1年ぶりにウォークマンがiPodを逆転、2週連続でソニーがトップ
アップルがソニーに再び敗れる――。「BCNランキング」の週次データによる、携帯オーディオプレーヤーのメーカー別販売台数シェアで、2010年8月第1週(2010年8月2日-8日)、ソニーがシェア46.7%でおよそ1年ぶりにトップを獲得。8月第2週もシェア48.1%で引き続きトップに立ち、2位のアップルとのシェアの差を3.3ポイントに広げている。
かつては国内外のメーカーがひしめきあい、量販店で大きな売り場を占めていた携帯オーディオプレーヤー。メーカー数は現在でも多いが、淘汰が進んで、事実上、「アップルのiPod」「ソニーのウォークマン」の二者択一となっている感がある。特にここ半年ほどは、この2社だけで携帯オーディオ全体の販売台数の9割を占め、残りの1割を十数社のメーカーが奪い合っている状態だ。
昨年の8月最終週(2009年8月24日-30日)、ソニーのメーカー別販売台数シェアがアップルを上回ったときは、新しいiPodを待つユーザーの“買い控え”が最大の要因と思われた。実際、2009年9月10日に第5世代iPod nanoをはじめとする新製品が発表されると、アップルが再びトップに立ち、以降、1位のアップルは40~60%台、2位のソニーはそれよりやや低い20~40%台のシェアを保っていた(詳しくは「iPodがウォークマンにシェアで敗れる、約4年8か月、242週ぶり」と「逆転劇その後、再びジリジリとシェア差が詰まる携帯オーディオ市場」を参照)。
アップルは、2009年9月第2週(2009年9月7日-13日)から2010年7月最終週(2010年7月25日-31日)まで、47週連続でメーカー別販売台数シェア1位を記録。その間、2010年5月第3週には、2位のソニーにわずか0.3ポイント差まで詰め寄られたが、逆転されることはなく、その後は再び差を広げていた(詳しくは「携帯オーディオのメーカー別シェア、アップルとソニーが45%台で並ぶ」を参照)。
しかし、7月半ばから再び上位2社のシェアが接近。8月第1週(2010年8月2日-8日)、翌8月第2週(8月9日-15日)は、アップルが2位に後退し、代わってソニーが1位を獲得した。両社のシェアの差は、8月第1週の時点ではソニーが46.7%、アップルが45.7%でわずか1.0ポイントだったが、8月第2週になると、ソニーが48.1%、アップルが44.7%と、3.3ポイントに拡大した。
今年も、昨年と同じ時期に新しいiPodが発表されるのでは? と噂されている。アップルファンや業界に詳しい人なら、「今は買い時ではない」と判断するだろう。今回の逆転劇も、昨年同様、こうした情報通の“買い控え”が要因の一つだと思われる。とはいえ、iPodの販売台数は、週によって多少の増減はあるものの、今年4月頃から徐々に減少しており、7・8月に入って急に落ち込んだわけではない。8月第2週に限れば、夏休み効果で通常より販売台数自体は多く、その積み上げ分がiPodよりウォークマンのほうが多く、2位に甘んじることになった。
週次集計では、昨年と今年の計2回、アップルはソニーに逆転を許しているが、月次集計では、過去3年以上、1位を獲得し続けている。しかし、8月1日から15日までの途中集計では、ソニーがシェア47.6%で1位、アップルが45.1%で2位と、順位が逆転。残り半月の結果によっては、月次集計でもソニーがトップに立つかもしれない。
今年4月以降のメーカー別販売台数シェアの推移をみると、ソニーのシェアは4月は43.3%から、5月は44.6%、6月は42.7%、7月は45.2%と、わずかながら上昇傾向にある。一方、アップルは40%台後半でほとんど変化がない。こうした数値の動きから、ソニーがアップルのシェアを奪っているわけではなく、その他のメーカーのシェアを奪い、躍進している構図が浮かび上がる。
ちなみに、カラーバリエーションを合算して集計した2010年8月第2週の携帯オーディオのシリーズ別ランキングでは、アップルの第5世代iPod nano 8GBモデル、同16GBモデルに続き、ソニーの「NW-E042」が3位、「NW-S644」が4位、「NW-S644K」が5位にランクインした。第5世代iPod nanoが2モデル合わせてシェア29.1%と、ダントツの人気を誇るものの、ソニーのウォークマンも上位に食い込んでいる。
1位のiPod nano 8GBモデルのアップルストア価格は1万4800円。対して、同じ8GBのソニーの「NW-S644」の税別平均単価は9935円、税込でも1万1100円程度と若干安い。音質やデザイン、独自の機能に加え、この価格差が大きな魅力になっているようだ。
iPodで知名度を上げたアップルは、2008年7月、「iPhone 3G」を引っさげて日本の携帯電話市場に参入。いまや「iPhoneのアップル」というイメージが強い。以前の記事を読んだ読者の方から、iPhoneを含まない携帯オーディオのシェアだけを語るのは意味がない、といったご意見をいただいたが、それでもiPodが売れ続け、いまだにアップルが5割近いシェアを保っていることは紛れもない事実だ。また、ソニーがアップルに並び、時には追い越すまでに成長したことは、やはりトレンドの変化の一つといえるだろう。今後も引き続き、携帯オーディオ市場の動向に注目していきたい。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで129品目を対象としています。
“iPodの買い控え”だけでは説明つかない今年のシェア逆転劇
かつては国内外のメーカーがひしめきあい、量販店で大きな売り場を占めていた携帯オーディオプレーヤー。メーカー数は現在でも多いが、淘汰が進んで、事実上、「アップルのiPod」「ソニーのウォークマン」の二者択一となっている感がある。特にここ半年ほどは、この2社だけで携帯オーディオ全体の販売台数の9割を占め、残りの1割を十数社のメーカーが奪い合っている状態だ。
昨年の8月最終週(2009年8月24日-30日)、ソニーのメーカー別販売台数シェアがアップルを上回ったときは、新しいiPodを待つユーザーの“買い控え”が最大の要因と思われた。実際、2009年9月10日に第5世代iPod nanoをはじめとする新製品が発表されると、アップルが再びトップに立ち、以降、1位のアップルは40~60%台、2位のソニーはそれよりやや低い20~40%台のシェアを保っていた(詳しくは「iPodがウォークマンにシェアで敗れる、約4年8か月、242週ぶり」と「逆転劇その後、再びジリジリとシェア差が詰まる携帯オーディオ市場」を参照)。
アップルは、2009年9月第2週(2009年9月7日-13日)から2010年7月最終週(2010年7月25日-31日)まで、47週連続でメーカー別販売台数シェア1位を記録。その間、2010年5月第3週には、2位のソニーにわずか0.3ポイント差まで詰め寄られたが、逆転されることはなく、その後は再び差を広げていた(詳しくは「携帯オーディオのメーカー別シェア、アップルとソニーが45%台で並ぶ」を参照)。
しかし、7月半ばから再び上位2社のシェアが接近。8月第1週(2010年8月2日-8日)、翌8月第2週(8月9日-15日)は、アップルが2位に後退し、代わってソニーが1位を獲得した。両社のシェアの差は、8月第1週の時点ではソニーが46.7%、アップルが45.7%でわずか1.0ポイントだったが、8月第2週になると、ソニーが48.1%、アップルが44.7%と、3.3ポイントに拡大した。
今年も、昨年と同じ時期に新しいiPodが発表されるのでは? と噂されている。アップルファンや業界に詳しい人なら、「今は買い時ではない」と判断するだろう。今回の逆転劇も、昨年同様、こうした情報通の“買い控え”が要因の一つだと思われる。とはいえ、iPodの販売台数は、週によって多少の増減はあるものの、今年4月頃から徐々に減少しており、7・8月に入って急に落ち込んだわけではない。8月第2週に限れば、夏休み効果で通常より販売台数自体は多く、その積み上げ分がiPodよりウォークマンのほうが多く、2位に甘んじることになった。
ソニーが8月の月間トップに立つ可能性も
週次集計では、昨年と今年の計2回、アップルはソニーに逆転を許しているが、月次集計では、過去3年以上、1位を獲得し続けている。しかし、8月1日から15日までの途中集計では、ソニーがシェア47.6%で1位、アップルが45.1%で2位と、順位が逆転。残り半月の結果によっては、月次集計でもソニーがトップに立つかもしれない。
今年4月以降のメーカー別販売台数シェアの推移をみると、ソニーのシェアは4月は43.3%から、5月は44.6%、6月は42.7%、7月は45.2%と、わずかながら上昇傾向にある。一方、アップルは40%台後半でほとんど変化がない。こうした数値の動きから、ソニーがアップルのシェアを奪っているわけではなく、その他のメーカーのシェアを奪い、躍進している構図が浮かび上がる。
ちなみに、カラーバリエーションを合算して集計した2010年8月第2週の携帯オーディオのシリーズ別ランキングでは、アップルの第5世代iPod nano 8GBモデル、同16GBモデルに続き、ソニーの「NW-E042」が3位、「NW-S644」が4位、「NW-S644K」が5位にランクインした。第5世代iPod nanoが2モデル合わせてシェア29.1%と、ダントツの人気を誇るものの、ソニーのウォークマンも上位に食い込んでいる。
順位 | メーカー | シリーズ名・型番 | 主なモデルの型番 | 容量 | 動画再生 | 販売台数 シェア(%) |
1 | アップル | iPod nano 8GB(5th) | MC050J/A、MC031J/A | 8GB | 対応 | 17.4 |
2 | アップル | iPod nano 16GB(5th) | MC075J/A、MC062J/A | 16GB | 対応 | 11.8 |
3 | ソニー | NW-E042 | NW-E042(NB) | 2GB | 非対応 | 8.5 |
4 | ソニー | NW-S644 | NW-S644(W)、NW-S644(P) | 8GB | 対応 | 7.7 |
5 | ソニー | NW-S644K | NW-S644K(P) | 8GB | 対応 | 5.8 |
※同じ容量のカラーバリエーションは合算して集計
「BCNランキング」2010年8月第2週 週次<最大パネル>
「BCNランキング」2010年8月第2週 週次<最大パネル>
1位のiPod nano 8GBモデルのアップルストア価格は1万4800円。対して、同じ8GBのソニーの「NW-S644」の税別平均単価は9935円、税込でも1万1100円程度と若干安い。音質やデザイン、独自の機能に加え、この価格差が大きな魅力になっているようだ。
ソニーのウォークマンSシリーズ「NW-S644(W)」と、アップルの第5世代iPod nano
iPodで知名度を上げたアップルは、2008年7月、「iPhone 3G」を引っさげて日本の携帯電話市場に参入。いまや「iPhoneのアップル」というイメージが強い。以前の記事を読んだ読者の方から、iPhoneを含まない携帯オーディオのシェアだけを語るのは意味がない、といったご意見をいただいたが、それでもiPodが売れ続け、いまだにアップルが5割近いシェアを保っていることは紛れもない事実だ。また、ソニーがアップルに並び、時には追い越すまでに成長したことは、やはりトレンドの変化の一つといえるだろう。今後も引き続き、携帯オーディオ市場の動向に注目していきたい。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで129品目を対象としています。