日本エイサーは、「Aspire S3」シリーズを発売。石川里美・プロダクト&マーケティングコミュニケーション部長は、「国内PC市場は、激しい価格競争が今後も続くと予想している。その競争に勝つためのラインアップを充実させる一方で、ウルトラブックで買い替えや買い増しを促進していく」との方針を示している。「ウルトラブック」を提唱したインテルの山本専マーケティング本部長は、「新しいコンセプトの『ウルトラブック』が続々と登場し、PC市場を底上げするだろう」と期待を込める。
「ウルトラブック」は、東芝やレノボ・ジャパンも発売。参入メーカーが増え、続々と発売になる新製品に、家電量販店もコーナーを設けるなどして拡販に動いている。「ウルトラブック」は、ノートPC市場のさらなる活性化の起爆剤になるだろう。(佐相彰彦)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2011年12月5日付 vol.1410より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは
震災の月を除き前年比増加 10月は15%以上の成長
BCNランキングによれば、今年に入ってから、ほとんどの月でノートPCの販売台数が前年同月を上回っている。1月と2月が1ケタ成長で、3月は東日本大震災の影響で下回ったが、4月・5月には再び2ケタ成長に戻った。以後、6~9月は1ケタと2ケタの間を行き来し、10月は今年最高の成長率となる15.5%増を記録した。1月と2月に関しては、インテルの第二世代Core iプロセッサーの不具合で出荷停止になるというハプニングがあったが、そのマイナス要因よりも買い替え需要のほうが勝ったことになる。4月以降は、東日本大震災の影響でいったん落ち込んだ東北地方を中心とする購入者の復活が大きな要因の一つになった。
ノートPCの販売台数前年同月比の推移
また、スマートフォンやタブレット端末の購入者が増えていることも、好調に寄与している。スマートフォンやタブレット端末の多くは、内蔵メモリの容量がそれほど大きくない。外部メモリは、最大容量でも64GBのmicroSDXCで、しかも容量が大きくなれば価格も高くなる。そこで、データやアプリのバックアップに、PCを使う人が多くなっているようだ。
データのバックアップ用途なら、ノートPCに限らず、デスクトップPCでもかまわないはず。実際、デスクトップの販売台数も伸びている。ノートPC同様、今年に入ってから、3月を除いた月は前年を上回っている。
デスクトップPCの販売台数前年同月比の推移
いわばPC全体が好調期に入っているのだが、そのなかでもノートPCの伸びが大きいのは、やはり「省スペース」「場所を選ばない」という特徴が再認識されていることが理由だろう。さらにノートPCはここにきて価格が下がっており、高スペックでも10万円以下で購入できるモデルが多くなった。手軽に購入できるようになったことも、成長を後押ししている。
「ウルトラブック」がさらなる活性化の起爆剤に
好調のノートPCだが、それでもなお、スマートフォンやタブレット端末との競合は否定できない。とくに、持ち運んで使うモバイルノートに関しては、その利用シーンや目的がスマートフォンやタブレット端末と重なるために、影響を直接受けることになる。そこでPC陣営が新たに打ち出したのが、インテルが提唱する超薄型・軽量のノートPC規格「ウルトラブック」だ。
「ウルトラブック」の販売に積極的なメーカーは、ASUSTeK Computer(ASUS)やエイサーなどの台湾勢。ASUSのジョニー・シー会長は、「これからのPCは、スマートフォンと同じように使えなければならない」と訴えている。同社は、日本で「ASUS ZENBOOK」シリーズを11月3日に発売。薄くて軽く、しかも高速復帰でいつでもネットワークにつながることを、スマートフォンよりもすぐれている点としてアピールしている。日本エイサーは、「Aspire S3」シリーズを発売。石川里美・プロダクト&マーケティングコミュニケーション部長は、「国内PC市場は、激しい価格競争が今後も続くと予想している。その競争に勝つためのラインアップを充実させる一方で、ウルトラブックで買い替えや買い増しを促進していく」との方針を示している。「ウルトラブック」を提唱したインテルの山本専マーケティング本部長は、「新しいコンセプトの『ウルトラブック』が続々と登場し、PC市場を底上げするだろう」と期待を込める。
ノートPCの販売増を後押しする「ウルトラブック」
「ウルトラブック」は、東芝やレノボ・ジャパンも発売。参入メーカーが増え、続々と発売になる新製品に、家電量販店もコーナーを設けるなどして拡販に動いている。「ウルトラブック」は、ノートPC市場のさらなる活性化の起爆剤になるだろう。(佐相彰彦)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2011年12月5日付 vol.1410より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは