超高感度のデジ一眼「PENTAX K-5」、驚異のISO51200の真髄に迫る
HOYAが10月15日に発売したデジタル一眼カメラ「PENTAX K-5」は、Kシリーズの最上位モデル「K-7」の後継機。いわゆる中・上級者向けの一台だ。外見上はK-7から著しい変化はないように見えるが、中身はフルモデルチェンジといっていいほどの進化を遂げている。「K-5」のボディと、別売の交換レンズ「DA 17-70mm F4 AL [IF] SDM」のセットで実際に撮影したレビューをお届けしよう。
K-5のAPS-Cサイズ相当の撮像素子は、K-7のサムスン製の有効約1460万画素CMOSセンサから、ソニー製の有効約1628万画素CMOSセンサに変わっている。この新開発の撮像素子は、ソニー「α55」やニコン「D7000」が搭載するものと基本は同じだが、各社独自の仕様変更を加えている。
K-5は、これまで撮像素子とは別のチップで行っていた14bit処理のA/D変換に対応する電子回路を撮像素子に統合することで、従来よりもノイズの少ないデジタル信号を画像処理エンジン「PRIME II」に送り出すことができる仕組みになった。これによって、カメラ内での画像処理の高速化と、すぐれた解像感で階調豊かな、そして高感度でも非常にノイズの少ない高画質を実現しているのである。
高速化という点では、K-7で最高約5.2コマ/秒だった高速連続撮影が、K-5では画素数が増えているにも関わらず、最高約7コマ/秒に向上している。バッテリグリップを装着することなく、ボディ単体で最高約7コマ/秒を実現するというのは、中・上級機のデジタル一眼カメラではトップレベルの性能だ。
K-5のドライブモードを「連続撮影(Hi)」にセットしてシャッターボタンを押すと、まるでマシンガンのように高速で連写するが、その際、ミラーのアップダウンに伴う衝撃を手に感じることはほとんどない。シャッター音も、実に軽快で小気味いい。快適な高速連続撮影のために、あらゆる部分に徹底したチューニングを施していることが実感できる。
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AF(オートフォーカス)の高速化も、大きな進化点の一つ。新開発のAFモジュール「SAFOX IX+」を搭載し、合焦速度・精度が飛躍的に向上している。「SAFOX IX+」の「+」は、光源識別機能を備えていることを意味している。太陽光や蛍光灯など光源の違いを検知して、その情報をAFの合焦精度を高める仕組みを備えているのである。
AFは、過去にレビューをしたK-7と比べて、明らかにが速くなったのが体感できる。撮りたい瞬間に、タイミングを逃さずスッとピントが合ってくれる気持ちよさが味わえる。また高速連続撮影でも、測距スピードが俊敏になったおかげでAFが追従するようになった。さらに、高速で移動する被写体の動きを予測してフォーカスを先送りする動体予測機能を搭載。AF駆動が速い望遠レンズがあれば、スポーツや鉄道の撮影に大いに活躍するだろう。
「SAFOX IX+」の光源識別機能は、AFだけでなく、オートホワイトバランスの精度の向上にもひと役買っている。検知した光源によってホワイトバランスを調整して、どのような光源下でも白いものは白く写るように自動で補正してくれる。ホワイトバランスに関しては、オートのままでまったく問題はなかった。
さらに、白熱灯(電球)の下でオートホワイトバランスで撮影する際にこの機能を使って、電球の赤みを残すか、それとも補正するかを、カスタム設定で選べるようになっている。赤みを残せば、その場の光の状態を生かした作品に仕上げることができる。他社のデジタル一眼カメラの多くには、この機能は備わっていないので、ぜひ活用したい。
また、視野率約100%、倍率約0.92倍のペンタプリズムファインダーは、素通しのクリアな見え方ではなく、ややザラツキのある見え具合なのだが、その分、ピントの山がつかみやすい。ピントが合っているところはくっきりと精細で、ピントが外れているところはまろやかにボケていく感じで、ファインダー越しの画角に集中できる見え方といっていいだろう。
測距点は11点。そのうち中央部の9点がクロスセンサとなっており、この9点を使ったAFでは、さらに高い合焦精度が得られる。光源識別機能も相まって、試した限りではAFに迷うことはなかった。
高速連続撮影機能や高速・高精度のAF、そして画期的なオートホワイトバランスなど、デジタル一眼カメラとしての基本性能の高さをもつK-5。さらに特筆すべき点として強調したいのが、高感度画質である。
常用ISO感度はISO100-12800だが、カスタム設定で「拡張感度」をオンにすることで、ISO80-51200が使えるようになる。ISO80の低感度を選んでも、ISO100と画質の違いを見分けることはできないので、明るい野外で少しでも絞りを開けたいときやシャッター速度を遅くしたいときは、躊躇なくISO80を選んで大丈夫だ。
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一方、高感度側は驚異のISO51200を実現している。実売50万円以上の他社製のプロ用のフラッグシップ機で、感度拡張時に最高ISO102400相当という超高感度を実現している例はあるが、K-5は10万円台前半のボディで、そのわずか1段下のISO51200での高感度撮影を可能にしている。
もちろん、感度を上げれば上げるほど画像は荒れてくる。しかし、いやな感じのカラーノイズが目立たつようなことはなく、感度の処理の強さを設定する「高感度NR(Noise Reduction)」がオートのままでも、解像感の高さを維持し続けてくれるのには正直とても驚いた。被写体によって、また人によって、高感度ノイズの許容範囲は違ってくるだろうが、K-5ならISO3200くらいまでなら気にならないという人は多いのではないだろうか。
ISO12800を超えると、さすがに輝度ノイズが気になりはじめるが、撮像素子シフト方式の手ブレ補正機構「SR(Shake Reduction)」のおかげで、通常なら絶対に三脚が必要な暗いシーンでも手持ちで撮影できてしまう。撮影機会がこれまで以上に広がるのは間違いない。
「高感度NR」は、カスタムを選択すると、感度ごとのオン・オフのほか、強・中・弱などの強さを設定することができる。例えば、ISO800は「高感度NR」をオフにして、ISO3200は「高感度NR」を中にする、といった個別の設定ができるのである。
「高感度NR」のほか、K-5ではさまざまな機能の設定を自分好みにカスタマイズすることができる。よく使う機能の一つに、白トビや黒ツブレを抑えて画像のダイナミックレンジを拡大する「D-Range補正」がある。
「D-Range補正」は、「ハイライト補正」のオン・オフと、「シャドー補正」の弱・中・強の3段階を、それぞれ別々に設定できるようになっている。撮影シーンや撮影意図に合わせて、補正の効き方をきめ細かく変えられるというわけだ。ほかにも作品をカスタマイズできる設定はたっぷりあるので、長く使い込むうちに好みの設定がみえてきて、自分仕様のK-5に仕立てていく楽しみがある。
撮影するときや撮影後の作品づくりに役立つ機能もある。例えば、写真の仕上がりの状態を選択できる「カスタムイメージ」では、空の青さや木々の緑を鮮やかにする「風景」や、色の芯を残しつつ控えめな彩度に仕上げる「ほのか」など、9種類のモードを揃える。また、「デジタルフィルター」機能では、光量を落としたレトロな雰囲気になる「トイカメラ」、ソフトフィルターを付けて撮影したような効果が得られる「ソフト」など、18種類から選ぶことができる。
また、「SR」を応用した「自動水平補正」や「構図微調整」などの機能も、撮影をサポートしてくれる。とくに「自動水平補正」は重宝だ。手持ち撮影では、自分では水平に撮っているつもりでも、撮影後に画像を確認してみると微妙に左右どちらかに傾いている、ということがよくある。「自動水平補正」をオンにしておけば、ある程度の傾きは自動で補正してくれる。
なお、今回はじっくり試す時間がなかったが、K-5は解像度1920×1080ピクセル、フレームレート25fpsのフルHD(ハイビジョン)の動画撮影に対応している。写真だけでなく、動画を撮影するときにも「デジタルフィルター」などの各種エフェクト機能が使えるので、工夫次第で凝った作品をつくることができる。
K-5は、とにかくできることがたくさんあって、画質にも何ら不満はなく、とても中・上級機の枠では収まりきれないデジタル一眼カメラ、という印象をもった。なんとも使いこなす楽しみに溢れた一台が現れたものである。(フリーライター・榎木夏彦)
改良した撮像素子ですぐれた画像処理を実現
K-5のAPS-Cサイズ相当の撮像素子は、K-7のサムスン製の有効約1460万画素CMOSセンサから、ソニー製の有効約1628万画素CMOSセンサに変わっている。この新開発の撮像素子は、ソニー「α55」やニコン「D7000」が搭載するものと基本は同じだが、各社独自の仕様変更を加えている。
「K-5」のボディと別売の交換レンズ「DA 17-70mm F4 AL [IF] SDM」
K-5は、これまで撮像素子とは別のチップで行っていた14bit処理のA/D変換に対応する電子回路を撮像素子に統合することで、従来よりもノイズの少ないデジタル信号を画像処理エンジン「PRIME II」に送り出すことができる仕組みになった。これによって、カメラ内での画像処理の高速化と、すぐれた解像感で階調豊かな、そして高感度でも非常にノイズの少ない高画質を実現しているのである。
Pモード 1/800 F7.1 17mm ISO100 AWB カスタムイメージ「鮮やか」
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高速化という点では、K-7で最高約5.2コマ/秒だった高速連続撮影が、K-5では画素数が増えているにも関わらず、最高約7コマ/秒に向上している。バッテリグリップを装着することなく、ボディ単体で最高約7コマ/秒を実現するというのは、中・上級機のデジタル一眼カメラではトップレベルの性能だ。
Pモード 1/80 F5.6 17mm ISO200 AWB ハイライト補正「オン」 カスタムイメージ「鮮やか」
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K-5のドライブモードを「連続撮影(Hi)」にセットしてシャッターボタンを押すと、まるでマシンガンのように高速で連写するが、その際、ミラーのアップダウンに伴う衝撃を手に感じることはほとんどない。シャッター音も、実に軽快で小気味いい。快適な高速連続撮影のために、あらゆる部分に徹底したチューニングを施していることが実感できる。
Avモード 1/50 F5.0 17mm ISO100 AWB シャドー補正「中」 カスタムイメージ「鮮やか」
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オートフォーカスの速度・精度が従来モデルよりも進化
AF(オートフォーカス)の高速化も、大きな進化点の一つ。新開発のAFモジュール「SAFOX IX+」を搭載し、合焦速度・精度が飛躍的に向上している。「SAFOX IX+」の「+」は、光源識別機能を備えていることを意味している。太陽光や蛍光灯など光源の違いを検知して、その情報をAFの合焦精度を高める仕組みを備えているのである。
Tvモード 1/10 F7.1 28mm ISO100 AWB シャドー補正「中」 カスタムイメージ「鮮やか」
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AFは、過去にレビューをしたK-7と比べて、明らかにが速くなったのが体感できる。撮りたい瞬間に、タイミングを逃さずスッとピントが合ってくれる気持ちよさが味わえる。また高速連続撮影でも、測距スピードが俊敏になったおかげでAFが追従するようになった。さらに、高速で移動する被写体の動きを予測してフォーカスを先送りする動体予測機能を搭載。AF駆動が速い望遠レンズがあれば、スポーツや鉄道の撮影に大いに活躍するだろう。
Tvモード 1/10 F10 53mm ISO100 AWB シャドー補正「中」 カスタムイメージ「鮮やか」
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「SAFOX IX+」の光源識別機能は、AFだけでなく、オートホワイトバランスの精度の向上にもひと役買っている。検知した光源によってホワイトバランスを調整して、どのような光源下でも白いものは白く写るように自動で補正してくれる。ホワイトバランスに関しては、オートのままでまったく問題はなかった。
さらに、白熱灯(電球)の下でオートホワイトバランスで撮影する際にこの機能を使って、電球の赤みを残すか、それとも補正するかを、カスタム設定で選べるようになっている。赤みを残せば、その場の光の状態を生かした作品に仕上げることができる。他社のデジタル一眼カメラの多くには、この機能は備わっていないので、ぜひ活用したい。
Pモード 1/100 F6.3 17mm ISO100 AWB シャドー補正「中」 カスタムイメージ「鮮やか」
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また、視野率約100%、倍率約0.92倍のペンタプリズムファインダーは、素通しのクリアな見え方ではなく、ややザラツキのある見え具合なのだが、その分、ピントの山がつかみやすい。ピントが合っているところはくっきりと精細で、ピントが外れているところはまろやかにボケていく感じで、ファインダー越しの画角に集中できる見え方といっていいだろう。
測距点は11点。そのうち中央部の9点がクロスセンサとなっており、この9点を使ったAFでは、さらに高い合焦精度が得られる。光源識別機能も相まって、試した限りではAFに迷うことはなかった。
最高感度は驚異のISO51200! 高感度でもノイズを抑える
高速連続撮影機能や高速・高精度のAF、そして画期的なオートホワイトバランスなど、デジタル一眼カメラとしての基本性能の高さをもつK-5。さらに特筆すべき点として強調したいのが、高感度画質である。
常用ISO感度はISO100-12800だが、カスタム設定で「拡張感度」をオンにすることで、ISO80-51200が使えるようになる。ISO80の低感度を選んでも、ISO100と画質の違いを見分けることはできないので、明るい野外で少しでも絞りを開けたいときやシャッター速度を遅くしたいときは、躊躇なくISO80を選んで大丈夫だ。
___page___
一方、高感度側は驚異のISO51200を実現している。実売50万円以上の他社製のプロ用のフラッグシップ機で、感度拡張時に最高ISO102400相当という超高感度を実現している例はあるが、K-5は10万円台前半のボディで、そのわずか1段下のISO51200での高感度撮影を可能にしている。
もちろん、感度を上げれば上げるほど画像は荒れてくる。しかし、いやな感じのカラーノイズが目立たつようなことはなく、感度の処理の強さを設定する「高感度NR(Noise Reduction)」がオートのままでも、解像感の高さを維持し続けてくれるのには正直とても驚いた。被写体によって、また人によって、高感度ノイズの許容範囲は違ってくるだろうが、K-5ならISO3200くらいまでなら気にならないという人は多いのではないだろうか。
ISO12800を超えると、さすがに輝度ノイズが気になりはじめるが、撮像素子シフト方式の手ブレ補正機構「SR(Shake Reduction)」のおかげで、通常なら絶対に三脚が必要な暗いシーンでも手持ちで撮影できてしまう。撮影機会がこれまで以上に広がるのは間違いない。
「高感度NR」は、カスタムを選択すると、感度ごとのオン・オフのほか、強・中・弱などの強さを設定することができる。例えば、ISO800は「高感度NR」をオフにして、ISO3200は「高感度NR」を中にする、といった個別の設定ができるのである。
ダイナミックレンジなど各種設定を自分好みにカスタマイズ
「高感度NR」のほか、K-5ではさまざまな機能の設定を自分好みにカスタマイズすることができる。よく使う機能の一つに、白トビや黒ツブレを抑えて画像のダイナミックレンジを拡大する「D-Range補正」がある。
「D-Range補正」は、「ハイライト補正」のオン・オフと、「シャドー補正」の弱・中・強の3段階を、それぞれ別々に設定できるようになっている。撮影シーンや撮影意図に合わせて、補正の効き方をきめ細かく変えられるというわけだ。ほかにも作品をカスタマイズできる設定はたっぷりあるので、長く使い込むうちに好みの設定がみえてきて、自分仕様のK-5に仕立てていく楽しみがある。
Pモード 1/160 F6.3 36mm ISO100 AWB カスタムイメージ「風景」
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撮影するときや撮影後の作品づくりに役立つ機能もある。例えば、写真の仕上がりの状態を選択できる「カスタムイメージ」では、空の青さや木々の緑を鮮やかにする「風景」や、色の芯を残しつつ控えめな彩度に仕上げる「ほのか」など、9種類のモードを揃える。また、「デジタルフィルター」機能では、光量を落としたレトロな雰囲気になる「トイカメラ」、ソフトフィルターを付けて撮影したような効果が得られる「ソフト」など、18種類から選ぶことができる。
Pモード 1/160 F6.3 36mm ISO100 AWB カスタムイメージ「ほのか」
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また、「SR」を応用した「自動水平補正」や「構図微調整」などの機能も、撮影をサポートしてくれる。とくに「自動水平補正」は重宝だ。手持ち撮影では、自分では水平に撮っているつもりでも、撮影後に画像を確認してみると微妙に左右どちらかに傾いている、ということがよくある。「自動水平補正」をオンにしておけば、ある程度の傾きは自動で補正してくれる。
Pモード 1/160 F6.3 39mm ISO100 AWB デジタルフィルター「トイカメラ」
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なお、今回はじっくり試す時間がなかったが、K-5は解像度1920×1080ピクセル、フレームレート25fpsのフルHD(ハイビジョン)の動画撮影に対応している。写真だけでなく、動画を撮影するときにも「デジタルフィルター」などの各種エフェクト機能が使えるので、工夫次第で凝った作品をつくることができる。
Pモード 1/160 F5.6 39mm ISO100 AWB デジタルフィルター「ソフト」
[画像をクリックすると写真を拡大表示します]
K-5は、とにかくできることがたくさんあって、画質にも何ら不満はなく、とても中・上級機の枠では収まりきれないデジタル一眼カメラ、という印象をもった。なんとも使いこなす楽しみに溢れた一台が現れたものである。(フリーライター・榎木夏彦)