売れる美容家電 売り場拡張に走る家電量販店
美容家電が好調だ。大手家電メーカーが手頃な1万~5万円ほどの製品を充実させたことで、「エステサロンに行かずに自宅で気軽にケアできる」と女性の心をつかんだ。家電量販店では、いま、美容家電売り場を広げる動きがみられる。シンクタンクが「今後2~3年は成長が続く」という美容家電市場。家電量販店はこの商機を狙い、女性客の獲得に力を入れている。
ビックカメラは、9月16日、有楽町店(東京)の3階に、美容家電やフィットネス機器、リラクゼーショングッズなどを揃えたコーナー「ビック ビューティー」をオープンした。美容家電は、従来は地下1階で展開していたが、もともと3階にあった布団売り場と入れ替えることで、売り場面積を約1.5倍に広げた。これまで取り扱っていなかったアロマオイルやディフューザー、バスソルトなどを入れて、品揃えを強化した。
「ビック ビューティー」は、企画や商品選びを女性スタッフが担当。接客も、もちろん女性だ。女性目線で売り場づくりとサービスを強化することで、女性客がゆっくり商品を見て、楽しめる環境をつくった。店員が女性なので、肌の悩みなども話しやすい。またドライヤーが試せるコーナーは明るいイメージで利用しやすくしたほか、パナソニックの美顔器を実際に試すことができるカウンターは、人目につきにくい奥に配置した。
店舗全体からみれば、「ビック ビューティー」は、女性客拡大を図る取り組みの一環だ。オープン後は、「お昼休みや仕事帰りの女性が、ふらっと来店してくれるようになった」(ビックカメラ有楽町店3階ビック ビューティー担当の高田真由氏)と、早くも売り場刷新の効果が出はじめているという。ビックカメラは、今後、他店舗でも「ビック ビューティー」を展開していく方針だ。
埼玉県羽生市のイオンモール羽生1階に入る上新電機羽生店も、美容家電の販売を強化している。岩田良仁店長は、「美容家電は製品数が増え、売れゆきもいい」と、売り場強化の背景を語る。店舗はイオンモールの中にあって、主婦層や若い女性が多く来店するほか、テナントには、若い女性店員が多い。こうした女性層のニーズに応えて、年々品揃えを強化してきた。メインの入り口を入ってすぐの場所に売り場スペースを設けているほか、大きな導線となる通路にはワゴンに展示してアピールしている。
最近では、パナソニックが4月に発売した「頭皮エステ」の人気が高く、1か月に数十台のペースで売れているという。パナソニックの「頭皮エステ」と微粒子イオン「ナノイー」搭載ドライヤーのセット販売では、2か月で30~40セット販売した。岩田店長は、「『頭皮エステ』は、ドライヤーや美顔器などとは違い、これまで店頭になかった新しいカテゴリの商品。それだけに、伸びしろがある。こうした新しいカテゴリの新製品が登場してくる美容家電はさらに伸びていくはず」と、期待する。地上デジタル放送移行後、テレビの販売が減速するなかで、美容家電は「ポスト地デジ」商材の一つとして存在感を高めているのだ。
なぜ、美容家電の人気が高まっているのか。野村総合研究所ICT・メディア産業コンサルティング部の川元麻衣子副主任コンサルタントによると、「景気後退を背景に、2009年頃から、自宅で快適に過ごすための『巣ごもり消費』の傾向が現われてきた。これが一つの要因になっている」という。女性が、自宅での時間をいかに快適に過ごすかを考えるなかで、パナソニックを中心とした家電メーカーが投入した製品群が心をつかんだようだ。一方、“外出”しなければならないエステティック市場は、「2006年頃をピークに落ち込んでいる」という。
川元副主任コンサルタントは、美容家電市場を「現在は、可処分所得が月10万円を超え、美容に関心が高い人がユーザーの中心になっている。購入したいが、まだ買っていないという様子見の人が多く、ここにポテンシャルがある。今後2~3年は着実に成長する」と分析する。
実際、百貨店の顧客をメインターゲットとするラオックス池袋東武店では、今年9月のオープン後、「金額ベースで理美容家電が最も売れている」(源野敏マネージャー)という。製品を品質で選ぶ傾向があり、高級機が売れるそうだ。この傾向は、百貨店だけに限らない。郊外店である上新電機羽生店も同じで、「低価格のドライヤーの販売が減少している一方で、パナソニックのナノイー搭載の高級ドライヤーが伸びている」(岩田店長)からだ。
「どうせなら、いい物を納得のいく価格で選びたい」という消費心理をうまくとらえた製品が増えていくことで、美容家電への女性の関心は高まる。女性の心をつかむ売り場づくりも、ここがカギになりそうだ。(田沢理恵)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2011年10月10日付 vol.1402より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは
女性スタッフ中心の売り場で女性客に売る
ビックカメラは、9月16日、有楽町店(東京)の3階に、美容家電やフィットネス機器、リラクゼーショングッズなどを揃えたコーナー「ビック ビューティー」をオープンした。美容家電は、従来は地下1階で展開していたが、もともと3階にあった布団売り場と入れ替えることで、売り場面積を約1.5倍に広げた。これまで取り扱っていなかったアロマオイルやディフューザー、バスソルトなどを入れて、品揃えを強化した。
9月16日にオープンしたビックカメラ有楽町店3階の「ビック ビューティー」
「ビック ビューティー」は、企画や商品選びを女性スタッフが担当。接客も、もちろん女性だ。女性目線で売り場づくりとサービスを強化することで、女性客がゆっくり商品を見て、楽しめる環境をつくった。店員が女性なので、肌の悩みなども話しやすい。またドライヤーが試せるコーナーは明るいイメージで利用しやすくしたほか、パナソニックの美顔器を実際に試すことができるカウンターは、人目につきにくい奥に配置した。
店舗全体からみれば、「ビック ビューティー」は、女性客拡大を図る取り組みの一環だ。オープン後は、「お昼休みや仕事帰りの女性が、ふらっと来店してくれるようになった」(ビックカメラ有楽町店3階ビック ビューティー担当の高田真由氏)と、早くも売り場刷新の効果が出はじめているという。ビックカメラは、今後、他店舗でも「ビック ビューティー」を展開していく方針だ。
埼玉県羽生市のイオンモール羽生1階に入る上新電機羽生店も、美容家電の販売を強化している。岩田良仁店長は、「美容家電は製品数が増え、売れゆきもいい」と、売り場強化の背景を語る。店舗はイオンモールの中にあって、主婦層や若い女性が多く来店するほか、テナントには、若い女性店員が多い。こうした女性層のニーズに応えて、年々品揃えを強化してきた。メインの入り口を入ってすぐの場所に売り場スペースを設けているほか、大きな導線となる通路にはワゴンに展示してアピールしている。
上新電機羽生店(埼玉県羽生市)の理美容家電コーナー
最近では、パナソニックが4月に発売した「頭皮エステ」の人気が高く、1か月に数十台のペースで売れているという。パナソニックの「頭皮エステ」と微粒子イオン「ナノイー」搭載ドライヤーのセット販売では、2か月で30~40セット販売した。岩田店長は、「『頭皮エステ』は、ドライヤーや美顔器などとは違い、これまで店頭になかった新しいカテゴリの商品。それだけに、伸びしろがある。こうした新しいカテゴリの新製品が登場してくる美容家電はさらに伸びていくはず」と、期待する。地上デジタル放送移行後、テレビの販売が減速するなかで、美容家電は「ポスト地デジ」商材の一つとして存在感を高めているのだ。
巣ごもり消費や製品の拡充が追い風に
なぜ、美容家電の人気が高まっているのか。野村総合研究所ICT・メディア産業コンサルティング部の川元麻衣子副主任コンサルタントによると、「景気後退を背景に、2009年頃から、自宅で快適に過ごすための『巣ごもり消費』の傾向が現われてきた。これが一つの要因になっている」という。女性が、自宅での時間をいかに快適に過ごすかを考えるなかで、パナソニックを中心とした家電メーカーが投入した製品群が心をつかんだようだ。一方、“外出”しなければならないエステティック市場は、「2006年頃をピークに落ち込んでいる」という。
川元副主任コンサルタントは、美容家電市場を「現在は、可処分所得が月10万円を超え、美容に関心が高い人がユーザーの中心になっている。購入したいが、まだ買っていないという様子見の人が多く、ここにポテンシャルがある。今後2~3年は着実に成長する」と分析する。
実際、百貨店の顧客をメインターゲットとするラオックス池袋東武店では、今年9月のオープン後、「金額ベースで理美容家電が最も売れている」(源野敏マネージャー)という。製品を品質で選ぶ傾向があり、高級機が売れるそうだ。この傾向は、百貨店だけに限らない。郊外店である上新電機羽生店も同じで、「低価格のドライヤーの販売が減少している一方で、パナソニックのナノイー搭載の高級ドライヤーが伸びている」(岩田店長)からだ。
ラオックス池袋東武店では理美容家電が最も売れる
「どうせなら、いい物を納得のいく価格で選びたい」という消費心理をうまくとらえた製品が増えていくことで、美容家電への女性の関心は高まる。女性の心をつかむ売り場づくりも、ここがカギになりそうだ。(田沢理恵)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2011年10月10日付 vol.1402より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは