3D映像をヘッドマウントディスプレイで体感! 手持ちのiPhoneやPS3とつなぐ

レビュー

2010/03/31 11:08

 3D(three dimensions)テレビの発売によって、いよいよ自宅で立体映像が楽しめるようになる。そんななか、新たな3D対応機器として2010年3月に登場したのが、カールツァイスのヘッドマウントディスプレイ「cinemizer plus(シネマイザー プラス)」だ。テレビと異なり、iPhoneなど手持ちの端末と一緒に持ち運びできるのが強み。シャープなデザインのなかには、驚くべき3D表現力をもっていた。さっそく、その全貌を解き明かしていこう。

ヘッドマウントディスプレイ「cinemizer plus」とは?



カールツァイスの「cinemizer plus」

 映画『アバター』などの3D映画の登場によって、立体映像を視聴することが身近になってきた。そして、いまや、映画館だけでなく、自宅でも3Dが楽しめる時代になりつつある。大手テレビメーカーのパナソニックは4月、ソニーは6月から3Dテレビを発売する。さらに、コンテンツ産業は、07年12月からサービスを提供するBS11デジタルに加え、10年4月にはジュピターテレコム、同年夏からはスカパーJSATが3Dの番組を放送開始、アクトビラは夏に映像配信サービスをスタートするなど、各社とも力を入れ始めている。

メガネをかけるようにして装着する

 こうした状況のなかで、ドイツの光学機器メーカー、カールツァイスが世に送り出したのが、ヘッドマウントディスプレイ「cinemizer plus」だ。iPhoneやiPodなどの端末とつなげば、動画共有サイト「YouTube」などの3D映像が自宅や外出先で見られる。また、ソニーの「PlayStation 3(PS3)」などの家庭用ゲーム機とつないで、臨場感溢れる立体映像のゲームを楽しむこともできる。

3Dは「side-by-side方式」に対応



 3Dの表示には、左目用と右目用の映像を水平方向に2分の1に圧縮してそれぞれ画面に表示し、メガネを通して1つの立体映像に合成する「side-by-side方式」を採用。解像度は640×480ピクセルで、約2m離れた場所から45型ディスプレイを視聴するのと同等の映像を体感できる。

side-by-side方式の3Dゲームおよび動画なら、迫力の立体映像が楽しめる

 iPhone やiPodと接続するには、付属のクレードルを使う。なお、「YouTube」で3D動画を見るには、「side by side 3D」といったキーワードで検索し、対応した動画を見つける必要がある。「YouTube」では、最近side-by-side方式でフォーマットした3D動画を見かけるようになっており、今後のコンテンツの充実に期待できそうだ。もちろん、通常の2Dによる動画の鑑賞もできる。
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iPhoneとの接続 はクレードルにセットするだけ

 また、アップルの音楽・動画再生ソフト「iTunes」の動画再生に対応しており、iTunesで購入した高品質な動画を楽しむことができる。ちなみに、米国のオンラインストア「iTunes Store」は、ハイビジョン(HD)画質の映画のレンタルサービスを09年3月から実施している。将来、日本のストアが同様のサービスを導入すれば、「cinemizer plus」で鑑賞できるようになる。

ダイヤル(中央)を長押しして2Dと3Dの表示を切り替える。AV端子(左から2番目)には、付属のコンポジット端子付きケーブルを接続する

 テレビやDVDプレーヤーといったコンポジット端子を備えるAV機器と接続することもできる。ケーブルは必要だが、ソファやベッドなど、好きな場所で大画面の映像を見られるのはうれしい。
 

メガネのように折りたたんで携帯



 忘れてはならないのが携帯性だ。「cinemizer plus」は、フル充電の状態で約4時間再生できるバッテリをクレードルに搭載し、自宅だけでなく、出張や旅先など外出先でも使用することができる。充電はPCのUSB経由で給電する。

本体やクレードル、ケーブル類を収納できる専用ケース付き

 メガネは折りたたみ式で、重さは約115gと軽量。外観が黒いサングラスそっくりなので、飛行機や、新幹線など長距離を移動する電車の中で使っても、周りの人に違和感を与えることはないだろう。クレードルもコンパクトで、iPhoneと装着した状態で洋服のポケットに入れる。

耳にかける部分(モダン)やイヤホンは位置を調整できる

 メガネの耳にかける突起(モダン)には位置を調整する機構を備え、さまざまな頭の大きさに対応する設計になっている。イヤホンも耳の位置に合わせて角度を調節できる。また、使う人の視力に合わせて、左右それぞれで視度の調整ができ、最適な状態で視聴できる。

左右それぞれに視度を調整するダイヤルを備える
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3D映像を体感! ~家庭用ゲーム機編~



 それでは、「cinemizer plus」を使って3D映像を体感しよう。まずは、PS3のゲームソフト、ユービーアイソフトの「アバター THE GAME」から。PS3との接続はいたって簡単。ゲーム機と「cinemizer plus」のクレードルに接続した各ケーブルをコンポジット端子でつなぐだけだ。それぞれのコンポジット端子はオス同士だったので、メスを両極にもつアダプタを使って接続した。

PS3で「アバター THE GAME」をプレイ

 メインメニューは2Dで表示する。実際に操作したところ、文字のフォントが小さいことと、640×480ピクセルという解像度のせいで、メガネを装着した状態だと見にくさを感じた。事前の設定は、テレビなどの大型画面に映し出して作業し、終了したら「cinemizer plus」とつなぐ、という手順だとスムーズにできるだろう。

 3Dの設定は、ゲームの「オプション画面」の「ディスプレイ設定画面」で任意の方式を選択する。「アバター THE GAME」は、side-by-side方式だけでなく、「チェッカーボード」「RealD」「インターレース」「デュアルヘッド」「iZ3D」など、さまざまな3D方式に対応している。ここでは「side-by-side」を選択。設定を保存して、いよいよゲームスタート!

「アバター THE GAME」の色鮮やかな美しい世界に魅了される

 おお! 3D映像が目に飛び込んできた。実際にプレイすると、映画館のど真ん中に座って広大なスクリーンを鑑賞しているような気分になる。2Dでは決して味わえない奥行き感が生まれ、主人公を歩かせるという操作だけでも思わず笑ってしまうくらいに新鮮だ。特に敵と対峙する場面では、この奥行き感が絶妙のスリルを生み、攻撃されたときは思わず「あひゃっ」と首をすくめてしまったほどだ。

2Dでは味わえない臨場感に圧倒されて思わず叫んでしまう
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 思わぬ副産物だったのが、「3D表示にすることで画面がクリアで見やすくなる」ということ。2Dで見るよりも明らかに映像の質が向上し、すぐに違和感なくゲームの世界へと入り込むことができた。懸念していた文字の視認性も、3D表示に変換してしまえばまったく問題はない。

 このように、「アバター THE GAME」など、side-by-side方式の3D表示に対応したゲームソフトであれば、迫力ある立体映像を「cinemizer plus」で楽しむことができる。今年は、3Dテレビや3D液晶ディスプレイが相次いで発売される「3D元年」。今後、3D対応のゲームソフトが続々と登場するだろう。

3D映像を体感! ~iPhone編~



 次はiPhoneを使って「YouTube」の動画を視聴する。「3D side by side」というキーワード検索を行い、一覧表示した動画をひと通り鑑賞した。動画は、端末をクレードルにセットして再生すれば、すぐに表示する。

iPhoneで「YouTube」の3D動画を見る

 低い解像度でエンコードした映像はどうしても粗さが目立ってしまうが、きちんと立体で表示。それなりの迫力を感じた。一方、HDで記録した映像はクリアで見応えがある。特に、複数の人物を表示するシーンでは、それぞれの人物の距離が微妙に異なって見えるので、2Dでは表現しきれない位置関係がしっかりと把握でき、臨場感が味わえる。

 また、左右のイヤホンによるステレオ音声も悪くない。耳の位置に固定すると、外部の雑音を気にすることなく視聴に集中できる。ちなみに、iPhoneでは、動画共有サイトの3D映像だけでなく、写真のスライドショーも表示できるので、手元の画面サイズでは物足りず、大画面で写真を見たいときはぜひ活用したいところだ。

iPhoneと接続すれば、室内だけでなく外出先でも3Dが楽しめる

 PS3とiPhoneを通して、「cinemizer plus」の魅力について紹介してきたが、あらためて感じたのは「3Dのコンテンツがもっと充実してほしい」ということ。特に「アバター THE GAME」は想像以上に高画質でプレイが楽しめただけに、一日も早く3D対応のゲームソフトの製品数が増えることを望む。また、iTunes Storeによる国内の映画レンタルサービスの開始にも期待したい。3Dコンテンツが充実すれば、「cinemizer plus」の利用シーンは一層広がるはず。3Dの黎明期である今、ヘッドマウントディスプレイ「cinemizer plus」にぜひ注目してほしい。(ITジャーナリスト・市川昭彦)