ソニー、携帯オーディオの週次販売台数シェアで10週ぶりにトップ獲得
「BCNランキング」の週次データによる携帯オーディオプレーヤーのメーカー別販売台数シェアで、2010年11月第2週(2010年11月8日-14日)、ソニーがシェア47.0%で1位を獲得。8月最終週以来、10週ぶりにトップに返り咲いた。
2010年8月第1週(8月2日-8日)から8月最終週(8月30日-9月5日)まで、ソニーは5週連続でメーカー別販売台数1位を獲得。9月第1週(9月6日-12日)以降は、第6世代iPod nanoなど、新製品を発売したアップルが再びトップに立ち、特に9月第3週(9月20日-26日)から3週間は、5割を超えるシェアを獲得していた。今年9月以降のアップルのシェアの最大値は、9月第4週(9月27日-10月3日)の56.1%。新製品の発売に伴い、価格が下がった旧モデルもしばらく売れ続け、販売台数を押し上げた。
対するソニーは、10月にウォークマンの新製品を、11月13日にも上位モデルに当たる「A850シリーズ」を発売。新製品効果で、11月第2週(11月8日-14日)、ソニー47.0%、アップル45.5%で、10週ぶりに1位を獲得した。1位と2位の差は、11月第1週は0.4ポイント、第2週は1.5ポイントとごくわずか。販売台数の差は少なく、拮抗している。
月次集計では、アップルは2002年8月から2010年7月まで、およそ8年にわたって1位を記録し続けていた。2010年8月はソニーがトップを獲得し、連続1位記録は途絶えたものの、9月と10月はアップルが1位に返り咲いている。
ソニーは、10代の若者にターゲットを絞り、音楽プレーヤーとしての基本性能を強化。中高生のおこづかい程度で買える実売1万円以下の低価格モデルにも力を入れ、新製品では、自宅で音楽をイヤホンなしで聴けるスピーカー付きモデルのラインアップを増やした。こうした戦略が、見事に当たったようだ。
カラーバリエーションを合算して集計した2010年11月第2週(11月8日-14日)の携帯オーディオのシリーズ別ランキングでは、アップルの第4世代iPod touchの32GBモデル、第6世代iPod nanoの8GBモデルに続き、ソニーの10月発売の新製品「NW-S754シリーズ」「NW-S754Kシリーズ」が3位・4位にランクイン。そのほかトップ10にウォークマンが4機種が入っている。このうち、4位の「NW-S754Kシリーズ」と9位の「NW-S755Kシリーズ」は、スピーカー付きモデルだ。
BCNのインタビュー取材に対し、ソニーマーケティングの中牟田寿嗣コンスーマーAVマーケティング部門パーソナルAVマーケティング部統括部長は、「外的要因は常にある。それでも、かなりのペースでアップルに追いついてきていると感じている」と、ウォークマン復活の手応えを語っている。その実感は、数字に表れているといえるだろう。
ただ、iPodのライバルは、今やウォークマンではなく、同じアップル製のスマートフォン「iPhone」だといわれる。確かに、電話・音楽・ビデオ・ネットなど、1台で何でもこなせるスマートフォンを購入した後、音楽プレーヤーを持ち歩かなくなる人は少なくない。しかし、スマートフォンは、初期費用や毎月の通信料など金銭的負担が大きく、必然的に、アルバイトをしている学生や働いている社会人がメインターゲットになる。一度買ってしまえば維持費がかからない携帯オーディオプレーヤーのターゲットとして、スマートフォンを買えない10代の中高生を据えたソニーの戦略は、非常に当を得たものといえる。
アップルの携帯オーディオプレーヤーで今一番売れているiPod touchと、iPhone、iPadは、使い勝手がよく似ている。画面サイズやカメラ/GPSの有無など、細かい仕様は異なるが、App Storeからアプリやゲームをダウンロードして楽しめる点は同じ。さらに一部の周辺機器は、使い回しができる。共通の管理ソフト「iTunes」と連動するコンテンツ配信ストア「iTunes Store」の機能強化・ラインアップの拡充も続く。特に「iTunes Store」は、映画の配信、ビートルズの楽曲配信を開始するなど、ここに来てテコ入れを図っている。
一方、ソニーは、ウォークマン、PSPなど、さまざまな人気ブランドを抱えながら、現状ではそれらが密接にリンクしているとはいいがたい。ウォークマンが携帯オーディオ市場で復権しつつあるといっても、今、ウォークマンをもつ10代の若者が大人になって、新たなプレーヤーとして再びウォークマンや、同じソニー系列の製品を選ぶようにならなければ、長期的な視点でアップルに追いついたとはいえないだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。
新製品効果で一時はアップルのシェアが5割超え
2010年8月第1週(8月2日-8日)から8月最終週(8月30日-9月5日)まで、ソニーは5週連続でメーカー別販売台数1位を獲得。9月第1週(9月6日-12日)以降は、第6世代iPod nanoなど、新製品を発売したアップルが再びトップに立ち、特に9月第3週(9月20日-26日)から3週間は、5割を超えるシェアを獲得していた。今年9月以降のアップルのシェアの最大値は、9月第4週(9月27日-10月3日)の56.1%。新製品の発売に伴い、価格が下がった旧モデルもしばらく売れ続け、販売台数を押し上げた。
対するソニーは、10月にウォークマンの新製品を、11月13日にも上位モデルに当たる「A850シリーズ」を発売。新製品効果で、11月第2週(11月8日-14日)、ソニー47.0%、アップル45.5%で、10週ぶりに1位を獲得した。1位と2位の差は、11月第1週は0.4ポイント、第2週は1.5ポイントとごくわずか。販売台数の差は少なく、拮抗している。
月次集計では、アップルは2002年8月から2010年7月まで、およそ8年にわたって1位を記録し続けていた。2010年8月はソニーがトップを獲得し、連続1位記録は途絶えたものの、9月と10月はアップルが1位に返り咲いている。
メーカー | 販売台数シェア(%) | ||
2010年8月 | 2010年9月 | 2010年10月 | |
アップル | 44.0 | 49.0 | 49.6 |
ソニー | 47.8 | 44.0 | 43.6 |
その他(アップル・ソニー以外) | 8.2 | 7.0 | 6.8 |
「BCNランキング」2010年8月-10月 月次<最大パネル>
若年層をターゲットに絞ったソニー、戦略は見事に当たる
ソニーは、10代の若者にターゲットを絞り、音楽プレーヤーとしての基本性能を強化。中高生のおこづかい程度で買える実売1万円以下の低価格モデルにも力を入れ、新製品では、自宅で音楽をイヤホンなしで聴けるスピーカー付きモデルのラインアップを増やした。こうした戦略が、見事に当たったようだ。
カラーバリエーションを合算して集計した2010年11月第2週(11月8日-14日)の携帯オーディオのシリーズ別ランキングでは、アップルの第4世代iPod touchの32GBモデル、第6世代iPod nanoの8GBモデルに続き、ソニーの10月発売の新製品「NW-S754シリーズ」「NW-S754Kシリーズ」が3位・4位にランクイン。そのほかトップ10にウォークマンが4機種が入っている。このうち、4位の「NW-S754Kシリーズ」と9位の「NW-S755Kシリーズ」は、スピーカー付きモデルだ。
順位 | メーカー | シリーズ名・型番 | 動画再生 | 容量 | 発売年月 | スピーカーの 有無 | 販売台数 シェア(%) |
1 | アップル | iPod touch 32GB(4th) | 対応 | 32GB | 2010/09 | あり(内蔵) | 10.9 |
2 | アップル | iPod nano 8GB(6th) | 非対応 | 8GB | 2010/09 | - | 9.3 |
3 | ソニー | NW-S754 | 対応 | 8GB | 2010/10 | - | 7.5 |
4 | ソニー | NW-S754K | 対応 | 8GB | 2010/10 | あり | 7.0 |
5 | アップル | iPod nano 16GB(6th) | 非対応 | 16GB | 2010/09 | - | 6.4 |
6 | アップル | iPod shuffle 2GB | 非対応 | 2GB | 2010/09 | - | 5.4 |
7 | アップル | iPod touch 8GB(4th) | 対応 | 8GB | 2010/09 | あり(内蔵) | 4.9 |
8 | ソニー | NW-E052 | 非対応 | 2GB | 2010/10 | - | 4.5 |
9 | ソニー | NW-S755K | 対応 | 16GB | 2010/10 | あり | 3.7 |
10 | アップル | iPod touch 64GB(4th) | 対応 | 64GB | 2010/09 | あり(内蔵) | 3.7 |
※同じ容量のカラーバリエーションは合算して集計
「BCNランキング」2010年11月第2週 週次<最大パネル>
「BCNランキング」2010年11月第2週 週次<最大パネル>
BCNのインタビュー取材に対し、ソニーマーケティングの中牟田寿嗣コンスーマーAVマーケティング部門パーソナルAVマーケティング部統括部長は、「外的要因は常にある。それでも、かなりのペースでアップルに追いついてきていると感じている」と、ウォークマン復活の手応えを語っている。その実感は、数字に表れているといえるだろう。
ソニーの今秋発売のウォークマンの新製品
(左からNW-S754、スピーカー付きモデルのNW-S754K、NW-E052)
(左からNW-S754、スピーカー付きモデルのNW-S754K、NW-E052)
ただ、iPodのライバルは、今やウォークマンではなく、同じアップル製のスマートフォン「iPhone」だといわれる。確かに、電話・音楽・ビデオ・ネットなど、1台で何でもこなせるスマートフォンを購入した後、音楽プレーヤーを持ち歩かなくなる人は少なくない。しかし、スマートフォンは、初期費用や毎月の通信料など金銭的負担が大きく、必然的に、アルバイトをしている学生や働いている社会人がメインターゲットになる。一度買ってしまえば維持費がかからない携帯オーディオプレーヤーのターゲットとして、スマートフォンを買えない10代の中高生を据えたソニーの戦略は、非常に当を得たものといえる。
アップルの携帯オーディオプレーヤーで今一番売れているiPod touchと、iPhone、iPadは、使い勝手がよく似ている。画面サイズやカメラ/GPSの有無など、細かい仕様は異なるが、App Storeからアプリやゲームをダウンロードして楽しめる点は同じ。さらに一部の周辺機器は、使い回しができる。共通の管理ソフト「iTunes」と連動するコンテンツ配信ストア「iTunes Store」の機能強化・ラインアップの拡充も続く。特に「iTunes Store」は、映画の配信、ビートルズの楽曲配信を開始するなど、ここに来てテコ入れを図っている。
アップルの新しいiPod touchと「iTunes Store」の「映画」コーナーの画面
一方、ソニーは、ウォークマン、PSPなど、さまざまな人気ブランドを抱えながら、現状ではそれらが密接にリンクしているとはいいがたい。ウォークマンが携帯オーディオ市場で復権しつつあるといっても、今、ウォークマンをもつ10代の若者が大人になって、新たなプレーヤーとして再びウォークマンや、同じソニー系列の製品を選ぶようにならなければ、長期的な視点でアップルに追いついたとはいえないだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。