データベースを持ち運ぶ! iPhone用アプリ「Bento for iPhone and iPod touch」を試す
仕事と趣味に共通点があるとすれば、それは「蓄積」だろう。数百件にも達するアドレス帳から都内在住者だけをピックアップする、旅先で撮った写真を地名を頼りに探し出す……といった作業は、非常に手間と時間がかかる。外出先なら、作業は一層困難になる。こうした膨大な量の項目を整理し、必要なものを探し出す場面で活躍するのが、データベースソフトだ。ファイルメーカーのiPhone、iPod touch用アプリケーション「Bento for iPhone and iPod touch」は、Macintosh向けパーソナルデータベースソフト「Bento」のエッセンスを集約したもの。早速、その機能を味わうことにしよう。
「Bento for iPhone and iPod touch(以下iPhone版Bento)」は、データベースを作成するアプリケーション。一番の魅力は、Mac上で動作するBento(以下Mac版Bento)と同期して使えること。同期によって、Mac版Bento上のデータベースをiPhone版Bentoに転送し、iPhoneやiPod touchに最適化した画面で表示する。編集機能で、データベースに新しい「フィールド」(項目)を追加することもできる。なお、同期にはBento 2.0v5またはBento 3 for Macと無線LANネットワークが必要となる(→「Bento 3」のレビュー)。
iPhone版Bentoは、作業画面が「Home」と「Search」「New Library」、そして「Sync&Setup」の4種類に分かれている。Homeは作業対象とするデータベースの選択と概要の表示、Searchは全データベースを対象とした文字列の検索を行う。New Libraryは新規ライブラリの作成、Sync&Setupは同期に関する設定・実行のときに利用する。
なお、Mac版Bentoと比較すると、データベースを閲覧、検索、新規作成できるなど基本機能は共通。ただ、日本語のデータは問題なく扱えるが、メニューなどの表記が日本語ではない、画面デザインにiPhone OS風のリスト以外選択できない、といった違いがある。さらに、Bento 3で加わったiPhotoやiCalとの連携ができず、これらのデータベースはiPhone版Bentoに転送できない。単独のアプリケーションとして利用できるものの、製品の位置付けとしては「Mac版Bentoのオーナー向けオプション」と解釈していいだろう。
なお、ファイルメーカー社では、Mac版「Bento 3」の30日間有効な無料評価版を用意している。事実上、BentoはiPhone版Bentoの必須アイテムなので、「Bentoを使うのはiPhone版がはじめて」という人は、ぜひダウンロードしておきたい。
iPhone版Bentoは、iPhoneが標準で装備するアプリと連携する機能をもつ。例えば、「連絡先」や「Safari」「マップ」などといったアプリと連携することで、データベースを活用する幅が広がる。データベース「Address Book」は、その一例といえる。
「Address Book」は、iPhoneアプリ「連絡先」と連携したもの。Macの「アドレスブック」とiTunesまたはMobile Me経由で同期していれば、通常は何もしなくても手持ちのMac上のアドレス帳情報を反映する。「Address Book」を開くと、iPhone版Bentoならではの機能が加わっていることがわかる。任意のデータを表示し、電話番号欄の右端にある「>」ボタンをタップすると、その番号へ電話をかけることができるのだ。
このほか、iPhoneアプリの住所やメールアドレスとも連携。住所欄では、Googleマップのサービスを利用した「マップ」が起動して地図が現れる。また、メールアドレスでは、そのアドレスに宛てた新規メッセージの作成画面を表示する。
また、iPhoneのカメラで撮影した顔写真を登録することもできる。「Address Book」には「顔写真BigSize」というフィールドがあるので、これを選択して写真を表示し(未登録の場合は「No Content」表示)、左下のボタンをタップすると現れるメニューから「Capture Media」を選ぶ。その後、自動的にカメラの画面に移るので、ここで写真を撮影するとデータベースへの顔写真登録は完了する、というわけだ。
今回は例として「連絡先」をもとに自動生成したデータベースを使用したが、ほかのiPhoneアプリとの連携を前提としたフィールドを追加する方法もある。住所やURLなど用途別のデータ型をもつフィールドを選択しておけば、タップするだけで住所の地図を表示したり、Webサイトにアクセスしたりできるデータベースが完成する。
前述したように、アドレス帳データベースから電話をかける、iPhoneで撮影した写真をそのままデータベースに登録する、といったiPhoneアプリとの連携が、iPhone版Bento最大の特徴だ。「Bento 3」の新機能であるiPhotoやiCalとの連携は、2010年1月現在サポートしていないが、それ以外のMac版Bentoで作成したデータベースはそのまま転送・同期するので、外出先でのデータベースビューアーとしてiPhoneやiPod touchを活用できる。見方を変えると、大量のデータを扱いやすいMac版Bentoでデータベース本来の基本作業を行い、外出先で使うiPhone版Bentoではそれを補完するという「適材適所」な使い方が望ましいといえる。
例えば、スプレッドシート(表計算ソフト)に保存する大量のデータをiPhoneで見たいときは、一度Mac版Bentoへデータをインポートしてから、同期によってiPhone版Bentoへと転送したほうがいい。Macに比べるとスプレッドシートを扱いにくいiPhoneでは、ページをめくる要領でレコード(作業単位)を切り替えるデータベースのほうが作業しやすいからだ。とはいえ、外出先でもデータ登録したいというニーズに応えられることも、iPhone版Bentoを利用するメリットだ。
以上のように、Mac版Bentoと組み合わせることで威力を発揮するiPhone版Bentoだが、いくつか改善すべき点もある。
まず、日本語ローカライズが完全ではないこと。試用した最新バージョン(v1.0.4)では、日本語を含むデータベースの同期と新規作成は問題なく処理できるが、メニューなど、ユーザーが頻繁に目にする部分の表記は英語のままだ。発売から半年以上経過していることを考えると、早急な対応が望まれる。
次に、全文検索に対応していないこと。データベース編集画面右上のソートボタンをタップした「Sort Order」画面にある「Display Fields」に登録したフィールドだけが検索対象となり、すべてのフィールドが検索されるわけではない。この設定に気付かず、検索してもヒットしない、とあわてるユーザも少なくないだろう。
さらに、検索のスピード。数十件程度のデータベースであれば、ほぼ待ち時間なく検索結果が現れるが、レコード数が千件を超えるあたりからレスポンスの低下が気になりはじめる。もともとiPhone OSはアプリケーションが自由に使えるメモリ空間が狭い。そこで、インクリメンタルサーチ(逐語検索)を使用しているので、やむをえない部分ではあるが、なんらかの方法で改良してほしいところだ。(ライター・海上 忍)
Mac版Bentoと同期できるiPhone用アプリ
Bento for iPhone and iPod touch
「Bento for iPhone and iPod touch(以下iPhone版Bento)」は、データベースを作成するアプリケーション。一番の魅力は、Mac上で動作するBento(以下Mac版Bento)と同期して使えること。同期によって、Mac版Bento上のデータベースをiPhone版Bentoに転送し、iPhoneやiPod touchに最適化した画面で表示する。編集機能で、データベースに新しい「フィールド」(項目)を追加することもできる。なお、同期にはBento 2.0v5またはBento 3 for Macと無線LANネットワークが必要となる(→「Bento 3」のレビュー)。
iPhone版Bentoは、作業画面が「Home」と「Search」「New Library」、そして「Sync&Setup」の4種類に分かれている。Homeは作業対象とするデータベースの選択と概要の表示、Searchは全データベースを対象とした文字列の検索を行う。New Libraryは新規ライブラリの作成、Sync&Setupは同期に関する設定・実行のときに利用する。
なお、Mac版Bentoと比較すると、データベースを閲覧、検索、新規作成できるなど基本機能は共通。ただ、日本語のデータは問題なく扱えるが、メニューなどの表記が日本語ではない、画面デザインにiPhone OS風のリスト以外選択できない、といった違いがある。さらに、Bento 3で加わったiPhotoやiCalとの連携ができず、これらのデータベースはiPhone版Bentoに転送できない。単独のアプリケーションとして利用できるものの、製品の位置付けとしては「Mac版Bentoのオーナー向けオプション」と解釈していいだろう。
レコード(作業単位)の内容はiPhoneらしい形式でリストを表示。矢印をタップすると写真などのコンテンツを拡大する
なお、ファイルメーカー社では、Mac版「Bento 3」の30日間有効な無料評価版を用意している。事実上、BentoはiPhone版Bentoの必須アイテムなので、「Bentoを使うのはiPhone版がはじめて」という人は、ぜひダウンロードしておきたい。
データベースから電話をかける
iPhone版Bentoは、iPhoneが標準で装備するアプリと連携する機能をもつ。例えば、「連絡先」や「Safari」「マップ」などといったアプリと連携することで、データベースを活用する幅が広がる。データベース「Address Book」は、その一例といえる。
「Address Book」は、iPhoneアプリ「連絡先」と連携したもの。Macの「アドレスブック」とiTunesまたはMobile Me経由で同期していれば、通常は何もしなくても手持ちのMac上のアドレス帳情報を反映する。「Address Book」を開くと、iPhone版Bentoならではの機能が加わっていることがわかる。任意のデータを表示し、電話番号欄の右端にある「>」ボタンをタップすると、その番号へ電話をかけることができるのだ。
このほか、iPhoneアプリの住所やメールアドレスとも連携。住所欄では、Googleマップのサービスを利用した「マップ」が起動して地図が現れる。また、メールアドレスでは、そのアドレスに宛てた新規メッセージの作成画面を表示する。
住所フィールドは「マップ」と連携。タップすればGoolgeマップで地図を表示する
___page___また、iPhoneのカメラで撮影した顔写真を登録することもできる。「Address Book」には「顔写真BigSize」というフィールドがあるので、これを選択して写真を表示し(未登録の場合は「No Content」表示)、左下のボタンをタップすると現れるメニューから「Capture Media」を選ぶ。その後、自動的にカメラの画面に移るので、ここで写真を撮影するとデータベースへの顔写真登録は完了する、というわけだ。
今回は例として「連絡先」をもとに自動生成したデータベースを使用したが、ほかのiPhoneアプリとの連携を前提としたフィールドを追加する方法もある。住所やURLなど用途別のデータ型をもつフィールドを選択しておけば、タップするだけで住所の地図を表示したり、Webサイトにアクセスしたりできるデータベースが完成する。
写真フィールドの編集で「Capture Media」を選択すれば、iPhone、iPod touch内蔵のカメラで撮影した写真をデータベースに格納できる
「適材適所」でデータベースを活用
前述したように、アドレス帳データベースから電話をかける、iPhoneで撮影した写真をそのままデータベースに登録する、といったiPhoneアプリとの連携が、iPhone版Bento最大の特徴だ。「Bento 3」の新機能であるiPhotoやiCalとの連携は、2010年1月現在サポートしていないが、それ以外のMac版Bentoで作成したデータベースはそのまま転送・同期するので、外出先でのデータベースビューアーとしてiPhoneやiPod touchを活用できる。見方を変えると、大量のデータを扱いやすいMac版Bentoでデータベース本来の基本作業を行い、外出先で使うiPhone版Bentoではそれを補完するという「適材適所」な使い方が望ましいといえる。
例えば、スプレッドシート(表計算ソフト)に保存する大量のデータをiPhoneで見たいときは、一度Mac版Bentoへデータをインポートしてから、同期によってiPhone版Bentoへと転送したほうがいい。Macに比べるとスプレッドシートを扱いにくいiPhoneでは、ページをめくる要領でレコード(作業単位)を切り替えるデータベースのほうが作業しやすいからだ。とはいえ、外出先でもデータ登録したいというニーズに応えられることも、iPhone版Bentoを利用するメリットだ。
Mac版Bentoで作成したデータベースを同期してiPhone版Bentoに取り込むと効率的
以上のように、Mac版Bentoと組み合わせることで威力を発揮するiPhone版Bentoだが、いくつか改善すべき点もある。
まず、日本語ローカライズが完全ではないこと。試用した最新バージョン(v1.0.4)では、日本語を含むデータベースの同期と新規作成は問題なく処理できるが、メニューなど、ユーザーが頻繁に目にする部分の表記は英語のままだ。発売から半年以上経過していることを考えると、早急な対応が望まれる。
次に、全文検索に対応していないこと。データベース編集画面右上のソートボタンをタップした「Sort Order」画面にある「Display Fields」に登録したフィールドだけが検索対象となり、すべてのフィールドが検索されるわけではない。この設定に気付かず、検索してもヒットしない、とあわてるユーザも少なくないだろう。
数十件程度のデータベースは高速に検索できるが、千件を超えたあたりからレスポンスの低下が目立ちはじめる
さらに、検索のスピード。数十件程度のデータベースであれば、ほぼ待ち時間なく検索結果が現れるが、レコード数が千件を超えるあたりからレスポンスの低下が気になりはじめる。もともとiPhone OSはアプリケーションが自由に使えるメモリ空間が狭い。そこで、インクリメンタルサーチ(逐語検索)を使用しているので、やむをえない部分ではあるが、なんらかの方法で改良してほしいところだ。(ライター・海上 忍)