デジタルビデオカメラは高倍率化がトレンド、光学20倍以上が約4割に
子どもの卒業式や入学式のために手に入れる人が多い春は、デジタルビデオカメラ市場が盛り上がる時期。ハイビジョン(HD)画質に対応する製品の割合は台数ベースで88.3%(2月)と、もはやHD画質が当たり前の時代になっている。画質面ではなかなか他社との違いを打ち出せないメーカー各社は、新しい切り口として、光学ズームの高倍率化に力を入れている。「BCNランキング」でトレンドを追った。
光学ズーム倍率を10倍ごとに区切ってその比率をみると、「20倍以上30倍未満」のモデルが増えているのがわかる。1年前の09年3月は8.8%だったのが、10年2月は27.7%と3割近くまで伸びてきた。また、「30倍以上40倍未満」「40倍以上」のさらに高い倍率帯を合わせると、38.9%が高倍率の光学ズームに対応するモデルだった。
首位のソニーは、光学ズームについて、「卒業式や入学式などの催しでは、どうしても被写体である子どもから遠い場所で撮影することになる。それをカバーするために、手ブレ補正機能と合わせてズーム倍率を強化した」という。
2月の売れ筋モデルは、高い倍率の光学ズームをもつ製品が上位にランクインしている。カラーバリエーションを合算したランキングをみると、1位はソニーの光学25倍ズームの「HDR-CX170」で、シェアは14.6%だった。10年1月に発売した新製品だ。ソニーはこのほか、09年3月発売モデルではあるが、光学60倍の「DCR-SX41」が2.9%で7位に入っている。
2位は、09年6月発売のパナソニックの光学16倍「HDC-TM30」で、9.4%だった。パナソニックはこの春、光学35倍の製品を発売。新製品としては、光学25倍の「HDC-TM60」が2.6%で8位に収まっている。ソニーやパナソニックのほか、日本ビクターもこの時期に、光学30倍のモデルを投入している。
ちなみに、3位は三洋電機のムービーカメラ「Xacti DMX-CG11」で、シェア5%だった。ムービーカメラは、撮影した動画を動画共有サイト「YouTube」などにアップロードして楽しむ小型・軽量のビデオカメラだ。どちらかといえば、AV機器というよりもPC周辺機器に近い。
三洋は03年にムービーカメラの先駆けとなる「Xacti」を発売し、力を入れてきた。その後、09年9月に日本ビクターの「PICSIO(ピクシオ)」、10年2月にはソニー「bloggie(ブロギー)」など、各社が相次いで参入したことで、にわかに注目を集めるカテゴリになっている。
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メーカーのシェア争いは、ソニーの一人勝ちが続いている。この一年の推移をみると、台数ベース30-40%を保っており、他社を引き離してトップをひた走っている。2月は38.7%を獲得した。一方、最近目立っているのはパナソニック。09年9月以降、20%代前半をキープし、3位以下を引き離している。2月は23.5%だった。
ポジションを上げた理由について、パナソニックは「小型・軽量な『HDC-TM30』が人気を集めたことが、メーカーシェアの伸びにつながった。また、記録媒体や画質など、ユーザーが自分の必要とする切り口で製品を選べるように、ラインアップを拡充したことも背景にある」と説明する。なお、3位以下は入れ替わりが激しく、2月は三洋が3位で13.7%。4位は日本ビクターが12%だった。
光学ズームの高倍率化に加え、ビデオカメラのトレンドが、本体の軽量化だ。この一年の平均重量の推移をみるとどんどん軽くなっており、09年3月に395gだったのが、2月にはついに300gを切って283gになった。大手家電量販店でも、その傾向は現れている。東京・ビックカメラ有楽町店本館、ビデオカメラコーナーの冨高優氏は「手ブレに強く、小さくて軽いモデルが人気」と語る。
この動きは、記録媒体の変化が影響している。09年7月頃まで主流だったHDDが少なくなり、その代わりに内蔵メモリが増えている。2月は内蔵メモリに記録するモデルが71.6%だった。HDDは駆動装置が必要なので、ある程度の大きさが必要になるが、メモリは半導体なので機構が小型・軽量で済む。こうした内部構造の違いが、本体のサイズや重さに関係してくるわけだ。
なお、以前はHDDのほうが大容量で、メモリよりも長時間撮影できることが優位点だったが、現在は、容量面でそれほど大きな違いがなくなってきている。店頭でも、最近の傾向として「容量はメモリカードを挿入すれば後から追加できるので、記録時間(記録容量)はお客様の選択基準にはなっていない」(冨高氏)という。
デジタルビデオカメラは、この時期、子どもの成長を記録する家族が購入することが多い。ただ、ビデオカメラを買った人は、「09年にテレビを買ったという人がほとんど」だという。子どもの人生の節目というタイミングに加え、HD画質を堪能できるテレビが手に入ったことも、購入を後押ししているようだ。(BCN・井上真希子)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで127品目を対象としています。
「子どもをアップで撮りたい」ニーズに応える高倍率化
光学ズーム倍率を10倍ごとに区切ってその比率をみると、「20倍以上30倍未満」のモデルが増えているのがわかる。1年前の09年3月は8.8%だったのが、10年2月は27.7%と3割近くまで伸びてきた。また、「30倍以上40倍未満」「40倍以上」のさらに高い倍率帯を合わせると、38.9%が高倍率の光学ズームに対応するモデルだった。
首位のソニーは、光学ズームについて、「卒業式や入学式などの催しでは、どうしても被写体である子どもから遠い場所で撮影することになる。それをカバーするために、手ブレ補正機能と合わせてズーム倍率を強化した」という。
順位 | メーカー | シリーズ | 光学ズーム | 重さ | 発売月 | 販売台数 シェア(%) |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | ソニー | HDR-CX170 | 25倍 | 210g | 2010/01 | 14.6 |
2 | パナソニック | HDC-TM30 | 16倍 | 227g | 2009/06 | 9.4 |
3 | 三洋電機 | Xacti DMX-CG11 | 5倍 | 173g | 2009/09 | 5.0 |
4 | 三洋電機 | Xacti DMX-CA9 | 5倍 | 230g | 2009/03 | 3.6 |
5 | ソニー | HDR-CX370V | 12倍 | 320g | 2010/02 | 3.6 |
6 | ソニー | HDR-CX550V | 10倍 | 440g | 2010/02 | 2.9 |
7 | ソニー | DCR-SX41 | 60倍 | 200g | 2009/03 | 2.9 |
8 | パナソニック | HDC-TM60 | 25倍 | 259g | 2010/02 | 2.6 |
9 | パナソニック | HDC-HS300 | 12倍 | 460g | 2009/02 | 2.5 |
10 | パナソニック | HDC-TM300 | 12倍 | 385g | 2009/02 | 2.4 |
※オレンジ色は記録媒体にHDDを採用
※カラーバリエーションは合算して集計
※カラーバリエーションは合算して集計
「BCNランキング」2010年2月 月次<最大パネル>
2月の売れ筋モデルは、高い倍率の光学ズームをもつ製品が上位にランクインしている。カラーバリエーションを合算したランキングをみると、1位はソニーの光学25倍ズームの「HDR-CX170」で、シェアは14.6%だった。10年1月に発売した新製品だ。ソニーはこのほか、09年3月発売モデルではあるが、光学60倍の「DCR-SX41」が2.9%で7位に入っている。
ソニーの「HDR-CX170」
2位は、09年6月発売のパナソニックの光学16倍「HDC-TM30」で、9.4%だった。パナソニックはこの春、光学35倍の製品を発売。新製品としては、光学25倍の「HDC-TM60」が2.6%で8位に収まっている。ソニーやパナソニックのほか、日本ビクターもこの時期に、光学30倍のモデルを投入している。
パナソニックの「HDC-TM30」、三洋電機の「Xacti DMX-CG11」
ちなみに、3位は三洋電機のムービーカメラ「Xacti DMX-CG11」で、シェア5%だった。ムービーカメラは、撮影した動画を動画共有サイト「YouTube」などにアップロードして楽しむ小型・軽量のビデオカメラだ。どちらかといえば、AV機器というよりもPC周辺機器に近い。
三洋は03年にムービーカメラの先駆けとなる「Xacti」を発売し、力を入れてきた。その後、09年9月に日本ビクターの「PICSIO(ピクシオ)」、10年2月にはソニー「bloggie(ブロギー)」など、各社が相次いで参入したことで、にわかに注目を集めるカテゴリになっている。
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「小型・軽量」が人気の条件 デジタルテレビ購入も後押し
メーカーのシェア争いは、ソニーの一人勝ちが続いている。この一年の推移をみると、台数ベース30-40%を保っており、他社を引き離してトップをひた走っている。2月は38.7%を獲得した。一方、最近目立っているのはパナソニック。09年9月以降、20%代前半をキープし、3位以下を引き離している。2月は23.5%だった。
ポジションを上げた理由について、パナソニックは「小型・軽量な『HDC-TM30』が人気を集めたことが、メーカーシェアの伸びにつながった。また、記録媒体や画質など、ユーザーが自分の必要とする切り口で製品を選べるように、ラインアップを拡充したことも背景にある」と説明する。なお、3位以下は入れ替わりが激しく、2月は三洋が3位で13.7%。4位は日本ビクターが12%だった。
デジタルビデオカメラ売り場では「軽量」「高画質」と店の「オススメ」を切り口にアピール(写真は東京・ビックカメラ有楽町店本館)
光学ズームの高倍率化に加え、ビデオカメラのトレンドが、本体の軽量化だ。この一年の平均重量の推移をみるとどんどん軽くなっており、09年3月に395gだったのが、2月にはついに300gを切って283gになった。大手家電量販店でも、その傾向は現れている。東京・ビックカメラ有楽町店本館、ビデオカメラコーナーの冨高優氏は「手ブレに強く、小さくて軽いモデルが人気」と語る。
ビックカメラ有楽町店本館地下2階、ビデオカメラコーナーの冨高優氏
この動きは、記録媒体の変化が影響している。09年7月頃まで主流だったHDDが少なくなり、その代わりに内蔵メモリが増えている。2月は内蔵メモリに記録するモデルが71.6%だった。HDDは駆動装置が必要なので、ある程度の大きさが必要になるが、メモリは半導体なので機構が小型・軽量で済む。こうした内部構造の違いが、本体のサイズや重さに関係してくるわけだ。
なお、以前はHDDのほうが大容量で、メモリよりも長時間撮影できることが優位点だったが、現在は、容量面でそれほど大きな違いがなくなってきている。店頭でも、最近の傾向として「容量はメモリカードを挿入すれば後から追加できるので、記録時間(記録容量)はお客様の選択基準にはなっていない」(冨高氏)という。
デジタルビデオカメラは、この時期、子どもの成長を記録する家族が購入することが多い。ただ、ビデオカメラを買った人は、「09年にテレビを買ったという人がほとんど」だという。子どもの人生の節目というタイミングに加え、HD画質を堪能できるテレビが手に入ったことも、購入を後押ししているようだ。(BCN・井上真希子)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで127品目を対象としています。