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<インタビュー・時の人>シャープ 健康・環境システム事業本部 プラズマクラスター機器事業部商品企画部部長 冨田昌志

特集

2011/07/05 10:26

 空気中に浮遊するカビ菌やウイルスを分解・除去するシャープの「プラズマクラスター技術」。同社のブランド認知度調査では、2011年に80%を超えたという。今後は、ユーザー別や利用シーン別での訴求に力を入れていくことで、ユーザーの獲得を目指す。(取材・文/田沢理恵)

◎プロフィール
(とみた まさし)1961年9月生まれ、愛知県出身。85年、名古屋大学教育学部教育心理学科卒業。同年、シャープ入社。音響商品企画、通信オーディオ事業本部移動体通信事業推進室などを経て、08年、AV事業本部液晶デジタルシステム第三事業部商品企画部部長に就任。09年、健康・環境システム事業本部空調システム事業部海外商品企画部部長。10年10月から現職。

イオン発生機で効果への理解が浸透
使い方の提案で潜在ユーザーを掘り起こす



Q. プラズマクラスターの歴史から教えてほしい。

A.
 プラズマクラスターは、自然界にあるのと同じプラスとマイナスのイオンをプラズマ放電でつくり出して放出することで、浮遊するカビ菌やウイルスを空気中で分解・除去するシャープ独自の技術。2000年10月の空気清浄機への搭載を皮切りに、冷蔵庫や掃除機、エアコンなどに展開してきた。自社製品だけでなく、自動車や新幹線にもデバイスを供給し、搭載機種を拡大している。イオン発生機として単品で商品化したのは、08年10月だった。


Q. なぜ、イオン発生機だけで商品化したのか。

A.
 例えば空気清浄機の場合、ウイルスの除去がフィルターの効果なのか、プラズマクラスターの効果なのかがわかりにくく、『本当にプラズマクラスターは効果があるのか?』という声が聞こえてきた。これがきっかけとなって、単品で商品化した。濃度を従来の10倍に高めたプラズマクラスター技術を搭載し、08年10月にイオン発生機「IG-A100」として発売した。これによって、『ニオイが減った』『カビが発生しにくくなった』『肌の乾燥がなくなった』など、効果を実感したお客様から大きな反響があった。これを転機に09年のプラズマクラスターの認知度は40%を超え、11年には80%を超えた。

Q. イオン発生機は、実際に使ってみないとよさがわからない。新機軸の製品だったが、販売店ですぐに受け入れられたのか。

A.
 発売前は、社内で「売れるのか」という議論もあった。「まずはBtoBでしっかり説明して販売すべき」という意見も出たのだが、それではこの商品は広がっていかない。まずは、いくつかの販売店のトップの方に実際に使っていただくことから始めた。結果として、販売店によさを理解してもらい、本気で売っていただけたことが、成功につながった。店頭にお客様からのクレームがなかったということも、店員さんの自信につながった。イオン発生機としてのプラズマクラスターのイメージが定着してきたことで、他の家電製品への波及効果も高まっている。

Q. 今後の展開は?

A.
 プラズマクラスターを利用していないお客様でも、「なんとなくよさそうだ」という漠然としたイメージはもっている。正しく理解していただければ、もっと普及していくだろう。店頭では、イオン発生機と空気清浄機の違いを分かりやすく伝えながら、ユーザー別や利用シーン別の使い方の提案に取り組んでいきたい。6月25日に発売した「IG-DX100」は、縦置き/横置きで4通りの設置ができるレイアウトフリーの製品。寝室の床や本棚、洗面所、壁際など、幅広いシーンでの活用を提案していく。また今年は、昨年発売したモバイルタイプの「IG-CM1」のように、目的を絞った製品も投入する予定だ。

・Turning Point

 現在のオンリーワン商品・デザイン本部の前身である生活ソフト企画本部に在籍していた時のこと。生活ソフト企画本部は、ユーザー視点でものづくりを考え、事業部に提案する部署。たとえすぐれたプランであっても、事業が目指す方向に合っていなければ取り上げられることはない。

 そんななか、ある日「新しい事業を立ち上げたい」と、上司に打ち明けた。当時は携帯電話のiモード元年。携帯電話向けのサービスを提案したところ、「これは面白い」と採用された。「若僧だったが、お金や人、技術スタッフを付けてもらって、サービスを構築した」という。事業計画を自分でつくり、ゼロから新しい事業を立ち上げた経験は、大きな財産となって心に刻まれている。

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2011年7月4日付 vol.1389より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは