高性能PCの価値を多くの人に、インテルの女性向けマーケティング活動

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2011/03/09 21:38

 インテルの女性の高性能PC利用促進マーケティングに、徐々に効果が出始めている。これまで同社のマーケティングやイベントは、“パワーユーザー”と呼ばれるPCを使いこなす層を対象に実施してきた感がある。女性に対するアプローチは、同社にとってユニークな試みといえるが、果たして、どのように進めているのだろうか。

 インテルが女性のPC購入促進活動を本格化したのは、PCの購入者を対象に高付加価値製品に関する調査を実施したことに端を発する。井田晶也・マーケティング本部リテール統括部長は、「PC購入者の男女比率は、男性51%に対して女性が49%。一方、購入者のうち『性能を重視する』と答えた女性は、男性の半分という結果だった」という。

井田晶也統括部長

 購入者の半数近くを占める女性が、性能を重視していない――。「これを逆手に取って、女性に高性能PCの価値を伝えていけば大きなビジネスチャンスになるのではないかと考えた」(井田統括部長)。そして、「女性に特化した体験型のイベントが必要」と判断したのである。

 これまでインテルのイベントといえば、CPUのパフォーマンスを披露したり、従来製品と新製品の機能の違いを訴えたりするものだった。イベントへの参加率が高いパワーユーザーに向けて発信していたのだ。「趣向の変わったイベントを実施するには、何か策を講じなければならないと感じた」(井田統括部長)。そこで、リテール・マーケティング部で唯一の女性、根津夏子プログラム・スペシャリストをイベントのプロジェクトリーダーに抜擢した。

根津夏子プログラム・スペシャリスト

 根津プログラム・スペシャリストが企画段階で留意したのは、男性と女性の購買行動や価値観の違いだ。「男性のお客様向けのイベントは、スペックの比較など、論理的な内容が適している。一方、女性は『幸せになれるイメージ』など、感情的な観点から製品を購入する」(根津プログラム・スペシャリスト)。「男女の違いに着目してイベントを企画した」という。

 しかし、これまで経験のない類のイベントである。実施への道のりでは、多くの壁にぶつかった。まず、「これまでイベントを担当していた男性社員の意識を変えるのに苦労した」(根津プログラム・スペシャリスト)そうだ。そして、社内でなかなか企画が受け入れられない状況を打破するために、「女性社員に企画を評価してもらったり、アイデアを出してもらったりしながら、企画が通るように男性社員を説得した」という。このような地道な努力の甲斐あって、昨年9月、福岡と大阪の2か所でのイベント「PCでもっとステキな毎日を。~インテル、パソコン体験イベント~」の開催に漕ぎ着けた。

 イベントでは、まず来場者からPCで実現したいことを聞き出し、次に説明員が展示PCの操作方法を説明、最後に来場者がPCを実際に操作するという内容。また、「当社のイベントは青を基調としたブースが多かったが、このイベントでは、女性が思わず入りたくなるよう、白やピンク、薄紫を使ってブースを作った」(根津プログラム・スペシャリスト)。さらに、「基本的なインターネットの閲覧に加え、来場者が画像の編集や動画の再生などを『速い』と意識できるように、実際にPCを使ってもらった」という。

 デモンストレーションでは、「女性が毎日使うドライヤーを例に、性能が高いほうが使い勝手がいいことを訴えたり、女性向けにステージを低くしたりした」(根津プログラム・スペシャリスト)。イベントには約1400人が来場。来場者にアンケートを実施したところ、9割以上が「分かりやすいイベントだった」と評価したほか、多くの来場者が「性能の高いPCのほうが使いやすい」と回答した。

 井田統括部長は、「今後も、女性を対象としたイベントやPR活動を積極的に実施していく」という。根津プログラム・スペシャリストは、「PCが生活を豊かにすることを訴えていきたい」と、次回に向けて企画を練る。インテルでは、イベントの成果をPCメーカーや家電量販店と共有。こうした取り組みで、PC販売の活性化を狙う。(BCN・佐相彰彦)