小型・軽量の“ママ向け”が後押し、ビデオカメラはパナが3割近くに

特集

2010/10/25 15:34

 9月、パナソニックがデジタルビデオカメラで、直近の3年間(2007年9月-2010年9月)で過去最高のシェアを獲得した。「BCNランキング」では、メーカー別販売台数でシェア40.4%で1位のソニーに続き、シェア26.4%と3位以下を大きく引き離している。ビデオカメラといえば長年ソニーの独走状態が続いてきたが、なぜ今、パナソニックの製品が売れているのだろうか。

パナソニックの「HDC-TM35」

 9月にパナソニックがシェアを伸ばしたのは、重さ約185gと小型で軽量の「HDC-TM35」が人気を集めたから。女性ユーザーを意識した4色のカラーバリエーションをもつモデルだ。機種のカラーバリエーションを合算した9月のシリーズ別の、販売台数では、14.9%で2位につけている。

 「HDC-TM35」が売れた理由を、パナソニック広報は「子どもをもつ母親をターゲットに定めて、製品企画から販売促進活動まで、一貫して対象ユーザーに訴求してきた。とくに、使いやすさに徹底的にこだわった」としている。

 パナソニックが首位のソニーに限りなく近づいたことが実は、この3年間で一度だけある。08年2月、1位のソニーは販売台数でシェア25.3%。パナソニックは2位で24.4%、3位は日本ビクターで23.3%と三つ巴の状態だった。その後、ソニーが2社を引き離し、1位を独走。2位をパナソニックと日本ビクターで競り合う状況が1年半ほど続いた。 


 転機が訪れたのは09年9月。パナソニックは販売台数を増やし、以後メーカーシェアで2位をキープしていく。10年9月は販売台数シェア26.4%で、07年9月-01年9月の3年間で最高値に達した。一方、販売金額シェアは29.6%で、08年2月の29.7%にはあと一歩及ばなかった。ちなみに、9月のメーカーシェア1位のソニーは、販売台数40.4%、販売金額44.9%だった。

 ここで、メーカーシェア1位のソニーと2位のパナソニックの動きを比較しよう。1年のうち、運動会のシーズンでビデオカメラが最も売れる9月のデータを年ごとにピックアップした。3年前の07年9月の販売台数・金額を100とした指数で、販売台数は、ソニーは08年9月に89.1と落ち込むが、09年9月は101.2、10年9月には135.3と好調。対するパナソニックは、08年9月は91.8だったが、09年9月で130.6まで拡大し、10年9月は185.2と3年前の2倍近くまで迫る勢いだ。 


 一方、販売金額に目を向けると、ソニーは08年9月80.2、09年9月78.9、そして10年9月は76.0と、販売金額の下落が著しい。しかし、パナソニックは逆の動きをみせる。08年9月は83.4と落ち込むが、09年9月は95.1、10年9月は112.0と回復している。税別平均単価が落ち込むなかで、パナソニックが10年9月に販売金額を押し上げたのは健闘といえるだろう。

 最後に、「HDC-TM35」以外の、9月のシリーズ別の売れ筋モデルをみていく。パナソニックは、フルハイビジョン画質の中位モデル「HDC-TM60」がシェア5.2%で4位に入っている。1位はソニーの「HDR-CX370V」で16.7%。ソニーの光学技術を生かした「Gレンズ」を搭載している。3位も同じくソニーで、重さ約210gのコンパクトな「HDR-CX170」が13.9%だった。

デジタルビデオカメラ
シリーズ別販売台数シェア トップ10
順位 メーカー シリーズ 販売台数
シェア(%)
1 ソニー HDR-CX370V 16.7
2 パナソニック HDC-TM35 14.9
3 ソニー HDR-CX170 13.9
4 パナソニック HDC-TM60 5.2
5 キヤノン IVISHFM32 5.2
6 キヤノン IVISHFR10 4.5
7 ソニー HDR-CX550V 4.4
8 日本ビクター GZ-HM350 3.5
9 三洋電機 DMX-CA100 3.2
10 キヤノン IVISHFM31 2.9
※カラーバリエーションは合算して集計
「BCNランキング」10年9月 月次 <最大パネル>

 ソニーとパナソニックは、メーカーシェアが1位と2位という立場の差は前提にあるものの、販売台数・金額指数の推移の違いは大きい。ソニーは販売台数では高いシェアを確保しているが、販売金額では伸び悩んでいる。一方、パナソニックは、販売台数が順調に拡大しており、販売金額でも右肩上がりの成長を維持している。

 この理由について、パナソニック広報は「『HDC-TM35』の伸長はもちろんだが、光の3原色RGBをそれぞれ個別に処理する画像処理センサー『3MOS』を使った高画質モデルから、軽量・小型化を追求したエントリーモデルまで、幅広く製品をラインアップしている点がユーザーから評価された」としている。(BCN・井上真希子)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで129品目を対象としています。