逆転劇その後、再びジリジリとシェア差が詰まる携帯オーディオ市場
iPodとウォークマンの販売台数シェアが、再び接近してきた。携帯オーディオ市場は、販売台数で4割から6割を占めるアップルのiPodがトップシェアを占めている。しかし09年8月、週次の集計ながらiPodとウォークマンのシェアが2週連続で逆転する現象が起こった。その後、iPodの新製品登場で両社のシェア差はいったん大きく開いたものの、10月の終わりごろから再び差が縮まっている。BCNランキングから、その要因を探った。
携帯オーディオ市場は、ここしばらく「iPodのアップル」と「ウォークマンのソニー」の2強状態が続いている。とくに08年の年末商戦以降は、両社のシェアが急接近し、競争が激化した。週次シェアの逆転が起こったのは、09年8月第4週(24-30日)と翌第5週(8月31日-9月6日)の2週。ちょうどアップルが新製品を発売する直前だったこともあり、最大で10.3ポイントの差をつけてソニーが週次でトップシェアを獲得した。
しかし9月10日、アップルが新製品を発売するとiPodは急激に回復。9月第4週(9月28日-10月4日)には68.3%と、7割にもう一歩のところまでシェアを伸ばした。一方のソニーは22.7%とシェアを半減させ、最大で45.6ポイントの差がついた。その後、再び両社のシェアは接近し、直近の12月第1週(12月7日-13日)では、アップルが54.5%、ソニーが37.7%と16.8ポイントまで差が縮まっている。
やや長いレンジでみても、両社の販売台数シェアはかなり接近してきている。3年前の06年11月の月次シェアでは、アップルが52.1%だったのに対し、ソニーは20.3%。30ポイント以上の大差がついていた。09年11月はアップルは52.2%とほとんど変わらないのに比べ、ソニーは38.6%。その差は10ポイント台まで詰まってきているのだ。
この3年間でとくに目立つのは、08年10月以降の動きだ。アップルは08年10月、61.9%のシェアでピークを記録した後、ほとんど一本調子で大きくシェアを下げ続け、09年の8月のボトムでは45.0%まで下落。1年足らずの間に16.9ポイントものシェアを失った。一方のソニーは、この間着実にシェアを拡大している。
08年に何が起こったのか? この時期のトピックスといえば、7月のiPhone 3Gの発売だ。これが携帯オーディオ市場にも大きな影響を与えた。一定のユーザーがiPodからiPhoneに乗り換えたため、ジャンルをまたぎながら、音楽再生機能を持つアップル同士の製品で食い合いが生じ、結果的に携帯オーディオ市場でのiPodのシェアを落とすことにつながったわけだ。
とくに、実質負担金なしでiPhoneが手に入る「iPhone for everybody キャンペーン」が与えた影響は大きかった。スマートフォンでiPodの機能をもつiPhoneが「実質負担金0円」で手に入るとあって、iPodのかなりのユーザーがiPhoneに流れたのではないかと考えられる。
事実、携帯オーディオの販売台数前年同月比をみると、2月にキャンペーンが始まったとたん、それまで前年同月比で20%前後は拡大していたiPodは前年割れに転じている。6月にiPhone 3GSの発売もあって、携帯オーディオの販売台数前年割れは徐々に拡大。8月には16.4%減を記録した。翌9月は新製品発売で前年を上回る販売台数を記録したものの、10月、11月と再び前年割れ水準に戻ってしまった。
一方、ソニーは08年の年末商戦に専用スピーカーを付属するSシリーズを投入。09年10月には画面に楽曲の歌詞を表示する「歌詞ピタ」機能を搭載し、中学生・高校生の10代をターゲットにする新しい「Sシリーズ」と、20代以上の若者を狙う「Aシリーズ」を発売した。アップルとはまったく異なる戦略で、販売台数を伸ばしている。販売台数の前年同月比は20%-40%増。大幅な拡大といっていいだろう。
iPodの売れ筋は、なんといってもiPod nanoだ。09年11月現在でiPodの販売台数の65.0%を占めている。アップルは09年、この主力製品に強力にテコ入れしてきた。09年9月に登場した「第5世代」のnanoには、新たにビデオカメラ、FMラジオチューナー、スピーカー、録音機能や歩数計機能まで搭載してきた。ところが、nanoシリーズの販売台数を前年と比較すると、9月こそ新製品効果で13.5%増と好調だったものの、11月には6.2%減と、昨年よりも販売台数が減少してしまった。主力モデルの減速が、iPod全体の前年割れを招く一因になっている。
対するソニーの主力製品はウォークマンの64.4%を占める「Sシリーズ」で、こちらは09年11月の前年同月比で21.3%増と好調。こうした主力製品の勢いの差も、両社のシェア接近を生み出す要因になっているようだ。年末商戦序盤の動きをみると、アップルが5割強、ソニーが4割弱という台数シェアの力関係しばらく続きそうだが、今後さらに接近する場面が訪れるかもしれない。(BCN・道越一郎)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで127品目を対象としています。
iPodとウォークマン、逆転劇その後
携帯オーディオ市場は、ここしばらく「iPodのアップル」と「ウォークマンのソニー」の2強状態が続いている。とくに08年の年末商戦以降は、両社のシェアが急接近し、競争が激化した。週次シェアの逆転が起こったのは、09年8月第4週(24-30日)と翌第5週(8月31日-9月6日)の2週。ちょうどアップルが新製品を発売する直前だったこともあり、最大で10.3ポイントの差をつけてソニーが週次でトップシェアを獲得した。
しかし9月10日、アップルが新製品を発売するとiPodは急激に回復。9月第4週(9月28日-10月4日)には68.3%と、7割にもう一歩のところまでシェアを伸ばした。一方のソニーは22.7%とシェアを半減させ、最大で45.6ポイントの差がついた。その後、再び両社のシェアは接近し、直近の12月第1週(12月7日-13日)では、アップルが54.5%、ソニーが37.7%と16.8ポイントまで差が縮まっている。
やや長いレンジでみても、両社の販売台数シェアはかなり接近してきている。3年前の06年11月の月次シェアでは、アップルが52.1%だったのに対し、ソニーは20.3%。30ポイント以上の大差がついていた。09年11月はアップルは52.2%とほとんど変わらないのに比べ、ソニーは38.6%。その差は10ポイント台まで詰まってきているのだ。
iPodが格安のiPhoneに食われている
この3年間でとくに目立つのは、08年10月以降の動きだ。アップルは08年10月、61.9%のシェアでピークを記録した後、ほとんど一本調子で大きくシェアを下げ続け、09年の8月のボトムでは45.0%まで下落。1年足らずの間に16.9ポイントものシェアを失った。一方のソニーは、この間着実にシェアを拡大している。
08年に何が起こったのか? この時期のトピックスといえば、7月のiPhone 3Gの発売だ。これが携帯オーディオ市場にも大きな影響を与えた。一定のユーザーがiPodからiPhoneに乗り換えたため、ジャンルをまたぎながら、音楽再生機能を持つアップル同士の製品で食い合いが生じ、結果的に携帯オーディオ市場でのiPodのシェアを落とすことにつながったわけだ。
とくに、実質負担金なしでiPhoneが手に入る「iPhone for everybody キャンペーン」が与えた影響は大きかった。スマートフォンでiPodの機能をもつiPhoneが「実質負担金0円」で手に入るとあって、iPodのかなりのユーザーがiPhoneに流れたのではないかと考えられる。
iPhone 3GS
事実、携帯オーディオの販売台数前年同月比をみると、2月にキャンペーンが始まったとたん、それまで前年同月比で20%前後は拡大していたiPodは前年割れに転じている。6月にiPhone 3GSの発売もあって、携帯オーディオの販売台数前年割れは徐々に拡大。8月には16.4%減を記録した。翌9月は新製品発売で前年を上回る販売台数を記録したものの、10月、11月と再び前年割れ水準に戻ってしまった。
一方、ソニーは08年の年末商戦に専用スピーカーを付属するSシリーズを投入。09年10月には画面に楽曲の歌詞を表示する「歌詞ピタ」機能を搭載し、中学生・高校生の10代をターゲットにする新しい「Sシリーズ」と、20代以上の若者を狙う「Aシリーズ」を発売した。アップルとはまったく異なる戦略で、販売台数を伸ばしている。販売台数の前年同月比は20%-40%増。大幅な拡大といっていいだろう。
伸び悩むnanoと好調なSシリーズ
iPod nano 第5世代
iPodの売れ筋は、なんといってもiPod nanoだ。09年11月現在でiPodの販売台数の65.0%を占めている。アップルは09年、この主力製品に強力にテコ入れしてきた。09年9月に登場した「第5世代」のnanoには、新たにビデオカメラ、FMラジオチューナー、スピーカー、録音機能や歩数計機能まで搭載してきた。ところが、nanoシリーズの販売台数を前年と比較すると、9月こそ新製品効果で13.5%増と好調だったものの、11月には6.2%減と、昨年よりも販売台数が減少してしまった。主力モデルの減速が、iPod全体の前年割れを招く一因になっている。
ウォークマン NW-Sシリーズ
対するソニーの主力製品はウォークマンの64.4%を占める「Sシリーズ」で、こちらは09年11月の前年同月比で21.3%増と好調。こうした主力製品の勢いの差も、両社のシェア接近を生み出す要因になっているようだ。年末商戦序盤の動きをみると、アップルが5割強、ソニーが4割弱という台数シェアの力関係しばらく続きそうだが、今後さらに接近する場面が訪れるかもしれない。(BCN・道越一郎)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで127品目を対象としています。