シャープは、11月29日、電子書籍端末「GALAPAGOS（ガラパゴス）」を12月10日に発売すると発表した。12月3日から予約受付を開始する。ラインアップと価格は、5.5型ワイドのモバイルモデル「EB-W51GJ」が3万9800円、10.8型ワイドのホームモデル「EB-WX1GJ」が5万4800円。端末の発売と同時に、電子ブックストア「TSUTAYA GALAPAGOS」のサービスも開始する。報道関係者向けに実施したイベントには、ゲストとして芥川賞作家の平野啓一郎さんが登場。新刊『かたちだけの愛』の発売と同時に作品を電子化するにあたり、作品に対する思いや電子書籍の展望を語った。

　「GALAPAGOS」は、専用の電子ブックストア「TSUTAYA GALAPAGOS」で書籍のコンテンツをダウンロードして楽しむ電子書籍端末。タッチパネル式の液晶を搭載し、ページ送りや文字の拡大・縮小が指で簡単にできる。5.5型ワイドモデルには画面の下部にトラックボールを備え、ボールを操作してページをめくることもできる。 

　ストアで購入したコンテンツはmicroSDカードに保存する。OSはLinuxベース。無線LANはIEEE802.11b/gに準拠し、インターネットを楽しむこともできる。スピーカーのほか、コネクタとしてminiUSB端子、ヘッドホン端子を装備する。近い将来、書籍だけでなく、動画や音楽が楽しめる端末として、シャープは「メディアタブレット」と名付けている。

　バッテリ駆動時間は、5.5型ワイド「EB-W51GJ」が約7時間、10.8型ワイド「EB-WX1GJ」が約10.5時間。サイズと重さは、「EB-W51GJ」が幅92×高さ167×奥行き12.9mmで約220g、「EB-WX1GJ」が幅177×高さ286×奥行き14.7mmで約765g。カラーは「EB-W51GJ」がレッド系とシルバー系、「EB-WX1GJ」がブラック系。 

　電子ブックストア「TSUTAYA GALAPAGOS」は、カルチュア・コンビニエンス・クラブのレンタル・ショッピングサービス「TSUTAYA」と提携して開設。約2万点のコンテンツをラインアップする。文芸、ビジネス・ITなど21ジャンルの書籍を提供する。岩崎夏海著の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』（ダイアモンド社）などの話題作も揃える。

　新聞やビジネス・一般雑誌など定期配信サービスも開始。主なコンテンツは、新聞では日本経済新聞やMainichi iTimes、雑誌は『週刊東洋経済』や『プレジデント』など。また、2011年春をめどに、動画や音楽、ゲームなどのコンテンツも提供していく。同時期に、シャープ製のスマートフォンでもコンテンツが利用できるようになる。 

　「TSUTAYA GALAPAGOS」のコンテンツの一つとして、芥川賞作家の平野啓一郎さんの新刊『かたちだけの愛』を配信する。『かたちだけの愛』は愛をテーマにした作品。ゲストとして登場した平野さんは「文学の大きなテーマですから」と主題にした理由を語り、「今はインターネットのお陰で不特定多数の人と関わることができますが、それで本当に心が満たされるかというと、そうでもない。やはり、ある誰かと長い時間一緒に過ごさないといけないんです」と話した。

　さらに、「昨今の元気のない時代をどうやって生きていくのか。それには愛が必要。『これなら信じられる』という愛を描いた」と作品の狙いを明らかにした。今後、『かたちだけの愛』だけでなく、平野さんの新刊は書籍と同時に電子版も提供していく予定。 

　今年に入って新しい端末やサービスの発表が国内で相次いでいる電子書籍について、平野さんは「自然な流れ」と捉えているという。シャープの「GALAPAGOS」を実際に使ったところ、「液晶画面の点灯の強弱を調節できるので、自分の心地よいポイントを見つければ、普通の書籍と違和感なく見ることができますね」と感想を述べた。

　電子書籍ならではのコンテンツとして、音楽や動画を添付する可能性について報道関係者から質問を受けると、「いまはできる人が限られている。小説についてはテキストだけでいいと思っている」と話し、今後の電子書籍については「日常に溶け込むものになってほしい」と期待を語った。