拡大するサラウンドシステム、10月はエコポイント特需で前年比1.7倍に
10月、サラウンドシステムの対前年同月比は過去2年間(2008年10月-10年10月)で最高値に達した。販売台数は166.9%、販売金額は151.1%だった。12月1日の家電エコポイント制度の改定を目前に控え、薄型テレビを買う人が一緒にサラウンドシステムを購入したからだ。また、9月30日に発売したソニー・コンピュータエンタテインメントのPS3向けモデル「CECH-ZVS1J」が人気を集めたことも、市場全体の成長に貢献した。
サラウンドシステムは、10年3月、家電エコポイント制度の変更に伴う薄型テレビの驚異的な売れ行きに引っ張られて、対前年同月比で台数149.3%、金額151.1%と大きな伸びを記録した。しかし、10月にはその勢いをさらに上回る成長をみせ、台数166.9%、金額151.1%と最高記録を塗り替えた。10月も3月と同様、12月1日からの家電エコポイント制度の変更前に薄型テレビを購入する動きがサラウンドシステムの購入を後押した。
10月、機種のカラーバリエーションを合算したシリーズ別で一番売れたのは、ソニーの家庭用ゲーム機PS3向けのモデル、ソニー・コンピュータエンタテインメントの「CECH-ZVS1J」だ。販売台数シェアは6.3%だった。テレビの前面下部に置くことができるバー型の形状で、ゲームの種類によって「ダイナミック」「ビビッド」など音場を切り替えることができ、ゲームの臨場感を高めることを追求した。
ソニー・コンピュータエンタテインメント広報によると、「最近のゲームソフトはかなり音質にこだわっているので、サラウンドが存分に楽しめる製品を目指した。また、ゲーム機本体よりも高くならないよう、1万9800円という2万円を切る手頃な価格にした」と話し、売れている理由を「この価格で高音質が手に入ること」と分析する。
2位はシャープのラック型「AN-AR430」でシェア4.2%。3Dの映像信号をHDMIケーブル1本で伝送する「3Dパススルー」に対応し、3D映像を迫力ある音声で楽しめる。また、3位はオンキヨーの「HTX-11X」でシェア3.7%。アンプを内蔵したサブウーファーとフロントスピーカー2本をセットにしたセパレート型だ。売れ筋トップ10を形状別にみると、ラック型が最も多く7モデル。次いで、セパレート型が2モデルが、バー型が1モデルだった。
ラック型はテレビ台と兼用できるのが一番のメリット。薄型テレビを買い替えて画面サイズを大きくすると、これまで使っていた台が使えなくなることがある。ラック型サラウンドシステムなら、テレビ台として利用するだけでなく、音もよくなって一石二鳥というわけだ。市場では一つのジャンルとして存在感を示している。
ラック型の販売台数の構成比をみると、07年10月は13.7%だったのが、08年10月は23.3%と徐々に拡大し、09年10月は33.1%、10年10月は31.5%で市場のおよそ3割を占めるようになった。一方、販売金額は、台数と比べると非常に構成比が大きい。07年10月は26.4%、08年10月は38.5%、09年10月は48.6%、10年10月は48.1%で5割近い。
これは、ラック型以外のモデルに比べ税別の平均単価(以下、平均単価)が高いから。市場全体の平均単価はこの3年間(07年10月-10年10月)、4-5万円程度で推移している。10年10月をピンポイントでみると、ラック型以外は3万2000円程度だったが、ラック型は6万5000円程度と倍近くの価格だ。ただ、ラック型は平均単価の下落が目立ち、07年10月の8万6000円程度から2万1000円も下がっている。一方、ラック型以外は3万8000円程度で、下げ幅は小さい。ラック型は、一時期よりもずっと身近なものになってきている。
ラック型の構成比は拡大しているものの、最近のサラウンドシステムの形状は、実に多彩だ。10月にシリーズ別で1位を獲得したのソニー・コンピュータエンタテインメントの「CECH-ZVS1J」と同様、バー型のヤマハ「YSP-2200」や、ポール型のオンキヨー「HTX-77HDX」など、サラウンドと聞いて普通に思い浮かべる複数のスピーカーによるセパレート型以外にも選択肢は広がっている。
音響機器メーカーのオンキヨーは、「サラウンドシステムのユーザーは細分化してきている。個々の利用シーンに応じた製品を提供していく必要がある」(広報担当者)として、ラインアップの拡充に力を入れている。また、ヤマハは「薄型テレビがアナログからデジタルに切り替わった後はラック型が縮小し、バー型やセパレート型などの後付けできるモデルの構成比が増える」(広報担当者)と予想する。今後、サラウンドシステムは、形状のトレンドが短期的に変化していきそうだ。(BCN・井上真希子)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
サラウンドシステムは、10年3月、家電エコポイント制度の変更に伴う薄型テレビの驚異的な売れ行きに引っ張られて、対前年同月比で台数149.3%、金額151.1%と大きな伸びを記録した。しかし、10月にはその勢いをさらに上回る成長をみせ、台数166.9%、金額151.1%と最高記録を塗り替えた。10月も3月と同様、12月1日からの家電エコポイント制度の変更前に薄型テレビを購入する動きがサラウンドシステムの購入を後押した。
ソニー・コンピュータエンタテインメントの「CECH-ZVS1J」
10月、機種のカラーバリエーションを合算したシリーズ別で一番売れたのは、ソニーの家庭用ゲーム機PS3向けのモデル、ソニー・コンピュータエンタテインメントの「CECH-ZVS1J」だ。販売台数シェアは6.3%だった。テレビの前面下部に置くことができるバー型の形状で、ゲームの種類によって「ダイナミック」「ビビッド」など音場を切り替えることができ、ゲームの臨場感を高めることを追求した。
ソニー・コンピュータエンタテインメント広報によると、「最近のゲームソフトはかなり音質にこだわっているので、サラウンドが存分に楽しめる製品を目指した。また、ゲーム機本体よりも高くならないよう、1万9800円という2万円を切る手頃な価格にした」と話し、売れている理由を「この価格で高音質が手に入ること」と分析する。
順位 | メーカー | シリーズ | 形状 | チャンネル数 | 発売月 | 販売台数 シェア (%) |
1 | ソニー・コンピュータ エンタテインメント | CECH-ZVS1J | バー | 2.1 | 2010/09 | 6.3 |
2 | シャープ | AN-AR430 | ラック | 3.1 | 2010/07 | 4.2 |
3 | オンキヨー | HTX-11X | セパレート | 5.1 | 2009/06 | 3.7 |
4 | ソニー | RHT-G550 | ラック | 3.1 | 2009/06 | 3.4 |
5 | ソニー | RHT-G11 | ラック | 3.1 | 2010/04 | 2.9 |
6 | シャープ | AN-AR530 | ラック | 3.1 | 2010/07 | 2.3 |
7 | パナソニック | SC-HTX700 | ラック | 2.1 | 2010/03 | 2.2 |
8 | パナソニック | SC-HTX500-K | ラック | 2.1 | 2010/03 | 2.0 |
9 | シャープ | AN-AR310 | ラック | 2.1 | 2010/02 | 1.9 |
10 | パイオニア | HTP-S323 | セパレート | 5.1 | 2009/11 | 1.7 |
「BCNランキング」10年10月 月次 <最大パネル>
2位はシャープのラック型「AN-AR430」でシェア4.2%。3Dの映像信号をHDMIケーブル1本で伝送する「3Dパススルー」に対応し、3D映像を迫力ある音声で楽しめる。また、3位はオンキヨーの「HTX-11X」でシェア3.7%。アンプを内蔵したサブウーファーとフロントスピーカー2本をセットにしたセパレート型だ。売れ筋トップ10を形状別にみると、ラック型が最も多く7モデル。次いで、セパレート型が2モデルが、バー型が1モデルだった。
シャープの「AN-AR430」(左)とオンキヨーの「HTX-11X」
ラック型はテレビ台と兼用できるのが一番のメリット。薄型テレビを買い替えて画面サイズを大きくすると、これまで使っていた台が使えなくなることがある。ラック型サラウンドシステムなら、テレビ台として利用するだけでなく、音もよくなって一石二鳥というわけだ。市場では一つのジャンルとして存在感を示している。
ラック型の販売台数の構成比をみると、07年10月は13.7%だったのが、08年10月は23.3%と徐々に拡大し、09年10月は33.1%、10年10月は31.5%で市場のおよそ3割を占めるようになった。一方、販売金額は、台数と比べると非常に構成比が大きい。07年10月は26.4%、08年10月は38.5%、09年10月は48.6%、10年10月は48.1%で5割近い。
これは、ラック型以外のモデルに比べ税別の平均単価(以下、平均単価)が高いから。市場全体の平均単価はこの3年間(07年10月-10年10月)、4-5万円程度で推移している。10年10月をピンポイントでみると、ラック型以外は3万2000円程度だったが、ラック型は6万5000円程度と倍近くの価格だ。ただ、ラック型は平均単価の下落が目立ち、07年10月の8万6000円程度から2万1000円も下がっている。一方、ラック型以外は3万8000円程度で、下げ幅は小さい。ラック型は、一時期よりもずっと身近なものになってきている。
ラック型の構成比は拡大しているものの、最近のサラウンドシステムの形状は、実に多彩だ。10月にシリーズ別で1位を獲得したのソニー・コンピュータエンタテインメントの「CECH-ZVS1J」と同様、バー型のヤマハ「YSP-2200」や、ポール型のオンキヨー「HTX-77HDX」など、サラウンドと聞いて普通に思い浮かべる複数のスピーカーによるセパレート型以外にも選択肢は広がっている。
オンキヨーの「HTX-77HDX」(左)、ヤマハの「YSP-2200」
音響機器メーカーのオンキヨーは、「サラウンドシステムのユーザーは細分化してきている。個々の利用シーンに応じた製品を提供していく必要がある」(広報担当者)として、ラインアップの拡充に力を入れている。また、ヤマハは「薄型テレビがアナログからデジタルに切り替わった後はラック型が縮小し、バー型やセパレート型などの後付けできるモデルの構成比が増える」(広報担当者)と予想する。今後、サラウンドシステムは、形状のトレンドが短期的に変化していきそうだ。(BCN・井上真希子)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。