携帯オーディオ、2010年8月の月間トップはソニー、新iPod登場の9月は?
2010年8月、ソニーの「ウォークマン」の販売台数がアップルの「iPod」を上回った。量販店・オンラインショップのPOSデータを収集した「BCNランキング」で、ソニーは、前月1位のアップルに3.8ポイント差をつけ、携帯オーディオプレーヤーの月間メーカー別販売台数シェア1位を獲得。あくまでも1か月という限られた期間であって、累計のシェアではないが、iPodと何かと比較されることが多いウォークマンファンには喜ばしいニュースだろう。9月もトップを飾ることができれば、その人気は一時的なものではない――といえるのだが、9月20日までの途中集計では、新モデルを発売したアップルがソニーを上回っている。
アップルは2002年8月から2010年7月まで96か月、およそ8年にわたって、携帯オーディオの月間メーカー別販売台数シェア1位を記録した。特に2005年9月以降は、常に40~50%台の高いシェアを保ち、期間中、最もシェアが高かった2008年10月に至っては61.9%と、圧倒的多数を占めていた。
しかし、2010年8月はソニーがシェア47.8%でトップに立ち、アップルは3.8ポイント差のシェア44.0%で2位に後退した。ソニーの1位獲得は、集計を開始した2001年11月以降、初めての快挙だ。
週次集計では、2010年8月第1週(2010年8月2日-8日)から8月最終週(8月30日-9月5日)まで、5週連続でソニーがトップを獲得。アップルが新モデルを発表する直前の8月第4週(8月23日-29日)には、ソニーが48.3%、アップルが42.9%と、その差は5.4ポイントまで開いた。しかし、9月第1週(9月6日-9月12日)はアップルが47.7%、ソニーが44.5%でアップルが再びトップに立ち、ソニーの週次集計での連続1位記録は5週で途切れた。
8月のソニーの躍進には、いくつか理由が考えられる。iPodと同じように音楽を再生できる同じアップル製のスマートフォン「iPhone」に需要が流れている、すでに携帯オーディオを欲しい人は手に入れて買い替えが進んでいない、若年層を中心にウォークマンが人気を得ている、国内メーカーの撤退が相次ぎ、“iPod以外”の選択肢が事実上ウォークマンしかない……。これらの要因が重なった結果といえるだろう。もちろん、アップルファンの新製品待ちの買い控えも確実に影響を与えている。
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ソニーは、携帯オーディオ全体の販売台数の2~3割程度を占める税別平均単価1万未満の低価格帯に強く、2010年1月以降は、40%~60%台後半の高いシェアを保っている。この価格帯ではダントツのトップだ。対してアップルは、このレンジには液晶モニタのないiPod shuffleしかラインアップしていないこともあって、シェアはわずか10%台にとどまっている。2010年8月に至っては、ソニーの68.6%に対し、アップルはわずか8.4%だった。
一方、税別平均単価1万円以上の価格帯ではアップルが優勢で、ソニーはまったく太刀打ちできていない。携帯オーディオ全体ではソニーが1位を獲得した2010年8月でも、アップルが60.3%、ソニーが38.3%、その他のメーカーが1.4%という結果だった。価格帯別でみると、改めて上位2社に人気が集中していることがわかる。
携帯オーディオ全体の2009年8月以降の月間販売台数の推移をみると、2009年12月・1月が飛び抜けて多く、それ以外の月はほぼ一定だ。年末年始は例年、AV機器や家電が年間で多く売れる時期であり、年間を通して堅調に推移しているとみていい。
販売台数の前年同月比は92%~108%の間で推移し、2010年8月は前年同月比106.3%と、比較的好調だった。iPhoneやXperiaなど、音楽・動画の再生を含め、パソコンのように1台でさまざまな用途で使えるスマートフォンが注目を集めるなか、根強い人気を保っているといえる。これまでiPodを買っていた層がiPhoneに流れ、携帯オーディオがまったく売れなくなっている、というわけではない。もちろん影響は皆無ではないが、むしろiPhoneで興味をもった人が、通話機能のないiPod touchに流れているようにもみえる。
日本時間の2010年9月2日、アップルは新しいiPodファミリーを発表した。そのうち、フラッシュメモリタイプのiPod touch、iPod nano、iPod shuffleはフルモデルチェンジ。新iPod touchと新iPod shuffleは4世代目、新iPod nanoは6世代目に当たる。
最も大きく変わったのは、これまで一番人気だったiPod nano。詳細はこちら(「音楽・写真を指で操る! マルチタッチの新型「iPod nano」に触ってきた」「新iPod間もなく発売、ファーストインプレッション」)を参考にしていただきたいが、カメラや動画再生などの付加機能が減り、iPod shuffleに近くなった感じだ。しかし、価格は従来とほとんど変わらず、コストパフォーマンスが下がった感は否めない。今回のデザイン・仕様変更を残念に思ったネットユーザーからは、nanoからtouchに売れ筋を移行させるためでは、という憶測が飛び交った。
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新しいiPod touchに対しても、今年6月発売のiPhone 4に比べ、カメラの画素数が低いなど、スペックダウンを惜しむ声が挙がっている。とはいえ、同じ容量のiPhone 4より安く、より薄く、軽いのがメリットだ。製品写真を見ると、iPhone 4の通話機能・GPSなしバージョンに思えるが、実際に手に持ってみると印象はかなり違う。音楽プレーヤーとして、携帯ゲーム機として、無線ネット端末として、より磨きがかかったといえるだろう。
新iPodの発売日は、9月2日の発表時点から数えて、iPod nanoとiPod shuffleは「来週中」、iPod touchは「来週以降」と発表され、iPod nanoとiPod shuffleは9月10日頃から、iPod touchは少し遅れて9月15日から店頭販売が始まった。予約受け付けは、発表と同時にスタートしている。
このように、今回は発表と同時に発売される方式ではなかったため、2010年9月第1週(8月6日-9月12日)の携帯オーディオプレーヤーのランキングは、在庫処分で価格が下がり、お買い得感が増したiPodの旧モデルと新モデルが入り混じる結果となった。
カラーバリエーションを合算したシリーズ別集計で1位を獲得したのは、2009年9月発売の第5世代iPod nanoの8GBモデル。2位は同16GBモデルで、3位から5位までは、ソニーのウォークマン「NW-S644」「NW-S644K」「NW-E042」が並んだ。
トップ10のうち、アップル製品に限ると、旧iPod nano(第5世代iPod nano)の8GBモデル、同16GBモデル、新iPod touch(第4世代iPod touch)の32GBモデル、旧iPod touch(第3世代iPod touch)の32GBモデル、新iPod nano(第6世代iPod nano)の8GBモデル、新iPod shuffleの順だった。新iPod touchは、発売前の予約分だけでトップ10入りしている。新モデルの中では、今のところ、一番の人気だ。
9月15日には、ソニーもウォークマンの新モデルを発表。人気のSシリーズには、全機種にiPodにはないデジタルノイズキャンセリング機能を組み込んだ。目新しさこそないものの、iPodとの違いをより明確にして、正統進化を果たした、といった感じだ。発売日は、Sシリーズ、Eシリーズが10月9日、Aシリーズが11月13日で、いずれも少し先になる。
果たして2010年9月は、アップルとソニー、どちらがトップに立つのか――。9月1日から20日までの途中集計では、アップルが46.9%、ソニーが45.9%で、アップルがわずかに上回っている。新製品の売れ行きとあわせ、両社のシェア争いに注目していきたい。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで129品目を対象としています。
9月に発表されたアップルの新しいiPod shuffle、iPod nano、iPod touch
2002年からおよそ8年、トップを走り続けたアップル
アップルは2002年8月から2010年7月まで96か月、およそ8年にわたって、携帯オーディオの月間メーカー別販売台数シェア1位を記録した。特に2005年9月以降は、常に40~50%台の高いシェアを保ち、期間中、最もシェアが高かった2008年10月に至っては61.9%と、圧倒的多数を占めていた。
しかし、2010年8月はソニーがシェア47.8%でトップに立ち、アップルは3.8ポイント差のシェア44.0%で2位に後退した。ソニーの1位獲得は、集計を開始した2001年11月以降、初めての快挙だ。
順位 | メーカー | ブランド名 | 税別平均単価 | 販売台数 シェア(%) |
1 | ソニー | ウォークマン | 11,644 | 47.8 |
2 | アップル | iPod | 17,170 | 44.0 |
3 | トランセンドジャパン | 4,239 | 2.2 | |
4 | マウスコンピューター | iriver | 5,533 | 1.2 |
5 | 日立リビングサプライ | 3,901 | 1.1 | |
6 | グリーンハウス | 1,196 | 0.9 | |
7 | COWON SYSTEMS | 21,460 | 0.7 | |
8 | ケンウッド | Media Keg | 7,765 | 0.6 |
9 | タイムリー | 2,223 | 0.6 | |
10 | クリエイティブメディア | 6,595 | 0.4 |
「BCNランキング」2010年8月 月次<最大パネル>
週次集計では、2010年8月第1週(2010年8月2日-8日)から8月最終週(8月30日-9月5日)まで、5週連続でソニーがトップを獲得。アップルが新モデルを発表する直前の8月第4週(8月23日-29日)には、ソニーが48.3%、アップルが42.9%と、その差は5.4ポイントまで開いた。しかし、9月第1週(9月6日-9月12日)はアップルが47.7%、ソニーが44.5%でアップルが再びトップに立ち、ソニーの週次集計での連続1位記録は5週で途切れた。
8月のソニーの躍進には、いくつか理由が考えられる。iPodと同じように音楽を再生できる同じアップル製のスマートフォン「iPhone」に需要が流れている、すでに携帯オーディオを欲しい人は手に入れて買い替えが進んでいない、若年層を中心にウォークマンが人気を得ている、国内メーカーの撤退が相次ぎ、“iPod以外”の選択肢が事実上ウォークマンしかない……。これらの要因が重なった結果といえるだろう。もちろん、アップルファンの新製品待ちの買い控えも確実に影響を与えている。
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ソニーは、携帯オーディオ全体の販売台数の2~3割程度を占める税別平均単価1万未満の低価格帯に強く、2010年1月以降は、40%~60%台後半の高いシェアを保っている。この価格帯ではダントツのトップだ。対してアップルは、このレンジには液晶モニタのないiPod shuffleしかラインアップしていないこともあって、シェアはわずか10%台にとどまっている。2010年8月に至っては、ソニーの68.6%に対し、アップルはわずか8.4%だった。
一方、税別平均単価1万円以上の価格帯ではアップルが優勢で、ソニーはまったく太刀打ちできていない。携帯オーディオ全体ではソニーが1位を獲得した2010年8月でも、アップルが60.3%、ソニーが38.3%、その他のメーカーが1.4%という結果だった。価格帯別でみると、改めて上位2社に人気が集中していることがわかる。
意外?! 売れている携帯オーディオ、2010年8月は前年同月比106%と好調
携帯オーディオ全体の2009年8月以降の月間販売台数の推移をみると、2009年12月・1月が飛び抜けて多く、それ以外の月はほぼ一定だ。年末年始は例年、AV機器や家電が年間で多く売れる時期であり、年間を通して堅調に推移しているとみていい。
販売台数の前年同月比は92%~108%の間で推移し、2010年8月は前年同月比106.3%と、比較的好調だった。iPhoneやXperiaなど、音楽・動画の再生を含め、パソコンのように1台でさまざまな用途で使えるスマートフォンが注目を集めるなか、根強い人気を保っているといえる。これまでiPodを買っていた層がiPhoneに流れ、携帯オーディオがまったく売れなくなっている、というわけではない。もちろん影響は皆無ではないが、むしろiPhoneで興味をもった人が、通話機能のないiPod touchに流れているようにもみえる。
アップルが待望の新モデル発表、新iPod touchは予約だけでトップ10入り
日本時間の2010年9月2日、アップルは新しいiPodファミリーを発表した。そのうち、フラッシュメモリタイプのiPod touch、iPod nano、iPod shuffleはフルモデルチェンジ。新iPod touchと新iPod shuffleは4世代目、新iPod nanoは6世代目に当たる。
最も大きく変わったのは、これまで一番人気だったiPod nano。詳細はこちら(「音楽・写真を指で操る! マルチタッチの新型「iPod nano」に触ってきた」「新iPod間もなく発売、ファーストインプレッション」)を参考にしていただきたいが、カメラや動画再生などの付加機能が減り、iPod shuffleに近くなった感じだ。しかし、価格は従来とほとんど変わらず、コストパフォーマンスが下がった感は否めない。今回のデザイン・仕様変更を残念に思ったネットユーザーからは、nanoからtouchに売れ筋を移行させるためでは、という憶測が飛び交った。
___page___
新しいiPod touchに対しても、今年6月発売のiPhone 4に比べ、カメラの画素数が低いなど、スペックダウンを惜しむ声が挙がっている。とはいえ、同じ容量のiPhone 4より安く、より薄く、軽いのがメリットだ。製品写真を見ると、iPhone 4の通話機能・GPSなしバージョンに思えるが、実際に手に持ってみると印象はかなり違う。音楽プレーヤーとして、携帯ゲーム機として、無線ネット端末として、より磨きがかかったといえるだろう。
iPod touchは、Wi-Fiネットワーク経由でビデオ通話できる「FaceTime」に対応。iPod nanoは新たにクリップを備え、服などに装着できるようになった
(写真は9月2日に開催されたプレスイベントで撮影したもの)
(写真は9月2日に開催されたプレスイベントで撮影したもの)
新iPodの発売日は、9月2日の発表時点から数えて、iPod nanoとiPod shuffleは「来週中」、iPod touchは「来週以降」と発表され、iPod nanoとiPod shuffleは9月10日頃から、iPod touchは少し遅れて9月15日から店頭販売が始まった。予約受け付けは、発表と同時にスタートしている。
このように、今回は発表と同時に発売される方式ではなかったため、2010年9月第1週(8月6日-9月12日)の携帯オーディオプレーヤーのランキングは、在庫処分で価格が下がり、お買い得感が増したiPodの旧モデルと新モデルが入り混じる結果となった。
順位 | メーカー | シリーズ名・型番 | 主なモデルの型番 | 容量 | 動画再生 | 発売時期 | 販売台数 シェア(%) |
1 | アップル | iPod nano 8GB(5th) | MC050J/A、MC031J/A | 8GB | 対応 | 2009/09 | 11.1 |
2 | アップル | iPod nano 16GB(5th) | MC075J/A、MC062J/A | 16GB | 対応 | 2009/09 | 8.9 |
3 | ソニー | NW-S644 | NW-S644(W)、NW-S644(P) | 8GB | 対応 | 2009/10 | 8.2 |
4 | ソニー | NW-S644K | NW-S644K(P) | 8GB | 対応 | 2009/10 | 6.2 |
5 | ソニー | NW-E042 | NW-E042(NB) | 2GB | 非対応 | 2009/05 | 5.3 |
6 | アップル | iPod touch 32GB(4th) | MC544J/A | 32GB | 対応 | 2010/09 | 5.0 |
7 | ソニー | NW-S744 | NW-S744(B) | 8GB | 対応 | 2009/10 | 4.0 |
8 | アップル | iPod touch 32GB(3rd) | MC008J/A | 32GB | 対応 | 2009/09 | 3.2 |
9 | アップル | iPod nano 8GB(6th) | MC692J/A | 8GB | 非対応 | 2010/09 | 3.1 |
10 | アップル | iPod shuffle 2GB | MC584J/A | 2GB | 非対応 | 2010/09 | 2.8 |
※同じ容量のカラーバリエーションは合算して集計
「BCNランキング」2010年9月第1週 週次<最大パネル>
「BCNランキング」2010年9月第1週 週次<最大パネル>
カラーバリエーションを合算したシリーズ別集計で1位を獲得したのは、2009年9月発売の第5世代iPod nanoの8GBモデル。2位は同16GBモデルで、3位から5位までは、ソニーのウォークマン「NW-S644」「NW-S644K」「NW-E042」が並んだ。
トップ10のうち、アップル製品に限ると、旧iPod nano(第5世代iPod nano)の8GBモデル、同16GBモデル、新iPod touch(第4世代iPod touch)の32GBモデル、旧iPod touch(第3世代iPod touch)の32GBモデル、新iPod nano(第6世代iPod nano)の8GBモデル、新iPod shuffleの順だった。新iPod touchは、発売前の予約分だけでトップ10入りしている。新モデルの中では、今のところ、一番の人気だ。
9月15日には、ソニーもウォークマンの新モデルを発表。人気のSシリーズには、全機種にiPodにはないデジタルノイズキャンセリング機能を組み込んだ。目新しさこそないものの、iPodとの違いをより明確にして、正統進化を果たした、といった感じだ。発売日は、Sシリーズ、Eシリーズが10月9日、Aシリーズが11月13日で、いずれも少し先になる。
10月9日発売予定のソニーのSシリーズ(NW-S750シリーズ)
果たして2010年9月は、アップルとソニー、どちらがトップに立つのか――。9月1日から20日までの途中集計では、アップルが46.9%、ソニーが45.9%で、アップルがわずかに上回っている。新製品の売れ行きとあわせ、両社のシェア争いに注目していきたい。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで129品目を対象としています。