7インチの大画面スマートフォン「GALAXY Tab」のネット機能をiPadと比べた

レビュー

2010/12/21 17:10

 NTTドコモが11月26日に発売したサムスン電子製の「GALAXY Tab SC-01C」は、他の一般的なスマートフォンより画面サイズが大きく、2台目としての利用も見込んだ異色の携帯電話だ。その大きさから、アップルの「iPadの小型版」と思っている人も多いだろう。そこで今回は実機をお借りし、ふだん手持ちのiPadで利用しているインターネット関連の機能に絞り、使い勝手や通信速度を比較した。

GALAXY Tab SC-01C

売れ行きは上々、発売日を含む11月第4週はiPad 3Gモデルの販売台数を抜く



 「GALAXY Tab SC-01C」は、解像度600×1024ドット、約7インチの液晶ディスプレイに、最新のAndroid 2.2を搭載した大画面のスマートフォンだ。とはいえ、その大きさから容易に想像できるように、メインの用途は通話ではなく、インターネットやメール、そして、「Android マーケット」などからダウンロードできるさまざまなアプリの利用だろう。

 側面の電源/終了ボタンと音量大ボタン/音量小ボタン以外、物理的なキーは一切なし。画面下部の「メニュー」「ホーム」「バック」「検索」の各ボタンとディスプレイをタッチして操作する。基本的な操作方法は、マルチタッチに対応するiPad/iPhoneや他のAndroid搭載スマートフォン、スレートと同じだ。

「バック」ボタン(左から3番目のボタン)を押すと、アプリをまたがって元の画面に戻る。最初は驚いたが、慣れると便利だった

 iPadをはじめとするタブレット端末との違いは、通話機能の有無。「GALAXY Tab」の場合、側面のスピーカーや付属のマイク付きステレオヘッドセットなどを利用して、携帯電話として使うことができる。このほか、iPadにはないリアとフロントの二つのカメラ、microSDカードスロット、USB2.0ポートを備える。

電話画面。試用した実機にはヘッドセットが付いていなかったので、本体での通話しか試せなかったが、ブラウザから簡単に電話をかけることもでき、電話機能を“おまけ”と考えるにはもったいない感じだ


 発売直後の売れ行きは上々。「BCNランキング」の2010年11月の携帯電話ランキングでは、月末の11月26日発売ながら24位にランクイン。スマートフォンに限ると、auの「IS03」、ソフトバンクモバイルの「iPhone 4」の32GBモデル、同16GBモデル、NTTドコモの「GALAXY S」、「Xperia」、auの「IS01」に次いで、7位だった。

2010年11月 スマートフォン 販売台数トップ10<全キャリア合算>
順位 キャリア メーカー 品名 型番 メインカメラの
有効画素数(画素)
ディスプレイサイズ
(インチ)
発売年月
1 au シャープ IS03 IS03 957万 3.5 2010/11
2 SoftBank アップル iPhone 4 32GB iPhone 4 32GB 500万 3.5 2010/06
3 SoftBank アップル iPhone 4 16GB iPhone 4 16GB 500万 6.5 2010/06
4 NTTドコモ SAMSUNG
(サムスン電子)
GALAXY S SC-02B 500万 4.0 2010/10
5 NTTドコモ ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ Xperia SO-01B 810万 4.0 2010/04
6 au シャープ IS01 IS01 527万 5.0 2010/06
7 NTTDoCoMo SAMSUNG
(サムスン電子)
GALAXY Tab SC-01C 320万 7.0 2010/11
8 SoftBank HTC HTC Desire HD 001HT 800万 4.3 2010/11
9 NTTドコモ Research In Motion Limited BlackBerry Bold 9700 BLACKBERRY BOLD 9700 320万 2.4 2010/07
10 au 東芝 dynapocket IS02 322万 4.1 2010/06
「BCNランキング」2010年11月 月次<最大パネル>

 週次集計では、発売日を含む11月第4週(2010年11月22日-28日)は7位、翌週の11月最終週は8位と、2週連続でトップ10入り。特に11月第4週は、「iPad」のWi-Fi + 3Gモデルの販売台数を上回るほどだった。「LYNX 3D」などの新製品がランキング上位に並ぶ中、12月第1週(12月6日-12月12日)は11位にとどまったが、12月第2週(12月13日-12月19日)は26位にダウンした。

 携帯電話全体の販売台数に占めるスマートフォンの比率は、11月第4週以降、急上昇。4週連続で40%超えを記録し、12月第2週は49.8%に達した。12月のスマートフォン率は、過去最大だった11月の35.5%を大きく上回るだろう。
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「GALAXY Tab」と「iPad」を比較! 文字入力は「GALAXY Tab」が上



 筆者はiPad(iPad Wi-Fi + 3Gモデル)を毎日持ち歩き、主に通勤の電車内で利用している。よく使うアプリはブラウザ、メール、Twitterクライアントと、iPad対応の2chブラウザ。いつでもどこでも最新の情報をチェックできて便利な反面、「本体が重い」「最も使用頻度の高い電車内の通信速度が遅く、満足にインターネットができない」「文字入力時の変換精度が悪いうえ、意図した位置にカーソルを挿入しにくい」など、不満も感じていた。メモリカードスロットがなく、別途購入した「iPad Camera Connection Kit」を接続しなければ、本体に直接写真を取り込めない点も不便だった。

「GALAXY Tab」と「iPad」の基本スペック比較
スペック GALAXY Tab iPad(Wi-Fi + 3Gモデル)
サイズ 約 高さ190×幅120×厚さ12.1mm(最薄部) 高さ242.8mm×幅189.7mm×厚さ13.4mm
重量 約 382g 730g
ディスプレイサイズ 約 7.0インチ 9.7インチ
ディスプレイ解像度 横600×縦1024ドット 1024×768ドット
CPU Samsung S5PC110 1GHz Apple A4 1GHz
OS Android 2.2 iOS 4.2(最新版)
内蔵メモリ 16GB 64GB/32GB/16GBから選択
外部メモリ microSDHC/SD(最大32GB) -
無線LAN IEEE802.11a/b/g/n準拠 IEEE802.11a/b/g/n準拠
Bluetooth Bluetooth Version3.0 Bluetooth 2.1 + EDR
カメラ画素数 (外側)約 320万画素/(内側)約 130万画素 -
外部接続 USB2.0ポート -
バッテリ容量 約4000Ah 非公開


 まず、「GALAXY Tab」と「iPad Wi-Fi + 3Gモデル」の基本スペックを比較しよう。「GALAXY Tab」のサイズはiPadのおよそ半分。片手で持てる、との触れ込みだが、つるつると滑る感じなので、両手で持った方がよさそうだった。本体は厚みがあり、382gと大きさの割には重いが、iPad(730g)に比べればかなり軽く、バックにしまうとほとんど重さを感じない。

iPadを横向きにして上に「GALAXY Tab」を重ねると、「GALAXY Tab」の大きさは、iPadのおよそ半分だった

 バッテリを長くもたせるため、「明るさ」を最低まで下げると、「GALAXY Tab」は暗すぎて画面がまったく見えず、やむを得ず、少し高めて使った。「明るさ」に加え、白濃度、黒濃度、彩度の調整が可能で、さらに、標準の「ブラウザ」では、個別に「明るさ」を設定することができる。ほかにも、表示フォントの種類を選べるなど、細かい点までカスタマイズできる点が目を引いた。

「GALAXY Tab」「iPad」ともに「明るさ」を最高値に設定した状態(上)。「明るさ」を最低まで下げると、「GALAXY Tab」は画面に周囲の風景が映りこんでしまった(下)

 iPadの標準ブラウザ「Safari」のフォントは見やすい。それに比べると、「GALAXY Tab」の標準フォントは、かなり残念なレベルといわざるを得ない。画面を拡大表示する際、少し文字が荒れるのも気にかかった。本体の向きと「ホーム」ボタンのアイコンの向きが一致しない点が気になるが、ブラウザでウェブページを見る場合、拡大しなくても文字が読める横位置で使ったほうがいいだろう。

GALAXY Tabのブラウザ画面(縦位置)

GALAXY Tabのブラウザ画面(横位置)

「GALAXY Tab」のブラウザの画面。
縦位置(上)だと拡大しないと文字が読みにくいが、横位置(下)なら問題ない
(画面は、総務省のサイトのトップページ)

 フルキーボードによる文字入力は、iPadに比べて圧倒的に快適。思い通りの位置にカーソルを動かすことができ、変換候補も充実している。特に英語の予測変換が秀逸だった。学習機能も賢く、使い込むほどに便利になりそうだ。

「GALAXY Tab」(左)と「iPad」(右)のフルキーボードによる文字入力画面。
「GALAXY Tab」には、使用頻度の高いカッコやその他の記号、全角スペース/半角スペースを入力できる専用キー、カーソルを左右に移動できる専用キーもあって便利だった。この1点だけで本気で乗り換えを考えたほど

電車内はドコモ回線でも重かった……無線LAN環境ではサクサク動作



 ソフトバンクモバイルの携帯電話の通信品質は、あまりよくないといわれる。他のキャリアに比べ、つながりにくい、速度が遅い、エリアが狭いなど、散々の評価だ。実際にiPadで利用した限りでは、確かに電車内は遅く、何とかならないのかと、ため息をつくレベルだ。
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 特に夜21時~22時台の山手線圏内は不安定で、いきなり「圏外」や「検索中」になることもある。たとえアンテナがフルに立った状態でも、ブラウザでウェブページがなかなか表示されない。Twitterクライアントと2chブラウザは、アプリ本体の表示は問題ないが、リンク先のURLをクリックすると、やはりなかなか表示されず、結局、待てずにページを閉じてしまう。

 試しに、電車内でほぼ同時に「GALAXY Tab」と「iPad」で同じページを開こうとしたところ、「GALAXY Tab」のほうが早く表示された。とはいえ、「GALAXY Tab」も完全に表示されるまで、かなり時間がかかっており、快適とはいい難い。ドコモ回線ならスムーズに表示されるはず、という期待は残念ながら裏切られた。

 「GALAXY Tab」「iPad」とも、会社やお店など、電車内以外の3G接続時はそれほど遅いとは感じない。体感的には「GALAXY Tab」のほうがやや早かった。画面サイズが小さいぶん、転送するデータの容量が小さく、レスポンスがいいのだろう。無線LAN環境だと、「GALAXY Tab」は、さらに体感速度がアップ。サクサクと動作し、まったくストレスを感じない。

使いこなすにはGoogleアカウントが必須、写真の共有も簡単



 では、インターネット関連のアプリの使い勝手を紹介しよう。「Twitter」のAndroid用の公式クライアントは、個人的にはiPad用の公式クライアントより使いやすかった。2chブラウザは、「Android マーケット」で見つけた「俺2ch」をインストール。黒ベースで見やすく、クールな感じだ。


「Twitter」のAndorid用公式クライアントの画面

 Android端末の特徴、Googleの各サービスとの連携にも触れておこう。プリインストールされているメールアプリ「Gmail」を利用するため、自分のGoogleアカウントを登録すると、カレンダーやPicasaオンラインアルバムなど、他のGoogleサービスも同期され、「GALAXY Tab」でチェックできるようになった。「Gmail」の画面はTwitterクライアント同様、シンプルで見やすい。

「Android マーケット」の画面(2010年12月8日時点)。
ダウンロードしたアプリは「ダウンロード」のタブからチェックできる

 iPadやiPhoneは、使い始める前に「iTunes」をインストールしたWindowsパソコンまたはMacに接続し、アクティベーションを行う必要がある。基本的に、パソコンを持っていないと使えない。「GALAXY Tab」は端末だけでも使えるが、Googleアカウントを登録すると、アプリのダウンロードをはじめ、活用の幅が一気に広がる。やはりGoogleアカウントは必須だろう。どちらにしても、日頃からパソコンに慣れ親しんでいない人にとっては、こうしたスマートフォンは不向きといえる。

 最後に、簡単にカメラ機能について触れておこう。カメラで撮影した写真やスクリーンショットなどは、すべて「ギャラリー」内に格納される。そこから写真を選び、「共有」をクリックすると、「Gmail」や「Twitter」、「Picasa」などの共有先が表示され、簡単に写真をメールに添付して送信したり、アップロードしたりできる。カメラ付きの端末ならではの便利さだ。

12月22日から割引額がアップする「Happy Tabキャンペーン」がスタート!



 画面サイズが9.7インチのiPadだと大きすぎて持ち運びが不便だが、3-4インチ台の一般的なスマートフォンだと画面が小さすぎる、と感じていた人にとって、「GALAXY Tab」の7インチというサイズは魅力的だろう。

 「GALAXY Tab」の場合、「Yahoo! JAPAN」など一部のサイトでは、スマートフォン用ページが表示された。専用に設計されているだけあって、スマートフォン用ページは軽く、文字サイズが大きめで読みやすい。音声で情報を検索できる「Google音声検索」も利用しやすかった。いずれもパソコンなどに比べて画面サイズが小さい、スマートフォンならではの工夫だ。

ブラウザ上から簡単に起動できる「Google音声検索」の画面。
試しに「BCN」と発音したら、正しく認識された(右)

 片手か両手か、持ち方も違う。実際に使ってみた結論として、こうした画面表示や関わり方の違いから、「GALAXY Tab」は、「iPad」のようなタブレット端末の小型版ではなく、あくまでも、自分ひとりで使う「スマートフォン」。似て非なるものだとわかった。

 NTTドコモは、12月22日から2011年1月31日まで、「GALAXY Tab」の端末販売価格の割引額を上乗せする「Happy Tabキャンペーン」を実施する。新規で購入し、「デビュー割スマートフォン」を適用すると最大3万7128円、機種変更で購入し、「ご愛顧割スマートフォン」を適用すると最大3万2760円を割り引くというもので、通常のキャンペーン適用価格より、それぞれ1万円以上おトクになる計算だ。さらに、専用ケースをプレゼントする(一部店舗除く、在庫限り)など、盛りだくさんだ。

片手で持つには少し大きいが、その分、一般的なスマートフォンより見やすい。
アイコンや画面デザインは、数年前、iPodの対抗馬として出回っていた海外製の携帯オーディオプレーヤーを彷彿とさせる。シンプルで女性的なアップル独特のデザインに対し、派手で男性的だ

 縦位置の場合、ブラウザでのウェブページの閲覧にはやや難があったが、横位置なら問題ない。ブラウザではなく、専用アプリを利用する手もある。いつでもどこでもインターネットやメール、Twitterなどをチェックしたいなら、「GALAXY Tab」はそのニーズを十分に満たしてくれるだろう。 (BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。