携帯オーディオのメーカー別シェア、アップルとソニーが45%台で並ぶ
大量の音楽データを内蔵メモリやHDDに保存し、いつでもどこでも好きなときに好きな曲を聴くことができる「携帯オーディオプレーヤー」。メーカーの淘汰が進み、「iPodのアップル」と「ウォークマンのソニー」の2強がつばぜり合いを繰り広げる様相を呈してきた。「BCNランキング」によると、2010年5月第3週(2010年5月17日-23日)の携帯オーディオのメーカー別販売台数シェアはアップルが45.4%、ソニーが45.1%と、この2社だけで全体の約9割を占めた。両社の差は、シェアにしてわずか0.3ポイント。期間中の販売台数は、ほぼ同水準だった。
携帯オーディオプレーヤーは、音楽CDをパソコンなどに取り込んでデジタル化することから「デジタルオーディオプレーヤー」、また当初は主にMP3形式のファイルが使われていたことから「MP3プレーヤー」とも呼ばれる。「BCNランキング」のデータで携帯オーディオのメーカー別販売台数シェアの推移をみると、モデルチェンジや新モデル投入のたびに注目を集めるアップルを、「ウォークマン」の名で携帯型プレーヤーを製品化し、いつでもどこでも音楽を聴くスタイルを創出したソニーが追う、という構図が続いていた。
週次集計では、2005年1月第2週から2009年8月第4週まで、約4年8か月にわたってアップルが1位の座を守ってきた。しかし、2009年8月最終週(2009年8月24日-30日)、0.9ポイントの僅差ながらソニーがアップルを逆転し、翌週の9月第1週(8月31日-9月6日)の2週に渡って1位を獲得した。(詳しくは「iPodがウォークマンにシェアで敗れる、約4年8か月、242週ぶり」を参照)。
9月第2週(9月7日-13日)には、新製品を発売したアップルが再度トップに立ち、以降、2010年5月第3週まで37週連続でアップルが1位を獲得している。だが、今年3月半ばからアップルのシェアは徐々に落ち、代わりにソニーのシェアが上昇。2社以外のメーカーのシェアは7%~10%程度で推移しており、数字の上ではソニーがアップルのシェアを奪っている格好だ。
月次集計では、過去3年間、一度も他社に逆転されることなく、アップルが1位を獲得し続けているが、2009年9月から2010年3月まで5割を超えていたシェアは、直近の4月は48.7%と、5割を割り込んだ。一方、ソニーのシェアは、2010年1月の41.5%から翌2月は37.5%にダウンしたものの、3月は40.4%、そして4月は43.3%と上昇傾向にある。5月1日から24日までの途中集計では、アップルが46.1%、ソニーが44.6%。前月よりその差は縮まっている。
昨年夏の週次集計でのソニー逆転の要因は、iPodがモデルチェンジ直前で、一時的に買い控えが起こったから、という見方が強かった。しかし今回は、モデルチェンジは無関係。同じ理由では説明がつかない。0.3ポイント差で辛うじてアップルがトップの座を守り、逆転までは至っていないが、ここまで両社のシェアが接近した理由は何だろうか?
考えられる要因のひとつは、Amazon.co.jpと直販サイト「Apple Store」以外のインターネット通販サイトで、4月23日以降、アップル製品の取り扱いが中止されていること。単価が安く、ネット通販で買いやすかった「iPod」には、販売経路の縮小が若干影響したのではないかと考えられる。
さらに、いよいよ5月28日に発売となる「iPad」や、依然として人気を保ち続けている「iPhone」など、アップルの他カテゴリの製品の存在だ。昨年9月のモデルチェンジ以降、iPodに関する目新しい話題はなく、「アップルといえばiPhone」というイメージが強くなっている。アップルファンならば、古くなった手持ちのiPodの買い替え時に、新しいiPod nanoやiPod touchと並んで、音楽再生機能を備えた携帯電話の「iPhone」も候補に入ってくるだろう。
携帯オーディオ全体の販売台数は週によって上下しているが、おおむね季節変動の範囲内と考えられるレベル。携帯オーディオの販売台数が急激に落ち込み、携帯電話にニーズが移っているわけではない。とはいえ、アップル製品の場合、機能やデザイン、使い勝手が似通っているだけに、やはり少なからず影響はあると思われる。
単純に、ソニーのウォークマンが売れただけ、ともいえる。同じ容量のカラーバリエーションを合算して集計した5月第3週の携帯オーディオのシリーズ別ランキングをみると、3位の「NW-S644」を筆頭に、上位10位以内にソニー製品は5モデルがランクイン。なかでも、音楽に合わせて歌詞を自動スクロール表示する歌詞表示機能「歌詞ピタ」を搭載した「ウォークマン Sシリーズ」が人気を得ている。アップルからも同じく5モデルがトップ10にランクインしており、一番人気はiPod nanoの8GBモデル、次は16GBモデルだった。
携帯オーディオや携帯ゲーム機、携帯電話など、特定の機能・役割に特化した「専用機」を複数持ち歩くのも、スマートフォンやノートパソコンのように、オールインワンの「汎用機」1台を持ち歩くのも、個人の好み次第。ただ、基本的に、音楽・写真・動画の再生が中心の「携帯オーディオ」を新たに買い求める層には、シェアの変動が示すように、ソニーのウォークマンの人気が高まっているようだ。ここにきて、以前のiPod一辺倒から、少し風向きが変わってきた、といえるだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで127品目を対象としています。
アップルのiPodファミリー
(左からiPod touch、iPod classic、iPod nano、iPod shuffleの現行モデル)
(左からiPod touch、iPod classic、iPod nano、iPod shuffleの現行モデル)
携帯オーディオプレーヤーは、音楽CDをパソコンなどに取り込んでデジタル化することから「デジタルオーディオプレーヤー」、また当初は主にMP3形式のファイルが使われていたことから「MP3プレーヤー」とも呼ばれる。「BCNランキング」のデータで携帯オーディオのメーカー別販売台数シェアの推移をみると、モデルチェンジや新モデル投入のたびに注目を集めるアップルを、「ウォークマン」の名で携帯型プレーヤーを製品化し、いつでもどこでも音楽を聴くスタイルを創出したソニーが追う、という構図が続いていた。
ソニーのウォークマン
(左からSシリーズのNW-S644(W)、NW-S644K(P)、EシリーズのNW-E042)
(左からSシリーズのNW-S644(W)、NW-S644K(P)、EシリーズのNW-E042)
週次集計では、2005年1月第2週から2009年8月第4週まで、約4年8か月にわたってアップルが1位の座を守ってきた。しかし、2009年8月最終週(2009年8月24日-30日)、0.9ポイントの僅差ながらソニーがアップルを逆転し、翌週の9月第1週(8月31日-9月6日)の2週に渡って1位を獲得した。(詳しくは「iPodがウォークマンにシェアで敗れる、約4年8か月、242週ぶり」を参照)。
9月第2週(9月7日-13日)には、新製品を発売したアップルが再度トップに立ち、以降、2010年5月第3週まで37週連続でアップルが1位を獲得している。だが、今年3月半ばからアップルのシェアは徐々に落ち、代わりにソニーのシェアが上昇。2社以外のメーカーのシェアは7%~10%程度で推移しており、数字の上ではソニーがアップルのシェアを奪っている格好だ。
月次集計では、過去3年間、一度も他社に逆転されることなく、アップルが1位を獲得し続けているが、2009年9月から2010年3月まで5割を超えていたシェアは、直近の4月は48.7%と、5割を割り込んだ。一方、ソニーのシェアは、2010年1月の41.5%から翌2月は37.5%にダウンしたものの、3月は40.4%、そして4月は43.3%と上昇傾向にある。5月1日から24日までの途中集計では、アップルが46.1%、ソニーが44.6%。前月よりその差は縮まっている。
昨年夏の週次集計でのソニー逆転の要因は、iPodがモデルチェンジ直前で、一時的に買い控えが起こったから、という見方が強かった。しかし今回は、モデルチェンジは無関係。同じ理由では説明がつかない。0.3ポイント差で辛うじてアップルがトップの座を守り、逆転までは至っていないが、ここまで両社のシェアが接近した理由は何だろうか?
考えられる要因のひとつは、Amazon.co.jpと直販サイト「Apple Store」以外のインターネット通販サイトで、4月23日以降、アップル製品の取り扱いが中止されていること。単価が安く、ネット通販で買いやすかった「iPod」には、販売経路の縮小が若干影響したのではないかと考えられる。
さらに、いよいよ5月28日に発売となる「iPad」や、依然として人気を保ち続けている「iPhone」など、アップルの他カテゴリの製品の存在だ。昨年9月のモデルチェンジ以降、iPodに関する目新しい話題はなく、「アップルといえばiPhone」というイメージが強くなっている。アップルファンならば、古くなった手持ちのiPodの買い替え時に、新しいiPod nanoやiPod touchと並んで、音楽再生機能を備えた携帯電話の「iPhone」も候補に入ってくるだろう。
携帯オーディオ全体の販売台数は週によって上下しているが、おおむね季節変動の範囲内と考えられるレベル。携帯オーディオの販売台数が急激に落ち込み、携帯電話にニーズが移っているわけではない。とはいえ、アップル製品の場合、機能やデザイン、使い勝手が似通っているだけに、やはり少なからず影響はあると思われる。
単純に、ソニーのウォークマンが売れただけ、ともいえる。同じ容量のカラーバリエーションを合算して集計した5月第3週の携帯オーディオのシリーズ別ランキングをみると、3位の「NW-S644」を筆頭に、上位10位以内にソニー製品は5モデルがランクイン。なかでも、音楽に合わせて歌詞を自動スクロール表示する歌詞表示機能「歌詞ピタ」を搭載した「ウォークマン Sシリーズ」が人気を得ている。アップルからも同じく5モデルがトップ10にランクインしており、一番人気はiPod nanoの8GBモデル、次は16GBモデルだった。
順位 | メーカー | シリーズ名・型番 | 主なモデルの型番 | 容量 | 動画 再生 | 販売 台数 シェア(%) |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | アップル | iPod nano 8GB(5th) | MC050J/A、MC031J/A | 8GB | 対応 | 16.4 |
2 | アップル | iPod nano 16GB(5th) | MC075J/A、MC062J/A | 16GB | 対応 | 11.5 |
3 | ソニー | NW-S644 | NW-S644(W) | 8GB | 対応 | 7.6 |
4 | ソニー | NW-E042 | NW-E042(NB) | 2GB | 非対応 | 7.2 |
5 | アップル | iPod touch 32GB(3rd) | MC008J/A | 32GB | 対応 | 5.7 |
6 | ソニー | NW-S644K | NW-S644K(P) | 8GB | 対応 | 4.9 |
7 | アップル | iPod touch 8GB(3rd) | MC086J/A | 8GB | 対応 | 4.2 |
8 | ソニー | NW-S744 | NW-S744(B) | 8GB | 対応 | 3.0 |
9 | アップル | iPod classic 160GB(2nd) | MC297J/A、MC293J/A | 160GB(HDD) | 対応 | 2.6 |
10 | ソニー | NW-S744K | NW-S744K(V) | 8GB | 対応 | 2.6 |
※同じ容量のカラーバリエーションは合算して集計
「BCNランキング」2010年5月第3週 週次<最大パネル>
「BCNランキング」2010年5月第3週 週次<最大パネル>
携帯オーディオや携帯ゲーム機、携帯電話など、特定の機能・役割に特化した「専用機」を複数持ち歩くのも、スマートフォンやノートパソコンのように、オールインワンの「汎用機」1台を持ち歩くのも、個人の好み次第。ただ、基本的に、音楽・写真・動画の再生が中心の「携帯オーディオ」を新たに買い求める層には、シェアの変動が示すように、ソニーのウォークマンの人気が高まっているようだ。ここにきて、以前のiPod一辺倒から、少し風向きが変わってきた、といえるだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで127品目を対象としています。