瀋陽に向く外資の目――成長への期待大、中国・東北エリア

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2010/12/10 12:18

【瀋陽発】ユニクロや吉野家、無印良品、ウォルマートなど、外資系企業の進出が目立つ中国遼寧省瀋陽市。12月10日に瀋陽店をオープンするヤマダ電機の一宮忠男社長は9日に行った記者発表で、同社初の海外店舗出店の地を瀋陽に決めた理由について「中国で最も成長率が高いエリアだから」と語るなど、このところの成長に注目が集まっている。そこで、東北三省と遼寧省、その省都瀋陽の位置づけについて、東北三省をカバーする日本貿易振興機構(JETRO)大連の重岡純副所長に取材した。

 中国の東北三省とは、遼寧省、黒龍江省、吉林省。なかでも日本人になじみが深いのは遼寧省の大連、瀋陽といった都市だろう。瀋陽はこの9月に地下鉄が開通するなど、急速に都市化が進んでおり、街のあちらこちらに建築中の建物を見ることができる。近代と現代が同居する活気ある都市だ。

 中国のなかで東北三省が占めるのは「人口、GDPともざっくり1割程度」(重岡副所長)と、いまは必ずしも大きな存在ではない。しかしその分、伸び率は高い。遼寧省は吉林省と並んで経済成長率が約13%(09年現在、以下同)で、全国平均の約9%を大きく上回っている。北京や上海といったすでに大きな経済成長を遂げた都市は、伸び率は1割以下に落ち着いており、その意味でも、遼寧省はこれからの成長が期待できるエリアだといえる。

日本貿易振興機構大連の重岡純副所長

 遼寧省で最も人口が集中しているのが省都の瀋陽で、714万人(08年現在、以下同)が生活している。次いで大連が583万人、鞍山が351万人。この3市で全体の約3割を占めている。一方、都市別の小売総額は、瀋陽が1506億元、大連が1183億元で、この2市で遼寧省のおよそ6割を占める。1人当たりの可処分所得は、上海が年間2万9000元程度、北京が2万7000間程度であるのに対し、瀋陽は1万9000元程度で、1万7000元程度の全国平均よりやや上回っている状況だ。「現在の瀋陽は、上海でいえば2005年の終わり頃の水準」(重岡副所長)という。

繁華街は建築ラッシュ(ヤマダ電機が出店した瀋陽市瀋河区中街路)

 しかし、瀋陽市民の消費意欲は高く、それが耐久財の保有状況にも表れている。例えば、100世帯あたりのビデオカメラ保有台数は24.2台と、全国平均の7.1台の3倍以上で、15.0台の上海すら軽く超える。また全国平均2.3台のピアノも、瀋陽では5.8台と上海の6.0台に迫る水準だ。全国平均59.3台のPCは瀋陽では62.4台と、こちらも上回っている。

ヤマダ電機の並びには中国の家電量販店・国美も店を構える

 「中国政府は、このところ東北三省の経済活性化に積極的。そのなかでも、寒さが厳しい黒龍江省や吉林省に比べ、ややしのぎやすい遼寧省がさまざまな面で有利」(重岡副所長)ということもあって、省都瀋陽への日本企業の進出が目立っている。

ヤマダ電機瀋陽店だが……

同じ場所から右手を見るとこんなエリアも広がる

ウォルマートも出店(瀋陽市和平区中華路)

 主なところでは、ユニクロ、無印良品がそれぞれ2店舗(10年8月現在)出店しているほか、味千ラーメンが4店舗、吉野家が18店舗と飲食系も増えている。日系企業以外では、ウォルマートが4店舗、カルフールが8店舗、マクドナルドが22店舗、スターバックスが4店舗などと、成長率の高さを見込んだ出店ラッシュが始まっている。また、中国の家電量販店、国美電器は13店舗、蘇寧電器もすでに8店舗を瀋陽で展開している。今回のヤマダ電機の進出をきっかけに、家電量販の世界でも新たな競争が始まることになりそうだ。(道越一郎)