BCN、3Dテレビの影響はまだ微小、薄型テレビは1年半ぶりに金額前年割れ

特集

2010/06/10 15:52

 BCNは、6月9日、3D対応テレビやiPadが市場に与えるインパクトをテーマに記者発表会を行った。全国の家電量販店から薄型テレビやPCなどのデジタル家電の実売データを集計した「BCNランキング」で、市況を分析したもの。

5月の薄型テレビは販売金額で前年を下回る



 液晶とプラズマを合算した薄型テレビは、2008年12月以来、約1年半ぶりに販売金額が前年割れに転じ、2010年5月は前年同月比で94%だった。3月に家電エコポイント制度の変更による駆け込み特需で販売台数255.9%、販売金額で208.8%と大きな成長みせたが、その反動が生じた。タイプ別では、液晶が94.7%と市場をほぼ占有している。


 画面サイズの特徴として、20型台と20型未満を合わせた小型テレビの需要が高まってきている。リビングに置くメインの大型テレビのデジタル移行はある程度進んでおり、今度は個室や子ども部屋などのいわゆる「2台目テレビ」のデジタル化需要だ。

 ボリュームゾーンだった30型台の構成比は縮小傾向。30型台は1年前の09年5月は販売台数40.1%だったが、10年5月は35.8%に減少。「小型テレビ」と40台型以上の「大型テレビ」という二極化の兆しがみえている。


 薄型テレビのトレンドの一つに、省電力化がある。ここ1年の平均消費電力は、09年5月の147Wから、10年5月の111.4Wまで下がった。また、消費電力の抑制に寄与するLEDバックライト(液晶テレビ)は構成比を拡大しており、バックライトのタイプ別では5月で25.4%に達した。一方、主流の冷陰極蛍光ランプ(CCFL)は減少傾向にあり、同月74.5%だった。LED対応モデルは今後ますます増えていくと予想される。

「録画テレビ」はおよそ2割、レコーダーは前年比2桁増で好調



 内蔵HDD、BDレコーダー、カセット型HDD「iVDR」スロットのいずれかを備える「録画機能付きテレビ」は、一定の人気を集めている。薄型テレビ全体における販売台数の構成比は、5月で19.6%だった。とりわけ外付けHDDを増設できる端子をもつモデルが急成長している。録画テレビのタイプ別の内訳をみると、HDD増設対応モデルは09年5月の9.9%から、10年5月には41%と、過半数に近づく勢いだ。


 録画テレビは、これまで主流サイズの30型台や40型台といった大型モデルが中心だったが、最近の傾向として、20型台や20型未満の小型モデルにも浸透してきている。新生活需要で小型モデルが売れる3月の構成比をみると、20型台と20型未満を合算して販売台数の30.7%を占めた。


 レコーダーは、販売台数・金額とも8か月連続で2桁増と好調に推移している。5月は販売台数119.4%、販売金額106.3%だった。レコーダーの種類別では、BDレコーダーとその他レコーダーの割合はほぼ固定するようになり、BDレコーダーは7-8割に落ち着いてきた。

3Dテレビ、市場全体への影響はまだわずか



 4月23日に発売したパナソニック「3D VIERA」を皮切りに、ソニー「3D BRAVIA」やシャープ「AQUOS クアトロン 3D」が間もなく登場する話題の3Dテレビ。現時点では製品数が少なく、薄型テレビ市場への影響はまだごくわずかだ。

 市場全体における構成比は、5月最終週(5月31日-6月6日)で販売台数0.9%、販売金額3%。パナソニックが現在発売しているモデルの画面サイズは50型台以上だが、シャープやソニーが売れ筋の40型台を投入したことで急拡大した。一方、3D対応レコーダーも3Dテレビと同様、現在はパナソニックが発売している3機種しか市場に存在しないので、市場全体の構成比はそれほど大きくない。5月は販売台数1.3%だった。

3Dテレビの台数・金額構成比(左)とサイズ別台数構成比(右)


 現在、3Dはテレビやレコーダーのほか、PCやPCソフト、コンパクトデジタルカメラなど、さまざまな機器に対応モデルが出始めている。こうした3D市場が今後の拡大は、プラットフォームとして機能するテレビの躍進にかかっている。少なくとも市場全体の販売台数構成比で2-3割、可能であれば5割は必要と推察される。


 ただ、メガネの装着が必要な点や、長時間の視聴による健康問題、コンテンツ数がどの程度の広がりをみせるかなど、懸念点がないわけではない。さらに、製品を投入するタイミングや価格設定など、販売面の課題もある。メガネなしの裸眼でコンテンツが視聴できるようになれば、普及は期待できそうだ。


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで128品目を対象としています。