旅先で便利なデジタルアイテムに好機到来 夏休みの分散や長期化で高まる旅行需要
夏の節電対策として、政府は企業に対して、休暇の分散化・長期化などを呼びかけている。家庭に対しては、旅行などの外出も節電手法の一つであるとして、推進している。こうした動きを受けて、旅行業界は夏休みの長期化や節電指向による需要拡大に期待を高めている。デジタルカメラや電子辞書、PNDなど、旅行に欠かせないデジタルアイテムにも追い風が吹き始めた。
JTBが7月4日に発表した2011年の夏休み期間(7月15日~8月31日)の旅行動向によると、国内・海外を合わせた総旅行人数は推計7458万人で、前年を211万人下回る。前年割れを見込んではいるものの、節電に伴う夏期休暇の方針がまだ確定していない企業もあり、JTBでは休み間際になって申し込む「間際予約」の増加など、需要の拡大に期待しているようだ。
それを裏づけているのが、同じくJTBが行った一般消費者へのアンケート調査。今年の夏に「旅行に行く」と回答した人は15.8%で、過去5年間では昨年夏(16.7%)に次ぐ高いポイントとなった。リーマン・ショック後の09年夏と比べると、「行く」が1ポイント、「多分行く」が1.9ポイント上回っている。
また、エイチ・アイ・エス(HIS)が、7月5日に発表した夏休み期間(7月16日~9月30日)の予約状況をもとにした海外旅行動向からも、消費者の旅行意欲の高まりがうかがえる。8月出発の海外旅行は、前年同日比2ケタを超えて推移。また、夏休み期間全体の予約人数は、前年同日比109%となった。同社では、「節電の夏は海外へ!」をテーマに、家族で4泊5日以上の旅行をすると1か月あたり15%の節電につながることをアピールし、需要喚起に力を注いでいる。
世界22か国で展開するオンライン旅行会社「エクスペディア」も好調だ。木村奈津子・東アジアマーケティングディレクターは、「3月は震災の影響でキャンセルが多かったが、4月第2週からは、取り扱い高が昨年比3倍、予約件数が2倍の勢いで伸長している」という。個人旅行をターゲットに、航空券とホテル、空港送迎を自由に組み合わせて割安な価格で利用できる「ダイナミック海外ツアー」の訴求を強化したことが、長期休暇需要の拡大という市場環境と相まってユーザー拡大を後押ししている。
旅行需要の拡大に期待が高まるなか、旅行に関連するアイテムを取り扱う家電量販店は、どのようなアプローチをしているのか。
ビックカメラ有楽町店では、節電対策でサマータイム制を導入する企業が増えていることを背景に、本館6階のスーツケースコーナーでは、「夏旅」をテーマにしたPOPを作成して、アピールしている。今年6月頃からは「アフター4を有効に使おう」を打ち出し、金曜日夕方から土日を使った「プチ旅行」を提案。売り場担当の吉田佳世氏によると、「夏の旅行に向けてスーツケースが売れ始めるのは、例年は6月頃。今年の販売数は前年比で1割増えた」という。そのほか同店では、5階の電子辞書コーナーにも6階と同じ「夏旅」のPOPを設置。海外旅行に行く人をターゲットに訴求している。
旅に欠かせないアイテムの一つであるデジタルカメラコーナーでは、今年初めて防水デジカメコーナーを設置した。沖縄などのきれいな海に行くというお客様や、『昨年防水のカメラを持たずに出かけて後悔した』などの声を受けて、夏の旅行に向けての露出に力を入れている。
デジカメの普及率はすでに73.3%(11年3月時点、内閣府調べ)に達し、成熟期にあるほか、スマートフォンの台頭によって、買い替え需要が脅かされるという危惧もある。しかし、完全防水対応モデルは、機能特化が強みだ。
電子辞書やPNDは、スマートフォンで代用できるが、スマートフォンは海外では通信環境や料金が障壁となる。バッテリ駆動時間が短いことも、旅行でバリバリ使うには、ネックだろう。旅先で使うには、やはり専用機がいい。電子辞書やPNDは、旅をテーマにした利用シーンを打ち出すことで、メリットが際立つ。一定の需要を掘り起こせるだろう。
このほか、電子書籍も旅行を切り口にした訴求を強化していくことで、需要喚起ができる可能性がある。ビックカメラでは、シニア層を中心に、あらかじめダウンロードしておいたコンテンツを旅先で読みたいというニーズから、シャープの電子書籍端末「ガラパゴス」への問い合わせが増えてきているという。
震災後の節電関連需要は、旅行にまで波及した。「旅行に行く=節電対策」をキーワードに、直接節電できる省エネ家電以外にも、節電消費のカギが隠れている。(BCN・田沢理恵)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2011年7月25日付 vol.1392より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは
消費者の旅行意欲は2009年夏を上回る勢い
JTBが7月4日に発表した2011年の夏休み期間(7月15日~8月31日)の旅行動向によると、国内・海外を合わせた総旅行人数は推計7458万人で、前年を211万人下回る。前年割れを見込んではいるものの、節電に伴う夏期休暇の方針がまだ確定していない企業もあり、JTBでは休み間際になって申し込む「間際予約」の増加など、需要の拡大に期待しているようだ。
それを裏づけているのが、同じくJTBが行った一般消費者へのアンケート調査。今年の夏に「旅行に行く」と回答した人は15.8%で、過去5年間では昨年夏(16.7%)に次ぐ高いポイントとなった。リーマン・ショック後の09年夏と比べると、「行く」が1ポイント、「多分行く」が1.9ポイント上回っている。
また、エイチ・アイ・エス(HIS)が、7月5日に発表した夏休み期間(7月16日~9月30日)の予約状況をもとにした海外旅行動向からも、消費者の旅行意欲の高まりがうかがえる。8月出発の海外旅行は、前年同日比2ケタを超えて推移。また、夏休み期間全体の予約人数は、前年同日比109%となった。同社では、「節電の夏は海外へ!」をテーマに、家族で4泊5日以上の旅行をすると1か月あたり15%の節電につながることをアピールし、需要喚起に力を注いでいる。
世界22か国で展開するオンライン旅行会社「エクスペディア」も好調だ。木村奈津子・東アジアマーケティングディレクターは、「3月は震災の影響でキャンセルが多かったが、4月第2週からは、取り扱い高が昨年比3倍、予約件数が2倍の勢いで伸長している」という。個人旅行をターゲットに、航空券とホテル、空港送迎を自由に組み合わせて割安な価格で利用できる「ダイナミック海外ツアー」の訴求を強化したことが、長期休暇需要の拡大という市場環境と相まってユーザー拡大を後押ししている。
「夏旅」コーナーを設置 専用機のメリットを訴求
旅行需要の拡大に期待が高まるなか、旅行に関連するアイテムを取り扱う家電量販店は、どのようなアプローチをしているのか。
ビックカメラ 有楽町店本館6階 吉田佳世氏 |
ビックカメラ有楽町店本館では、「夏旅」をテーマにスーツケース売り場(6階)や電子辞書コーナー(5階)などで海外旅行グッズをアピール
旅に欠かせないアイテムの一つであるデジタルカメラコーナーでは、今年初めて防水デジカメコーナーを設置した。沖縄などのきれいな海に行くというお客様や、『昨年防水のカメラを持たずに出かけて後悔した』などの声を受けて、夏の旅行に向けての露出に力を入れている。
地下2階のデジカメ売り場に今年初めて防水デジカメコーナーを設置
デジカメの普及率はすでに73.3%(11年3月時点、内閣府調べ)に達し、成熟期にあるほか、スマートフォンの台頭によって、買い替え需要が脅かされるという危惧もある。しかし、完全防水対応モデルは、機能特化が強みだ。
電子辞書やPNDは、スマートフォンで代用できるが、スマートフォンは海外では通信環境や料金が障壁となる。バッテリ駆動時間が短いことも、旅行でバリバリ使うには、ネックだろう。旅先で使うには、やはり専用機がいい。電子辞書やPNDは、旅をテーマにした利用シーンを打ち出すことで、メリットが際立つ。一定の需要を掘り起こせるだろう。
このほか、電子書籍も旅行を切り口にした訴求を強化していくことで、需要喚起ができる可能性がある。ビックカメラでは、シニア層を中心に、あらかじめダウンロードしておいたコンテンツを旅先で読みたいというニーズから、シャープの電子書籍端末「ガラパゴス」への問い合わせが増えてきているという。
シャープの電子書籍端末「GALAPAGOS」。ダウンロードしておいたコンテンツを旅先などで読みたいという問い合わせが増えているという
震災後の節電関連需要は、旅行にまで波及した。「旅行に行く=節電対策」をキーワードに、直接節電できる省エネ家電以外にも、節電消費のカギが隠れている。(BCN・田沢理恵)
※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2011年7月25日付 vol.1392より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは