「手軽な上位機」が売れるフォトプリンタ、対前年約1.2倍で年末商戦は堅調

特集

2010/02/02 20:07

 フォトプリンタが最も売れる時期は、年賀状需要のある年末。09年のトレンドは、PCを使わずに本体だけでハガキの宛名と文面の印刷ができてしまうという「手軽さ」だった。12月の販売台数の対前年同月比をみると、07年は96%で前年割れだったのが、08年は103.9%、09年は118.9%と年々市場は拡大している。「BCNランキング」から、09年の年末商戦を振り返る。


 市場が好調だった理由は、09年秋に発売したカシオ計算機とエプソンの最上位モデルが人気を集めたため。2機種とも、PCいらずですべての作業が一台で済み、さらに、キーボードを付属したり画面を大型化したり、使い勝手を追求している。こうした便利さが「年末の購入者はシニアが多い」(カシオの広報担当者)というユーザー層に合致し、市場の成長を後押しした。

 1位にランクインしたカシオのプリン写ル「PCP-1300」は、12月の機種別販売台数で37.5%という高いシェアを獲得した。7.0型ワイドのタッチパネル式液晶画面を採用し、付属するペンや指先で手軽に操作できる。年賀状や写真に手書き文字が書けたりスタンプが押せたりするのもポイント。また、年配者などキー入力が苦手な人にも使いやすいように、「あいうえお」順に並ぶキーボードが付属する。市場推定価格は3万6400円。

カシオ計算機の「PCP-1300」、エプソンの「E-800」
 
 2位は、エプソンのColorio me:宛名達人「E-800」で20.6%。操作メニューなどを表示する液晶画面は7.0型ワイド。この画面はデジタルフォトフレームとしても活用でき、プリンタ用途以外にも使える点が好評を博した。また、「PCP-1300」と同じく、五十音順表示のキーボードが付属する。このほか、画像調整機能として、逆光や色かぶりした写真を自動で色補正する機能を備える。市場推定価格は4万8600円。なお、同月の税別の平均価格は2万9600円で、2機種はそれよりも高価だ。

フォトプリンタ 機種別販売台数シェア トップ5
順位 メーカー 品名 型番 発売月 販売台数
シェア(%)
1 カシオ計算機 プリン写ル PCP-1300 2009/09 37.5
2 エプソン Colorio me:宛名達人 E-800 2009/10 20.6
3 カシオ計算機 プリン写ル PCP-300 2009/09 8.3
4 キヤノン SELPHY CP780 2009/04 8.1
5 エプソン Colorio me: E-600 2009/11 6.1
「BCNランキング」09年12月 月次 <最大パネル>
※青字は熱昇華型

 08年1月-09年12月メーカー別の販売台数シェアの動きをみると、エプソンとキヤノンは年間を通じて30-50%前後でコンスタントに売れている。これ対してカシオは、08、09年とも、年末の11-12月に40%前後まで急激に伸びて、1位に浮上している。一方、毎年この時期、エプソンとキヤノンは、カシオの台頭によって一時的にシェアを下げる傾向にある。

 ただ、これまでと異なる09年12月の変化は、例年であればシェアを下げるエプソンが落ち込まず、キヤノンが大きくシェアを下げた点だ。エプソンの広報担当者によると、製品そのものの魅力が評価されたことに加え、「フォトプリンタでは珍しいテレビCMを投入したことで認知が広がった」ことが背景にあると分析している。


 ちなみに、フォトプリンタを除いたインクジェットプリンタの12月の対前年同月比は、販売台数で08年が89.5%、09年は102.6%で、わずかに前年超えした状況。インクジェットと比較すると市場規模は小さいものの、前年比はフォトプリンタのほうが大きく躍進した形となった。

 09年末は、使いやすさを高めたモデルを各社が投入したことで、フォトプリンタ市場は盛り上がった。ただ、年賀状シーズンではない時期にいかに製品を訴求するか、という課題は残る。季節商品で終わらせないためには、メーカーからの具体的な利用シーンの提案と、それに対応する新たな機能の追加が鍵となるだろう。(BCN・井上真希子)


*記事中の「市場推定価格」は、記事掲載時点のものです。市場推定価格は、「BCNランキング」のデータをもとに独自に算出した推定値で、消費税込みの金額で表記しています。

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