NECとレノボがパソコン事業で提携、2010年国内シェアトップの決断
NECとレノボがパソコン事業で提携し、6月をめどに合弁会社「Lenovo NEC Holdings B.V」を設立。これによって、国内最大のパソコン事業グループ「NEC レノボ・ジャパン グループ」が誕生する。NECは、ジャンル別に年間で最も販売台数の多かったメーカーを表彰する「BCN AWARD」のデスクトップPC部門を2年連続受賞している国内シェアNo.1のメーカー。2010年は、デスクトップPCとノートPC、スレート(タブレット端末)を合算したパソコン全体の販売台数でもトップだった。それにもかかわらず、合弁の道を選んだ。「BCNランキング」のデータから、NECの「現在」をみる。
合弁会社の出資比率は、レノボが51%、NECが49%。その傘下に、NECパーソナルプロダクツのパソコン事業を分離して新たに設立するNECパーソナルコンピュータと、レノボの日本法人であるレノボ・ジャパンを置き、従来通り、NEC、レノボそれぞれのブランドで製品・サポートを展開していく。新会社からは、2011年秋冬モデルから製品を発売する見込み。現在のブランドが残ることもあって、ユーザーからみると、特に変化はなさそうだ。
1月27日の記者会見で、NECの遠藤社長は、今後、合弁会社の出資比率を変更する可能性や、レノボの100%子会社になることは「一切ない」と回答した。しかし1月29日、一部報道によって、レノボが上場している香港証券取引所の公告から、NECの同意を前提に、発足5年後に合弁会社の全株式をレノボが取得できる付帯条件があることがわかった。将来、NECはパソコン事業を完全に手放し、NECブランドのパソコンがなくなる可能性もある。
BCNでは、パソコンを形状によって「デスクトップPC」「ノートPC」「スレート」の三つに分類している。デスクトップPCとノートPCを合算した年間販売台数をメーカー別に集計すると、2010年、NECはシェア19.7%で1位だった。2位の東芝とは1.6ポイントの僅差だが、シェアは前年の17.5%から2.2ポイントアップしている。レノボ・ジャパンはシェア4.5%で7位にとどまる。
デスクトップPCでは、NECが1位。シェアは前年度から1.8ポイントアップの22.9%。レノボも前年のシェア0.2%(14位)から2.8%(9位)と、シェアは大幅に上昇した。
しかし、パソコン全体のおよそ8割近くを占めるノートPCでは、NECはシェア18.9%で2位に甘んじている。1位は、2006年度にNECからトップの座を奪って以来、5年連続で年間No.1を獲得している東芝。1位から3位の富士通までのシェアの差はわずか3.8ポイントで、少し離れてシェア10%台前半でソニー、日本エイサーが続く。レノボはシェア4.9%で6位。上位5社との差は大きいが、前年の2.4%(9位)に比べると、レノボのシェアは倍増している。
このように国内の量販店・PC専門店の実売データを集計した「BCNランキング」をみる限り、NECのシェアはレノボより高く、好調のようにみえる。しかし、IDCの2009年のパソコン出荷台数シェア調査によれば、NECのグローバル市場でのシェアはわずか0.9%。対してレノボは、シェア8.2%で4位。国内と世界では、NECとレノボの立場は逆転する。
グローバルでのシェアの低さは、価格競争での弱さにつながる。2010年12月のデスクトップPCの税別平均単価は10万2622円、ノートPCは同8万1359円。1年前の2009年12月と比べると、デスクトップPCは6902円、ノートPCは3446円下がった。単価はノートPCより高いが、1年間の値下がり幅はデスクトップPCのほうが大きかった。
ノートPCの上位5社(東芝・NEC・富士通・ソニー・日本エイサー)の平均単価をメーカー別に集計すると、NECはやや安い部類に入る。性能やデザインに加え、価格で選ばれていた面もあるだろう。2010年12月のノートPCのシリーズ別ランキングでは、2位にNECの「LS150/CS6」、3位に「LL750/CS6」が入り、人気を得ていた。
国内シェアトップの座を守るには、売れ筋モデルの価格を他社と同程度まで下げることが必要だ。そのためには、パソコンの開発・部品調達・生産に際して、スケールメリットを得られるグローバルメーカーとの提携が不可欠だったといえる。もし、現状よりもシェアが低く、いくら価格を下げても売れない状況だったら、現時点で撤退や譲渡を決断していたかもしれない。今回のレノボとの提携は、シェアトップだからこその決断だったのではないだろうか。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
ブランド名はそれぞれ存続 将来はNECのPC事業売却の可能性も
合弁会社の出資比率は、レノボが51%、NECが49%。その傘下に、NECパーソナルプロダクツのパソコン事業を分離して新たに設立するNECパーソナルコンピュータと、レノボの日本法人であるレノボ・ジャパンを置き、従来通り、NEC、レノボそれぞれのブランドで製品・サポートを展開していく。新会社からは、2011年秋冬モデルから製品を発売する見込み。現在のブランドが残ることもあって、ユーザーからみると、特に変化はなさそうだ。
左から、NECのデスクトップPC「VN770/CS6W」、レノボ・ジャパンのノートPC「Lenovo G560」
1月27日の記者会見で、NECの遠藤社長は、今後、合弁会社の出資比率を変更する可能性や、レノボの100%子会社になることは「一切ない」と回答した。しかし1月29日、一部報道によって、レノボが上場している香港証券取引所の公告から、NECの同意を前提に、発足5年後に合弁会社の全株式をレノボが取得できる付帯条件があることがわかった。将来、NECはパソコン事業を完全に手放し、NECブランドのパソコンがなくなる可能性もある。
デスクトップPCシェアNo.1のNEC ノートPCも三強の一角に
BCNでは、パソコンを形状によって「デスクトップPC」「ノートPC」「スレート」の三つに分類している。デスクトップPCとノートPCを合算した年間販売台数をメーカー別に集計すると、2010年、NECはシェア19.7%で1位だった。2位の東芝とは1.6ポイントの僅差だが、シェアは前年の17.5%から2.2ポイントアップしている。レノボ・ジャパンはシェア4.5%で7位にとどまる。
順位 | メーカー名 | 販売台数シェア(%) | 2009年の販売台数シェア(%) |
1 | NEC | 19.7 | 17.5 |
2 | 東芝 | 18.1 | 16.9 |
3 | 富士通 | 18.0 | 17.4 |
4 | 日本エイサー | 12.7 | 13.9 |
5 | ソニー | 12.4 | 11.2 |
6 | アップル | 4.7 | 4.2 |
7 | レノボ・ジャパン | 4.5 | 2.0 |
8 | ASUS | 3.5 | 5.6 |
9 | オンキヨー | 1.9 | 2.4 |
10 | HP | 1.6 | 2.1 |
「BCNランキング」2009年・2010年 年次<最大パネル>
デスクトップPCでは、NECが1位。シェアは前年度から1.8ポイントアップの22.9%。レノボも前年のシェア0.2%(14位)から2.8%(9位)と、シェアは大幅に上昇した。
順位 | メーカー名 | 販売台数シェア(%) | 2009年の販売台数シェア(%) |
1 | NEC | 22.9 | 21.2 |
2 | 日本エイサー | 20.1 | 24.5 |
3 | 富士通 | 18.1 | 16.0 |
4 | ソニー | 13.9 | 14.1 |
5 | アップル | 9.7 | 9.7 |
6 | HP | 3.7 | 2.6 |
7 | 東芝 | 3.3 | - |
8 | オンキヨー | 3.3 | 4.8 |
9 | レノボ・ジャパン | 2.8 | 0.2 |
10 | デル | 0.8 | 2.7 |
「BCNランキング」2009年・2010年 年次<最大パネル>
しかし、パソコン全体のおよそ8割近くを占めるノートPCでは、NECはシェア18.9%で2位に甘んじている。1位は、2006年度にNECからトップの座を奪って以来、5年連続で年間No.1を獲得している東芝。1位から3位の富士通までのシェアの差はわずか3.8ポイントで、少し離れてシェア10%台前半でソニー、日本エイサーが続く。レノボはシェア4.9%で6位。上位5社との差は大きいが、前年の2.4%(9位)に比べると、レノボのシェアは倍増している。
順位 | メーカー名 | 販売台数シェア(%) | 2009年の販売台数シェア(%) |
1 | 東芝 | 21.8 | 20.6 |
2 | NEC | 18.9 | 16.7 |
3 | 富士通 | 18.0 | 17.7 |
4 | ソニー | 12.0 | 10.6 |
5 | 日本エイサー | 10.8 | 11.6 |
6 | レノボ・ジャパン | 4.9 | 2.4 |
7 | ASUS | 4.2 | 6.5 |
8 | アップル | 3.4 | 3.0 |
9 | パナソニック | 1.7 | 1.4 |
10 | オンキヨー | 1.5 | 1.9 |
「BCNランキング」2009年・2010年 年次<最大パネル>
国内ではシェアトップ、グローバルでは……
このように国内の量販店・PC専門店の実売データを集計した「BCNランキング」をみる限り、NECのシェアはレノボより高く、好調のようにみえる。しかし、IDCの2009年のパソコン出荷台数シェア調査によれば、NECのグローバル市場でのシェアはわずか0.9%。対してレノボは、シェア8.2%で4位。国内と世界では、NECとレノボの立場は逆転する。
グローバルでのシェアの低さは、価格競争での弱さにつながる。2010年12月のデスクトップPCの税別平均単価は10万2622円、ノートPCは同8万1359円。1年前の2009年12月と比べると、デスクトップPCは6902円、ノートPCは3446円下がった。単価はノートPCより高いが、1年間の値下がり幅はデスクトップPCのほうが大きかった。
ノートPCの上位5社(東芝・NEC・富士通・ソニー・日本エイサー)の平均単価をメーカー別に集計すると、NECはやや安い部類に入る。性能やデザインに加え、価格で選ばれていた面もあるだろう。2010年12月のノートPCのシリーズ別ランキングでは、2位にNECの「LS150/CS6」、3位に「LL750/CS6」が入り、人気を得ていた。
年末商戦で売れたNECのノートPC(左からLS150/CS6W、LL750/CS6B)
国内シェアトップの座を守るには、売れ筋モデルの価格を他社と同程度まで下げることが必要だ。そのためには、パソコンの開発・部品調達・生産に際して、スケールメリットを得られるグローバルメーカーとの提携が不可欠だったといえる。もし、現状よりもシェアが低く、いくら価格を下げても売れない状況だったら、現時点で撤退や譲渡を決断していたかもしれない。今回のレノボとの提携は、シェアトップだからこその決断だったのではないだろうか。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。