iPhone 3Gから3GS/4まで、iPhoneのこれまでの売れ行きを振り返る
今秋、アップルは「iCloud」やTwitter連携などの新機能を搭載したiOSの最新バージョン「iOS 5」をリリースすると発表している。この新OSに合わせて、「iPhone 5」やら「iPhone 4GS」やら、何やら新しいiPhoneが登場すると予想されている。新モデルの発表を前に、量販店の実売データを集計した「BCNランキング」をもとに、iPhoneのこれまでの売れ行きを振り返りつつ、新モデルに対する要望・予想(妄想)をまとめた。
アップルの「iPhone」が日本で発売されたのは、今から3年前の夏。国内では、2008年7月11日にソフトバンクモバイルが発売した「iPhone 3G」が初代モデルとなる。容量は16GBと8GBの2種類。当時は、閉鎖的で独自の進化を遂げてきた日本の携帯電話市場に「黒船がやってきた」といわれ、「売れる」「売れない」の議論が巻き起こった。
ソフトバンクモバイルの孫正義社長によれば、独占販売の契約はないそうだが、実際には2008年7月発売のiPhone 3Gから、09年6月発売のiPhone 3GS、そして10年6月発売のiPhone 4まで、すべてソフトバンクモバイルが販売している。今まで使っていた携帯電話番号とキャリアに愛着があり、どうしても変えたくない場合は、従来の携帯電話とiPhoneの「2台もち」をするか、海外でSIMフリーの端末を入手するか、もしくはiPhoneを諦めるしかない。
確かに、iPhoneの代わりとして、やむなくAndroid搭載スマートフォンや同じiOSを搭載したアップルの「iPod touch」を購入した人は存在する。iPod touchの販売台数は、昨年9月のモデルチェンジ以降、前年を上回って伸び続けている。iPhoneだけではなく、通話機能のないiPod touch、iPadも売れている点に留意しながら、過去3年間のiPhoneの売れ行きを振り返ろう。
「iPhone 3G」の2008年7月の販売台数(16GB・8GBモデルの合計)を1として指数化し、iPhoneシリーズの月ごとの販売台数指数を集計すると、08年内は7月が最高値だった。iPhone 3Gは、発売直後に一気に大量に売れ、その後は伸び悩む典型的な「初動型」だったのだ。
これに対して09年6月26日発売の「iPhone 3GS」は、発売直後だけではなく、長期にわたって売れ続けた。販売台数指数は0.7を下回ることはなく、1以上の月が増えた。特に09年12月は1.26、10年1月は1.62と好調だった。モデルチェンジによるハードの進化やアプリの充実、周辺機器のラインアップ増加といった端末そのものの魅力に加え、実質負担額を抑える「iPhone for everybody」キャンペーンの効果だろう。
10年6月24日発売の「iPhone 4」では、さらに「初動+ロングセラー型」の傾向が強まっている。発売直後の10年7月の販売台数指数は2.24に達した。「初動」の販売台数の大幅増に加え、8月は1.81、9月は1.66、10月は2.20と、初動に匹敵する売れ行きが長く続いた。さすがに発売1年を過ぎて、勢いはやや衰えてきたが、いまだに機種別ではトップ10に入っている。32GB、16GBの2モデルを合計した値で、iPhone 4は、10年7月から11年6月まで、11か月連続で月間携帯電話ランキング1位を獲得。2008年7月~2011年8月の累計の携帯電話ランキングでも、2位のiPhone 3GSの2倍近いシェアを獲得して、ダントツの1位だ。今のところ国内で最も売れたスマートフォンといっていい。
また、2008年7月~2011年8月のiPhone 3Gの累計販売台数を1とすると、iPhone 3GSは1.6、iPhone 4は3.1となり、モデルチェンジのたびに大きく伸びていることがわかる。iPhoneは、「BCNランキング」の集計対象外のアップル直営店や携帯電話ショップ、法人窓口などでも販売されており、その分も加味すると、伸び率はもっと大きいだろう。「3G」で種をまき、「3GS」で葉や枝を伸ばし、「4」で大きく花開いた、といったところだろうか。しかし、iPhone 4の発売後、国内では複数のメーカーが投入するAndroid搭載スマートフォンの存在感が増してきた。次モデルが、既存ユーザーの買い替えだけで大ヒットしたiPhone 4を超えられるかどうかはわからない。
近々発表されると噂されている次期モデルに個人的に望むことは、メモリ容量の大容量化・一本化と、iPod nanoのようなカラフルなカラーバリエーションの二点。これまでのように同じデザインの容量違いではなく、例えば、新デザインを採用してiPad、iPod touchの最大容量と同じ64GBのメモリを搭載した上位モデルと、従来のデザインを踏襲して容量を8GBに抑えた廉価モデルを用意してもらえると、例えば、ソニー・エリクソン製の「Xperia arc」「Xperia acro」のような関係になる。
身近にいる、動画や写真を大量に保存しているiPhoneユーザー、iPod touch 32GBモデルのユーザーは「32GBでは容量が足りない」と悲鳴を上げている。iOS 5からクラウドサービス「iCloud」がスタートするので、望みはかなり薄いだろうが、価格とバッテリ駆動時間はそのままで、ぜひともストレージの大容量化を望みたい。
カラーバリエーションは、ピンクやレッドなど、色にこだわりをもつ女性ユーザーを取り込むために、あったらもっと売れるだろうな、と思うレベルの要望だが、本体はともかく、iPad 2用純正カバーと同じギミックを採用した「カラフルな純正カバー」は“アリ”かもしれない。
すでにOSの「iOS 5」の詳細は発表されており、次期モデルの注目ポイントは、薄さや内蔵カメラの画素数など、主にハード面となる。また、海外のように、国内でも複数のキャリアから提供されるようになるのか、気になるところ。正式発表を楽しみにしたい。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
スマートフォン人気の火付け役となったiPhone
(上段左からiPhone 4のブラック・ホワイト、下段左からiPhone 3GS、iPhone 3G)
(上段左からiPhone 4のブラック・ホワイト、下段左からiPhone 3GS、iPhone 3G)
2008年夏、iPhoneが日本に上陸、「売れる/売れない」論争が巻き起こる
アップルの「iPhone」が日本で発売されたのは、今から3年前の夏。国内では、2008年7月11日にソフトバンクモバイルが発売した「iPhone 3G」が初代モデルとなる。容量は16GBと8GBの2種類。当時は、閉鎖的で独自の進化を遂げてきた日本の携帯電話市場に「黒船がやってきた」といわれ、「売れる」「売れない」の議論が巻き起こった。
「iPhone 3G」発売日のソフトバンク表参道
ソフトバンクモバイルの孫正義社長によれば、独占販売の契約はないそうだが、実際には2008年7月発売のiPhone 3Gから、09年6月発売のiPhone 3GS、そして10年6月発売のiPhone 4まで、すべてソフトバンクモバイルが販売している。今まで使っていた携帯電話番号とキャリアに愛着があり、どうしても変えたくない場合は、従来の携帯電話とiPhoneの「2台もち」をするか、海外でSIMフリーの端末を入手するか、もしくはiPhoneを諦めるしかない。
確かに、iPhoneの代わりとして、やむなくAndroid搭載スマートフォンや同じiOSを搭載したアップルの「iPod touch」を購入した人は存在する。iPod touchの販売台数は、昨年9月のモデルチェンジ以降、前年を上回って伸び続けている。iPhoneだけではなく、通話機能のないiPod touch、iPadも売れている点に留意しながら、過去3年間のiPhoneの売れ行きを振り返ろう。
iPhone 3Gは最初だけ爆発的に売れる「初動型」
「iPhone 3G」の2008年7月の販売台数(16GB・8GBモデルの合計)を1として指数化し、iPhoneシリーズの月ごとの販売台数指数を集計すると、08年内は7月が最高値だった。iPhone 3Gは、発売直後に一気に大量に売れ、その後は伸び悩む典型的な「初動型」だったのだ。
これに対して09年6月26日発売の「iPhone 3GS」は、発売直後だけではなく、長期にわたって売れ続けた。販売台数指数は0.7を下回ることはなく、1以上の月が増えた。特に09年12月は1.26、10年1月は1.62と好調だった。モデルチェンジによるハードの進化やアプリの充実、周辺機器のラインアップ増加といった端末そのものの魅力に加え、実質負担額を抑える「iPhone for everybody」キャンペーンの効果だろう。
iPhone 4は「初動+ロングセラー」で大ヒット
10年6月24日発売の「iPhone 4」では、さらに「初動+ロングセラー型」の傾向が強まっている。発売直後の10年7月の販売台数指数は2.24に達した。「初動」の販売台数の大幅増に加え、8月は1.81、9月は1.66、10月は2.20と、初動に匹敵する売れ行きが長く続いた。さすがに発売1年を過ぎて、勢いはやや衰えてきたが、いまだに機種別ではトップ10に入っている。32GB、16GBの2モデルを合計した値で、iPhone 4は、10年7月から11年6月まで、11か月連続で月間携帯電話ランキング1位を獲得。2008年7月~2011年8月の累計の携帯電話ランキングでも、2位のiPhone 3GSの2倍近いシェアを獲得して、ダントツの1位だ。今のところ国内で最も売れたスマートフォンといっていい。
順位 | キャリア | メーカー | 品名 | 型番 | 発売年月 | 販売台数 シェア(%) |
1 | SoftBank | アップル | iPhone 4 | iPhone 4 32GB/16GB | 2010/06 | 4.4 |
2 | SoftBank | アップル | iPhone 3GS | iPhone 3GS 16GB/32GB | 2009/06 | 2.3 |
3 | NTTドコモ | 富士通 | らくらくホン ベーシックII | F-07A | 2009/04 | 1.7 |
4 | SoftBank | アップル | iPhone 3G | iPhone 3G 16GB/8GB | 2008/07 | 1.4 |
5 | NTTドコモ | SAMSUNG(サムスン電子) | GALAXY S | SC-02B | 2010/10 | 1.3 |
6 | NTTドコモ | ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ | Xperia | SO-01B | 2010/04 | 1.2 |
7 | au | 京セラ | K002 | K002 | 2009/05 | 1.1 |
8 | NTTドコモ | シャープ | AQUOS SHOT | SH-01B | 2009/11 | 1.03 |
9 | NTTドコモ | パナソニック モバイルコミュニケーションズ | P-07B | P-07B | 2010/09 | 1.00 |
10 | NTTドコモ | シャープ | SH-02A | SH-02A | 2008/12 | 0.98 |
11 | NTTドコモ | 富士通東芝モバイルコミュニケーションズ | REGZA Phone T-01C | T-01C | 2010/12 | 0.97 |
12 | SoftBank | パナソニック モバイルコミュニケーションズ | 830P | 830P | 2008/11 | 0.95 |
13 | NTTドコモ | 富士通 | らくらくホンV | F884iES | 2008/08 | 0.94 |
14 | au | シャープ | IS03 | IS03 | 2010/11 | 0.80 |
15 | au | Pantech Wireless Japan | 簡単ケータイ | W62PT | 2008/08 | 0.76 |
16 | au | ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ | W64S | W64S | 2008/11 | 0.75 |
17 | NTTドコモ | SAMSUNG(サムスン電子) | GALAXY S II | SC-02C | 2011/06 | 0.75 |
18 | NTTドコモ | パナソニック モバイルコミュニケーションズ | P906i | P906i | 2008/06 | 0.75 |
19 | au | シャープ | URBANO | W63SH | 2008/09 | 0.74 |
20 | NTTドコモ | ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ | Xperia arc | SO-01C | 2011/03 | 0.73 |
「BCNランキング」2008年7月~2011年8月 月次合算<最大パネル>
また、2008年7月~2011年8月のiPhone 3Gの累計販売台数を1とすると、iPhone 3GSは1.6、iPhone 4は3.1となり、モデルチェンジのたびに大きく伸びていることがわかる。iPhoneは、「BCNランキング」の集計対象外のアップル直営店や携帯電話ショップ、法人窓口などでも販売されており、その分も加味すると、伸び率はもっと大きいだろう。「3G」で種をまき、「3GS」で葉や枝を伸ばし、「4」で大きく花開いた、といったところだろうか。しかし、iPhone 4の発売後、国内では複数のメーカーが投入するAndroid搭載スマートフォンの存在感が増してきた。次モデルが、既存ユーザーの買い替えだけで大ヒットしたiPhone 4を超えられるかどうかはわからない。
新iPhoneに望むことは「大容量化」&「容量の一本化」
近々発表されると噂されている次期モデルに個人的に望むことは、メモリ容量の大容量化・一本化と、iPod nanoのようなカラフルなカラーバリエーションの二点。これまでのように同じデザインの容量違いではなく、例えば、新デザインを採用してiPad、iPod touchの最大容量と同じ64GBのメモリを搭載した上位モデルと、従来のデザインを踏襲して容量を8GBに抑えた廉価モデルを用意してもらえると、例えば、ソニー・エリクソン製の「Xperia arc」「Xperia acro」のような関係になる。
身近にいる、動画や写真を大量に保存しているiPhoneユーザー、iPod touch 32GBモデルのユーザーは「32GBでは容量が足りない」と悲鳴を上げている。iOS 5からクラウドサービス「iCloud」がスタートするので、望みはかなり薄いだろうが、価格とバッテリ駆動時間はそのままで、ぜひともストレージの大容量化を望みたい。
今秋リリース予定の「iOS 5」とクラウドサービス「iCloud」のイメージ
カラーバリエーションは、ピンクやレッドなど、色にこだわりをもつ女性ユーザーを取り込むために、あったらもっと売れるだろうな、と思うレベルの要望だが、本体はともかく、iPad 2用純正カバーと同じギミックを採用した「カラフルな純正カバー」は“アリ”かもしれない。
すでにOSの「iOS 5」の詳細は発表されており、次期モデルの注目ポイントは、薄さや内蔵カメラの画素数など、主にハード面となる。また、海外のように、国内でも複数のキャリアから提供されるようになるのか、気になるところ。正式発表を楽しみにしたい。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
【「iPhone 4」の売れ行きに関する記事】
・スマートフォン人気に地域差、東京圏では携帯電話全体の6割を超える
・2011年5月の携帯電話ランキング、ホワイト効果? 「iPhone 4」16GBモデルが初の1位に
・2010年10月の携帯電話ランキング、iPhone 4の好調続く、メーカー別でもアップルが1位に
・2010年8月の携帯電話ランキング、iPhone 4 32GBモデルが2か月連続トップ
・2010年7月の携帯電話ランキング、iPhone 4 32GBモデルがダントツ人気で1位
・2010年6月の携帯電話ランキング、iPhone 4トップ獲得ならず
【「iPhone 3GS」の売れ行きに関する記事】
・「iPhone」発売から1年、まだまだ売れてる「iPhone 3G」と好調なスタートの「3GS」
・iPhone 3GSの初動はいかに? 2009年6月のキャリア別携帯電話ランキング
【「iPhone 3G」の売れ行きに関する記事】
・09年春モデルが出揃った携帯電話、キャリア別の売れ筋は
・iPhone、発売当日のシェアは44.9%でダントツ、今後のカギは供給力か?
・【特集】iPhone日替わりランキング情報
・スマートフォン人気に地域差、東京圏では携帯電話全体の6割を超える
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・2010年10月の携帯電話ランキング、iPhone 4の好調続く、メーカー別でもアップルが1位に
・2010年8月の携帯電話ランキング、iPhone 4 32GBモデルが2か月連続トップ
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