ミニプロジェクターに第二の波、“ちょいデカモデル”が牽引
重さ1kgを切る小型・軽量のミニプロジェクターが、再び勢いをみせている。2008年秋に、各社が重さ300g未満のモデルを投入したことで話題となった比較的新しい市場だ。最近では、画質や投影機能を一般的なプロジェクターに近づけた“ちょいデカモデル”が増えている。そこで、重さ1kg未満のプロジェクターを「ミニプロジェクター」と定義し、市場が立ち上がった後を「BCNランキング」でたどった。
ミニプロジェクターは、iPodやiPhone、ノートPCなどのモバイル端末とつないで写真や動画、文書を投影できるのがウリ。08年秋以降、参入するメーカーが相次ぎ、製品数は増え続けている。本体がコンパクトなので、室内だけでなく、カバンに入れて外出先で使うことができるのがメリットだ。
ミニプロジェクターは、大きく二つの種類に分類できる。一つは、友達や家族と写真や動画を共有する、いわばお遊びの延長の“ガジェット”モデル。もう一つは、画質やコネクタ、投影機能が充実し、ビジネスで使える本格的なモデルだ。重さで区分するなら、前者は「500g未満」、後者は「500g以上1kg未満」のモデルが多い。ただ、いずれもプライベート、ビジネス双方での利用を想定しているモデルもあって、明確に分けるのは難しい。
「BCNランキング」でプロジェクター全体に占めるミニプロジェクターの販売台数をみると、市場が立ち上がった08年12月-09年2月は15-20%で推移。その後、しばらく下火になったものの、09年11月、再び21.1%まで拡大し、12月には26.2%と大きく成長した。市場が盛り上がった理由について、重さ500g未満のビジネス向けモデルを展開する住友スリーエムは「(代表機種の)『MPro110』の価格が下がり、3万円を切ったことが成長を後押しした」とみている。
注目は、重さが「500g未満」と「500g以上1kg未満」の比率が変化してきている点だ。従来は「500g未満」が中心で、1年前の09年2月の構成比は17.7%だった。それが、10年2月には10.7%に下げた。一方、「500g以上1kg未満」は09年2月は1.5%だったが、直近の10年2月には5.9%まで拡大している。
500g以上1kg未満のモデルを他社に先駆けて市場に投入した加賀コンポーネントによると、「(小型化したことで)個人ユーザーが増えている。モバイルプロジェクターと比べて持ち運びしやすく、ビジネス利用では外出時の商談などで活躍している」と分析する。
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ここで、カラーバリエーションを合算したシリーズ別の2月の売れ筋モデルをみていこう。1位は加賀コンポーネント「KG-PL011S」で20.2%。加賀コンポーネントは、08年10月に780gの「KG-PL105S」を発売し、「KG-PL011S」はその後継機だ。重さは800g。「500g以上1kg未満」のモデルがトップに立った。
2位は、重さは160gの住友スリーエム「MPro110」で16.5%、同社は重さ500g未満のモデルをいち早く製品化し、「MPro110」はその最初のモデルとなる。2世代目として「MPro120」を09年8月に発売、10年3月には3世代目「MPro150」を発売したばかりだ。1位と2位の製品に共通するのは、どちらもそれぞれの重量帯で最も早く登場したメーカーの製品だということ。他社よりも早くユーザーに提供したことで製品やメーカーの認知度が高まり、人気を集めたといえる。
直近1年間のプロジェクター市場全体の動向を概観すると、09年前半は販売台数・金額とも低迷し、前年割れの状況だった。しかし、09年9月には台数ベースで前年同月比111%とプラスに転じる。さらに盛り上がりをみせたのは11月で、台数で142.5%、金額で100.1%に達した。それ以降も、台数では110%前後で推移している。一方、金額ベースではそれほど底上げできずにいる。ミニプロジェクターに関して言えば、税別の平均価格が3万4000円程度(2月)で、全体の8万1000円(同)の半分以下。単価が低く、市場全体に影響を与えるのは難しい。
ミニプロジェクターは前述のように多彩な製品が登場してきたことで、プライベートとビジネス、それぞれで使える選択肢が広がってきた。現在、重さでの差異化は難しくなっており、今後は画質や操作画面など性能の向上、そして価格が普及を左右するとみられる。また、新規のユーザーを開拓するには、通常のプロジェクターとは異なる利用シーンを、店頭や各種媒体で具体的に提示していくことが不可欠だろう。(BCN・井上真希子)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで127品目を対象としています。
多様化するミニプロジェクター、09年12月には構成比26.2%に
ミニプロジェクターは、iPodやiPhone、ノートPCなどのモバイル端末とつないで写真や動画、文書を投影できるのがウリ。08年秋以降、参入するメーカーが相次ぎ、製品数は増え続けている。本体がコンパクトなので、室内だけでなく、カバンに入れて外出先で使うことができるのがメリットだ。
重さ300g未満のミニプロジェクター
ミニプロジェクターは、大きく二つの種類に分類できる。一つは、友達や家族と写真や動画を共有する、いわばお遊びの延長の“ガジェット”モデル。もう一つは、画質やコネクタ、投影機能が充実し、ビジネスで使える本格的なモデルだ。重さで区分するなら、前者は「500g未満」、後者は「500g以上1kg未満」のモデルが多い。ただ、いずれもプライベート、ビジネス双方での利用を想定しているモデルもあって、明確に分けるのは難しい。
「BCNランキング」でプロジェクター全体に占めるミニプロジェクターの販売台数をみると、市場が立ち上がった08年12月-09年2月は15-20%で推移。その後、しばらく下火になったものの、09年11月、再び21.1%まで拡大し、12月には26.2%と大きく成長した。市場が盛り上がった理由について、重さ500g未満のビジネス向けモデルを展開する住友スリーエムは「(代表機種の)『MPro110』の価格が下がり、3万円を切ったことが成長を後押しした」とみている。
注目は、重さが「500g未満」と「500g以上1kg未満」の比率が変化してきている点だ。従来は「500g未満」が中心で、1年前の09年2月の構成比は17.7%だった。それが、10年2月には10.7%に下げた。一方、「500g以上1kg未満」は09年2月は1.5%だったが、直近の10年2月には5.9%まで拡大している。
重さ500g以上1kg未満のミニプロジェクター
500g以上1kg未満のモデルを他社に先駆けて市場に投入した加賀コンポーネントによると、「(小型化したことで)個人ユーザーが増えている。モバイルプロジェクターと比べて持ち運びしやすく、ビジネス利用では外出時の商談などで活躍している」と分析する。
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税別の平均価格は3万4000円、金額ベースの底上げが課題
順位 | メーカー | シリーズ | 投影方式 | 重さ(g) | 発売月 | 販売台数シェア(%) |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 加賀コンポーネント | KG-PL011S | DLP | 800 | 2009/11 | 20.2 |
2 | 住友スリーエム | MPro110 | LCOS | 160 | 2008/11 | 16.5 |
3 | Optoma | PK101 | DLP | 120 | 2008/12 | 11.3 |
4 | 加賀コンポーネント | KG-PL105S | DLP | 780 | 2008/10 | 7.9 |
5 | 住友スリーエム | MPro120 | LCOS | 150 | 2009/08 | 7.6 |
※オレンジは重さ500g以上1kg未満のモデル
「BCNランキング」10年2月 月次 <最大パネル>
ここで、カラーバリエーションを合算したシリーズ別の2月の売れ筋モデルをみていこう。1位は加賀コンポーネント「KG-PL011S」で20.2%。加賀コンポーネントは、08年10月に780gの「KG-PL105S」を発売し、「KG-PL011S」はその後継機だ。重さは800g。「500g以上1kg未満」のモデルがトップに立った。
加賀コンポーネントの「KG-PL011S」、住友スリーエムの「MPro110」
2位は、重さは160gの住友スリーエム「MPro110」で16.5%、同社は重さ500g未満のモデルをいち早く製品化し、「MPro110」はその最初のモデルとなる。2世代目として「MPro120」を09年8月に発売、10年3月には3世代目「MPro150」を発売したばかりだ。1位と2位の製品に共通するのは、どちらもそれぞれの重量帯で最も早く登場したメーカーの製品だということ。他社よりも早くユーザーに提供したことで製品やメーカーの認知度が高まり、人気を集めたといえる。
直近1年間のプロジェクター市場全体の動向を概観すると、09年前半は販売台数・金額とも低迷し、前年割れの状況だった。しかし、09年9月には台数ベースで前年同月比111%とプラスに転じる。さらに盛り上がりをみせたのは11月で、台数で142.5%、金額で100.1%に達した。それ以降も、台数では110%前後で推移している。一方、金額ベースではそれほど底上げできずにいる。ミニプロジェクターに関して言えば、税別の平均価格が3万4000円程度(2月)で、全体の8万1000円(同)の半分以下。単価が低く、市場全体に影響を与えるのは難しい。
ミニプロジェクターは前述のように多彩な製品が登場してきたことで、プライベートとビジネス、それぞれで使える選択肢が広がってきた。現在、重さでの差異化は難しくなっており、今後は画質や操作画面など性能の向上、そして価格が普及を左右するとみられる。また、新規のユーザーを開拓するには、通常のプロジェクターとは異なる利用シーンを、店頭や各種媒体で具体的に提示していくことが不可欠だろう。(BCN・井上真希子)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで127品目を対象としています。