ラジオの時代、再来? ポータブル機で予約録音した番組を聴いた
2010年2月、インターネットでFM・AMラジオのサイマル放送が聴ける「radiko(ラジコ)」が試験的に一部地域でスタートした。このほか、ラジオ機能付きのICレコーダーの製品数が増えているなど、いま改めてラジオに注目が集まっている。また、春はNHKの語学講座が開まる時期。外国語を学習する人にとって、ラジオを聴き始めるにはいいタイミングだ。そこで、オリンパスイメージングが1月に発売した携帯型ラジオサーバー「PJ-10」を通して、最新のポータブルラジオの実力を確かめた。
「PJ-10」は、ラジオ番組を予約録音して本体に保存できることから、「ラジオサーバー」という名前が付いている。同社はラジオサーバーとして07年3月に、容量37GBのHDDを内蔵する据置型の「VJ-10」を発売。「PJ-10」はその機能を継承しつつ、サイズをコンパクトにして持ち運びできるようにしたモデルだ。番組は容量2GBの内蔵メモリに保存する。ICレコーダーとしても使うことができる。
「PJ-10」の最大の利点は、ラジオ本体に加え、ラジオの感度を高めるための専用クレードル「アンテナステーション」を付属すること。このアンテナステーション、受信や予約録音のときはコンセントから本体に給電できる。ポータブルラジオとしてだけでなく、据置型として自宅で使えるのはうれしい。
ラジオサーバーの従来機は据置型なので、保存したファイルを取り出すには、ICレコーダーなどにデータを転送しなければならなかった。しかし、「PJ-10」は予約録音した番組を本体だけで外出先などに持ち運ぶことができ、どこでもラジオが楽しめる。
まずは、ボタンの操作性をチェックする。「録音」「再生」「音量調節」など、電源以外の基本操作をするボタンがすべて前面にあるのは、親指一本で押せるので使いやすい。ちょうど、ひとまわり大きな携帯電話を触っているような感覚だ。また、一般的なICレコーダーと比べるとボタンと液晶画面が大きく、見やすい。主要な操作では、一度も取扱説明書を開くことなく、迷わず目的の機能にたどり着くことができた。
「戻る」ボタンは前面の左下にあるが、このボタンは頻繁に使うため、この位置だと片手で押すのが難しい。もう少し中央寄りの別の場所にあったほうがよいと感じた。電源は単4形乾電池2本。電池がなくなったらすぐに乾電池を交換できるので、充電池よりも使いやすい。電池を含む重さは95gで、手で持ったところ、見た目のサイズほど重くない。背面には出力210mWのスピーカーを備える。
操作する前の「PJ-10」の第一印象は、正直なところ、あまりよくなかった。外観から、ICレコーダーのような事務機器を連想してしまったからだ。ただ、実際に使用したところ、想像以上に使いやすかった。
通勤時の電車の中でFM・AMラジオを聴いたが、手持ちのラジオ機能付きICレコーダーよりは受信感度がよいように感じた。ただし、言うまでもなく、ラジオは近くに電子機器や建物があることで受信状況は大きく変わってくる。あくまでも個人の感想として、参考程度に留めてほしい。
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従来モデルと比べた「PJ-10」の特徴はすでに述べた通り。そこで、今度は一般的なポータブルラジオと比較した便利な点を挙げよう。そのメリットは、アンテナステーションが付属することだ。
毎日使うときに役立つと感じたのは、部屋のコンセントから本体に給電しながら番組の予約録音ができること。筆者の手持ちのラジオ機能付きICレコーダーは、こうしたクレードルは付属していないので、予約録音することで電池の減りが早かった。しかし、アンテナステーションに差しておけば、長時間録音するときでも、電池の残量を心配しなくてもいいのだ。
FMは、付属のアンテナをつなげば聴くことができる。一方、AMについては、付属のループアンテナをつなげば、受信感度が向上する。アンテナステーションに関して改善してほしい点を挙げるとすれば、AMアンテナを接続するケーブルとコネクタ部。AMアンテナをアンテナステーションにつなぐには、むき出しになっているケーブルの端の金属部分を、クリップ状のコネクタに挟む。この接続方法だと、ケーブルの内部がビニールで保護されずにむき出しになっているので、不安になった。一般的なジャック形状になっているほうが使いやすい。また、据置型ラジオとして使うなら、アンテナステーションにスピーカーを搭載しているほうが高音質で楽しめるので、次期モデルでは期待したい。
なお、電源ケーブルだけ接続するにはそれほど気にならない配線だが、前述のFM、AMアンテナをつなぐには、当然それぞれケーブルが必要。背面はケーブルだらけになるので、部屋に置くとき、この点はあらかじめ理解しておこう。
自宅でアンテナステーションの威力を試したが、本体単体でイヤホンで聴いている状態と比べて、明らかにわかるほどの受信感度の向上を確認することはできなかった。そもそも、前提として、アンテナステーションを部屋のどこに置くかによってラジオの感度は変わってくるので、コンセントが届く範囲で最もよい設置場所を見つけるのが重要だろう。
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肝心の、ラジオのリスニングのしやすさについてはどうだろうか。ラジオ番組を聴くには、液晶画面の左下にあるモードボタンを押して、「FM」「AM」「テレビ」「プレーヤー」の四つから選択する。「プレーヤー」とは、予約録音した番組や、PC経由で内蔵メモリに保存した音楽などのファイルを再生するときに使うモードだ。
FM・AM放送局を変更したい場合は、液晶画面の下の中央にあるリストボタンを使う。放送局と周波数を一覧で表示するので、迷うことなく聴きたい放送局を選択できる。放送局名が長い場合は、件名がスクロールする。もちろん、手動で周波数を調節することもできる。受信中に、前面にある左右の矢印ボタンを操作する。FM・AMともに、画面上で目盛り付きの周波数表示があるので、いまどの放送局を受信しているのかひと目でわかる。
いくつかの番組を予約録音して聴いた。FMは、ほかの作業をしながら聴ける番組として、NHK・FMの「クラシックカフェ」、J-WAVEの「JAM The World」「DOCOMO Making Sense」。AMは、NHK語学講座で「ラジオ英会話」「英語5分間トレーニング」「実践ビジネス英語」を選んだ。
最も感動したのは、「FM」「AM」など録音したコンテンツの種類によって、自動でフォルダを振り分けてくれること。デフォルトで振り分けるようになっているので、録音後はすぐに聴きたい番組を探すことができる。
希望するファイルを見つけるための検索機能が豊富なのもいい。「フォルダ」「カレンダー」「放送局」「最近再生/録音」「未再生」といった複数の方法から選べる。それぞれ使ったところ、ファイルを作成した日付で探せる「カレンダー」と、過去に録音した放送局から選ぶ「放送局」検索が便利だと感じた。
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ここで、ファイル再生時に役立つ機能を紹介しよう。聴きたい場所から再生できる「インデックス機能」は、早送り・早戻しの時にどこで頭出しすればよいかわかるというもの。例えば、語学講座で、講師の解説を飛ばしてネイティブによるスピーチから聴く、といったときに使える。
このインデックスの場所は、その箇所にくると「インデックス記録位置」という文字を点滅して表示する。ただ、これだけだと、ファイル全体のどのあたりにインデックスを付けたのかがわからない。リスニング画面のタイムライン上に旗を立てるなど、ひと目でわかる印がほしいと思った。
ファイルの再生を一度停止した後、次に同じ場所から再生する「しおり機能」も同じく、タイムライン上に視覚的な印があるといい。このほか、外国語の発音確認に便利な「部分リピート」は、どの部分を繰り返し聴くか手動で指定できるので使いやすかった。また、その再生速度を設定する「早聞き・遅聞き」では、倍速「1.5」「2.0」など等倍を含めて五つあるスピードからそれぞれ選べるので、好みの速さに指定できる。
今回は、FM・AM合わせて1日6番組を予約録音・試聴したが、前述のような充実したラジオ機能は、毎日語学講座を聴く人や、たくさんの番組を聴いている人など、頻繁にラジオを聴くユーザーはかなり役立つことだろう。ちなみに、筆者は語学講座をときどき聴くが、例えば英語なら、難易度の異なる複数の会話番組やニュースなど、いくつかの番組を並行して録り溜められるほか、リピート機能が便利だったので、語学学習に向いていると感じた。
「PJ-10」だけでなく、三洋電機が4月21日に発売する「ICR-XRS120MF」など、ICレコーダーは、FM・AMラジオチューナーを搭載するモデルが増え、製品数が豊富になってきた。予約録音などの便利機能が付いたモデルなら、音楽やニュース、娯楽番組など、毎日聴くヘビーリスナーから、語学講座をこれから始めるライトリスナーまで、使い勝手で納得する一台がきっと見つかるはずだ。(BCN・井上真希子)
番組を録り溜める「ラジオサーバー」携帯版
「PJ-10」は、ラジオ番組を予約録音して本体に保存できることから、「ラジオサーバー」という名前が付いている。同社はラジオサーバーとして07年3月に、容量37GBのHDDを内蔵する据置型の「VJ-10」を発売。「PJ-10」はその機能を継承しつつ、サイズをコンパクトにして持ち運びできるようにしたモデルだ。番組は容量2GBの内蔵メモリに保存する。ICレコーダーとしても使うことができる。
春はNHKの語学講座がAMラジオでスタートする季節
「PJ-10」の最大の利点は、ラジオ本体に加え、ラジオの感度を高めるための専用クレードル「アンテナステーション」を付属すること。このアンテナステーション、受信や予約録音のときはコンセントから本体に給電できる。ポータブルラジオとしてだけでなく、据置型として自宅で使えるのはうれしい。
ラジオサーバーの従来機は据置型なので、保存したファイルを取り出すには、ICレコーダーなどにデータを転送しなければならなかった。しかし、「PJ-10」は予約録音した番組を本体だけで外出先などに持ち運ぶことができ、どこでもラジオが楽しめる。
PJ-10
まずは、ボタンの操作性をチェックする。「録音」「再生」「音量調節」など、電源以外の基本操作をするボタンがすべて前面にあるのは、親指一本で押せるので使いやすい。ちょうど、ひとまわり大きな携帯電話を触っているような感覚だ。また、一般的なICレコーダーと比べるとボタンと液晶画面が大きく、見やすい。主要な操作では、一度も取扱説明書を開くことなく、迷わず目的の機能にたどり着くことができた。
ボタンは前面に配置する
「戻る」ボタンは前面の左下にあるが、このボタンは頻繁に使うため、この位置だと片手で押すのが難しい。もう少し中央寄りの別の場所にあったほうがよいと感じた。電源は単4形乾電池2本。電池がなくなったらすぐに乾電池を交換できるので、充電池よりも使いやすい。電池を含む重さは95gで、手で持ったところ、見た目のサイズほど重くない。背面には出力210mWのスピーカーを備える。
操作する前の「PJ-10」の第一印象は、正直なところ、あまりよくなかった。外観から、ICレコーダーのような事務機器を連想してしまったからだ。ただ、実際に使用したところ、想像以上に使いやすかった。
側面にはスライド式の電源ボタン、上面にはUSB端子、マイク端子、イヤホン端子を備える
通勤時の電車の中でFM・AMラジオを聴いたが、手持ちのラジオ機能付きICレコーダーよりは受信感度がよいように感じた。ただし、言うまでもなく、ラジオは近くに電子機器や建物があることで受信状況は大きく変わってくる。あくまでも個人の感想として、参考程度に留めてほしい。
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自宅で予約録音、アンテナステーションで電池の心配はナシ
従来モデルと比べた「PJ-10」の特徴はすでに述べた通り。そこで、今度は一般的なポータブルラジオと比較した便利な点を挙げよう。そのメリットは、アンテナステーションが付属することだ。
アンテナステーションにセットした「PJ-10」
毎日使うときに役立つと感じたのは、部屋のコンセントから本体に給電しながら番組の予約録音ができること。筆者の手持ちのラジオ機能付きICレコーダーは、こうしたクレードルは付属していないので、予約録音することで電池の減りが早かった。しかし、アンテナステーションに差しておけば、長時間録音するときでも、電池の残量を心配しなくてもいいのだ。
背面のコネクタ部
FMは、付属のアンテナをつなげば聴くことができる。一方、AMについては、付属のループアンテナをつなげば、受信感度が向上する。アンテナステーションに関して改善してほしい点を挙げるとすれば、AMアンテナを接続するケーブルとコネクタ部。AMアンテナをアンテナステーションにつなぐには、むき出しになっているケーブルの端の金属部分を、クリップ状のコネクタに挟む。この接続方法だと、ケーブルの内部がビニールで保護されずにむき出しになっているので、不安になった。一般的なジャック形状になっているほうが使いやすい。また、据置型ラジオとして使うなら、アンテナステーションにスピーカーを搭載しているほうが高音質で楽しめるので、次期モデルでは期待したい。
付属のアンテナ2種類(左がFM、右がAM)
なお、電源ケーブルだけ接続するにはそれほど気にならない配線だが、前述のFM、AMアンテナをつなぐには、当然それぞれケーブルが必要。背面はケーブルだらけになるので、部屋に置くとき、この点はあらかじめ理解しておこう。
自宅でアンテナステーションの威力を試したが、本体単体でイヤホンで聴いている状態と比べて、明らかにわかるほどの受信感度の向上を確認することはできなかった。そもそも、前提として、アンテナステーションを部屋のどこに置くかによってラジオの感度は変わってくるので、コンセントが届く範囲で最もよい設置場所を見つけるのが重要だろう。
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「カレンダー」や「放送局」など便利なファイル検索
肝心の、ラジオのリスニングのしやすさについてはどうだろうか。ラジオ番組を聴くには、液晶画面の左下にあるモードボタンを押して、「FM」「AM」「テレビ」「プレーヤー」の四つから選択する。「プレーヤー」とは、予約録音した番組や、PC経由で内蔵メモリに保存した音楽などのファイルを再生するときに使うモードだ。
(左から)モード切替、AMラジオ受信時の画面
FM・AM放送局を変更したい場合は、液晶画面の下の中央にあるリストボタンを使う。放送局と周波数を一覧で表示するので、迷うことなく聴きたい放送局を選択できる。放送局名が長い場合は、件名がスクロールする。もちろん、手動で周波数を調節することもできる。受信中に、前面にある左右の矢印ボタンを操作する。FM・AMともに、画面上で目盛り付きの周波数表示があるので、いまどの放送局を受信しているのかひと目でわかる。
FM・AMの放送局リスト
いくつかの番組を予約録音して聴いた。FMは、ほかの作業をしながら聴ける番組として、NHK・FMの「クラシックカフェ」、J-WAVEの「JAM The World」「DOCOMO Making Sense」。AMは、NHK語学講座で「ラジオ英会話」「英語5分間トレーニング」「実践ビジネス英語」を選んだ。
最も感動したのは、「FM」「AM」など録音したコンテンツの種類によって、自動でフォルダを振り分けてくれること。デフォルトで振り分けるようになっているので、録音後はすぐに聴きたい番組を探すことができる。
希望するファイルを見つけるための検索機能が豊富なのもいい。「フォルダ」「カレンダー」「放送局」「最近再生/録音」「未再生」といった複数の方法から選べる。それぞれ使ったところ、ファイルを作成した日付で探せる「カレンダー」と、過去に録音した放送局から選ぶ「放送局」検索が便利だと感じた。
複数の検索方法から選んで目的のファイルを探す
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ここで、ファイル再生時に役立つ機能を紹介しよう。聴きたい場所から再生できる「インデックス機能」は、早送り・早戻しの時にどこで頭出しすればよいかわかるというもの。例えば、語学講座で、講師の解説を飛ばしてネイティブによるスピーチから聴く、といったときに使える。
このインデックスの場所は、その箇所にくると「インデックス記録位置」という文字を点滅して表示する。ただ、これだけだと、ファイル全体のどのあたりにインデックスを付けたのかがわからない。リスニング画面のタイムライン上に旗を立てるなど、ひと目でわかる印がほしいと思った。
インデックス機能や部分リピートなど再生時に役立つ機能を備える
ファイルの再生を一度停止した後、次に同じ場所から再生する「しおり機能」も同じく、タイムライン上に視覚的な印があるといい。このほか、外国語の発音確認に便利な「部分リピート」は、どの部分を繰り返し聴くか手動で指定できるので使いやすかった。また、その再生速度を設定する「早聞き・遅聞き」では、倍速「1.5」「2.0」など等倍を含めて五つあるスピードからそれぞれ選べるので、好みの速さに指定できる。
ラジオを聴くための豊富な機能をもつ「PJ-10」
今回は、FM・AM合わせて1日6番組を予約録音・試聴したが、前述のような充実したラジオ機能は、毎日語学講座を聴く人や、たくさんの番組を聴いている人など、頻繁にラジオを聴くユーザーはかなり役立つことだろう。ちなみに、筆者は語学講座をときどき聴くが、例えば英語なら、難易度の異なる複数の会話番組やニュースなど、いくつかの番組を並行して録り溜められるほか、リピート機能が便利だったので、語学学習に向いていると感じた。
「PJ-10」だけでなく、三洋電機が4月21日に発売する「ICR-XRS120MF」など、ICレコーダーは、FM・AMラジオチューナーを搭載するモデルが増え、製品数が豊富になってきた。予約録音などの便利機能が付いたモデルなら、音楽やニュース、娯楽番組など、毎日聴くヘビーリスナーから、語学講座をこれから始めるライトリスナーまで、使い勝手で納得する一台がきっと見つかるはずだ。(BCN・井上真希子)